若者などの農業離れの話をまとめ。最初は、今の農業政策が日本の農業をダメにしているという、伊藤元重・東大教授の話。その他、<若者が農業をしない理由 「稼げない」などの「5K」の問題>、<精神論・根性論でイメージ重視、非科学的な農家が真の問題か?>、<成功例の共通点は何?西洋では漁業や林業が若者に人気の国も>などをまとめています。
2023/01/07追記:
●「農家が辛い」が事実なら農業を他人に勧めるべきではないのでは? 【NEW】
●「農家が辛い」が事実なら農業を他人に勧めるべきではないのでは?
2023/01/07追記:別のところで、政府が「就業経験に乏しいニートや引きこもりを農家に」という話を書いていました。同じページでは、「農家が辛い」が美談となっている話も追記。で、<「農家が辛い」が事実なら農業を他人に勧めるべきではないのでは?>と書いていた話を修正しながらこちらにも書いておきます。
DASH村で農家顔負けの活躍をしていたTOKIO山口達也さんが、「DASH村とか、農業とか面倒くさい。正直だりぃよ」と愚痴を吐いていたと報じられていました。これは記事の狙いとは逆に「山口達也完全に農家ですわ。農業って完全に機械化できない部分があるから愚痴る気持ちは痛いほどわかる」などとして美談になっています。
ただ、ここで「そもそも多くの仕事が辛いもの」などと言うのならわかるんですけど、「農家はマジ辛い」をあまり強調してしまうと、また農家のなり手不足につながるので心配。事実なら仕方ないんですけどね。ただ、そうした場合、農家が不人気なのは当然ということで、むしろそんな仕事をやらせようというのが無茶だということに。勧めてはいけない仕事だということになります。
また、「農業とか面倒くさい。正直だりぃよ」が事実であり、農家が辛いものであるというのであれば、政府がニートにそのめちゃくちゃきつい農家をやらせようってひどくない?って話にもなるんですよね。そして、こちらの農業の若者離れのページで書いていたように、農家側の人が実際農業では稼げないことを認めていました。
となると、やはり農業は他人に勧めてはいけない辛い仕事だというのが現実なのでしょう。ただ、私は農業を叩きたいわけではなく、だったら改善すべき!という前向きな意見です。ただ、前述のの農家側の人が、稼げるようにする労働生産性向上をむしろ敵視して精神論重視。根本的に方向性がおかしいと思います。
●今の農政が日本の農業をダメにする…は本当なのか?
2013/2/23:日本の農業が悪いのは政治の問題じゃなくて農家自身や消費者のせい…という意見もあるんでしょうけど、今日は政治というのがテーマ。
「TPP」が日本の農業をダメにするのではない!「いまの農政」こそが日本の農業をダメにする (2012年11月19日 伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授、総合研究開発機構(NIRA)理事長] ダイヤモンド・オンライン)という記事の話なのです。
ただ、私は、記事のタイトルになっている"「いまの農政」こそが日本の農業をダメにする "というのに、違和感を覚えます。
だって、既に日本の農業は大失敗していますからね。ですから、政治が日本の農業を「ダメにする」ではなく、「ダメにした」という過去形なんじゃないかと思います。既にダメにしてしまった上で、未来をさらに暗いものにすると考えた方が実情に合っているでしょう。これから失敗するよ…じゃなくて、もうさんざんに失敗しており、マイナスの位置からのスタートなのです。
●政府は補助金バラマキ…土木事業ばかりで若者は農業離れ
伊藤元重東大教授は、政府は必死に補助金などで支援をして、農業を支えようとしているとしていました。ただ、その補助金はバラマキと言われてもおかしくないようなもの。そして、本当に真剣に農業をやろうとしている相手に届いているのか怪しいものでもあるそうです。
また、農協に支援するのと、農業を支援するのは同じではないことも指摘。農協だけが栄えて農業が衰退するということもありえるとしていました。
政治が日本の農業を「ダメにする」ではなく、「ダメにした」んじゃないか?と書いたのですけど、記事でも実際に過去の失敗例が出ていました。
<かつてウルグアイ・ラウンドでコメの市場開放をしたとき、ウルグアイ・ラウンド対策費という名目で莫大なお金が農業支援にまわされた。しかし結果を見ると、農道空港を作るといったことに象徴されるように、農業支援にはほとんど役立たない土木事業などに使われてしまった>
そして、"高い関税など"によって"日本の農産物は世界でも有数の値段の高さ"を支えているにも関わらず、"農業だけで食べていけない"兼業農家が多くなっていて、「失敗した」という見方になっています。
また、次の話も失敗の証拠と言えそうなもの。伊藤元重東大教授は、農家の平均年齢は非常に高くなっていることを指摘。そして、こうした農家の高齢化は、多くの農家に後継者がいないことを意味しています。農業で食べていけないからこうなったんでしょうね。
実を言うと、海外の農家も補助金漬けで、農業とは基本的に儲からないものだという主張も存在しているんですけど、農家の平均年齢は海外だとどうなっているんでしょうね?
●若者が農業をしない理由 「稼げない」などの「5K」の問題
2019/12/20:短かったので別の話を…と思って検索。そもそもなぜ若者の農業離れが起きているのか?というのが、わかりそうな
「キツい」「稼げない」「結婚できない」…5K問題で農漁業の現場から人が消える日 - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」(2016.10.11)という記事がありました。
「5K」というのは、「キツい」「汚い」「かっこわるい」「稼げない」「結婚できない」の頭文字を取った俗語で、特に若者に不人気な仕事のことを指しているとのこと。農業に限らず、漁業・林業を含めた一次産業がまさにこの「5K」ではないか?としていました。そりゃ若者の農業離れが起きて当然。無理もないことです。
記事では、一方で「5Kは単なるイメージ」と主張している部分もあります。実際には5Kじゃないというのであれば救いがあったのですけど、実はその前に矛盾することを言っていたんですよ。若者たちが食えなくてやめていくことが多いとも言っていたのが、高齢化の最大の原因だと言っていたのです。
「若者たちが農業では食えなくてやめていくことが多い」のでしたら、「キツい」「汚い」「かっこわるい」「稼げない」「結婚できない」のうち、少なくとも「稼げない」は事実である模様。実際に農業をする若者が減っているのも事実なのですから、こっちの方に説得力があります。
●精神論・根性論でイメージ重視、非科学的な農家が真の問題か?
このように農業では稼げないのでしたらむしろ辞めるべきであり、農業をしない若者は悪くない、農業の方を稼げるものに変えよう!という話になると私は最初思って読んでいました。このような状態の日本の農業に就くように、若者を勧めるのはブラックな考え方で精神論・根性論でしょう。考えられません。
しかし、記事では、「大事な仕事なのにおろそかにされている」という精神論的な流れ。話をうかがっていた人は、「西洋的な価値観に基づいて、近代化を突き詰めてきた結果でしょう。どんどん自然から離れていって、気付いたら一次産業の仕事を下に見るようになってしまった」と断言していました。
また、このままだとロボットを使わなくちゃいけなくなる…と悪いことのように言っているのも根性論くさいですね。自動化できることを人の手でわざわざやる意味がわかりません。稼ぐためにもむしろ逆に自動化を勧めるべきでしょう。実際に自動化を進める努力している農家の方も、日本にはちゃんといらっしゃいます。
食材の背景にある物語を消費者に伝えることで、この共感の輪を広げて、生産者の社会的地位を上げたいともしていました。これ自体は宣伝手法としては効果的なものではあるものの、「稼げない」という本質的な問題を置き去りのため賛成できず。稼げないままイメージで人を集めるというのは、騙してブラック企業に誘っている感じ。やりがい搾取タイプですね。
●成功例の共通点は何?西洋では漁業や林業が若者に人気の国も
最初の投稿の終わり部分では、「農家の平均年齢は海外だとどうなっているんでしょうね?」と書いていました。農家については知らなかったのでそう書いたのですけど、今回セットにされていた漁業や林業の場合、なんと西洋の先進国では高年収のために若者の憧れの職業となっているところがあるんです。海外の先進国で成功して日本が失敗しているというのは、日本に問題があることを感じさせます。
なので、日本の若者が農家にならないのは、「西洋的な価値観に基づいて、近代化を突き詰めてきた結果でしょう」というさっきの主張も怪しいです。この理論なら西洋は日本以上に一次産業のなり手がいないはずですが、実際には人気職業になっている国もあるんですからね。
また、ここの後半部分の「近代化を突き詰めてきた結果」やロボット導入という、労働生産性を高める技術導入に対するネガティブな見方も、悪いポイントになっていそうです。というのも、海外の漁業や林業の成功例の場合、最先端の科学技術やハイテク機器を活かして高学歴系の技術者が仕事に就いているという共通点があったため。日本の非科学的な方向性と全く逆であり、日本の考え方に問題を感じました。
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