女子マラソン元日本代表が万引きで逮捕される事件がありました。この件に絡む記事で知ったのですが、摂食障害と万引きは関係が深いようです。過食を伴うタイプの摂食障害では、1,2割の人が万引きを繰り返すということで、実は非常にメジャーな行動だったようです。(2017/08/29)
2017/08/29:
●女子マラソン元日本代表逮捕事件
●摂食障害と万引きの意外な関係
●摂食障害は日本の女子アスリートに多い?
●摂食障害では自傷と自殺未遂も多い
2018/12/04:
●体重測定を毎日5回、食事も監督が直接監視…異常な体重制限
●フィギュアでも多い摂食障害、月経がない状態になる選手も…
●女子マラソン元日本代表逮捕事件
2017/08/29:元日本代表という書き方をしている記事もあったと思いますが、女子マラソンの元世界陸上代表の原裕美子さんが窃盗容疑で逮捕された件が、少し前に報じられていました。
元世界陸上代表を逮捕 栃木県警 毎日新聞2017年8月17日 12時45分【野田樹】によると、世界選手権は2005年ヘルシンキ大会で6位入賞を果たし、07年大阪大会にも出場していた選手。
同じく記事によれば、セブン-イレブン足利大月町店で化粧品など8点(計2673円相当)を盗んでおり、本人も容疑を認めているとのことでした。
●摂食障害と万引きの意外な関係
この話が意外な方向に向かいます。
女子マラソン元日本代表の万引き事件からみる、女子アスリートと摂食障害の問題(江川紹子) - 個人 - Yahoo!ニュース(8/22(火) 20:47)によると、日本摂食障害学会副理事長の鈴木眞理医師(政策大学院大学教授)は、「摂食障害による万引きの典型ですね」と指摘していたそうです。
最初の記事では「化粧品など」としていましたが、パンやおにぎりなども万引きしています。コンビニですので皆さんわかるでしょうが、これらの棚はレジのすぐ前。さらに監視カメラがぱっと見ただけで10台はあるという店舗でした。
万引きは、摂食障害にしばしば伴う問題行動として知られているということで、鈴木眞理医師は、以下のように説明していました。
「一般の窃盗犯は、盗んだ後に見つからないことに気を遣うが、摂食障害ゆえに万引きをする人は、盗るということだけで頭がいっぱいで、見つからずに逃げるところまで頭が回らない」
●摂食障害は日本の女子アスリートに多い?
作者の江川紹子さんは、勾留先の警察署で、原さんと面会し、早くから摂食障害を発症していたことを確認。体重制限もあり、体を重くしないために嘔吐するようになったのがきっかけだったそうです。
「吐くと体重が減って、調子がよく、いい成績が出た」ので、「やめられなくなった」とも言っていました。「過食嘔吐の摂食障害」によって、好成績を維持していたという歪んだ形です。
先の鈴木医師は、「摂食障害が疑われる女子アスリートは、ほかにもいます」とも指摘。どうも女性の陸上選手に多い症状のようです。
●摂食障害では自傷と自殺未遂も多い
上記記事の
はてなブックマークでは、
摂食障害の万引き、治療と刑罰のどちらなのか / 永田利彦 / 精神科医 | SYNODOS -シノドス-(2015.06.17 Wed)が紹介されていました。
こちらで永田利彦医師が挙げていた数字は衝撃的なもの。摂食障害には種類がありますが、万引き問題と関連するのは過食・排出型の神経性やせ症、神経性過食症、過食性障害など過食を伴う摂食障害で、なんと12~24%もの患者が万引きを繰り返している(Bridgeman, 1996)とされています。5人から10人に1人ですから、かなり普通な感じです。
また、摂食障害は万引き以外の異常行動も引き起こすようです。Nagataら(2000)は、通院加療中の236例の摂食障害患者と66名の対照群を対象に大量飲酒、薬物使用、自傷、自殺未遂、万引き、性的逸脱などの衝動行為の有無と摂食障害患者に対しては摂食障害発症以前からそれらの行為を行っていたかどうかを研究しました。
神経性やせ症の過食・排出型と神経性過食症の両群では明らか衝動行為の頻度が多く、自傷と自殺未遂が万引き以上に多いというのも大きな問題だと言えそうでした。
●体重測定を毎日5回、食事も監督が直接監視…異常な体重制限
2018/12/04:原裕美子さんの件で続報。前橋地裁太田支部は、「もう一度、社会内で更生する機会を与えるのが相当である」として、刑罰ではなく社会内で治療すべきだとの判断を下したそうです。判断としては妥当なんでしょうけど、裁判官に理解があるというのは正直意外ではあります。
原裕美子さんの説明によると、高校を卒業して実業団チームに入団後、体重管理が激しいチームで、1日に4~6回体重測定を強いられました。この時点でかなり異常性を感じます。さらにすごいのが、食事も監督の前で食べなければいけなかったというもの。
また、遠征期間中には「買い食い」をしないように財布も取り上げられるなど「管理」されました。「人というよりペットをしつける」ようだったという表現は妥当かどうか判断しかねるものの、社会人に対しての扱いとしては、異常なことは確か。ブラック企業的なところも感じますし、たとえ子供に対してであっても「虐待」という内容です。
ここから、体重が増えないようにするため食べたものを吐き出すようになり、摂食障害を発症、食べ物ほしさに万引きを繰り返すようになった…とのこと。
●フィギュアでも多い摂食障害、月経がない状態になる選手も…
最初の投稿でも出ていた政策研究大学院大学の鈴木真理教授(医学)は、スポーツ界では、「体重が軽い方が有利」とされる陸上長距離種目や、「体を美しく見せるためにやせた方が良い」とされる新体操やフィギュアスケートなどの女子選手に多く見られると指摘。栄養失調に陥り無月経や骨粗しょう症など健康被害が出るケースもあるそうです。
鈴木教授らは摂食障害について理解を深めようと、アスリートや指導者に講演しているが、その重要性を認識しているのは「一部のトップアスリート程度」だとのこと。一般にはまだまだ浸透していないとしていました。
(
元マラソン代表の被告 買い食い禁止で財布没収「人というよりペット」 毎日新聞 / 2018年12月3日 21時33分より)
読解力がない人が多いですし、おそらくこの記事を読んでも、「犯罪者が言い訳すんな」と叩く人がかなりいると思われます。地道に訴えていかなくてはいけません。
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