日本と違って中国では「~公害病」って話を聞かないなと思ったのが、きっかけの話。ただ、実際には関心が低いと言うだけであり、環境汚染による問題は起きまくっているようです。とはいえ、やはり日本のイメージとは異なる環境汚染でもあります。
何が違うのか?と言うと、工場による公害以上に、生活者自身の行動が理由による死亡原因の占める割合が多い感じであること。全世界的にもこうしたタイプの死亡原因はかなり多く、年間900万人の死亡者の4割くらいがそうみたいです。また、日本ではあまり報じられないものの、実を言うと、中国よりインドの方が大気汚染がひどいという話もいっしょにやっています。
2023/05/29追記:
●インドの方がやばい?たばこ20本分の汚染で数万人死亡、学校閉鎖 【NEW】
●日本の4大公害病の場合、患者数・死者数はどれくらいだったのか?
2022/10/20追記:日本の4大公害病の場合、死者数がどれくらい出たのか?というのを知りたかったのですが、意外なことに検索してもまとめているサイトが見つかりません。さらに、患者数すら書いていないサイトが多く弱りました。ただ、患者数については、
用語解説:4大公害病 いま地球がたいへん!で見れたのでまとめておきます。
<4大公害病の患者数>
・水俣病 2,200人
・第二水俣病(新潟水俣病、阿賀野川有機水銀中毒) 700人
・イタイイタイ病・ 190人
・四日市ぜんそく 1,700人
上記は飽くまで認定された患者数。なかなか認めてもらえないために、実際にはもっと被害者が多い…という可能性はありそうです。死者数の話があった
イタイイタイ病50年認定、半数が死後 検査は体に負担 毎日新聞 2018/5/8 06:30(最終更新 5/8 15:21)という記事では、認定が進まない状況も見えていました。
<四大公害病の一つであるイタイイタイ病(イ病)の患者認定で、審査を担う富山県が調べたところ、死後認定は1981年以降、33人に上り、同時期の全認定数69人の半数近くを占めることが毎日新聞の取材で明らかになった。イ病は骨軟化症を証明する必要があり、骨を削る検査など身体的負担が重く、被害者らが死後の病理解剖に認定を託すケースが多かった。過去に汚染の影響を受けた住民の高齢化は進んでおり、被害者側は「生きているうちに認定しなければ真の救済にならない」と批判している>
●環境汚染ひどい中国に日本のような公害病はなぜない?隠蔽してる?
2017/10/26:日本では、高度経済成長期に公害病が多く起きました。四大公害病というのが、教科書でも習いますので、知っている人が多いでしょう。四大公害病は、水俣病(熊本県、鹿児島県)、 新潟水俣病(新潟県、第二水俣病、阿賀野川有機水銀中毒とも)、四日市ぜんそく(三重県)、イタイイタイ病(富山県)の4つを指します。
で、ふと思ったのが、公害がひどいひどいと言われる中国で、日本の四大公害病に当たるものを聞いたことがないということ。ただ、そもそも公害を問題視する姿勢が弱いということで、深刻な公害があるのに問題化していないだけってことも考えられますけどね。
ということで、とりあえず、
中国の環境問題 - Wikipediaを見てみたのですが、やはり「~病」みたいな日本的な公害病事件はありませんでした。中国政府はいろいろと隠蔽している…というイメージが強いために、政府が隠蔽しているだけで本当は患者数が多いのではないか?と疑う人もいるかもしれません。ただ、判明している事実としては、日本と大きな違いがあると言わざるを得ないでしょう。
●大気汚染が深刻と報じられている都市部ではなく地方でなぜか死者
さらに、深刻とされている問題も、日本の環境汚染の感覚とかなり異なります。1990年代末の中国においては、中国人の死亡原因を都市部と地方を別々にみてみると、都市部においては悪性腫瘍が死亡原因の第1位であるものの、地方では呼吸器系疾患による死亡が第1位となっていました。
一般的に空気がきれいだと考えられる地方の呼吸器系疾患による死亡が多いというのは、都市部で大気汚染が深刻という日本マスコミによる中国報道と合いません。日本の公害のような工場型の汚染でもないようにも見えます。実際、地方の呼吸器系疾患による死亡が多い理由を見ると、日本の印象と全然違う説明です。
この呼吸器系疾患による死亡は、トウモロコシの葉などのバイオマスを室内で暖房や調理のために使用していたからという理由。一酸化炭素(CO)やアルデヒド、ベンツピレンをはじめとする数100種の有害物質が換気の悪い室内に充満し、最も室内にいる時間の長い家庭の主婦などが健康被害を受けていたと説明されています。「公害」というのは、主に事業活動が原因の健康被害のことを指しますので、このタイプの環境汚染は公害とはちょっと違う感じですね。
●世界では環境汚染で年間900万人死亡しているという事実
上記のようなことを考えていたところ、ちょうど
地球規模の環境汚染で年間900万人が死んでいるという事実 - GIGAZINE(2017年10月23日 19時00分00秒)というニュースが出ていました。これは中国に限らず全世界で…という話ですが、どのようなタイプの環境汚染による死者が多いのか?を知るのに参考になりそうな話です。
Lancetに掲載された論文によると、環境汚染により、実は世界中で年間900万人という人が命を落とし、何兆ドル(何百兆円)というコストが浪費されているといいます。この死者の数は、タバコや各種の病気、栄養失調、交通事故、そして戦争などより多いとのことでした。たいへん深刻です。
また、環境汚染によって命を落としている人の数は、人々の収入が低いレベルにある国と中間にある国だけで全体の92%を占めていることもわかりました。子どもがまだ母親の胎内にいる段階または幼児期に少量の汚染物質にさらされるだけで、生涯にわたって患うことになる病気や身体障害、早死などのリスク、さらに学習レベルや収入レベルの低下が引き起こされます。
この結果を見ると、やはり問題視されていないだけで公害は起きている、と言えそうです。ただし、実を言うと、こちらもやはりバイオマスの問題がかなり大きいようなんですよ。
環境汚染には、水源汚染や屋内で木などの燃料を燃やすことによる「伝統的な汚染」と、大気汚染や化学物質による「現代的な汚染」が存在します。「現代的な汚染」が占める比率が「伝統的な汚染」より多くなったのは、2000年代に入ってからということで、比較的最近の話。現在でも4割程度が「伝統的な汚染」だそうです。
●大気汚染が本当にひどいのは中国ではなくて実はインドだった!
なお、日本では大気汚染がダントツで悪い国といえば中国のイメージなのですが、インドの方がひどいともよく言われているんですよ。例えば、
【インド】大気汚染での死亡者数、中国を抜き世界最多に。対策が急務 | Sustainable Japan(2017/03/01)という記事が出ています。
この記事では、ボストンの健康影響研究所(HEI)とシアトルの医療統計評価機関(IHME)が共同報告を紹介していました。PM2.5被害での死亡者数は中国やインドが拮抗し、ともに100万人ほど。中国は2000年からほぼ横ばいなものの、インドは急激に悪化中で同じくらいになってしまいました。
さらに、慢性閉塞性肺疾患による死亡者数では、インドは2010年に中国を抜いてしまったために、世界ワーストに。こちらはインドが約11万人、中国が7万人となっています。両国の記事時点での人口差を考えると、インドの方がこの数字のイメージ以上に状況が悪いものと思われます。
ただ、もちろん中国だって全然良い状態ではないわけですから、中国を褒められるわけじゃないですけどね。今後もっと環境汚染への関心を高めて、対策に取り組んでいくべきだとは言えます。
●中国トングリ砂漠に不法投棄の黒い汚染物質が大量に…
2019/11/23:結局、日本型の公害病のような人々の被害の実態は判明していないのですけど、
中国トングリ砂漠に5万トンの黒い汚染物質 地下4mまで浸透 製紙工場の廃棄物(2019年11月20日 15時20分 大紀元)という記事を見かけたので追記。
中国にある寧夏回族自治区のトングリ砂漠で、約12万平方メートルの面積が黒い液で汚染されているとのこと。昔あった製紙工場が不法に廃棄した汚染物質が除去しきれていないためだといいます。刺激臭の強いドロドロとした黒い液などが、土壌の深さは20センチから4メートルにまで汚染しているとされていました。
前述の通り、人々への被害は不明。ただ、現地のボランティアは地下水の汚染を心配しているとのこと。これを報じている「大紀元」は実を言うと反中国政府系のマスコミであり、デマを流すことがあるのですが、住民はすでに、地下水汚染を指摘していて、地域の樹木が枯れたともされていました。今後、人的被害も判明するかもしれません。
●研究者が調査…電気がたくさん必要な中国では環境汚染が増えて当然?
2020/01/16:
中国の火力発電による汚染物質排出量が大きく減少 研究で判明:AFPBB News(2019年10月13日 13:47)というニュースを読んだので追記。これは古いニュースなので、日本で安倍政権の小泉進次郎環境大臣が石炭火力発電に固執したことで国際社会から批判を浴びる前の話です。
中国と英国の研究者が、英誌「ネイチャー・エネルギー」に発表したリポートによると、中国が石炭火力発電ユニットに対して行った超低排出改造は著しい効果を上げ、2017年末時点で、全てのタイプの火力発電ユニットが排出する二酸化硫黄などの汚染物質の量が大きく減少したと指摘しました。2017年の全タイプの火力発電ユニットが排出する二酸化硫黄や窒素酸化物、ばいじんの量は2014年と比べていずれも減少しています。
記事では強調していなかったものの、一方で中国では発電量が増え続けているというのも重要な情報でしょう。これはつまり、中国では発電量増加を犠牲にはせず、環境への配慮と両立させているということ。「発電量が多く必要だから環境汚染もやむを得ない」といった言い訳にはしていないようです。環境汚染は気にしない!と言われてしまう方が困るので、とりあえず、この中国の方針は世界にとっては望ましい方向性だと言えるでしょう。
●インドの方がやばい?たばこ20本分の汚染で数万人死亡、学校閉鎖
2023/05/29追記:中国よりやばいという説もあるインドについてももう少し書いておこうと思い、「インド 環境汚染」で検索。多数の記事が出てきて選びたい放題でしたが適当に選んで、
1日息をすると、たばこ20本分? インドの首都で深刻な大気汚染:朝日新聞デジタル(ニューデリー=奈良部健 2021年11月30日 11時30分)という記事を紹介します。
<スイスの空気清浄機メーカー「IQエア」の調査によると、世界で大気汚染の深刻な30都市のうち、22をインドの都市が占める。
視界が悪くなるため、交通事故が増える。1日息をするだけで20本のたばこを吸うのに等しいと指摘する専門家もいる。肺炎やぜんそく、脳卒中を引き起こす可能性もある。環境保護団体グリーンピースの分析によると、ニューデリーでは大気汚染の影響で毎年数万人が死亡しているという>
インドの首都ニューデリーにおける大気汚染の深刻さが大げさではないとわかる話があります。なんと記事が出た当時、原則すべての学校が閉鎖され、在宅勤務を奨励。火力発電所の一部も運転を停止。それでも、状況が改善しなかった場合に備え、全住民を対象にした外出制限などのロックダウンも一時は検討されたといいます。
<人口約2千万人の首都では、気温の下がる10月下旬ごろから上昇気流による空気の循環が発生しにくくなり、白く霧のようにかすむ。近郊で行われる野焼きの煙のほか、車の排ガスなどが滞留することで汚染が深刻化するとされている>
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