当初、「人工的に記憶を与える実験に成功」というタイトルで書いていたハエのSFチックな話。その後、人間の脳にインプラント埋め込み記憶力向上したという話を読んだので、<人間の脳にインプラント埋め込み電流で記憶力向上 ハエに人工記憶も>にタイトル変更しています。
●ハエに人工的に記憶を与える実験に成功 英米の研究チームが発表
2009/11/9:
「人工記憶」ハエに書き込み 英米チームが成功(朝日新聞 2009/10/23)という衝撃的なニュースが出ていました。
<【ワシントン=勝田敏彦】脳に人工の「記憶」を書き込んだところ、経験していない、その記憶をもとに行動するようになった。オックスフォード大など英米の研究チームが、そんな試みに成功し、米科学誌セル(電子版)に発表した。(中略)
ショウジョウバエに、ある種のにおいと同時に電気ショックを与える「訓練」を繰り返すと、その記憶をもとに、同じにおいを避けて動くようになる。研究チームは、そうした仕組みを担うショウジョウバエの脳の組織が12個の神経細胞(ニューロン)でできていることを突きとめた>
実験では、光を当てる特別な方法で、電気ショックを与える訓練を受けていないハエの神経細胞を活性化させて「人工記憶」を書き込みました。すると、ハエは危険を体験していないのに、そのにおいを避けるようになったといいます。人間に応用できるかとなると、ヒトの脳は複雑なので、ハエ限定の話とのことでした。
●「ヒトの脳ではできない」は本当?今回は始まりに過ぎない可能性
なんと恐ろしいことでしょう。…まるでSFの世界です。ヒトの脳ではできないようですが、これは「まだできない」と言う方が、より正確なんじゃないでしょうか。完全にハエと同じように人間で…とは行かないものの、人間の脳においてもある程度操作が可能ではないかと想像します。
何事も単純なものができるようになってから、より難しいものに挑戦していくもの。この研究者達も、この成果で研究をキッパリ止めてしまうということもないでしょう。簡単に人間の脳に記憶を埋め込むところまで到達するとも思えないので、そう心配することはないでしょうけど…。
それにしても、すごいことです。この実験では、あるにおいを嫌いだという記憶を与えたようですが、「あるものを好む・嫌う」というのは1番単純な記憶なんでしょうか。次の段階は?と言うと、ショウジョウバエにより複雑な記憶を与えるのか、より複雑な脳を持つ動物に同様の記憶を与えるのか…。
怖い!と思う人がいるかもしれませんが、私は結構楽しみです。
●頭の良くする手術?人間の脳にインプラント埋め込み記憶力向上
2018/01/02追記:元の投稿は、脳に人工的に記憶を与えるという話。一方、今回は脳に人工物を入れ込むことで記憶力を上げるというもので、ちょっと異なります。なので、追記するのは、
頭の良くなる薬スマートドラッグ 日本の中高生でも流行し副作用で本末転倒にとも近い話。方向性としてはそちらのスマートドラッグの方が近いですね。
体内に埋め込む器具である脳へ埋め込むインプラントの研究、開発を行っているというのは、米国南カリフォルニア大学の神経工学の専門家であるセオドア・バーガー博士ら。これまでも研究チームはマウスやサルにインプラントを埋め込む実験を行い、記憶力を向上させる効果を確認してきました。
そして、今回はいよいよ人間にインプラントを埋め込む実験を行おう…という実験ですね。そんなことが許されるのか?と思いますが、おそらく倫理的な問題はクリアできたからこそ実行できたのでしょう。20人の被験者の脳にインプラントを埋め込み、以下のような二つのテストを行ったそうです。
1回目 被験者にイメージを見せた後、75秒後にイメージを覚えているかどうか記憶テストを実施
2回目 インプラントに電流を流し、上記と同様の記憶テストを実施
(
「マトリックス」が現実になりつつある! ヒトの脳にインプラントを埋め込んで記憶力を向上させる実験がついに成功 | GetNavi web ゲットナビ 森本 進也 2017/12/30 10:00より)
単純に2回繰り返すだけでテスト結果は良くなるのでは?とちょっと疑問。なので、本来なら順番を逆にしたグループでも実験を行うべきだったでしょう。ただ、インプラントに電流を流した2回目のセッションの記憶テストにおいて被験者の記憶力が30%ほど向上ということで、かなりの上がり方はしています。
●海馬の短期記憶・長期記憶スイッチを電流で操作するというしくみ
そういえば、脳に電流を流すという話は、うちでも過去に2回投稿をしていました。
サヴァン症候群を人工的に再現を!学者が脳に電気ショックを与える研究と
現在でも現役なうつ病などの電気ショック療法・電気けいれん療法 重いうつ病・躁病・統合失調症の緊張病で使用です。
今回の研究の場合ですが、まず、脳の海馬は短期記憶から重要度の高い記憶だけを振るい分けて「長期記憶」として保存する役割を果たしているということが、予備知識として必要となります。そして、このとき海馬において特定のパターンの電流が発生していることが確認されているということも大事。この電流が短期記憶を長期記憶に変換するスイッチとなっているのです。
今回のインプラントはその「短期記憶を長期記憶に変換するスイッチ」という特定のパターンの電流を模倣した電流を脳に流しています。そして、この電流に騙された海馬が、短期記憶を長期記憶に変換するよう促し記憶が定着するというしくみでした。
何か怖い研究ではありますが、すげぇなぁ!というもの。まずはてんかん患者やアルツハイマー病患者などの記憶障害を持つ人への活用が想定されているそうですが、病気ではない人がそれを使うケースも出てくると思われますし、社会問題となることもありそうです。
【本文中でリンクした投稿】
■
頭の良くなる薬スマートドラッグ 日本の中高生でも流行し副作用で本末転倒に ■
サヴァン症候群を人工的に再現を!学者が脳に電気ショックを与える研究 ■
現在でも現役なうつ病などの電気ショック療法・電気けいれん療法 重いうつ病・躁病・統合失調症の緊張病で使用【関連投稿】
■
脳科学=疑似科学と思え 川島隆太・茂木健一郎など脳科学者に批判 ■
脳トレの効果に科学的根拠なし Lumosityは虚偽で賠償金、川島隆太教授の論文は大丈夫? ■
虫の声が聞こえるのは、世界で日本人と~人だけ?外国人には聞こえない…という話 ■
脳トレーニングの効果はない? 脳トレに関するネイチャーの論文 ■
右脳派・左脳派なんかそもそも存在しないので、利き脳診断は大嘘 ■
科学・疑似科学についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|