いわた書店の「一万円選書」が中小企業生き残りのヒントになる理由

2020/04/09：
●北海道砂川市「いわた書店」の「一万円選書」、7700人待ちの人気
●人生を振り返る質問に答えてもらったカルテをもとに店主が本を選ぶ
●いわた書店の「一万円選書」が中小企業生き残りのヒントになる理由


●北海道砂川市「いわた書店」の「一万円選書」、7700人待ちの人気

2020/04/09：ちょくちょく書いている書店の生き残り策。前回やったのは、コーチャンフォーのリラィアブル、リアル店舗書店でも成功ですが、「成功している」とされていたものの、その施策はさっぱり良さが理解できないもので不思議でした。

　コーチャンフォーは北海道の書店。コーチャンフォーの場合はチェーンの大型書店で、今回はもっともっと小さいのですけど、同じ北海道で砂川市にある「いわた書店」の「一万円選書」という試みは、これぞ中小企業の生き残り策！という納得できる内容でした。むしろ前回より役に立ちそうなケースに見えます。

　この「一万円選書」というのは、読書歴などを郵送すると、店主・岩田徹さん（66）がオススメの本を選んでくれるというサービス。これを聞いても魅力がわからない…と思う人もいるでしょうが、「自分では気づけなかった本が見つかる」と話題となり、全国から申し込みが相次ぐ好評ぶり。2018年4月にNHKの番組で取り上げられるとさらに注目され、2018年12月には約7700人待ちになっていました。
(申し込み殺到、7700人待ち！　大人気の「一万円選書」で10年後を変える (1/2) 〈AERA〉｜AERA dot. (アエラドット)　作田裕史2018.12.14 08:10AERAより)


●人生を振り返る質問に答えてもらったカルテをもとに店主が本を選ぶ

　一万円選書に申し込む人は、面白い本に出合いたいという人だけでなく、人生における行き詰まりの突破口を見つけたい、生きることに不安な心を本で支えてほしいと願う人が多いとのこと。読書歴や家族構成、人生観などが書かれた「カルテ」だけを頼りに、本を選びます。

　具体的には、年齢や家族構成、仕事内容の他、「これまで読んだ本で印象に残っている本BEST20」、、「10 年後にはどんな大人になっていますか」「これだけはしないと心に決めていること」「あなたにとって幸福とは何ですか」などの質問があります。これらは意外に深く考えさせられるため、人生を振り返る作業になるとされていました。

　岩田さんは、その人が何を思い、どこに悩みがありそうなのかを想像し、本を選びます。岩田さんがその人の年代に体験したこと、その時に読んだ本なども思い出しながら選ぶことで、ネット通販の「レコメンド機能」ではまず出てこない、自分では見つけられない本が選ばれる、と説明されています。


●いわた書店の「一万円選書」が中小企業生き残りのヒントになる理由

　さて、私がこれをなぜ「これぞ中小企業の生き残り策！」だと思ったのか？という話。実は、過去にやった成功している中小企業のポイントの一つが「目利き力」だったというのが最も大きな理由。例えば、倒産しない書店？恵文社一乗寺店、新井賞、ルヌガンガにヒント>の恵文社一乗寺店は、独自のセレクトが成功の理由のひとつでした。

　中小企業という言い方をしたようにこれは書店だけの話ではなく、必要ないから潰れる…酒商山田に学ぶ酒屋が生き残る方法とは？もそういう話。これは以前、＜中小企業の生き残り戦略・成長戦略 必要とされる目利きになる！＞というタイトルにしていた投稿でした。

　また、酒屋さんの酒商山田が全国のお店と取引していたように、「一万円選書」もまた全国の人を相手にできるということも魅力。特に地方の書店は相手にできる客の数が絶対的に少ないために、全国を相手に商売する効果が大きくなるでしょう。大きな投資が必要ではないため、リスクも低いと考えられます。

　選ぶのに時間をかけるためにこれで効率的にガンガン儲けられる！というやり方ではないです。効率重視というのは、目利き力が落ちて評判が下がり自滅することにつながるので、逆に「やってはいけないこと」でもあります。目利き力が問われるため、誰でもできる方法でもないでしょう。ただ、非常に良いやり方ですし、商売の考え方のヒントにもなる話だと感じました。


【本文中でリンクした投稿】
　　■倒産しない書店？恵文社一乗寺店、新井賞、ルヌガンガにヒント
　　■必要ないから潰れる…酒商山田に学ぶ酒屋が生き残る方法とは？

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