食品スーパーに関する話をまとめ予定。とりあえず、<安売り競争しないスーパーの秘訣 札幌市のフーズバラエティすぎはら>を書いています。
2023/05/20:
一部見直し
●安売り競争しないスーパーの秘訣 札幌市のフーズバラエティすぎはら
2013/3/10:価格設定に関する話は何度か書いています。とりあえず、記憶に残っているものとしては、
成城石井 ~安売りせずに売る~と
エーワン精密 不況時こそ値下げしない。このうち、成城石井なんかはちょうど今回と同じスーパーに関する話です。
ただし、今回は成城石井よりずっと小さいお店、札幌市のフーズバラエティすぎはらというお店の話でした。私が読んだのは、<外は昭和レトロ、入るとビックリの小さなスーパー 安売り競争とは無縁、札幌市のフーズバラエティすぎはら・その1>(内藤 耕 2012年10月4日(木) 日経ビジネスオンライン)という記事です。
<ビート、パースニップ、オーガニックコーラ…。並べるとまるで呪文のようなこれらは、全て北海道のあるスーパーで売っている商品である。
ビートは深紅色のカブのような形をした野菜だ。ボルシチに使い、ロシアではどの家庭でも日常的に食べる食材である。パースニップは東ヨーロッパを原産にした根野菜で、その形状から白にんじんとも呼ばれる。日本ではほとんど知られていないが、欧米では冬に一般的に食べられる野菜らしい。
オーガニックコーラは文字通り「オーガニック」の「コーラ」なのだが、日本で見かける機会は少ない。イタリア産で原料は天然素材。その味は複雑だが、後を引く強いインパクトを持つ。おしゃれなボトルに入っており、通常のペットボトル飲料の2倍以上の価格で売られている。 (中略)
「こだわりの商品」と聞くと、大都会にある百貨店の食品売り場や輸入食材を多く置く高級スーパーが思い浮かぶかもしれない。だが、フーズバラエティすぎはらの外観は、どこか懐かしい「昭和レトロ」とも言える雰囲気である。(中略)店舗はこの1店のみ。大手チェーンが500坪を超える大型店を出す中、同店の広さは100坪に満たない。一見したところ、家族経営の零細スーパーでしかない>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121001/237483/
上記を読む限りは特に大したことなそうです。しかし、この店舗を目当てに多くの人が集まるというので驚き。平日は地元の地元の人がほとんどなのですが、週末は違います。札幌市内だけでなく北海道全域から客が押し寄せる他、観光客や帰省客が来ることも。また、札幌市内の多くのレストランシェフも利用するといいます。
記事では、この後はこのスーパーの歴史的なところの説明があります。ただ、正直言って読んでもどうもすごさが全然わかんない部分。ここを読んでもなぜ今成功しているのか?というのは、さっぱりわかりません。
<杉原商店は1943年、青果店として産声を上げた。長く個人商店として続け、有限会社化したのは平成に入って間もない1993年のことである。杉原専務は3代目中略)
だが、スーパーやコンビニエンスストアの増加に合わせ、青果店の存在感は薄れていく。(中略)
杉原商店と鮮魚店、精肉店、食品雑貨店の店主たちは話し合い、「これからは1つ屋根の下でまとめて買いものする時代」との結論を出す。ちょうどその頃、大手の食品卸が食品スーパーチェーンの全国展開を始めていた。杉原商店など4店はこの食品卸から全面的な支援を受け、1977年に4つの商店が1つの屋根の中に入る形で、セルフサービス方式の食品スーパーとして営業を始めた>
セルフサービス方式のスーパーは当時の北海道ではまだ珍しく、成功します。ただ、正確に言うと「一時は成功」という話。上記を読んでわかるように、「1つ屋根の下でまとめて買う」というのは、今の「フーズバラエティすぎはら」とは違う感じですからね。この成功は続かなかった…ということがわかります。
<最新の珍しい商品が長く支持されることはなく、地域の消費者にすぐに飽きられてしまった。(中略)支援していた食品卸はスーパーのチェーン展開を断念してしまった。
商品構成を地元客に合ったものに戻そうとしたが、仕入れを食品卸にまかせていたため思うようにいかなかった。(中略)
杉原専務がサラリーマン生活から家業に戻ってきたのはちょうどそんな頃だった。(中略)
杉原専務は当時、商売の素人だった。何の専門的知識もなかったため、市場で最先端の営業方法で成功している青果店で紹介してもらった。札幌市東区にあったその店を訪ねると、大量の商品を安売りし、多くの客で賑わっていた。それまでの自分たちの営業方法が「古い」と直感した。
杉原専務はその店の店主に頼んで販売や仕入れの方法を教えてもらい、同じ販売手法を取った>
ただ、この安売り方式というのも、現在の「フーズバラエティすぎはら」とは違います。ということで、勘の良い方ならわかるようにこれもまた失敗。一時的に売上が伸びただけでした。
<そこからの杉原専務の行動は早かった。「どうしたのかと思って客に聞いてみた」。そこで気づいたのが「安くてたくさん」という販売方法が地域の客にあっていなかったということであった。
真似た店舗がある札幌市東区には子育て世帯の大家族が多く住む。それに対して、すぎはらがある宮の森地区は子育てが終わり、高齢者が2人で暮らす世帯が多い。安くたくさん購入するよりも、多少割高であっても、よりいい商品を買う人が多かったのだ。
「同じ値段で大根を1本と半分で売ると、半分のほうが売れる地域」であることに気付いた。半分捨てても1本買った方が得と多くの人は思うかもしれないが、捨てることがもったいないと感じる客もいる。頭か尻尾の好きな方を選びたいと感じる客もいる。結果として、地域の顧客が離れ、また値段を追求する客も競合店へと流れていったことが、売り上げが下がっていた理由だった>
そこで、少しでも状況を改善するために、量目を減らして高齢世帯が買いやすくしたり、惣菜を増やしたりしたとのこと。やっと良さそうな流れになってきました。とはいえ、これも結局、冒頭で書いた「フーズバラエティすぎはら」とは違います。つまり、これでも大きく売上は回復せず。また、以下のように安売り競争になってしまいました。
>1992年になると、かつて支援をしてくれた大手食品卸が新たに生鮮食料品も扱う小型食品スーパーの全国チェーン展開を始めた。このチェーンは各店舗に情報システムを提供し、商圏を分析。さらにカウンセラーを毎月派遣することになっており、杉原商店などが経営するスーパーもチェーンに加わった。
チェーンに入ったことで商品が次々と送り込まれる。送られてくる商品を棚に並べるため、それまで棚に並んでいた商品は特売で売りさばくしかなかった。そんなことを続けているうちに、わずか半年で食品卸は小型スーパーのチェーン展開に行き詰まり、全国展開を断念してしまった。
1997年頃になるとさらに多くの大型食品スーパーが進出してきた。安売り競争も激しく、ますます売り上げの回復は困難になった>
いろいろいチャレンジしているのはすごいと思うんですけど、失敗の連続でここまではちっとも良さがわかりません。そして、前半の記事はこれで終了していました。全く成功した理由がわからないままに終わりです。でも、さすがに後半なら何かわかるだろうということで、その2も読んでみました。<地方の小さなスーパーはなぜ価格競争から脱却できたのか 安売り競争とは無縁、札幌市のフーズバラエティすぎはら・その2>(内藤 耕 2012年10月11日(木))という記事です。
<ある日、フーズバラエティすぎはらの杉原俊明専務はある農業の専門家に怒られた。
現代の消費者はどういう食材があって、どういうふうに食べると美味しいか、いろいろ調べている。安心や安全のため、食材がどこで生産され、どのように運ばれてきたかも一つひとつ調べている。それに応じて、生産者も食材をどのように生産すればもっと美味しくなるかを勉強している。しかし、中間流通の食品スーパーはただ売るだけで、気にするのは価格ばかり。こう指摘されたのだ>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121009/237828/
以前魚に関する記事でも似たようなことが書かれていましね。売る側が素人だという話です。そして、ここからがやっと転機となりました。売る側がプロになるために、野菜ソムリエや札幌商工会議所の北海道フードマイスターや調味料マイスターといった資格を取ったそうです。
<資格を取り、きちんとした知識を身に付けたことで、杉原専務は売っている商品の説明ができるようになった。(中略)しばらくすると、野菜ソムリエが経営している青果店としてフーズバラエティすぎはらの評判が広がり、来店客が増え始めた。 (中略)
野菜ソムリエがセレクトした店として生産者の間でも話題になり、多くの農家が商品を自ら持ち込むようになった。野菜ソムリエ同士の間でも情報交換の輪が広がって様々な情報が入るようになり、来店客に提供する情報はますます豊富になった。
農家を回り、作物を自分の目で見て、収穫方法を聞く。こうした得た情報も来店客に提供した。さらに、それまでは市場でしか商品を仕入れたことがなかったが、輸入食材をメーカーや代理店から直接仕入れるようにした>
冒頭では「こだわりの商品」という話が出てきましたが、意外なことに、"こだわりの商品ばかりを並べているわけではない"ようです。こだわりの商品は、あくまでも他店との差別化のため。まず大事なのは、毎日来る地元客ということで、カップ麺や食パンも重要な商品と位置付けてお店に並べているといいます。
また、こだわりの商品があっても、最初はあまり貢売上に献していなかったようです。商品数が増えて、口コミが増えて、それからやっと売上増加ということでなかなか結果は出ませんでした。また、欠品を気にしないという話もおもしろかったですね。これは日本のスーパーとしては非常識で、
ウォルマートの在庫管理1~良い欠品、悪い欠品~もやりましたけど、ウォルマートとは別の理由でした。
<一般の食品スーパーは欠品を恐れ、商品を全国から揃える。しかし地元の生産者の野菜を積極的に扱うようになると、欠品が大きな問題とならないことに気づいた。天候などきちんとした理由があれば。消費者は欠品していても納得してくれる>
この後半記事はおもしろい話が多くて安心。POPに書くのは価格ではなく、"農家など生産者が最もアピールしたい商品情報"を書くというのもおもしろかったところ。こうすると、値下げしなくても売れるそうな。
特に目新しくはないポイントカードはやっているそうですけど、"プラスチック製のポイントカード"は経費負担が大きく、効果もなしのためにスタンプに。これは1000円で1個ですのでなかなかたいへんですけど、毎週水曜日のポイント2倍セールの日の集客効果は高いようです。また、次の話はすごい!と思ったものでした。
<フーズバラエティすぎはらでは、新しいこだわりの商品については、必ずその日に勤務しているスタッフ全員(約10人)でテイスティングをする。その際に仕入れ価格は隠し、全員が値付けをする。もしスタッフが言った値段と仕入れ値に大きな開きがあるときは「財布感覚に合わない」と判断してその商品は仕入れない。かつては予想に反して売れたり、売れなかったりする商品もあったが、こうした仕組みが機能して、最近は判断の精度が高くなってきたという>
これは幅広い分野に使えそうなやり方。上記のような選び方が主体であり、こだわりの商品や地元の商品というのは目的ではなく結果みたいです。前半は心配しましたが、後半はなかなか有意義な話だったと思います。
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