PM2.5の大気汚染問題に関して。
PM2.5の正体 健康被害の懸念大も“謎”多し
2013/2/21 7:00 日経新聞 Tech-On! 高橋史忠
そもそも「PM2.5」とは何か。これは決して、新しい言葉ではない。「PM」は英語で「Particulate Matter」の略。日本語では「粒子状物質」と呼ぶ。μm(ミクロン、マイクロメートル=100万分の1メートル)単位の固体や液体の微粒子のことで、主に汚染の原因物質として大気中に浮遊する粒子状の物質を指す言葉だ。
単一の化学物質ではなく、炭素やNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)、金属などを主な成分とする多様な物質が混合している。工場の排煙やディーゼル車の排気ガスなどの人間による経済活動に加え、火山などの自然活動も粒子状物質の発生源だ。
PMは、主に物質の粒径によっていくつかの種類に分類される。その一つが「PM2.5」である。名称に含まれる「2.5」は2.5μmのこと。PM2.5は、おおむね2.5μm以下の粒径の微粒子を指す。日本の呼び名では「微小粒子状物質」と表現することが多い。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2000I_Q3A220C1000000 PM2.5の理解としてはこんなもので良いと思いますけど、日経新聞ではこの後もうちょっと細かいこと書いています。
ただ、ここから面倒になるので、以下の部分は難しいと思ったら飛ばして次へ行ってください。
ただし、すべての粒子の粒径が2.5μm以下かと言えば、そうではない。粒子状物質の規制で使う「粒径」は、物理的にものさしで測定した数値ではないからだ。
粒径は、統計的な分布の中で定められる。一般に粒子状物質の大きさや形状は不規則であるため、空気の流れの中での大きさを表す「空気動力学径」と呼ぶ単位を用いる。測定の際に粒子を捕集する効率を基に、粒径が定義されて分類名がつく。
例えば、日本の大気汚染基準で使われる「SPM(Suspended Particulate Matter)」は「浮遊粒子状物質」と呼ばれ、粒径が10μm以下のものを指す。この場合、粒径が10μmを超える粒子を100%除外したものをSPMと定義付けている。
「粒径10μm以下」という微粒子の定義は他にもある。「PM10」と呼ばれるものだ。これは、測定の際に粒径が10μm以下の粒子を捕集する効率が50%となる粒子と定義されている。つまり、統計的な粒径の分布としては、PM10にはSPMよりも大きい10μmを超える粒径の粒子が含まれる。
PM2.5の定義は、このPM10と考え方が同じだ。粒径2.5μmの微粒子を捕集する効率が50%となるものをPM2.5と呼ぶのだ。
大事なのはラストですね。PM2.5とは「粒径2.5μmの微粒子を捕集する効率が50%となるもの」です。
先に「おおむね2.5μm以下の粒径の微粒子を指す」という言い方をしていたのは、このためでしょう。
続いて、2.5マイクロメートルのイメージです。
2.5μmという粒径は、どの程度か。よく比較されているのは、人間の髪の毛やスギ花粉だ。スギ花粉は30μm前後、髪の毛の直径は70μmほど。これらに比べるとPM2.5は、1/20~1/10程度のサイズである。たばこの煙の粒子は、サイズの単位がPM2.5よりもひと桁下がって数百nm(ナノメートル)程度。ウィルスは数十~数百nm程度の大きさだ。
ミクロンオーダー、ナノ(メートル)オーダーなんて言い方をしますけど、前者はミクロンオーダーで、後者はナノオーダー。ちょっと大きさのレベルが違います。
とはいっても、2.5ナノメートルというのは十二分に小さいです。これが悪さをしでかします。
PM2.5は粒径が小さいため、呼吸とともに肺などの呼吸器の奥に入り込みやすい。それが健康被害を引き起こす可能性を指摘される理由だ。米国ではPM10の基準を満たしている地域でも健康への悪影響が見られることから、1997年にPM2.5の環境基準を設けた。PM10の規制値を厳しくするだけでは、より粒径の小さな粒子には対応できないと判断したからだ。
日本で定められたPM2.5の環境基準は、意外に新しい。基準の設定は、2009年のことである。「1年の平均値が15μg/m3以下であり、かつ1日の平均値が35μg/m3以下であること」と定めている。2006年に改定した米国基準と同等の規制値だ。
ただ、基準策定前の2000年から国や自治体によるPM2.5の測定は始まっており、これまではほぼ基準値を下回る減少傾向にあった。
大気汚染PM2.5問題で中国メディア「冬は北風だから、日本には影響ない。濡れ衣だ」では、日本国内に原因があると言い張っていましたけど、日本はとっくの昔に過ぎ去った時代の大気汚染です。
それから、このPM2.5の原因です。記事では以下のようにありました。
中国国内でのPM2.5の発生源としては、主にトラックなどのディーゼル車の排気ガスや、石炭を用いた暖房システムからの排煙、汚染物質を多く含んだ軽油の利用などが取り沙汰されている。
実際には、PM2.5を含む粒子状物質は、エンジンなどの排気中に最初から含まれる粒子だけが発生源ではない。排気された時にはNOxやSOxなどの気体だが、大気中での光化学反応などで粒子化する「2次生成粒子」がある。
「2次生成粒子は大気中の粒子状物質の6割程度を占める」との観測結果があるものの、その発生メカニズムについては未解明の部分も多い。これが、発生源の特定や解決に向けた対策を難しくしている側面がある。
この中の「石炭を用いた暖房システムからの排煙」については、現地の日本人が書いている記事がありました。
2013年2月20日 ザイ・オンライン 荒木尊史
北京の大気汚染の原因を突き詰めた!?緊急レポート! 北京の一般家庭の暖房事情
どのニュースを見ても取り扱いが非常に小さいが、(私が考える)重大な原因がある。
答えは、石炭を主原料とした燃料だ。中国語で『蜂窝煤(フォンウォメイ)』と呼ぶ。ハチの巣に似ているので、こんな名前が付いている。日本語に訳するとしたら、「ハチの巣炭」とでもなるだろうか。価格は1元前後。これが冬になると、想像もできない量、郊外で燃やされることになるのだ。
私はこ蜂窝煤や、もっと大型ボイラー用の块煤(クワィメイ)が大気汚染の主犯格ではないかと睨んでいる。(中略)
都市部の巨大ボイラーは、石炭燃料から石油、天然ガスへ切換えが毎年進んでいる。しかし、郊外の大部分の家にはこのシステムは普及していない。
この問題の根が深いのは、粗悪な石炭燃料から天然ガスなど他の燃料への転換が容易でないことだ。石炭燃料に頼っているのは、お金のない貧困家庭や郊外に暮らす人々、小規模工場だ。政府が販売禁止にでもしようものなら、代替品がない以上は暴動になる。かといって、平屋の多い郊外にまでボイラーシステムを貼りめぐらせるのも非現実的だ。
要はどうにもならないのだ。
http://diamond.jp/articles/-/32187 私は先にこちらの記事を読んでいたのですが、一個人の感覚だけだと何とも言いようがないなと紹介しないつもりでした。
ただ、こうやって日経新聞にも出てているので、犯人の一つとして推測されているようです。
なお、上記のような理由により、郊外でも中心部と変わらない大気汚染のひどさだそうです。
私の母をはじめとして、多くの日本人は、もっとも空気が悪いのは北京の中心部で、郊外はまだマシだと思っている。これが日本の常識だろうが、事実はまったく違う。都市中心部の大気汚染はたしかにひどいが、郊外もひどい。要は、地域全体がどこまで行っても大気汚染なのだ。
「大工場の影響もあるが」と作者は断っていましたが、先の引用部の通りこちらが主犯だと考えているようです。また、北京だけじゃないって話も聞いたことがあります。
なお、日経新聞では以下のようにありました。
中国では、日本での騒ぎとは比較できないほど、PM2.5をはじめとする大気汚染が深刻な社会問題になっている。「空気」という身体に影響する身近な話題だけに、消費者の関心は高い。
しかし、ザイ・オンラインの作者は、
北京に暮らす人々からすれば、空気が悪いのは今に始まったことではない。「90年代の冬もこんなものだった」というあきらめにも似た声を、北京に長く住むスタッフたちから聞く。
としており、温度差があるように見えます。
確かに大気汚染問題は昔から言われており、海外の注目が集まった北京オリンピック前には盛んに報道されていました。
(あのときは確かキャンペーン(交通規制も?)をやって改善したんだと思ったんですけど、一時的なものだったんですかね?……ああ、検索したら交通規制の他に工場の操業停止をしていました。恒常的な対策ではありませんね)
とはいえ、「そうはいっても、今年1月の大気汚染は特別にひどかった」としており、日経新聞でも日本製の空気清浄機がバク売れという話が出ていました。
やっぱり今なお中国では大気汚染が悪化していると考えた方が良さそうです。
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