2021/05/28追記:
●暴行繰り返した力士「体罰以外の良い方法を教わってない」と逆に批判
2022/01/21まとめ:
●産経新聞、体罰賛成論で岩崎夏海を採用「体罰禁止では問題は解決しない」 【NEW】
●体罰に頼るスポーツ指導で教師が反論「体罰なしでは対抗できない」
2013/2/20:
内部告発者が匿名なのはおかしい、「痛み」も伝わらない 柔道五輪代表暴力問題で大手新聞社で読んだスレでは、産経新聞は「体罰も賛成だよ」って話がありました。実際、それっぽい記事があるのを発見。
(18)「ターイバツ、ターイバツ」の連呼が響く教室 苦悩する教育現場 2013.2.18 11:00 産経新聞という記事です。
<れまで紹介した意見では、体罰に頼るスポーツ指導について「教育者としての敗北だ」という指摘もあった。これに対し、岡山市の公立中学校の男性教員(30)は、生活指導上の体験をもとに「『体罰は教育者として敗北』というのには、違和感を覚えています」とつづっていた。
「廊下を自転車で暴走する、エアガンを友達に向けて撃つ、力の弱い女性教師を押し倒す…。最近私が遭遇した学校現場の光景です。この現場を見たとき、生徒に切々と訴えるだけでその行為を辞めさせられるでしょうか」>
説得力を感じるかもしれませんが、体罰が有効と判断するのは早とちりです。
体罰のある学校の生徒の行動が悪いから体罰が必要は自己矛盾 桜宮高校の生徒が橋下徹市長に殺害予告や部落民ツイートの桜宮高校では体罰が横行していましたが、それでも問題行動を止めることができておらず、体罰の効果があまりないとわかる事例でした。
申し訳ないですけど「廊下を自転車で暴走する、エアガンを友達に向けて撃つ、力の弱い女性教師を押し倒す」というレベルの生徒たちは、体罰を行ったとしてもそう簡単に改善しないでしょう。スポーツにおける体罰の話とは離れちゃいましたけどね。
●新聞社の体罰賛成論「教師が怒っただけで体罰と言われるので生活指導できない」
ただ、この産経新聞記事でもっとすごい話だなと思ったのは、次の話です。静岡県の高校教員の男性(26)は、大阪市立桜宮高校の問題が発覚して以降、ささいなことでも生徒たちが「体罰だ、体罰だ」と口を出し、きちんとした指導が行き届かない状況があると主張。こうした訴えに産経新聞も好意的です。
<同様の指摘はほかにもあって、先生がちょっと怒っただけでも「ターイバツ、ターイバツ」と連呼するクラスがあるという話も。戸惑いながら生活指導にあたっている先生たちの様子が浮かぶ>
小学生レベルの反応する高校生ですから相当酷いところだと思いますけど、「ちょっと怒っただけ」が体罰なわけがありません。この先生は怒ることと体罰の区別がつけられないのでしょうか。高校生がアホなのはわかりますし、たぶん説明しても理解できないレベルなんでしょうけど、先生がそれに納得していちゃいけないでしょう。
(2021/04/26追記:ただし、体罰だけでなく、「叱る」についても教育効果があまり高くないことが研究でわかっています。体罰や叱るは、力で押さえつけることでその場では解決し、短期的にも効果的なように見えるものの、将来的な行動を改善する効果としては優れていないようです)
●法律上は明確に禁止でやむを得ない場合も明記…ただそれでも反論
なお、産経新聞は以下のように、体罰とみなされない事例があることも書いていました。ただ、それでも基準が曖昧でわからないとしています。
<学校教育法上「体罰はいかなる場合も行ってはならない」のが原則だが、文部科学省が平成19年2月に都道府県教委などへ出した通知では、教員への暴力に対する防衛や、ほかの生徒に被害を及ぼす暴力を制止するなど「目前の危険を回避するためにやむを得ずした有形力の行使」は、体罰に当たらないとしている。
しかし、どこまでが認められる有形力で、どこからが体罰なのか。実際の教育現場では判断が難しい場面も少なくないという>
どのようなケースに問題があるか?という例として良さそうなちょうど記事が出ていました。
児童に侮辱的なあだ名、ほうきはさみ正座 名古屋の教員 2013年2月19日13時38分 朝日新聞という記事です。
<名古屋市立小学校の男性臨時教員(44)が、児童にほうきの柄をひざの裏にはさんで正座させる体罰をしたり、侮辱的なあだ名で呼んだりしていたことが19日、分かった。市教委はこの教員を担任からはずし、処分を検討している。教員は「きちんとさせたいという気持ちでやった」と認めているという。(中略)
昨年11月、保護者から学校側に「子どもが、頬に爪の跡をつけて帰ってきた」との連絡があり、学校が教員を指導。教員は一時的に体罰などをやめたが、1月下旬、この保護者から再び「侮辱的なあだ名で呼んでいる」と指摘があり、別の保護者からも「うつぶせにされた子どもが足で踏まれている」などと連絡が入った>
これは事後的に罰を与えていますので、「有形力の行使」に当たりません。それほど難しくないと思うのですけどね。逆に、先の「エアガンを友達に向けて撃つ、力の弱い女性教師を押し倒す」の場合は「目前の危険」と判断できるケース。「判断が難しい場面」とは思えません。また、「目前の危険」の論理では、スポーツの体罰の方は全く擁護できないことも明らかであり、それほど難しいようには思えません。
以前にも書いているように、私自身は体罰が社会的な許容を受けている以上完全にダメと決めつけてしまうのではなく、それこそ明確な線引きをしましょうという考え方で、急進的な体罰反対者ではありません。ただ、体罰賛成者の意見は穴だらけのものが多く、今回の産経新聞の記事も酷いレベルです。納得できる実例がなく、苦しまぎれの擁護論という印象を受けました。
(2021/04/26追記:「急進的な体罰反対者ではありません」と書いていたものの、体罰の効果に科学的根拠は全くないようで、なおかつ禁止に対する社会的な理解も進んできており、現在では既に体罰禁止論は急進的ではなさそうな感じ。家庭内で体罰しつけによる虐待死が継続的に報じられているのも効いているのかもしれません)
●暴行繰り返した力士「体罰以外の良い方法を教わってない」と逆に批判
2021/05/28:どこに書こうか迷いましたが、暴行を繰り返した相撲の貴ノ富士(貴公俊)の話をここに。この貴ノ富士の暴行に関して「師匠が厳しく指導しないから」といった批判が出ていたのですが、これ自体が体罰的な発想で、以降の話を見てわかるように、厳しくされた貴ノ富士がこうなった…という現実があります。
Wikipediaによると、貴ノ富士はまず貴公俊時代に、付き人を暴行。このときは貴乃花部屋時代であり、
貴乃花・貴ノ岩・貴公俊も暴行か?貴斗志裁判の証言・エアガン乱射事件などで書いたように、貴乃花親方自身も暴力を奮ったという証言が出ているなど、貴乃花部屋自体で暴力が蔓延していた可能性があります。
貴乃花親方が引退し、貴公俊は千賀ノ浦部屋へ移籍。暴行事件があったせいか、その後しばらくして、貴ノ富士 三造に改名しています。この四股名は、入門時の師匠の貴乃花が、玉ノ富士と北の富士に肖って命名したとのこと。ただ、本名の「剛」の方も変えているので、「一
富士二鷹(
貴)
三茄子」ともひっかけたんだと思われます。これはおもしろいセンスでしたね。
ところが、名前を変えただけで心も変わるといったことは起きませんでした。付け人の序二段力士の頭部を殴る暴行を加えます。協会コンプライアンス委員会の調査では、他の暴行があったことが判明した他、「障がい者」呼ばわりしたり、差別的なあだ名をつけたり、日常的に差別発言を行っていたことが判明します。
また、貴ノ富士だけでなく双子の貴源治も、新弟子の誰かが失敗すると連帯責任として4人全員に罰を与えるという、やはり体罰の一種である行為を強要していたことが判明。さらに、他の力士がいる前で1人に片腕を頭上に挙げる格好をさせて「自分は頭が悪いです」と言うよう命じ、その様子をスマートフォンで録画する動作をしていたともいいます。
ところで、ここに追記した理由は、貴ノ富士の反論内容でした。まず、「中卒で何も分からない中で、生半可な優しさじゃダメだと思ってた。そういうふうに育ててきてもらった。そういう気持ちを持ってもらいたいと指導してきた」と弁明。貴乃花部屋でもやはり暴行や暴言が蔓延していたことを思わせますし、「厳しくすりゃいい」という思想が出ています。他を犠牲にして一つのこと(この場合は相撲)に専念することが本当に良いことなのか?という話でもありますね。
さらに、「(相撲協会の研修内容が協会員に対して)正直伝わっていない」「手を出さない代わりにどういうふうに指導しなければいけないのか教えてもらっていない」と協会をむしろ非難。単なる責任転嫁なのでしょうが、体罰に効果があると盲信し、「体罰以外の良い方法がないじゃない?」というのは、体罰擁護派の主張と重なる部分を感じました。ここらへんがこのページへの追記とした理由です。
●産経新聞、体罰賛成論で岩崎夏海を採用「良い体罰と悪い体罰がある」
2013/2/21:<産経新聞、体罰賛成論で岩崎夏海を採用「体罰禁止では問題は解決しない」>というタイトルで別のところで書いていた話をこちらにまとめ(2022/01/21)。以前、産経新聞は体罰擁護の先頭を走っているといった書き方をしている人を紹介したことがありました。前半の話がそういう感じですし、今回のものも体罰賛成論っぽいものです。
ただ、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の作者で、意味不明な発言が多いとネット上で評判の悪い岩崎夏海さんを採用しています。よりによって岩崎夏海さん体罰賛成キャンペーンで使うとは…と思いました。体罰賛成者に良い人材がいないのかもしれません。
--岩崎さんは自身の有料メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」で「体罰は悪くない」とつづっている
「自分が子供の頃は親や教師、先輩からも殴られた。小学校担任からはルールを破ったときにたたかれ、深く反省した。逆に高校時代、みせしめ的にたたかれたときは反発した。体罰には良い体罰と悪い体罰がある。だから体罰を全否定すると、もっとひどいひずみを生む。殴られたことがなければ、その痛さや不条理さ、殴られない、ありがたみも分からない」
(<【“体罰”こう思う】全否定の弊害に目を向けろ 作家・岩崎夏海さん>(2013.1.29 07:35 産経新聞 村島有紀)より)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130129/edc13012907390000-n1.htm●「体罰禁止では問題は解決しない」と言っていたのに最後は…
岩崎夏海さんは今回問題になった桜宮高校の件は悪い体罰で、良い体罰は別にあるということのようです。過激じゃない方の体罰賛成論ですね。桜宮高校の件は別として…ということで、以下体罰の正当性を語っています。
--学校の再生のためには何が必要か
「全ての責任を体罰に帰して、単純化するのは問題の先送りだ。(自殺した)生徒は殴られた痛みより、心の痛みが大きかったはず。罪の軽重はあるにしても、顧問、部員、学校、教育委員会、保護者、社会…。もっと複合的に重層的に考え続けなければ」
--体罰禁止では問題は解決しない?
「反発する人もいるだろうが、体罰も暴力も、もともと動物である人間に備わった一部。うまく折り合いをつける術(すべ)を学んだ方がいい。暴力を知らずに育つのは、雨降りの日を知らずに育つようなもの。何事もバランスが大事だ。全否定して行き過ぎては、もっと大きな弊害が生まれる」
じゃあ、スポーツでの体罰も必要だという主張なんだろうなと思ったんですよ。ところが、「『ゆとり教育』の揺り戻しで、数年前から、以前より体罰が許容される雰囲気が出てきたと感じていた。しかし、
『しごかれるから練習する』という生徒は社会の中で通用しない」とした他、以下のようにおっしゃっていました。
「変化が激しいこれからの社会で何よりも大切なのは学習力。頭が良くなければ、スポーツ選手の場合、早ければ体力が落ちた20代後半ではじき出される。平均寿命まで生き抜くためには、暗記ではなく、誰かに言われたからでもなく、自分で学習する能力、知恵を身に付けなければ。新しい技術を身に付ける力や勉強の仕方を教える文武両道の教育が必要だ」
●自殺発生で体罰肯定キャンペーンの産経新聞、右派読者に配慮?
あれ、結局、スポーツの体罰はダメってことなの? 最後の最後に来て、はてなマークが頭の中にいっぱい……戸惑ってしまいました。よくわかりませんね。あまりにもわけがわからないので、何て書いていいか困ってはてなブックマークの感想を見てみると、とにかく評判悪いです。私と似たような感想も見られました。
mag-x
肯定論者の人材不足なんですね。分かります。 2013/01/29
duckt
産経もこんなの連れてくるとこ見ると、よっぽど他にいなかったと見える。 2013/01/29
death6coin
もしも一日40発殴られてドランカーになったら 2013/01/29
ohira-y
ドラッカーは体罰肯定するの?もしドラでも描かれていないだけで見せしめの体罰はマネジメントのために行われていたの? 2013/01/29
enemyoffreedom
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントではなく戸塚宏の脳幹論を読んだら 2013/01/29
era1978
「ギリギリのラインを攻めたつもりがあっさり踏み越えてる」という感じが非常にハックルさん(引用者注:岩崎夏海さんのあだな?)らしいなと思いました 2013/01/29
yasugoro_2012
「殴られたことがなければ、その痛さや不条理さ、殴られない、ありがたみも分からない」←体罰を肯定する人は大抵こういうこと言うけど、これは嘘っぱちだと思う。 2013/01/29
ncc1701
産経は完全に体罰肯定キャンペーンに足を踏み出したな。読者層に阿った(引用者注:おもねった。「気に入られようとする、媚びへつらう」という意味)か。 2013/01/29
【本文中でリンクした投稿】
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