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日本企業がアップル・グーグル・マイクロソフトに追いつくのは不可能 ソフトウェアとセキュリティの重要性を理解できない日本


 <日本企業がアップル・グーグル・マイクロソフトに追いつくのは不可能>、<ソフトウエアエンジニアはエンジニアじゃない…とソフト軽視>、<570億円もの大金を投資して何も作れなかった国家プロジェクト>、<ソフトウェアとセキュリティの重要性を理解できない日本>、<日本はソフトウェアとセキュリティだけでなく、スピードも軽視>などの話をまとめています。

2022/08/25追記:
●日本はソフトウェアとセキュリティだけでなく、スピードも軽視? 【NEW】


●日本人は「ロボットの心」を創れますか?妙なタイトルの記事

2013/2/8:<日本人は「ロボットの心」を創れますか? スタンフォード大学名誉教授、エドワード・ファイゲンバウム氏に聞く>(原 隆 、瀧口 範子 2013年1月28日(月) 日経ビジネスオンライン)というちょっと変わったタイトルの記事がありました。エドワード・ファイゲンバウム・スタンフォード大学名誉教授のインタビュー記事です。

 エドワード・ファイゲンバウム名誉教授は、AI(人工知能)分野における「エキスパートシステムの父」と呼ばれる人だとのこと。「AI(人工知能)分野で長きにわたって活躍されています。インターネットの行く末をどう見ているのでしょうか」という質問には、以下のような回答をしていました。

<インターネットは例えて言うならばハイウェイです。交通インフラの整備が人々の未来をどう変えたのかを語る上で、道路そのものを見てしまうと問題は正しく捉えられません。むしろアトム(物質)からビット(デジタル)への世界を見ることが正しい解へと導いてくれるでしょう。(中略)加速度的にアトムが消えゆく世界になっている。
 こうしたことを踏まえた上でインターネットを見てみましょう。ハイウェイをドライブする上で最も重要なものは何か。それはインタフェースです。素晴らしいインタフェースが無ければドライブそのものが快適ではなく、遠くまで行くこともできなくなる。インタフェースを差異化するものこそ、AIのプログラムなんです>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130124/242708/


●日本企業がアップル・グーグル・マイクロソフトに追いつくのは不可能

 エドワード・ファイゲンバウム名誉教授によれば、AIで先頭を走る企業はグーグルであり、アップルやマイクロソフトが続くそうです。しかし、「日経ビジネスの読者の皆さんに特に申し上げたいことがあります。次の10年間を主導していく企業の話の中で、日本企業がこうした議論に列挙されることがありません」としており、そこに日本企業の姿はないとしていました。

 <インタフェースをAIと統合するテクノロジーを成功させるためには、長い時間、何度も繰り返して取り組むことしか解決策はありません>とその前に言っていますので、それが正しければ今出遅れていると追いつくことは極めて難しいということになります。以下のあたりもそういった説明でしょうね。

<先ほども申し上げたような世界を実現するのは極めて難しいことです。日本企業がアップルやグーグル、マイクロソフトに追いつくのは不可能と言わざるを得ない。この理由は明確です。日本はこの手の開発をしてこなかったからです。
 ソフトウエア開発が得意ではないことに加え、この問題を真剣に捉えようとしませんでした。ソフトウエアは蒸気のようなもので目に見えません。(中略)日本のビジネス文化は目に見えないソフトウエアの重要性を理解しませんでした。大学を卒業し、電気エンジニアとして働くことが良しとされ、プログラマーは活躍の場もなく、正当な評価もされなかった>


●ソフトウエアエンジニアはエンジニアじゃない…とソフト軽視

 プログラマーはソフトウエアエンジニアと名を変えています。ただ、このときも日本の人たちは「空気をやり取りしているだけじゃないか」と笑ったとされていました。わかりづらい言い方ですけど、たぶん「ものづくりのように目に見えるものを扱っていないのは、本物のエンジニアではない」といったニュアンスじゃないかと思われます。

 製造業などの「実業」と「虚業」とで分けて、目に見えずわかりづらい仕事を「虚業」と叩くようなものも思い出しました。この虚業叩きの話は私の脱線ですが、とにかく「この認識は日本の文化に根深く残っており、その認識が大学や企業、デザイン分野に関してまで影響を及ぼしています」としていました。

<ソニーがアップルのiPodを見たときに「これはウォークマンキラーになってしまう」ということには気付きました。そしてiPod対策として実に綺麗なプロダクトを作りました。ただ、それは形こそ綺麗でしたが、ソフトウエアが極めてお粗末でした。(引用者注:インタビュー当時の)ソニーが今、うまくいっていないのは必然と言えます>


●570億円もの大金を投資して何も作れなかった国家プロジェクト

 このソフトウェア軽視は日本の伝統なんでしょうね。エドワード・ファイゲンバウム名誉教授が、「第五世代コンピュータ― 日本の挑戦」と題した書籍を出すなど関心を持っていた、日本で1981年、通商産業省(現:経済産業省)が立ち上げた国家プロジェクトが、570億円もの大金を投資して何も作れなかったことについての回答でそういったところが見られます。ただ、以下はまずフォローしている部分です。

「まず、最初に申し上げたいのは、当時、研究者のトップであった渕一博さんは、それはそれは素晴らしいアイデアを持っていた方ということです。このプロジェクトにはAI分野の進化を大幅に進めること、主要なAIアプリケーションを創ること、並列コンピューターを使って処理を高速化させることなど複数の目的がありました」

 一方、日本ではアプリケーション開発が軽視されていたという話をしていました。日本で開催されたシンポジウムで講演をしたときに、とにかく早くアプリケーション開発に着手すべきだと口を酸っぱくしてアドバイス失敗とは評価していないものの、このアプリケーション開発の遅れが響いたとしていました。

<当時、このプロジェクトは極めてベーシックなハードウエアとソフトウエアの開発に時間をかけ過ぎていて、アプリケーションの開発は手つかずになっていたのです。(中略)
 プロジェクトの実施期間である10年が経過した時点で、アプリケーションの開発は半分ほどしか進んでいませんでした。当時、あと5年欲しいと要望が出されましたが、政府はあと1年だけと言ってプロジェクトは終わりました。しかし、期間を延ばさなくて正しかったのでは、とも思います。あのプロジェクトは10年でできるものだったと思っていましたし、もし15年かけていたら、ほかのプロジェクトに予算が回らなかったでしょうから>


●ソフトウェアとセキュリティの重要性を理解できない日本

 前述したように、エドワード・ファイゲンバウム名誉教授はこのプロジェクトを失敗とは思っておらず、「私は第五世代コンピューターの開発プロジェクト自体、失敗だとは思っていません」としていました。ただし、以下のように開発が遅く、出来は良いものではなかったと評価しています。

<ただ、アプリケーションができていなかったため最終的なプロダクトに、パンチが欠けていました。(中略)これは恐らく失敗ではなく時間が足りなかっただけです。スケジューリングの失敗とも言えるかもしれません。
 失敗ではないという理由の1つに、並列コンピューターの分野では多大な成功を収めました。若手を育てることにも成功し、その時の若者が大企業に入ってその後、活躍しました。今、超並列コンピューターで日本が世界でもトップクラスにあるのは、こうした当時のプロジェクトの成果だと言えます>

 前半のところで書いたように、エドワード・ファイゲンバウム名誉教授は日本のソフト軽視が問題だとの指摘。これは他でもよく言われています。ただ、それだけでなく、最近ときどき問題が起きているセキュリティ意識の低さも懸念していました。防衛意識の低さも伝統のようですね。

<私は2004年から2006年の頃、日本の政府やしかるべき部門の関係者にサイバーセキュリティ問題の重要性について一生懸命、説得しました。しかし、全然関心を持ってもらえませんでした。今、黄色信号くらいには認識しているでしょうか。日本は世界第3位の経済大国にも関わらず、あまりにも無意識過ぎる状況は非常に問題だと考えています>


●日本はソフトウェアとセキュリティだけでなく、スピードも軽視?

2022/08/25追記:この投稿を読み直していて思ったのが、日本はソフトウェア軽視とセキュリティ軽視だけでなく、スピード軽視というのも問題ではないかということでした。前述の「570億円もの大金を投資して何も作れなかった国家プロジェクト」はスピード不足も問題であったように見えます。

 今回そう思ったのは、早さが大事…という話はうちで繰り返しやっていたため。シリコンバレーの名言「早く失敗しろ」スティーブ・ジョブズが成功例なんかはこのページに一番合う話でしょう。アップルのようなアメリカの成功ベンチャー企業はまさにスピードを重視しており、これによって日本企業と大きな差をつけてきました。

 こうしたスピード感では、新興国の企業は日本企業より良いように思えます。日本企業が中国・台湾に負けるのは当然…というのは本当か?は、そういう話でした。とにかく日本企業はやることなすこと遅いようです。ただ、こういうスピード感は大企業には無理で仕方ないとも思うかもしれません。

 ところが、新興企業ではなくてもこれを真似ようという動きはあり、もっと早くできるでしょ?営業と技術が対立しない大企業GE(ゼネラル・エレクトリック)がそういう話。この分野では古くて頭の硬そうな企業なのに、常にスピードアップを念頭においたプロセス改善をするなど、新興企業に学んでいました。素晴らしい姿勢ですね。


【本文中でリンクした投稿】
  ■日本企業が中国・台湾に負けるのは当然…というのは本当か?
  ■シリコンバレーの名言「早く失敗しろ」スティーブ・ジョブズが成功例
  ■もっと早くできるでしょ?営業と技術が対立しない大企業GE(ゼネラル・エレクトリック)

【関連投稿】
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