●農協は「TPP反対」というスローガンを有効に使っている
2021/09/22:<「TPP反対」というスローガンを有効に使っている農政>(金野 索一 2013年2月20日(水) 日経ビジネスオンライン)という圃場に長い記事を読んだときに書いた投稿を見直しました。当時は民主党政権でTPP反対が多かったのですが、自民党政権になると手のひら返しで反対の声は少なくなり、日本もTPPに参加しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130213/243710/
2013/4/11:<「TPP反対」というスローガンを有効に使っている農政>ということで、記事のタイトルにはTPPが入っていますが、実を言うと、TPPの話は少なめです。「有効に使っている」っていうのは農政というか農協が…という話で、反対活動にお金をつぎ込んでいるけど、その分それ以上の見返りを得ようとしているという説明。私はあんまりおもしろいと思わなかった部分でしたが、編集部の推しはこれだったようです。
先にインタビューを受けている浅川芳裕さんという方のプロフィールを紹介しておきます。
<山口県生まれ。月刊『農業経営者』副編集長。(株)農業技術通信社・専務取締役。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ・UAE)、Sony Maroc(カサブランカ・モロッコ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。若者向け農業誌『Agrizm』発行人、ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長、農業総合専門サイト『農業ビジネス』編集長を兼務。著書『
日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率
』(講談社+α新書)は15万部のベストセラーとなる。
近著に『
日本の農業が必ず復活する45の理由
』(文藝春秋)、新刊『
TPPで日本は世界1位の農業大国になるついに始まる大躍進の時代
』(KKベストセラーズ)がある>
●農業人口が減ることは良いこと?農家を多い社会を考えると…
さて、タイトルになっていた<「TPP反対」というスローガンを有効に使っている農政>以外の話です。日本の農業の現状と農業政策全般の話を聞かれて、以下のように回答している話がありました。以前書いた
日本の食糧危機は嘘で、実際には過剰 農業問題と食糧問題は同時成立しないと絡みそうだなぁという話でした。
<まず、人類に占める食料生産をする人口の割合が減少して、人類は豊かになってきたということです。基本的にこの事実を認めていないのが農業政策であり、減少する農業人口をいかに増やすか、というのが議論の入り口であるところに問題があります。具体的にいえば、江戸時代であれば4人に3人が農民という割合が、戦後は4人に1人ぐらいになり、現在では、兼業農家を含めても100人に3人の割合です。
農業生産性の向上のおかげで、97人が農業に従事せずとも、食料を心配せずに自分の役割を果たせるようになった>
インタビューアーは「3人で100人分をつくれるようになったという意味で、豊かになったというお話ですね」という言い方をしています。逆に「できるだけ農業に従事した方がいい」を実践できた社会を考えてみると地獄でしょう。農家はたくさんして消費者が少ない…ということになるために儲りません。農家が貧しくなる政策です。
●農家の貧困を解決すべき…どころか、農家は一般人より実は高所得?
このように「農家を増やすための政策」が問題なのは、農家の人の豊かさを置き去りにしてまっていることみたいですね。<そもそも農家が他の職業につく人より貧しいという貧困問題を、社会的な富の再分配によって解決をはかろうというのが、先進国における農業問題>だとも言っていました。
ところが、実はこの農家の貧困問題はすでに解決しているとのこと。<農家の平均世帯所得が一般の平均世帯所得を超えてしまったことで、問題は解決したといえます>としていました。これは最近の話ではなく、「昔から」だといいます。ここは、数字のマジック的なものはない?と、ちょっと信じられなかった部分です。
<先進国の一般の世帯所得を見たとき、日本の平均を100とすると、日本の農家は、多分120ぐらい、アメリカは150ぐらいです。これは純粋所得だけの話ですが、農地や設備、納屋、持ち家等の資産も含めて考えるとサラリーマン家庭より圧倒的に多いです>
<1980年代です。だから、その時点で農業政策は終わっているはずなのです。経済学的にも証明できます。要するに、高度経済成長が起こると、最初にまず食費が増えます。ですから国民所得が上がると農業所得も上がります。国による米価への補てんなど、所得再分配政策もありました>
●建設族と農政族の政治家とが結びついて無駄なものを作っている?
ただ、お金に関しては、「農家のバランスシートにおける問題」という支出の話もありました。こちらを話を聞くと、金銭的な問題があるようにも見えます。それともこれは実際に借金があるという意味ではなく、税金の使い方に無駄があるということですかね。政府が借金漬けにして働かせているとすると、奴隷・人身売買的なしくみで問題なんですが…。
<例えば、過去の土地改良費です。田んぼを拡大したり、水路を通したりする際の費用です。農家負担は5%ぐらいですが、もともとの総工費が500億円かかっていると25億円になります。農家が50軒しかないと、1軒当たり5000万円の負担となり、それを35年償還とすると、年間約150万円を返さなければならないのです。別に農家が望んだ農地改良ではなくても何兆円規模で残っています>
<農家主体で事業計画を立て、判断し、それに公共性が高いのかどうかも踏まえ、最終的に基礎自治体か、県で判断するようにするのです。今はどちらかというと、国の直轄交付金と、建設族と農政族とが結びついており農業の話ではなくなっていますね>
土地改良などが全部無駄ってことはなく、必要って場合もあるからあれですけど、政治家は農家のためにと言いながら道路を作るなんてことをしていますからね。私の地元は北海道の田舎で、都会の人の税金を無駄遣いしているところで、車があまり通らない舗装道路がいっぱいあります。そう言えば、新潟なんかも新幹線から見ると田んぼの中の道路があまりにも立派で驚いたことがありました。
●農家は減っているの?増えているの?農業雇用人口は増加という謎
なお、最初の農業人口の話ですが、見方によっては、そう減っているわけではないのかもしれません。一見、矛盾する話が後半で出てきました。「農家人口の減少に関してですが、その内訳はどうなのでしょうか」という質問に関して、「農業雇用人口はふえています」という話をしていたんですよ。わかりづらくなっています。
<農業経営者人口は減って、雇用人口がふえているのです。農水省用語では農業労働力といいます。彼らは、農場で仕事をしたり、パッキングしたりしていますが、農業就労人口には含まれていません。今は、家でたまたま農地を持って生まれた人が、年間1日以上働けば、農業就労人口と呼ばれているのです。ですから、農業人口としては、農家生まれで現在予備校生という人も含まれており、農業を全くしていないけれども、世帯員であれば入っていることもあるのです>
これ、農業経営者人口+農業雇用人口という話になっていないので、全体としては増えているんだか減っているんだかよくわからないですね。とにかく"農業人口としては、農家生まれで現在予備校生という人も含まれており"なんて話もあるように、今の農林水産省の調査はいい加減で、実態を把握しづらくなっているようです。
【本文中でリンクした投稿】
■
日本の食糧危機は嘘で、実際には過剰 農業問題と食糧問題は同時成立しない【関連投稿】
■
日本農業の問題は政治 農政が今の農業を作り、未来をダメにする ■
日本の食料自給率(カロリーベース)の推移など ■
日本の食料自給率問題 肥料(特にリン)は輸入頼りであり、自給は困難 ■
農業法人TPP賛成は34%、反対は66% 国際競争力に自信があるが37% ■
食べ物・飲み物・嗜好品についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|