高知県立大学の話をまとめ。<高知県立大学教授が論文盗用?本人は反論否定し訴訟へ>、<引用を誤解?高知県立大学の説明や理解もおかしい可能性>、<関係者?あちこちのページで擁護コメントを書くネット工作の指摘>、<絶版本や貴重な資料含む図書館蔵書4万冊を配慮なく処分>などをまとめています。
2023/06/17追記:
●関係者?あちこちのページで擁護コメントを書くネット工作の指摘
2023/10/16追記:
●絶版本や貴重な資料含む図書館蔵書4万冊を配慮なく処分 【NEW】
●高知県立大学教授が論文盗用?本人は反論否定し訴訟へ
2023/05/13:<県立大教授「論文盗用」停職3か月の懲戒処分 教授は盗用否定>(05月12日 19時22分 NHK)というニュースが出ていました。この記事タイトルに「教授は盗用否定」とあるように、教授は盗用を認めておらず反論し訴訟を示唆。盗用したと断定しづらいところがあります。
<停職3か月の処分を受けたのは高知県立大学の文化学部の教授です。
高知県立大学によりますと、この教授は去年3月に発表した高知市の方言に関する論文にほかの研究者の論文を引用した際に、どの部分を引用したのか適切に示さずに記載したほか、本人の了解を得ずに引用したことなどが確認されたということです(中略)
大学側は学内のホームページからこの論文を取り下げたほか、研究にかかった経費を返還するよう求めています>
上記のような大学の見解に対し、この教授は、ほかの論文からの盗用はしていないと主張。処分は不当だとして近く、訴訟を起こすことにしているとのこと。これを読む限り「盗用そのものをしていない」という主張のような感じです。なお、この後補足するように、そもそも記事であった<本人の了解を得ずに引用>は変な説明。これにより、わかりづらくなっています。
●引用を誤解?高知県立大学の説明や理解もおかしい可能性
まず、<本人の了解を得ずに引用>の前にあった<ほかの研究者の論文を引用した際に、どの部分を引用したのか適切に示さずに記載した>という説明。これは論文の基本的なルールであり、このルールを守らなかった場合は「盗用」とみなされます。記事でのこの説明部分は妥当です。
一方、その後の<本人の了解を得ずに引用>は変な説明。というのも、引用というのは、基本的には無断で行っても構わないためです。前述した「どの部分を引用したのか適切に示した上で、ほかの研究者の論文を明示する」というルールさえ守っていれば、無断で記載しても構わないことになっています。
変だなと思ったので別記事を検索。
論文「盗用」認定の男性教授を停職3か月の懲戒処分に 高知県立大学(KUTVニュース)を見てみると、以下のような内容で最初の記事と同じような説明でした。このため、記者が誤解して書いたのではなく、高知県立大学自体が前述のような変な説明をしたのかもしれません。
<大学によりますと男性教授は去年3月、言語学に関する論文を公表しました。7月になり「盗用の疑いがある」との文書が匿名で大学に届き調査したところ、論文には、すでにほかの研究者が書いた論文の文章が引用の適切な明示がないまま複数確認されただけでなく、研究者の了解も得られていないままだったということです>
ということで、高知県立大学の説明や理解もおかしい可能性は感じました。ただし、無断うんぬんを無視したとしても、前述の通り、<ほかの研究者の論文を引用した際に、どの部分を引用したのか適切に示さずに記載>の時点で「盗用」とみなされます。報道の情報を見る限り、教授の反論は苦しいと感じました。
●教授なのに引用のやり方を知らなかったの?「適切な引用」と反論
2023/05/19追記:投稿がちょっと短かったので別記事も探してみました。見つけたのは、<論文「盗用」認定の男性教授を停職3か月の懲戒処分に 高知県立大学>(23/5/11(木) 18:59配信 テレビ高知)という記事。結局、他と同じ情報しかない…ということもよくあるのですが、今回は幸い他でなかった話がありました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/41b4522964b814b0739ffb94c1c327450d540d45
この記事によると、<男性教授は「適切に引用している」と話している>とのこと。どうも「正当な引用だった」という反論のようです。これは一番理解できる反論の仕方。ただ、前回書いたように「どの部分を引用したのか適切に示した上で、ほかの研究者の論文を明示する」を守っていないと、「適切な引用」とは言い難いです。
にも関わらず、こういう反論になった可能性として高そうだと私が思ったのは、二通りあります。ひとつは盗用の意識があり、言い訳のために無理を知りつつ強弁しているということ。もう一つはマジで引用のやり方を知らず、これで良いと誤解していたというパターン。この場合は全然悪気はなく、なんで不正とされたのかも本当にわからないでしょう。
ただ、これだと別の問題が生じします。「学者としての基本的な知識がない」という話になるためです。学生であれば教授からきちんと論文の書き方を習っていないということなので同情の余地があります(私も全く習わなかったので、今思うとひどい論文でしたわ)が、最近は学生の論文に対しても厳しい風潮。ましてや教授なのに引用のやり方を知らないというのは、擁護のしようがありません。
●大学が査読した掲載論文だから盗用認定は大学側の責任放棄?
2023/06/05追記:前回引用したヤフーニュースのコメント欄で驚いたのが、2番人気が擁護的な批判そらしだったこと。<この論文は、一度大学側が、査読(第三者の目を通して客観的判定により評価を得るためのもの)を行なって公開したにもら関わらず、盗用認定としたのは、大学側の責任放棄じゃないの?>というものでした。
一般論で言うと、論文掲載側にも責任があることは一応本当。本来なら先に不正を見抜いておくべきなのは間違いありません。ただし、上記のように大学側のみ批判するのは変なコメント。大学側が不正を見逃したとしても、後で盗用が判明すれば盗用認定をして当然。むしろ盗用認定しない方が、問題となります。
実際、不正を大学側が認めてしまうと、大学側が落ち度を認めることになる他、そもそも不利益となるため、もみ消したのでは?と疑われるケースが過去にはちょくちょく発生。そのため、不正があるのに認めない方が、「大学側の責任放棄」と言えます。なので、「盗用認定としたのは、大学側の責任放棄」というのは全く逆ですね。
●関係者?あちこちのページで擁護コメントを書くネット工作の指摘
2023/06/17追記:前回ヤフーニュースのコメント欄で擁護的な批判そらしがあってびっくりという話を書きました。ただ、コメント欄全体がそういったコメントばっかりだったということはなく、これだけが特殊。<研究者なら一番気をつけることだと思います。><えっ!?盗用(特定不正行為)を認定したのに懲戒解雇じゃないの?>などのコメントがついていました。
1番人気のコメントも普通に批判的なもので、<件の男性教授は因果関係を認めていない。でも、出典を明記していないのならば、どう考えても盗用だろう。もっと徹底的に問い詰め、はっきりと最後通牒を突きつけるべきだったのではないか?>というもの。以下のようなネット工作を指摘するコメントもありました。
<本コメ欄で、問題の教授の関係者と思われるアカウントが、第三者を装って印象操作のための擁護コメントを書きこんでいます。なお。本件に関する他社の記事でも同じアカウントが同じことをしていました。皆さん、ご注意ください。>
ここのコメント欄はコメント数が少なく、他に擁護コメントらしきものも見つからないため、ネット工作というのは、前回のコメントのことを念頭に置いたものだと思われます。ただ、他のページでも工作していた…というのは確認できず。このニュースもそうなんですが、ヤフーニュースは消されるのが早いため、詳細は不明でした。
●絶版本や貴重な資料含む図書館蔵書4万冊を配慮なく処分
2023/10/16追記:高知県立大で検索していた記事をひとつストックしていたので、それも放出しておくことに。
高知県立大、蔵書約3.8万冊を処分…「配慮が十分でなく」お詫び | リセマム(2018.8.20)というネガティブな話題です。
<高知県立大学は2018年8月18日、高知県立大学永国寺図書館の蔵書を除去したことについて発表した。除去対象は重複図書約18,700冊、雑誌約12,700冊、書籍約6,600冊の合計約3.8万冊。(中略)
蔵書の除去は、高知県立大学永国寺キャンパス整備により図書館が新設されるのに伴い、蔵書を整理するために行った。同大学によると、新設図書館への蔵書移行および除去は、2014年度から2016年度までの期間、13回に分けて慎重な検討を重ねた。(中略)
蔵書は今後も増加し続けることを考慮した結果、同大学は複数の司書と分類ごとに専門性のある教員で除去候補リストを作成。(中略)高知県立大学によると、移管を行った以外の除去対象蔵書の多くは焼却処分した。>
これはなかなか難しい問題。安易な処分が問題である一方で、図書館がすべての書籍を維持し続けることは予算的に無理でしょう。処分した図書館側の事情も一定程度理解できます。また、貴重な書籍は残し、価値の低いものだけを選んで処分した…といったものでしたら理解もできました。
ところが、「13回に分けて慎重な検討を重ねた」「専門性のある教員で除去候補リストを作成」という大学側の判断と相反する意見も出たみたいですね。実際には<絶版本や貴重な資料が含まれていたことから、インターネットでは否定的な意見が多くあがっていた>といいます。
また、なるほど!と思ったのが、蔵書の除去をめぐる流れについて、インターネットでは「処分する前に広く意見を募るべきだった」「公的な機関に預けることはできなかったのか」「市民への譲渡会などもあり得たのではないか」などといったもの。自分たちだけで手に負えないなら、助けを求めることもできたかもしれません。
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