2013/3/25:
●ポイントのあるサイトとないサイト、質が高いのはどっちだかわかる?
●そもそもネットの世界は最初から無報酬によって発展してきたもの
●実は昔からあるソーシャルリワード 代表例はよくある「ランキング」
●インナーリワードも実はありふれたもの…ゲームでは普通にやってる
2013/3/3:
●プロから抗議殺到!大阪市の天王寺区が無報酬デザイナー募集で炎上
●ナチュラルローソンのOLが開発したお弁当 参加費をかけてまで参加
●応募が殺到!タダ働きどころかお金を払ってまで仕事をさせる技術
●ポイントのあるサイトとないサイト、質が高いのはどっちだかわかる?
2013/3/25:投稿すると換金できるポイントのもらえるレシピサイトとそうじゃないレシピサイト、質が高いのはどっちだと思いますか? 私はポイントを貰える方がモチベーションが上がるために、ポイントを貰えるサイトだと思いました。しかし、
報酬に金銭的価値はなくていい(深田 浩嗣 2013年2月21日(木) 日経ビジネスオンライン)によると、逆だというのです。
国内のあるネット大手では、消費者がレシピ検索サイトに情報を投稿するたびに、自社のEC(電子商取引)サイトなどで使えるポイントを付与するサービスを取り入れています。金銭的な価値をもつポイントによって投稿を促そうとするもので、難しい言葉で言うと、マネタリーリワードと呼ばれるものの一種だそうです。
ところが、このネット大手のレシピ検索サイトは競合サイトに比べると利用が活発ではありません。ポイントの獲得がレシピを投稿する目的になってしまい、投稿の質が十分ではなくなっている可能性が考えられる…と記事では指摘していました。
(2019/07/11追記:日本の検索サイトというとヤフーしか思い浮かびません。検索すると、Yahoo!レシピというのがありましたが、ポイント付与があったかは不明で、記事の前年には既にサービス終了しており、違うかもしれません)
一方、金銭的な価値を持つ報酬を用意していないほかのレシピ検索サイトの方が、利用者を順調に伸ばしているという状況。優れたレシピに読者の反応が集まる工夫が随所に凝らされており、投稿者を社会的あるいは内面的に動機づける仕組みが整っていることがその大きな理由と考えられているそうです。
●そもそもネットの世界は最初から無報酬によって発展してきたもの
意外な話…なのですけど、実はこれ、いろんなところで言われている話でもあります。金銭的な報酬なしでも社会的な報酬によっても人は結構動く…という実例は多数指摘されていました。上のレシピサイトもネットの例ですけど、インターネットの世界そのものがそもそも、金銭的な意味での無報酬の中でどんどんと充実してきたというものですよね。
さらにわかりやすいのはダウンロードして使う無料ソフト(いわゆるフリーソフト)みたいなものでしょうか。ネット初期からおなじみのものです。今はこれだけ普及したので疑う人も少ないでしょうけど、以前は様々なウェブサイトがタダで見れる(プロバイダ料などを除く)ということが理解してもらえず、どこかでお金が発生しているはずだ、怪しい、おかしい……と疑われていました。
ところが、世の中にはお金を払ってやってもらうと相当な金額のかかる仕事ですら、無料でやってくれる人がたくさんいるんですね。ありがたいことです。以前書いた<ナチュラルローソンのOLが開発したお弁当 お金を払ってまで仕事をさせる技術>(後半にまとめ)なんかもそういう話でした。
●お金よりも価値がある社会的報酬 ゲーミフィケーションと報酬の関係
ところで、最初の日経ビジネスオンラインの記事は、以前
こんなにあるゲーミフィケーション その意味・定義と事例で書いたゲーミフィケーションがメインの話でした。記事では、ゲーミフィケーションとは、顧客のロイヤリティーを高めるためにゲームの要素を駆使するマーケティング手法だという説明。ただし、ゲームの世界と同様に実に複雑で多様さに富んでいて、なかなか説明が難しいようです。それでも、あえて一言で表現するならば、「ゲーミフィケーションとはリワード(報酬)を設計すること」なのではないかと作者は考えているとのことです。
リワードとは、ゲーミフィケーションの中でユーザーを動機づけるために与えられるものの総称で、消費者を動かす「燃料」のようなイメージ。「報酬」という訳語では想像しにくい抽象的な考え方を含むため、この連載では単にリワードと呼ぶことにしているそうです。
このリワードは3種類。私が先に紹介してしまった「マネタリーリワード」と呼ばれる、金銭的な価値を伴うリワードがまずひとつ。これはおなじみでわかりやすいですよね。割り引きやクーポン、景品などがこれに当たります。しかし、「マネタリーリワード」じゃなくても良い、むしろそうじゃない方が良い場合があるというのが、最初のケースでした。
より良いことがあるというのが2つ目以降のりワードで、今まで意識されてこなかったもの。2つ目の「ソーシャルリワード」は、評判やステータスなど、無形ではあるものの、社会的な要素を伴うリワード。そして、3つ目は「インナーリワード」というもので、自己承認や自己実現など、内面的なリワードを指すそうです。
●実は昔からあるソーシャルリワード 代表例はよくある「ランキング」
私は2つ目と3つめをまとめて社会的報酬…って書き方をしていて、厳密に区分したことがありませんでした。これらについては、もう少し説明があります。ソーシャルリワードとインナーリワードは、消費者を動機づける効果には違いがあると言われているとのことでした。
まず、ソーシャルリワードには、他者との関係性によって消費者を動機づけようとする特徴があります。例えば「人から褒められたい」とか「あの人に協力してあげたい」といった欲求を満たすようなリワードです。最も分かりやすいソーシャルリワードの設計例は、ランキング。この例を聞くと、実際には昔からあるものだとわかりますよね。順位付けすることで、「あの人に負けたくない」といった感情を呼び起こし、消費者を動機づける効果があるのです。
あるいは、特定のサービスにおいて、なかなか手に入れることのできない希少な特典を持っていることも、サービス運営者側が周囲の利用者に伝わるようにうまく設計することによって、ソーシャルリワードとなる可能性があるとのこと。作者は、全日本空輸(ANA)のポイントプログラムで利用できる専用ラウンジや優先搭乗などが当てはまるといった例も出していました。
●インナーリワードも実はありふれたもの…ゲームでは普通にやってる
最後に残ったインナーリワードの説明も見てみましょう。こちらは、自分のこれまでの努力を確認させたり、なりたい自分に近づいていることを実感させたりすることによって消費者を動機づけようとするものだとされていました。これも具体例を見ないとわかりづらいものなのですけど、実はこのインナーリワードこそが、ゲーミフィケーションにおいて最も消費者を強く動機づける効果があるという大事なものなんだそうです。
モチベーション研究の第一人者として知られるエドワード・デシさんはリチャード・ライアンさんと共同で構築した「自己決定理論」の中で、ソーシャルリワードのような外発的な動機よりも、インナーリワードのような内発的な動機の方が効果は長く強く継続するとしていました。
自己承認や自己実現といった言葉を用いると大げさな印象がありますが、インナーリワードはそれほど複雑なものではないとのこと。プレーヤーのレベルが上がるたびに新たなステージに進めるようになる…というよくあるゲーム。実はこれこそがインナーリワードを利用したもの。小さなインナーリワードの積み重ねによって構成されていると言えるんだそうです。
記事が出た当時よく叩かれていたグリーやモバゲーのゲームは、プレイヤーがのめり込むようにといろいろな工夫がされていますよね。私はこのインナーリワードやソーシャルリワードを使うと、なかなかうまく説明できるんじゃないかなと思いますし、そうなるとこれらの重要性がよくわかる良い例となりそうです。
ゲームそのものではなくゲーミフィケーションにおいても、何か新たなスキルが身に着くといった、ちょっとした成果にインナーリワードとしての意味を持たせることは可能だとされていました。そして、途中で挙げたネットのフリーの世界や<ナチュラルローソンのOLが開発したお弁当 お金を払ってまで仕事をさせる技術>を考えると、インナーリワードやソーシャルリワードはゲーミフィケーションだけでなく、いろいろなことを考える上で重要だとも言えそうです。
●プロから抗議殺到!大阪市の天王寺区が無報酬デザイナー募集で炎上
2013/3/3:ここから<ナチュラルローソンのOLが開発したお弁当 参加費をかけてまで参加>というタイトルで別のページで書いていた話です。タダ働きというのは、大体の場合悪いことで、例えば、<区が無報酬デザイナー募集…抗議殺到、計画中止>(2013年3月2日12時13分 読売新聞)は、タダ働きが悪い意味で話題になったニュースでした。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130302-OYT1T00306.htm
橋下徹市長が有名な大阪市の天王寺区で、区のポスターなどを民間デザイナーに手掛けてもらおうと、「任期1年、無報酬」の条件で募集。従来、区制作のポスターやチラシは職員がデザインしていましたが、2012年8月に就任した水谷翔太区長が、「民間の力を生かしてよりよいものを」と発案したものでした。
ところが、2月4日に募集を始めたところ、電話やメールで抗議が殺到。プロのデザイナーらから「業界をバカにしている」などと批判が相次いだようです。そこで6日にはアマチュア限定に変更したものの、そういう問題ではありません。「業界への配慮を欠くことに変わりない」「正当な対価を払うべきだ」などの意見が続き、計画を取りやめることとなったのです。
●ナチュラルローソンのOLが開発したお弁当 参加費をかけてまで参加
一方で世の中には、働く人がお金を払ってまで仕事をしてしまうという、とても魅力的な仕事があるようです。
なぜOLは3000円を払って弁当を開発するのか(広岡 延隆 2013年2月13日(水) 日経ビジネスオンライン)によると、首都圏にあるコンビニエンスストア「ナチュラルローソン」で販売された「新潟コシヒカリで作った母のmy姫弁当」は、特別なものでした。
「新潟コシヒカリ」がすごいわけではありません。名前だけ見るとなんてことないですよね。でも、実はこの弁当、これまでの常識を覆すものなのです。同商品のターゲット層である首都圏のOL、16人が開発したというのでした。しかも、その開発プロジェクトへの参加には、3000円という参加費までかかるといいます。開発に協力したお礼で3000円もらえるのではないのです。逆に3000円取られるんですよ。記事では、「正にOLが、手弁当で弁当を開発するというわけだ」というくだらないダジャレを言っていました。
ちなみに「“OLが開発した”という冠を付けたいだけなんじゃないのか。開発とは言っても、どの程度本格的にやっているのか分からない」という予想を裏切る本格開発だとのこと。「原価計算して、この組み合わせにした」など、しっかりと収益性まで考えぬいている点にも驚かされたいいます。「社内開発同様、原価から重量、カロリーなど相当の部分を開示して取り組んでもらった」(ナチュラルローソンの担当者)とのこと。本格的でした。
●応募が殺到!タダ働きどころかお金を払ってまで仕事をさせる技術
BtoCの製品開発といえば、企業の社内チームが内容を詰め、ターゲットとなる消費者モニターに集まってもらって意見を反映しながらブラッシュアップするといったプロセスが一般的だと記事では指摘。しかし、今回は逆に消費者自身がお金を払ってまで、開発に参加するということとなりました。
これで応募いるの?と思うかもしれませんけど、女性向け人気サイト「OZmall(オズモール)」で募集が開始されるや否や、16人の定員に対して16倍の倍率となる258人の応募が殺到したというすさまじいことに。本来ならモニターとしての対価を貰っても良い立場の彼女たちが、お金を払ってまで製品開発に携わりたいと熱望したわけですね。
なぜ?と不思議に思って潜入させてもらった作者の広岡延隆さんは、メンバーにストレートに「自分がお客さんなのに3000円を払って、弁当を開発してあげて、プレゼンまでしている。どうしてですか?」と聞いてみました。答えは以下で、確かにそうだろうなと思えるものでした。
<プレゼンを担当した知的な雰囲気の女性は「個人の力では、できない大きなことができるチャンスだから」と即答した。料理が趣味という事務職の女性は「自分の作ったお弁当を色々な人に食べてもらえるのが楽しみ。採用されたら友達に自慢します」と目を輝かせる>
これを読んで大阪市天王寺区もスタートが"アマチュア限定"でしたら、また違った結果になっていたかもしれません…と思ったのですけど、区の宣伝程度だとモチベーションは低いかもしれませんね。
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