2012年にキンドルがやっと日本に上陸したものの、電子書籍端末市場のピークはその前年の2011年で既に縮小中だという話。電子書籍そのものが消えるという話ではないものの、「端末」が消えていくだろうとされていました。(2013/3/29)
2018/01/07追記:
電子書籍では書籍を買えない 読む権利を買っているだけ
電子書籍の意外なデメリット アマゾンの都合で勝手に削除も可能
●電子書籍端末市場のピークは2011年で既に縮小中 寿命はあと何年?
2013/3/29:おいおいおい、そんな大事な話は先に言っておいてくれよという…。日本ではいつ発売か?と騒ぎ立て、やっと昨年アマゾンのキンドルが上陸しました。電子書籍市場はこれからという感じです。
しかし、
縮小する電子書籍端末市場 消滅まであと何年?(日経新聞 2013/3/28 7:00 ニューヨーク=清水石珠実)という記事が出ていました。電子書籍端末市場のピークは2011年で、既に衰退が始まっているというのです。
「昨年の年末商戦で初めて電子書籍端末を買った」「最近、やっと電子書籍端末での読書に慣れてきた」――。日本ではそんな利用者も多いと思うが、世界的に電子書籍専用端末の市場はすでに縮小に向かっている。電子書籍端末の“寿命”はあと何年か。専門家に意見を聞いた。
「こんなに急速に伸びて、急激に廃れる電子機器は前代未聞」と語るのは、米調査会社IHSアイサプライのジョーダン・セルバーン上級主席アナリストだ。同社の試算によると、世界の電子書籍端末市場のピークは出荷台数が2320万台となった2011年で、今後は縮小の一途をたどる。16年の出荷台数予測は710万台と、市場規模はピーク時の3分の1まで縮む。
電子書籍端末市場に比べれば、音楽市場の縮小傾向がかわいいくらいに見える勢いで、急激に縮小します。別の調査会社である米IDCはまだ穏当な予測であるものの、やはり「11年がピーク」には変わりありません。"11年の年間出荷台数は2640万台で、17年には34%減の1740万台"、その後も「継続的に縮小していく」ということでした。
●電子書籍そのものではなく「端末」が消えていく
ただ、これは電子書籍端末からタブレットへという流れであり、電子書籍そのものが消滅するということではないようです。私はタイトルを見た時点では、勘違いしていたのですが、電子書籍がなくなっていくという話ではなく、電子書籍だけを読むための端末がなくなっていくという意味でした。
電子書籍端末とタブレットの価格差は縮まりつつある。少し追加で払うだけで多機能な端末が手に入るのであれば、あえて単機能の電子書籍を選択する必要はない。例えば、米国で米アマゾン・ドット・コムは自社の電子書籍端末「キンドル・ペーパーホワイト」を119ドルで販売しているが、タブレット「キンドル・ファイアHD」は199ドル。その差はたった80ドルだ。
さらにスマートフォンも電子書籍端末のライバルとなるという説明がこの後ありました。そして、電子書籍市場自体は広がるだろうとの予測。
世界の電子書籍市場(売上高ベース)は12年の94億ドルから17年には375億ドルに急拡大するとされていました。電子書籍端末が廃れたとしても、「電子書籍を読む」という習慣は消費者の間でしっかりと定着する見通しです。
ただし、電子書籍についても"完全消滅を予測する意見は少な"く、ちょうど"「今の携帯音楽プレーヤーのような存在になる」(ロットマン=エプス氏)との意見が優勢だ"そうです。
●電子書籍は熱心な読書家のためのアイテムに
途中で出てきたスマートフォンのところであれっ?と思ったのですが、そもそも電子書籍端末は読書に最適なように工夫されていたはずです。目や脳への負担を考えると、タブレットはともかく、スマートフォンが代替手段となり得るのか?と不思議に思いました。
ただ、これが先の「今の携帯音楽プレーヤー」という例えで、読書家なら電子書籍端末を選ぶだろうということのようです。
カラー表示を前提としたタブレットは日差しの強い公園やビーチなどでは画面が光を反射するために読書しづらい。
一方で、白黒画面の電子書籍端末は太陽光の下でも文字が読みやすい。充電した後の電池の持ちも長く、重量も軽い。
将来的には電子書籍端末に近づく読みやすさのタブレットというのも登場するかもしれませんけど、ニッチな製品として残っていきそうです。
●電子書籍では書籍を買えない 読む権利を買っているだけ
2018/01/07追記:電子書籍市場は縮小しないという予想でしたが、その後
米では電子書籍の売上が連続で減少 書店は逆に連続で売上高増加中 理由は「デジタル疲れ」か価格の問題か?という話やっています。意外に苦戦しているようです。
一方、今回追記する話は新しいものではなく、2012年の記事。ただ、現在でも同じ問題があると思われるもの。実を言うと、電子書籍においては、ユーザーはその書籍を買っているわけではありません。買っているのは、書籍を読む権利だけなのです。
WIREDでは、「1クリックでいますぐ購入」といった文言が誤解させて、"「アマゾンで書籍を購入」といえば、普通はその所有権も手に入れたと思うかもしれない"が、実際にはそうではないとしています。Amazon.comの規約では次のようになっていて、アップルが運営するiBookstoreでも、コンテンツのライセンスに関するほぼ同様の取り決めがあるとしていました。
"Kindleコンテンツの利用について。Kindleコンテンツのダウンロードや料金の支払いにあたって、コンテンツプロヴァイダーはユーザーにコンテンツの視聴や利用に関する非独占的な
権利を付与します。これは、Kindleを含め規約で許可されたサーヴィスやアプリケーションのみに適用され、Kindleストアが定めたKindleやその他対応端末での非商用的な娯楽目的の利用のみが認められます。
Kindleのコンテンツはライセンスされるのみで、コンテンツプロヴァイダーからユーザーに販売されるものではありません。"
(
Kindleで購入した電子書籍は、実はユーザーのものではない TEXT BY MAT HONAN PHOTO BY DENNIS PROVOST/WIRED TRANSLATION BY 中村航 2012年10月25日より)
●電子書籍の意外なデメリット アマゾンの都合で勝手に削除も可能
上記だけだと何の問題が?と思うかもしれません。が、ノルウェーに住むリン・ナイガードというITコンサルタントが、アマゾンから「購入」したと考えていたKindleの電子書籍をいきなり消去され、アカウントも閉鎖されたという出来事が起きました。これなら困るとわかりますよね。
このユーザーはおそらくアマゾンの規約に触れたのだと思われるものの、例によって説明はなかったみたいですね。こうなると、無実の罪で全処分されていたとしてもわかりません。非常にリスクが高いです。
電子書籍ですぐに思いつくデメリットとしては、運営会社の倒産でしょう。その点、アマゾンやアップルは潰れる心配がなくて大丈夫だろう…と思うのですが、こういう落とし穴がありました。アマゾンやアップルは丁寧に理由を説明しない企業の代表格でもありますから、余計困ったことに。
守旧派の電子書籍叩きみたいなのはどうかと思うものの、電子書籍に実際にこういうリスクがあるというのは、認めなくちゃいけませんね。
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