企業子宝率というものがあるそうですが、算出方法が隠されており、どうやって計算されたのかが不明です。じゃあ、どう考えても怪しい指標だよね?と普通は思うところなのですが、信じられないことに、これを自治体が採用して少子化対策の活動に利用して、国が前向きに紹介するというめちゃくちゃなことになっています。(2017/12/30)
●政府の資料で登場し、自治体で使用されている「企業子宝率」
2017/12/30:「企業子宝率」という指標があるそうです。渥美由喜さんという方が考案したもので、従業員(男女問わず)が企業在職中にもつことが見込まれる子どもの数。
企業の子育てしやすさを指標化するには「男女ともに対象」とした方がよいとして、通常、女性のみが対象の出生率調査を男性を含めて考えているのが特徴となっています。
私は初めて聞いた「企業子宝率」ですが、福井や静岡、鳥取、富山、青森県の五つの地方自治体で使われ、政府の白書や審議会資料などでしばしば紹介されるほどのもの。富山は上位企業を表彰するといったことを行っています。こうした使い方は、公的な統計指標の定義に当てはまるそうです。
(
女性を結婚・出産に追い込む危険な企業子宝率~セクハラパワハラが心配!?~(斉藤 正美 富山大学非常勤講師) | 週刊金曜日ニュース 2017年12月22日5:22PMより)
●算出方法非公開で非科学的な企業子宝率を自治体が使用して少子化対策
ただ、この「企業子宝率」で一番驚きなのが、渥美さんが自身の「知的財産」であることを理由に、算出方法の全貌を公開していないということ。東京大学大学院の北田暁大教授(社会学)は、「およそ科学的とは言い難い作成プロセスで公共性を欠く指標を地方自治体が使うことが問題だ」と指摘。
さらに、「『知的財産』だから計算方法を公開せず、保護の対象にせよなんて検証のしようもない。データ改竄、恣意的解釈以前の、科学としての最低限度のマナーを満たしていない」と批判しました。
こうした批判が出るのは当然でしょう。例えば、国が失業率の算出方法を隠蔽して、結果のみしか国民に知らせず、この値をもとに雇用状況の改善などを主張した場合、「政府に都合の良いように捏造しているのでは?」と疑われてしまいます。あり得ない話です。
しかし、さらにびっくりするのが、「知的財産」だからという言い訳も嘘だったこと。「企業子宝率」は知的財産登録されていませんでした。富山県議会の火爪弘子議員(共産党)が9月の同議会経営常任委員会で追及すると、県側は、知的財産登録がされていないと答弁。渥美さん本人に確認すると、11月22日付で「知財登録するかどうかは検討中」との回答があり、現在は登録されていないことを認めています。めちゃくちゃですわ。
政府が白書や審議会資料などで「企業子宝率」を紹介していることについて、内閣府の見解を聞くと、「企業の子育て支援環境を図る指標」などといって、指標を評価する回答。国からしてこうなんですからね。日本は非科学的なことばかりやっています。
●自治体や企業が国民の私生活へ介入することに
実を言うと、計算方法を秘密にしているという話は、記事だと3つめの問題点。先に二つ別のものが出ていたのですが、おかしいことがわかりやすく共感を得やすいということで、私は上記を強調しました。
記事でまず問題視していたのは、「結婚・出産の圧力になる」という点。数値目標を含む人口政策を国が取っていることについて、厚生労働省の施設等機関である国立社会保障・人口問題研究所の阿藤誠名誉所長は『学術の動向』(日本学術協力財団)17年8月号掲載の論文「日本の少子化と少子化対策」の中で、「先進諸国では例外的であり、日本では1941年の人口政策確立要綱以来である」と警告。
阿藤名誉所長は、安倍首相の数値目標設定について、「一歩間違えると、自治体レベルで個人(とりわけ女性)に対する結婚・出産圧力として働き」、「妊娠・出産に関わる女性の自己決定権に抵触する恐れがある」とも指摘してました。企業子宝率もこれと同様の問題があるというものです。
また、職場で調査をかけられる社員、とりわけ、同性愛者、子どものいない人、もちたいがもてない人、不妊治療中の人などさまざまな個人事情を伴う社員にとってプライバシーの侵害、セクハラ、パワハラになりかねないといった点も問題だとしていました。
●子どもができない人は国に貢献していない人?
これはそもそも「子宝」という発想が問題あるということでもあります。菅官房長官が結婚に対し、「たくさん子どもを産んで国家に貢献を」といった発言をしたことがありました。子どもができない安倍首相夫妻のような人たちを傷つける発言です。
(関連:
子どもがいない安倍首相夫妻は国家に貢献していない?菅官房長官の思いやりのない「国家に貢献を」「たくさん産んで」発言)
記事によると、子宝という概念は、工妊娠中絶反対団体も利用。人工妊娠中絶に反対する活動家を呼ぶセミナーや、「多子化」に向けた政策提言等をする日本賢人会議所という民間団体が、「子宝」という発想を奨励し、出産を後押しする提言を政府関係者に提出したそうです。
人工妊娠中絶禁止は、
人工妊娠中絶禁止国では9歳少女も出産 日本は少子化対策で反対論、野田聖子議員が主張で書いたように、保守派の人が好きなものでもあるので、こうしたゲスな利用法もむしろ大歓迎でしょう。
同じく自民党の政治家が出てくる
胎内記憶と「天使のほほえみ」と有村治子大臣 胎児は母親を選ぶでは、人工妊娠中絶反対とともに、赤ちゃんは母親の体内での記憶があるとか、赤ちゃんが自分の意志で母親を選ぶだとか言っている、ひと目でヤバイとわかる団体についての投稿でした。
結局、これも前半と話と同じく、非科学的という話。
世界で唯一減少の科学立国日本の研究論文 成果主義失敗で研究不正も増加か?では、研究に関連する支出が日本では軽視されていて、科学研究の凋落に繋がっているという話もやっていますし、今の日本政府の人たちは徹底して科学を嫌っているように見えます。
【本文中でリンクした投稿】
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