幸福度が高いのは同居世帯より夫婦世帯…という団塊世代に聞いたアンケート調査がありました。この調査結果は、意外なことに伝統的な家族が含まれるグループより、子供と別居する核家族と定義されるグループの方が高くなっているとも言えます。この調査は分類方法が異なっていたので、伝統的な家族よりも核家族の方が幸せと断言できるものではありません。ただ、核家族を含むような子供と別居する家族の幸福度が高いということは、はっきり言えそうでした。
2022/03/08追記:
●単身世帯、夫婦のみ世帯、二世代世帯、三世代世帯…一番不幸なのは? 【NEW】
●「孤独感」はむしろ人と付き合うからこそ多く生じる…という逆説 【NEW】
●幸せになるのに友達はいらない…別の3つの要素を満たすことで幸せに 【NEW】
●伝統的家族と核家族 子供同居世帯と夫婦世帯で幸福度が高いのは?
2013/2/16:
「えっ!」子どもとの同居は満足度が低い シニア世代の「つながり消費」の読み方(ダイヤモンド・オンライン 2013年1月30日 高橋寿夫 [三菱総合研究所事業予測情報センター主席研究員])という記事がありました。タイトルを見て核家族と関わる話かと思ったのですけど、読んでみると微妙に違っていました。
記事で見ていたのは、三菱総研が実施している3万人、2000設問という国内最大規模の生活者定点調査(mif [Market Intelligence & Forecast] )のデータ。団塊世代について聞いた調査であるようです。
夫婦のみ世帯と近居世帯、夫婦と子ども世帯の幸福度を見ると、近居世帯はそうでない世帯と比較して、幸福度が74%と最も高くなっていたというもの。一方、夫婦と子ども世帯の幸福度は58%となっており、近居世帯よりも低い結果となりました。図には3種類ありましたので、全部並べてみます。
1.夫婦のみ世帯(子供世帯が近居) 幸福度74%
2.夫婦のみ世帯 70%
3.夫婦と子供世帯 58%
子供世帯が近居である世帯とそうではない世帯の差はほとんどなく誤差範囲かもしれません。しかし、同居世帯ははっきりと悪くなっています。とにかく同居していない方がとにかく幸福度が高いという結果になりました。
「核家族は良くない、昔ながらの伝統的な家族を取り戻すべきだ」みたいなことを、特に右派の人たちなんかが言います。ただ、これはどちらかというと、伝統的な家族よりも核家族の方に良さそうなデータかもしれません。
●伝統的な家族は本当に幸せなのか?核家族の方が良い可能性も
以前、
核家族化で自殺が増えて、大家族で自殺者が少ない…本当か?をやったとき、むしろ自殺者が多かったのは家族の世帯構成数が大きい方のように見えました。家族が増えると煩わしいことも増えて、ストレスも増えてしまうのかもと当時は思ったんですよ。
今回の調査も伝統的な家族に悪そうなデータ。とはいえ、そう単純でもありません。核家族には以下の3パターン(
Wikipediaより)があり、上記の調査では、同居の子供が既婚かどうかを分けていないため。つまり、夫婦と子供世帯にも核家族が含まれていおり、きっちりと分けられていませんでした。
<核家族>
・夫婦とその未婚の子女
・夫婦のみ
・父親または母親とその未婚の子女
とりあえず、確実に幸福度が低かったのは、伝統的な家族と核家族が混在している「夫婦と子供世帯」。一方で確実に幸福度が高かった「夫婦のみ世帯(子供世帯が近居) 」「夫婦のみ世帯」は、どちらも核家族ですので、核家族の方が良さそうではあります。
●核家族かどうかより、同居している子のパラサイト化が不幸の原因?
ということで、核家族が良いとはっきり導ける調査結果ではありませんでした。しかも、先の幸福度の低さの原因は、既婚の子供ではなく、核家族の定義に含まれている未婚の子供の同居が問題のように読める内容でもありました。前述の通り、データ的には核家族が幸せというよりは、子供と同居しない方が幸せと考えた方が良さそうです。
<また、夫婦と子ども世帯では、女性の主なストレス源として、「子どもの行動・環境」をあげている人が29%(平均値19%)と多いことも特徴だ。
こうした要因として考えられることは、子どものパラサイト化である。60歳代の夫婦と子ども世帯のうち、「無職」、「就職しているが家にお金を入れていない」というパラサイトの子どもがいる比率が49%にものぼる(図9)。在学中・浪人中といったまだ子どもの身の振り方が明確になっていないケースも含めれば、50%を越えている>
「無職」が16%で「就職しているが家にお金を入れていない」が33%です。ただし、既婚夫婦が同居で「家にお金を入れていない」という可能性もあるんですどね。…と言うか、みんな就職するとお金を入れるもんなんですかね。私はそうしているなら関心だなぁと思いますけど、それが普通とは思っていませんでした。このお金を入れている比率を見ると45%だとのこと。偉い人多いですね。
●パラサイトの子どもをもつ家庭は消費が鈍る…景気にも影響する可能性
なお、この調査自体はビジネスのものですので、こんな分析が。
<パラサイトの子どもをもつ60歳代の場合、「遺産を残したい」と考えている人は17%(パラサイトでない人の比率11%)と多くなっており、本来ならば自身が使うことができたお金を使わずに、万一の時に子どもに遺しておきたい、という意向が強い。
そのため、こうしたパラサイト状況が今後も続く場合、この層は経済的要因のため消費を絞る可能性がある。(中略)シニアは年金受給者が多いため、景気の影響を受けにくいといわれているが、こうした状況になれば、その影響はシニア消費にまで及ぶことも懸念される。今後の留意点である>
世代間格差なんて問題ない 厚生労働白書が断言で厚生労働省が「今の若者の負担は重くない」と断言していたのは、こういったパラサイトのことも指しているのかもしれません。
●単身世帯、夫婦のみ世帯、二世代世帯、三世代世帯…一番不幸なのは?
2022/03/08追記:
友達ゼロはダメ人間?人気心理カウンセラー諸富祥彦教授に聞いてみたに追記した話なのですが、家族形態による幸福度の違いに関する調査もほんのちょっとだけあったのでこちらでも紹介。
だからソロキャンプがハヤる…慶大教授が断言する「孤独を楽しめる人」の3つの共通点(プレジデントオンライン 2022年2月26日 15:15)という記事の話です。
元ネタは前野 隆司・慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の書籍『
幸せな孤独 「幸福学博士」が教える「孤独」を幸せに変える方法で、この一部を再編集したものが本記事だとのこと。この記事最初であったのは、単身世帯、夫婦のみ世帯、二世代世帯、三世代世帯を対象に幸福度を比較した調査でした。
これで単身世帯の幸福度が高い…となるおもしろかったのですが、普通に単身世帯の幸福度がいちばん低いという結果になったそうです。やっぱりひとりはダメなんじゃん!という話。前野隆司教授も「独り身でいると、幸せになれる確率は低くなるとはいえそうです」としています。
記事自体は友達がいるかどうかというテーマの記事であるため、こちらの投稿のテーマ的に知りたい「夫婦のみ世帯、二世代世帯、三世代世帯」による幸福度の違いについては触れられていません。ただ、この友達の多さに関する話は家族の多さと幸福度との関係を考えるにもヒントになりそうなので、このままもう少し紹介していきます。
なお、前述の結果について私は、幸せになれないタイプが孤立化しやすい…という順番が逆の可能性も考えました。また、前野隆司教授も、この結果はあくまで相対的評価であって、「独りでいると幸せになれない」と結論づけするものでもないとフォロー。もともと書いていた友達ゼロの話がそうであるように、独りでも幸せな人がいるのも事実です。
幸福学の最新の研究でも、孤独=不幸と、単純に決められないことがわかってきたともいいます。一方で逆に、世の中には、友人が多くても孤独を感じ苦悩する人もいるとのこと。なので、単純な友達の多さでは幸福度は決まりません。それよりも友人数に無関係な幸せになれる方法を見つけようという考え方のようです。
●「孤独感」はむしろ人と付き合うからこそ多く生じる…という逆説
これを考えるため、前野隆司教授はまず、「ロンリネス」と「ソリチュード」という「2種類の孤独」があると指摘。「ロンリネス」は「孤独」ではなく「孤独感」です。客観的に見て孤独かどうかは無関係に「誰からも必要とされていない」などと、本人の感じ方による孤独によって生じるネガティブな感情のことをいいます。
こうした感情は「意見された」「無視された」「批判された」「理解してもらえなかった」「仲良くしてもらえなかった」などの場面で生じることが多いとも指摘。つまり、物理的な孤独(独り身)より、他者との関係性から生まれる孤独感のほうが多いのです。むしろ人付き合いがあるからこそ孤独になるんですね。これは家族が多くても幸せになれないパターンがあることを示唆しています。
一方、もう一つの孤独「ソリチュード」は独りの状態をむしろ前向きにとらえ、精神的に自立し、自分だけの時間を過ごすことに喜びと楽しみを感じている状態を指すとのこと。これも当然本人の感じ方の問題です。「孤高」「孤立」と訳されるものの、前野隆司教授は「幸せな孤独」と表現することを提唱していました。
●幸せになるのに友達はいらない…別の3つの要素を満たすことで幸せに
この「幸せな孤独」は多様性があります。また、幸せにはいろいろな幸せがあり、必ずしも「幸せな孤独」である必要はなく、「誰かと一緒に幸せ」でももちろんOKなんです。ただ、前野隆司教授は、幸せは多様でも、基本メカニズムは単純で共通点があり、そのメカニズムを理解することが重要だと考えていました。
幸いなことに、幸福学の最新研究では、孤独な人が幸せになるためにメカニズムが明らかになっているとのことです。この幸せのメカニズムでのポイントは3つ。1「うけいれる」(自己受容)2「ほめる」(自尊心)3「らくになる」(楽観性)の3つの心の要素を満たすことが重要だとされていました。
これは前野隆司教授の研究室で、20~79歳までの男女1000人に対して実施したアンケート調査で判明したもの。3つの要素が「幸せな孤独」と正の相関があった、つまり、関連性があった…とわかったといいます。この「うけいれる」「ほめる」「らくになる」は、子供の育て方なんかとも共通する話だな…と感じました。
【本文中でリンクした投稿】
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