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新興国企業による企業買収 日本は敗北、イギリスは勝利と評価


 古い記事ですが、企業買収に関する話。 
2012年9月12日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
なぜ英国で製造業が拡大しているのか 新生「ものづくり帝国・UK」誕生の秘密を探る

 以前、英経済紙「The Economist」の「新興国企業と英国:新しい特別な関係」という記事を紹介した。

《新興国は、自国の政治的リスクを避けるために英国市場に積極的に投資する。インドのタタ財閥は、コーラス(旧ブリティッシュ・スティール)、ジャガー・ランドローバーなどを総額150億ポンド(約1兆8000億円)で買収した。新興国からの投資で、英国市場の規模は急拡大している。これは、米国に比べて規制が少なく、企業買収が簡単なオープンな市場だからだ。また、新興国にとって、英国のブランド力と高度なノウハウ・知識の蓄積も大きな魅力的だ。その結果、新興国に買収されても、英国企業の本社・工場は国内に留まっている。英国と旧植民地である新興国との「新しい関係」は、「オープンな英国」の勝利を示すものだ。》
http://diamond.jp/articles/-/24618

 「オープンな英国」の勝利。イギリスは買収されることを勝利とみなしています。
 一見、違和感のある記事だ。英国といえば、製造業が衰退し、金融・法律、会計、コンサルタントなどの高度サービス中心に移行した国とされる。だが、この記事は、インドなど新興国の企業による英国製造業の積極的買収と、英国内工場の操業によって、英国の製造業は拡大しているという。

 日本では一般的に、外資による日本企業の買収を「敗北」と捉えがちだ。しかし、英国では「勝利」と言い切っており、驚きである。

 日本なら大騒ぎでしょうね。

 どの記事か忘れたのですけど、アメリカでも中国企業による買収を歓迎する記事がありました。

 ただ、アメリカでは中国企業を警戒するような政治的な行動があり、歓迎一色ではなさそうです。たぶん経済誌・新聞などのメディアと政治家・一般人では温度差があるんじゃないですかね?

 また、衰退した英国の製造業に新興国が魅力を感じるのも、日本人としては違和感を拭えない。

 日本では、国内の高コスト体質のために製造業が競争力を失い、海外に工場を次々と移している。海外からの日本の製造業買収の動きは、ルノーによる日産の買収などを除けば、非常に少ない。英国も日本同様、労働コストは高い。なぜインド、中国などの新興国企業は積極的に英国に進出するだろうか。

 むしろ進出してほしくない日本人の気風からすれば願ってもないことですが、日本は魅力ないのかもしれません。

 イギリスの方の進出理由は以下です。
 タタ・モータースはWMG内に研究開発拠点を持つ英国の自動車メーカー、ジャガーを買収した。その理由は、「有名ブランド」のジャガーを巨大市場であるインド、中国で販売し、莫大な利益を上げることだ。但し、タタ・モータースはジャガー・ブランドを手に入れた後も、ジャガーの英国工場をそのまま維持して操業している。エンジンや高品質の自動車部品は、「高い技術力」「質の高い労働力」のある英国工場で製造し、インドに送る。インドの工場でそれらを組み立てて、インド、中国などアジア地域に販売している。また、北米・欧州への輸出は、買収後も英国の工場から行っている。

 要するに、タタ・モータースは、「有名ブランド」、「地理的条件の良さ(欧州、北米に加えて、中東、アフリカ、アジアをカバーできる)」「知識・情報の集積」「高い技術力」「質の高い労働力」を手に入れるために英国に進出し、ジャガーを買収した。また、マリンソン博士によれば、英国の「市場への参入規制の低さ」「英語という共通語の優位性」「政治的リスクの低さ」も、英国進出の理由であるという。

 特に「政治的リスク」は、日本人が想像するよりも重要度が高いようだ。新興国では、政権が安定せず、政変によって政治制度・経済制度が簡単に変わり、企業の財産の没収などが容易に起こりうる。だから、新興国企業は、安心してビジネスができる先進国に進出したがるというのだ。

 これで日本の不動産・土地 台湾・中国など外国に人気で海外資金が殺到の話を思い出しましたが、企業買収はともかく不動産は日本も新興国に人気でした。

 ただ、繰り返すようにこれは日本国民にとっては敗北です。

 そういえば、バブルの時代に日本企業がいろいろ買い漁っていました。裏を返せば、あれは日本人にとっては侵略行為だったということでしょうか?というか、このときはアメリカもそういう報道していましたね。


 イギリスでは大学も新興国企業に寛容というか、積極的に取り込もうとしているようです。
 ここで、ウォーリック大学のような英国の大学が、タタ・モータースのような新興国の企業を受け入れて、研究開発施設を設置するのはなぜだろうかという疑問が生じる。日本では、かつて新日本製鉄とポスコ(韓国)、三菱自動車と現代自動車(韓国)など海外企業との協力関係について、日本企業の高度な技術が流出するとの批判があった。日本には、「技術を盗まれる」という考え方が根強く、海外企業に対して閉鎖的になりがちだ。マリンソン博士に我々の疑問をぶつけてみた。

 マリンソン博士は「頑なに自社の技術を守ろうとするより、世界中のさまざまな企業、大学とアイディアを交換することがより重要だ。世界中には多様な考え方、価値観、知識、技術をもつ優秀な人材がいる。彼らを集めて議論を繰り返すことで、これまでになかった新しいいいものが生まれる。海外の企業と協力関係を築くことにリスクなどない」と答えた。

 また、マリンソン博士は多くの日本企業が研究開発部門を日本に残していることが、むしろ問題だと指摘した。WMGは、ホンダ、トヨタなどの多くの企業や大学に、共同研究開発を呼びかけているが返事は皆無だという。特に、英国に工場があり、ルノーと資本関係にある日産には、電気自動車の共同研究開発を呼びかけ続けているが、実現していない。マリンソン博士は、「日本企業は大学を信頼せず、自社内で研究開発を続け、日本の大学も企業との共同研究開発に消極的だ」という印象を持っている。

 マリンソン博士は、企業が研究開発を国外で行うことのメリットを指摘する。さまざまな国・地域で研究開発すれば、よりその国・地域のマーケットに適しがモデルを開発できるからだ。

 例えば数年前、欧州でホンダ・シビックのロードノイズ(車が走行するとき、タイヤと路面の接触によって発生するゴーといった騒音)が大きすぎると不評だった。調査の結果、「欧州では、日本よりロードノイズが少ないことが好まれる」という、日欧の好みの違いが問題だという結論になった。

 マリンソン博士は、「日本の自動車企業はベストクオリティーを徹底的に追究するが、それは1980年代の成功モデルだ。グローバル経済では、国・地域ごとのマーケットで、ユーザーがなにを望んでいるかを的確に把握して、製品の研究開発を行わなければならない」と述べた。そのために、企業は海外に出て、より国・地域のニーズに近い場所で研究開発活動を行うべきなのだという。(中略)

 英国内にはBMW、フォード(プレミアオートモービルグループ)、ゼネラルモーターズ(ボクスホール)、ホンダ、日産、PSA、トヨタ、フォルクスワーゲン(ベントレー)という8つのグローバルな自動車メーカーが工場を設置している。また、インド、中国など新興国の企業も自動車産業に進出している。ロールス・ロイス、ミニ、ジャガーなど「英国ブランド」の高い人気もあり、実は活況を呈している。これは英国内の労働者の雇用拡大など、不況に苦しむ英国経済を下支えする役割も果たしている。

 更にいえば、英国は軍事大国のベースを生かし、民間航空企業や空軍、陸軍、海軍の装備を製造しているBAEシステムズ、航空宇宙エンジン、発電システムを製造するVTグループ、GKN、ロールス・ロイスなどのハイテク企業が世界的に高い競争力を誇っている。英国は金融の国から、製造業の国へ次第に変化しつつある。それも、旧植民地である新興国など、世界中のヒト、モノ、カネを呼び込んだ、新しい「ものづくり帝国」を構築しつつあるといえるのではないか。

 繰り返すが、「ものづくり帝国・UK」が構築されてきた要因は、「政治的リスクの低さ」「地理的条件の良さ(欧州、北米、中東、アフリカ、アジアをすべてカバーできる)」「知識・情報の集積」「高い技術力」「質の高い労働力」「ブランド」「英語」「参入規制の低さ」である。興味深いのは、参入規制と英語を除けば、これらの条件のほとんどを日本が持っていることだ。

 リーダーシップに欠けるとはいえ、世界的に見れば日本の民主政治の基盤は抜群に安定し、政治的リスクは最も低い国の1つだ。地理的には中国・北米の巨大市場をカバーする優位性がある。高度な技術・知識・情報・人材の集積に対する高い評価はいうまでもない。SONY、トヨタ、日立など日本ブランドの評価も高い。本来、新興国にとって、日本は英国に劣らず魅力的であるはずだ。

 また、新興国企業に限らず、例えば中国に強いベンツ、フォルクスワーゲンなど先進国の自動車企業が、研究開発拠点を日本に置き、エンジンや高品質部品の製造を日本で行い、日本から巨大市場・中国に輸出することが、あってもいいのではないか。「技術を盗まれる」リスクが高い中国より、日本のほうが安全だ。日本経済の課題の1つは、研究開発と高品質製品の製造拠点の国内維持だとされる。ならば、日本企業だけでなく、外資の研究開発と高品質製造拠点も日本に設置されれば、より日本を高度な知識・技術・人材の集積する拠点とできるのではないか。

 「日本は魅力ないのかもしれません」と先に書きましたが、本来そうではないってことですね。

 しかし、何度もいうようにイギリススタイルは日本人の考え方に合いません。
 これは、国内製造業の雇用拡大に、間違いなく貢献し、経済成長につながるものだ。その実現には、規制緩和の徹底に加えて、輸出条件をよくする「TPP参加」や「アジア地域における円の国際化」などの政策を実行する必要があるだろう。これは、現在の単純な「円安政策」一辺倒の輸出産業保護策に終始する日本政府の経済対策よりも、より包括的な空洞化対策の政策パッケージとなるのではないか。しかし、その実現には大きな障害があるかもしれない。それは、外資参入を「敗北」と考えてしまう、日本人のメンタリティである。

 イギリスのやり方が正しいのかどうかはわかりませんけど、結局、日本の場合はここにたどり着きますね。


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