雪の話をまとめ。<世界一大雪の国、日本 国土の半分が豪雪地帯という希有な土地>、<大雪の弊害で死亡事故多い雪下ろし、そもそもやる必要なかった?>をまとめています。
2023/05/23追記:
●大雪の弊害で死亡事故多い雪下ろし、そもそもやる必要なかった? 【NEW】
地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題 川瀬 宏明

●世界一大雪の国、日本 国土の半分が豪雪地帯という希有な土地
2013/3/15:ちょっと自画自賛な感じになりますけど、日本というのは特殊な国で日本独特のもの、世界一のものというのがいろいろとあります。しかし、"世界一の豪雪の国、日本"、"日本の国土の半分は豪雪地帯であり、そこに人が住んで活動しているという意味では世界でも希有な土地"といったことは、考えたことがありませんでした。
これを書いている2013年は雪に絡んだ痛ましい事故もありました。<暴風雪:北海道の死者8人に…車立ち往生、1000人避難>(毎日新聞 2013年03月03日 14時26分(最終更新 03月04日 01時09分))の件です。日本が持つ世界一の中にはあんまり誇れないものも多数あり、豪雪なんかも迷惑な類でしょう。
<北海道で3日朝まで続いた暴風雪で、中標津町(なかしべつちょう)の母子4人の乗った車が吹きだまりにはまって一酸化炭素中毒死するなど、計8人が死亡した。オホーツク海側では雪で立ち往生する車が相次ぎ、一時約1000人が近くの公共施設などに避難した>
http://mainichi.jp/select/news/20130303k0000e040132000c.html 前述のような日本が「世界一大雪の国」などという話があったのは、<日本の半分が大雪になるわけ 防災科学技術研究所雪氷防災研究センター(2)>(川端 裕人 2013年3月5日(火) 日経ビジネスオンライン)という記事でした。ここではなぜ"日本の国土の半分は豪雪地帯"になっているのか?という話が出てきます。
<雪が多いのは日本海側と北海道。そういう理解で間違っていない。政府基準の豪雪地帯に指定されているのはだいたいその範囲だ。では、どういうふうにして豪雪になるのだろうか。
まず、とても素朴な考えとして、冬季に大陸から吹く季節風が日本列島の脊梁山脈にぶつかって雲を作り、雪を降らせる……。これ、中学校の理科レベルかもしれないが、ぼくはずっとそんな単純なイメージを抱いてきた。
「それは、山雪ですね。西高東低の冬型の気圧配置で等圧線が混んでいるときに起こりやすいパターン。でも、平地でも大雪になることもありますので、そればかりではないんです(中略)」と佐藤さん>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130226/244225/?mlt この後、雪の説明がありますが以前うちのブログでやった雪シリーズ(
雪と氷の違い、
雪とみぞれの違い、
雪と霜の違い)でも似たような話が出てきましたので省略して、以前の投稿の方から説明を持ってきます。
(1) 水蒸気を含んでいる雲が、上空の気温が低いときに、氷の結晶(氷晶)が発生。氷晶は、主に気体の水蒸気が昇華して直接固体になることでできる。
(2) 微細な氷晶の周囲にある水滴が蒸発して氷晶の表面に昇華することで、氷晶が成長し雪片になる。
(3) やがて浮遊する雲を支えている上昇気流を上回るほど重くなり、落下する。(途中で雪片同士がぶつかり合い、更に大きくなる場合もある)
(4) 落下中に融けずに地上まで落ちると、雪となる。(途中で融けると雨。冷たい雨)
(
雪と氷の違いより)
「冷たい雨」とあるように最初から水滴の「暖かい雨」もあるのですが、これはかなり南の地方だけだそうです。これは今回初めて知った話。逆に言えば、ほとんどの地域では上空では雪。温度次第で地上でもそのまま雪になるという可能性を秘めているということです。
今回のメインテーマである「日本での大雪が降りやすい理由」というのは、たぶん上記のような現象を起こす雲のできやすさということだろうと思います。以下のような説明がありました。
・山雪の場合
「では、その雲ができるためにはどういう条件が必要か。冬に大陸からの季節風が吹くと、日本海の水温は相対的に高いですから、どんどん海面から蒸発して水分が供給されます。非常に湿った空気が押し寄せてきて、その中で対流も活発になるので、雪を降らせるような雲になるというのが基本ですね。その条件が一番備わるのが、冬型の気圧配置、いわゆる西高東低で、北西の季節風が強く吹く状況です。山岳部で大雪になりやすいです」
・平野部の雪の場合
「冬型の気圧配置がややゆるくなって、北西の季節風が弱まった状態ですね。一方で陸地と海との間に温度差がありますから、陸から海に向かった陸風が吹く。それが海からの季節風とぶつかると、やっぱり対流が起きやすくなるわけですね。それによって雲が発達するのが里雪型の1つのパターンです」
海からのたっぷりの水蒸気と対流という二つがポイントのようです。そして、平野部の雪の場合は、大陸からの季節風がほどよく弱まると、もともとそれほど強くない陸風と拮抗して上昇気流が生じ、沿岸部に雲ができやすくなるという理屈。さらに、平野部の雪(里雪)の降るパターンはもうひとつあるそうです。
「里雪が降りやすい状況で、もうひとつよくあるのは、本当に冬型が強いときに、朝鮮半島の付け根あたりから白い雲の太い帯が伸びてくることがあるんです。北朝鮮と中国の境に白頭(ペクト)山という山があるんですけど、そこで北側と南側に分かれた気流が、日本海上で収束して、それに伴って強い対流が起きて雲ができる。それが日本列島に伸びてきて、ぶつかったところで非常に強い雪が降ると」
この後は研究の話が中心でほぼ全部省略。ただちょっとおもしろかったのは、"雪の研究で、降雪・積雪という分野の違い"があり、降雪の研究者は少なく、研究も進んでいないという話。なぜかと言うと、どうも難しいから研究が進んでいない…といった理由のようでした。
「実は、雪に関する研究といっても、私みたいな降雪の研究者は少なくて、積雪の方が多いんですね。このセンターには、積雪に関しては、観測、実験、積雪のモデルを作る人、全部揃ってますけど、降雪のほうはちょっと人数が少ないんで、まずは観測中心にやっています」
「雨粒に比べて、雪って形が複雑なのでレーダーの研究も難しい」とのこと。その他、降雪は降雨から見ても難しいようで、いたるところで難しいところだらけ。でも、これってパイオニアがいない、わからないことが多いってわけで、研究者にとってはむしろチャンスのはずです。
さらに言えば、日本が世界一の豪雪国であるというのなら、たぶん日本の権威になれば世界の権威にだってなれるでしょう。もっと力を入れてあげて良い分野と思いますけどね。
●大雪の弊害で死亡事故多い雪下ろし、そもそもやる必要なかった?
2023/05/23追記:私はあんまりやった経験がないのですけど、雪下ろしは大雪であることのメリットではなくデメリット。たいへんだというだけでなく、毎年事故が多いものでたいへん危険。死亡事故も全然珍しくありません。ところが、「そもそも雪下ろしは必要はない」という話を聞いてびっくり。全くやらなくて良いリスクを犯していたことになります。
この話を知ったのは、雪国である北海道の地元紙・北海道新聞の
雪下ろしは不要「人が住む家は倒壊しない」 発信続ける道科学大・千葉教授 相次ぐ事故に警鐘:北海道新聞デジタル(2023年2月14日)。ただし、北海道新聞は有料路線のところなので、詳細は不明でした。
<道内の雪による死傷者は1月末で206人に上り、その6割を雪下ろしと落雪が占める。住宅の雪問題に取り組む北海道科学大の千葉隆弘教授は、人の住む家が雪で倒壊する例はほぼなく「雪下ろしは不要」と強調する。傾斜のある屋根からの落雪で下敷きとなる事故は除雪中が多いと指摘し「晴れた暖かい日に雪かきしたくなるが、実は最も危険」と警鐘を鳴らす>
地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題 川瀬 宏明

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