「傑作」という言い方をすると眉をひそめるかもしれませんけど、スポーツの政治利用・ナショナリズムとの結合の最高峰は1936年のヒトラーの「ナチ・オリンピック」であるようです。また、北朝鮮なども五輪のメダル重視での国威発揚やボイコットなどで、オリンピックを政治利用してきた悪い見本の国でした。
2018/01/26:
●平昌五輪の韓国・北朝鮮の南北統一チームも五輪の政治利用では?
●五輪のメダル個数を増やせ!はヒトラーと同じで五輪精神にも反する
2021/04/07:
●経済事情が苦しい中でも北朝鮮は五輪重視 理由は国威発揚のため 【NEW】
●過去の東京五輪もボイコット!北朝鮮は五輪を政治利用しまくり 【NEW】
●スポーツの政治利用 ヒトラーの「ナチ・オリンピック」が最高傑作
2018/01/26:今回引用する記事では、まずオリンピック自体が"規模、参加国数、4年に1度という希少性、競技レベルの高さ、必要となるインフラ(その国の経済力や国力を示す)、そしてそれらゆえに生じる注目度の高さから、群を抜いて人々のマインドに影響を与えうるイベント"であることを指摘しています。
その上で、1933年に政権の座に就いたアドルフ・ヒトラーは、すでにベルリンでの開催が決まっていたオリンピックを徹底的に国威発揚、さらには(ユダヤ民族に対する)アーリア民族優勢を示す場にしようと決意したことを紹介。これが見事に成功したことを伝えています。
<「プロパガンダの天才」とも言われた国民啓蒙・宣伝大臣のヨーゼフ・ゲッペルスが自ら演出の指揮を取り、ヒトラーの開会宣言中には10万人を超える観客がナチ式の敬礼をするなど、大会は異様な興奮の中で幕を切る。結局この大会では、ドイツは金銀銅あわせて89のメダルを獲得し、2位アメリカの56個を抑えて圧倒的なトップを獲得する。その前の1932年ロサンゼルス大会のメダル獲得数が20個で5位(1位のアメリカは103個。金メダルに限れば、ドイツは3個で9位)だったことを考えれば、劇的な躍進と言えよう。
この大会の模様は記録映画『民族の祭典』『美の祭典』として映像化もされ、ドイツを始め世界中で多くの観客を獲得した。まさにナチのプロパガンダは大成功を収めたのである(両作品の監督は、ナチを賛美した記録映画『意志の勝利』のレニ・リーフェンシュタール)。>
(
hスポーツとナショナリズム――愛国心という名の難しい友人との付き合い方 (ダイヤモンド・オンライン 2013年1月18日 嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問] より)
●政府が圧力・国威高揚など…オリンピックの歴史は政治利用の歴史
この他の大会も挙げて、嶋田毅さんはオリンピックは常に政治的思惑に翻弄されてきたとして、多くの例を出していました。私はオリンピック強化にもっとお金をかけろという主張に反対していますけど、こういうスポーツの政治利用の観点からも望ましくないと考えます。
・1952年ヘルシンキ大会 東西冷戦の代理戦争
・1968年のメキシコ大会 大会直前には、IOCが、アパルトヘイトを実施していた南アフリカの参加を認めたことから、一時は50国以上がボイコットを表明。結局、IOCが南アフリカの参加を却下したことで、ボイコットは回避された。
・1972年のミュンヘン大会 パレスチナ武装組織「黒い九月」が選手村に乱入して人質事件を起こし、結果として、イスラエル選手や関係者11名が殺害された。
・1980年のモスクワ大会、1984年のロサンゼルス大会 東西冷戦の最後の鞘当て合戦で大量ボイコット。日本も、80年のモスクワ大会はボイコット。現場に近い日本オリンピック委員会(JOC)は最後まで抵抗したようだが、
政府から補助金打ち切りをチラつかされてはボイコット以外の選択肢はなかった。ロサンゼルス大会でのルーマニアの素晴らしい成績も、ニコラエ・チャウシェスク大統領による国威高揚のためだった。
●平昌五輪の韓国・北朝鮮の南北統一チームも五輪の政治利用では?
2018/01/26:北朝鮮選手のオリンピックへの参加と合同入場が承認されるという急転直下の南北和解ムードになりました。韓国・北朝鮮だけでなく、アメリカのトランプ大統領も南北対話を歓迎するコメントを発表。米韓合同軍事演習も現時点ではオリンピック・パラリンピック期間に限定されてはいるものの、休止が決定されているそうです。
朝鮮半島の緊張緩和を歓迎するムードが国際的に広がっているわけですが、これは視点を変えればスポーツの祭典、平和の祭典であるオリンピックが、前述の様に、高度な政治活動に利用されているのではとの疑問も湧くとする記事がありました。
(
韓国の若年層の8割も、平昌五輪の政治利用に反対を示す HARBOR BUSINESS Online 2018年1月25日 15時55分 (2018年1月26日 13時49分 更新) 安達 夕より)
1月11日に、国会議長室とSBSが韓国全土の19歳以上の成人男女1000名以上を対象に実施したアンケートの結果では、72.2%が「合同チームを無理して構成する必要がない」と回答。また、19歳~29歳の回答者中の82.2%、30歳~39歳までの82.6%が反対の意思を表明したそうです。
●五輪のメダル個数を増やせ!はヒトラーと同じで五輪精神にも反する
私もスポーツの政治利用だと思いましたが、記事では日本が過去、1980年のモスクワオリンピックをボイコットしたことも指摘。オリンピック初の共産圏開催となったこのモスクワ五輪には、その前年1979年のソビエト連邦(当時)によるアフガニスタン侵攻を口実に、アメリカのカーター大統領がオリンピックへのボイコットを発表し、日本もそれに追随。当時の選手たちは当然これにより出場できないというひどいことになりました。
また、2020年の東京五輪においても、政治利用の問題は見えています。私は最初の投稿で、オリンピック強化にもっとお金をかけろ!という主張にも反対だと書いていました。ヒトラーがまさにそうであったように、五輪強化というのは五輪の活躍を政治が利用するという側面を否定できないんですよ。
そして、
オリンピック精神がない日本「金メダル30個厳命、取れなきゃクビ」遠藤利明五輪担当相が発言で書いたように、東京五輪でもメダルを増やすようにという政治家の動きがあったことがわかっています。これはそちらのタイトルにしたように、オリンピック憲章の精神を切り捨てるものでした。
また、安倍首相の政治利用についても、「2020年の東京オリンピックに合わせて憲法を変えるということをおっしゃった。誰がどう考えても憲法9条とオリンピックは何の関係もありません。これはオリンピックの最悪の政治利用だ」(共産党・志位委員長)という批判が出ています。
(
憲法と五輪関係ない政治利用だ…共産党・志位委員長(2017/05/11 20:02)より)
安倍首相は韓国の平昌五輪の開幕式に一時出ないと言っていたのも、慰安婦合意問題に関する政治的な理由。これは未だに右派から「慰安婦合意で誤ったメッセージになるので行くべきではない」といった声が出ていますので、執筆時点でもまさに政治利用されている状況でした。
●経済事情が苦しい中でも北朝鮮は五輪重視 理由は国威発揚のため
2021/04/07:「新型コロナウイルスによる世界的な保健危機から選手たちを保護するため」として、北朝鮮が新型コロナウイルスを理由に東京五輪への不参加を明らかにしました。一方、これを伝えた
五輪不参加の北朝鮮、コロナ禍で国威発揚の余裕なく: 日本経済新聞(2021年4月6日 12:40)は、経済的な問題ではないかとしています。
<医療や保健体制が脆弱な北朝鮮は新型コロナの流入を防ぐため、金正恩氏の命令の下、防疫を徹底している。20年1月から中国との境界を完全封鎖し、他国からの物資受け入れまでも厳しく制限している。
医薬品や食料品など輸入物資が不足し、平壌駐在の外交官が次々と北朝鮮を脱出する状況も明らかになっており、五輪代表団を海外に派遣する余裕は乏しいとみられる>
上の<五輪のメダル個数を増やせ!はヒトラーと同じで五輪精神にも反する>で書いたように良くないことなのですが、記事では、経済事情が苦しい中でも、北朝鮮は国威発揚の観点から五輪への参加やメダル獲得を重視してきたことを指摘。今回も実は3月25日の北朝鮮オリンピック委員会では、「国家経済発展5カ年計画(25年まで)の期間、国際大会でメダル獲得数を持続的に増やし、社会主義建設を推し進める」としていたそうで、ここに来ていきなり変化した形です。
●過去の東京五輪もボイコット!北朝鮮は五輪を政治利用しまくり
東京五輪の不参加に政治利用を疑う声が出ています。記事では、韓国の北朝鮮専門家の「五輪参加は実益がないと判断し、日本への政治的な反感も作用した」との声を載せていました。記事では指摘がなかったものの、世界で最初に東京五輪参加見送りを決めた判断そのものが国際的なアピールになるとも考えられます。
ただ、今回の場合はマジで余裕がないから…という事情が大きそう。「選手の感染を防ぎたい」というのも建前ではなく本音でしょう。感染者が出た場合、北朝鮮の医療や経済に大きな打撃となるのは間違いないため、感染阻止の方を重視したと考えられます。感染者増加がの医療や経済に打撃というのは、日本や他の国にも多かれ少なかれ言える話ですけどね。
とはいえ、今回政治利用じゃないかもしれないというだけで、過去の北朝鮮が五輪の政治利用をしてきた悪い国だというのも間違いありません。記事では、過去の北朝鮮の政治利用例をいくつも挙げていました。悪い見本ですね。ただ、上記までで指摘したように、北朝鮮以外の国も政治利用をやっており、他の国についても悪いと言わざるを得ません。
・1964年の東京五輪では「朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)」の国号を認めなかった国際オリンピック委員会(IOC)に反発し、開会の直前にボイコットした。
・84年、アメリカのロサンゼルス五輪はソ連とともにボイコット。
・88年のソウル五輪は韓国の単独開催に反発し参加しなかった。前年には五輪を妨害する目的で大韓航空機爆破事件を起こしている。
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