2013/3/15:
●日本は人件費が高い…は嘘 アメリカなど他の先進国より安い
●台湾や中国のような新興国と比較した場合はどうなるか?
●日本はもう製造業・ものづくりの国ではない その理由とは?
2021/03/26:
●自動車、製鉄、電機…「日本製」製造業が全部終わる…って本当? 【NEW】
●目玉政策「脱炭素社会」が衰退している日本の製造業にとどめを刺す 【NEW】
●日本の技術はすごいし真似できない…豪語していた家電メーカーの没落 【NEW】
●日本は人件費が高い…は嘘 アメリカなど他の先進国より安い
2013/3/15:"失業率と有効求人倍率、既に改善に転換 雇用状況は今後好転するかも"は、すでに景気回復の症状が見えていたという話でした。(この投稿は、その後、
有効求人倍率が上がったのがアベノミクスのおかげも嘘 理由は?にまとめています)
その投稿で使った
失業率も有効求人倍率も改善、雇用は好転へ 将来的には女性の就業率向上が鍵(2013年2月5日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役社長] ダイヤモンド・オンライン)では、人件費に関するデータもあったのですが、これが意外。先進国としては非常に低い国なのです。
<生産労働者(製造業)の時間当たり労働費用>(アメリカを100とした場合、2009年)
ドイツ 138.7
フランス 119.5
アメリカ 100
英国 91.8
日本 90.6●台湾や中国のような新興国と比較した場合はどうなるか?
上記のデータを見ると、人件費が高いから日本の製造業企業は苦戦している…という説明は難しいと感じます。ただ、新興国相手なら人件費の言い訳がまだまだ使えるでしょう。以下のようにやはり新興国の方が圧倒的に安いようです。
一番注目されるであろう中国のデータはないそうで、これは残念なところ。中国については台湾を参考にするしかないかもしれません。
<生産労働者(製造業)の時間当たり労働費用>(アメリカを100とした場合、2009年)
台湾23.1
韓国42.4
シンガポール52.2
フィリピン4.5(誤記?)
ブラジル24.8
メキシコ16.1
●日本はもう製造業・ものづくりの国ではない その理由とは?
他におもしろかったのが、日本の産業別の労働人口。面倒なので上位5つだけ引用すると、以下のようになります。
産業別 就業者数 占率 対前年比
卸売業、小売業 1042万人 17% -15万人
製造業 1032万人 16% -17万人
医療、福祉 706万人 11% 28万人
建設業 503万人 8% 1万人
その他サービス業 462万人 7% 5万人
記事では、<長年、わが国の経済を支えてきた製造業は、スーパーやコンビニ等の卸売業・小売業に抜かれて、今や全就業者数の16%を占めるに過ぎない>と指摘していました。
以前から少なかったわけではなく、ピークの1992年10月には1603万人もいました。製造業の就業者は、直近の2012年12月には998万人と、1961年6月以来、約50年ぶりに1000万人の大台を割り込んでしまったということで、以前より大幅に減っているということは間違いないようです。
データは単年度だけですけど、傾向が変わっていなければ、製造業は減少傾向ということです。働いている人の数で言えば、「日本はもはや製造業・ものづくりの国ではない」と言えそうです。
ただ、1位の卸売業、小売業も減っていますので、ここは複数年でのデータが見たいところ。きちんと増えているのは、医療、福祉ですね。逆転するにはまだまだ時間がかかりそうですけど、時代の流れを感じさせるおもしろいデータでした。
●自動車、製鉄、電機…「日本製」製造業が全部終わる…って本当?
2021/03/26:
さらば「日本製」…まもなく日本の「基幹産業」がどんどん消えてなくなる!(週刊現代)という記事があり、追記するならここかな?と。ただ、正直言って、タイトルが極端すぎるために嘘くさいと思いました。サブタイトルなんかはもっとひどくて、「自動車、製鉄、電機…ぜんぶ終わる」というものです。
このうち製鉄は、6基の高炉がフル稼働し、10万人を超える人々が働いていた北九州八幡地区で、高炉1基に3000人が従事するレベルまで減少。日本製鉄は'23年までに茨城県鹿嶋市、和歌山県和歌山市、広島県呉市にある各製鉄所の閉鎖や高炉の休止に踏みるなど、製鉄業界は縮小の流れ。さらに、二次メーカーも衰退しているとのこと。海外需要があると思うのですが、日本メーカーは海外開拓が苦手で完全に出遅れたとされています。
<'90年代までは、当時世界最大手の新日本製鐵を皮切りに、川崎製鉄、住友金属工業の3社が世界の粗鋼生産量トップ10に食い込んでいた。しかし'19年のランキングに目を移すと、トップ10に名前があるのは新日鐵と住友金属が合併して生まれた日本製鉄(3位)のみ。
中国や欧州の製鉄大手は合従連衡を繰り返して急成長を遂げ、価格競争で優位に立っている。日本の各社も、川上から川下まで束にならなければ戦えない状況に追い込まれたのである>
●目玉政策「脱炭素社会」が衰退している日本の製造業にとどめを刺す
また、菅政権が目玉に掲げた「脱炭素社会」「二酸化炭素排出ゼロ」が凋落した業界に追い打ち。日本製鉄社長で日本鉄鋼連盟会長を務める橋本英二さんは、菅政権が「脱炭素」の徹底を業界に求めてきたことを念頭に「実現までに10年、20年はかかる。ゼロからの研究開発を、個別の企業でやり続けるのは無理だ」と苦言を呈していました。
なお、中国の場合、政府の支援でこの技術が日本より進んでいるというのも踏まえていた批判である模様。「排出量の削減には研究開発が不可欠。そちらにカネをかけるべき時に、税金を取るなんて逆効果です。ここで中国に負けたら、世界は中国産の鉄を使うようになり、日本の鋼材は使用禁止になるかもしれません」と菅政権を批判していました。
これはいわゆる「ゲームのルールの激変」であり、かつての成功体験、伝統、技術といったものが通用しなくなるということ。自動車業界においても、ガソリンエンジンの製造に関わる中小のメーカーも、トヨタをはじめ大手から「2020年代の半ばからは、仕事が減ると思っていてください」と言われているそうです。
トヨタはEVシフト叩きを続けてきているものの、2020年には主にエンジン製造を担当する下山工場(愛知県みよし市)の生産ラインを2本から1本に減らしているなど、トヨタの豊田章男社長は「二枚舌」ではないかと疑われているとのこと。で、トヨタも危ないのでは?とされていました。ただ、EVは非現実的でトヨタの得意なハイブリッドがまず普及するし、EVなんか簡単なのでいつでも作れる…といった非常に楽観的な反論も別記事を読んでいると見かけます。
●日本の技術はすごいし真似できない…豪語していた家電メーカーの没落
記事では、この製鉄や自動車の衰退で起きている問題は、「他のどの国にも作れないと思っていたものが、いつの間にかどの国でも作れるものになっていた」という厳しい現実から、目を背けてきたという共通点があると分析していました。そして、こうしたことがいち早く起きたのが、家電メーカーだったとされています。
<「技術っちゅうのは、ウナギ屋の秘伝のタレみたいなもの」こう豪語したのは、'98年から'07年までシャープの社長を務めた町田勝彦氏だ。町田氏は「液晶一本足打法」で全経営資源を液晶の生産に投入した。「我が社の高品質な液晶は誰にもマネできない」という自信に裏付けられた決断だった。そしてそれは、しばらくの間は正しかったのだ。
だが、あっという間に韓国や中国のメーカーは「秘伝のタレ」を完璧に模倣した。大画面液晶はありふれたものとなり、同社は破綻の瀬戸際に追い込まれて、'16年には台湾メーカーの鴻海(フォックスコン)傘下となった>
パナソニックも同様で、テスラと'11年にEV用電池の生産で協業に入ったものの、テスラはいつしか韓国のLG化学、中国の寧徳時代新能源科技などとも取引を始め、「出入り業者のひとつ」に格下げになっていると指摘されていました。さらに、テスラが自社で電池の内製を進めているというところまで来ている…とのこと。本当にパナソニックも終わるんでしょうかね?
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