●日本の食べ物はすごい!と言いつつ競争に負けると主張する矛盾
2021/09/22:<「TPP反対」というスローガンを有効に使っている農政>(金野 索一 2013年2月20日(水) 日経ビジネスオンライン)という非常に長い記事を読んだときに書いた投稿を見直しました。当時は民主党政権でTPP反対が多かったのですが、自民党政権になると手のひら返しで反対の声は少なくなり、日本もTPPに参加しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130213/243710/
2013/4/12:記事のタイトルは<「TPP反対」というスローガンを有効に使っている農政>だったのですが、TPP関連の話はあまりなかったんですよね。今回はそこらへんの話をまとめて紹介します。まず、タイトルになっているところを簡単にまとめると、農協は反対活動にお金をつぎ込んでいるけど、その分それ以上の見返りを得ようとしているという説明でした。
月刊『農業経営者』副編集長の浅川芳裕さんは、TPP自体は賛成というよりは当然という回答。ただ、TPPがなくても自分から関税を下げていけば良く、なくてもできるため、TPPじゃなくてもいいという考え方。要するに、関税で日本の農家を守るよりもむしろ積極的に自由貿易しようという考え方のようです。
<イギリスでは、1846年に穀物法を廃止して、フランスやドイツから自由に穀物を買えるようにしました。それによってイギリスの農業は得意分野を発揮できるようになり、繁栄しました。(中略)
これだけ日本人が日本の食事はおいしいと言っているのに、世界に輸出できない、普及しないということになります>
「農産物の関税がなくなるというのが、TPP反対派の最大の理由ですが、私にとってはそれが一番の賛成理由です。なぜなら関税がなくなることによって食品が作りやすくなるからです」ともおっしゃっていました。なぜ?と不思議でしたが、インタビューアーは「食品ビジネスの上での原料が安くなるから」とフォローしています。
なるほど!と思ったものの、「安くなるというより、適性品質のものが適正価格で買えるということです。今が不当に高いということです」との説明。要するに、今はわざわざ日本は関税で高い原料を買って、食料ビジネスを不利にしているという話です。
●TPPで日本の農業は栄える パスタ輸出国イタリアは小麦輸入国
ここから後、さらに刺激的というか、過激というか、本当にそんなうまく行くの?という信じられないバラ色な話が出てきます。
<わかりやすい例でいうと、
世界で一番小麦の輸入が多いのはどこかというと、イタリアで700万トンぐらいを輸入しています。小麦といったら、彼らのパスタの原料です。日本でいえば、米を全部輸入しているようなものでしょう。人口が日本の半分ですから、日本人が食べる米の倍ほどを輸入しているのです。
どうしてかというと、彼らは自分たちのパスタという食文化を世界に広めているからです。世界もイタリアが食文化という付加価値をもって買ってくれるから、イタリア向けに作り、イタリアに多く売るのです。それによって、
イタリアの小麦の生産量が減っているかというと、過去10年間で輸入が200万トン増え、生産量も100万トン増えています。つまりパスタの輸出が増えているということです>
これは、製造業における加工貿易みたいな考え方ですね。外国から原材料または半製品を輸入し、これを自国で加工して製品をつくり、それを輸出する貿易形態。日本の製造業が得意とされてきたやり方です。日本の食品が本当に高品質ならできそうな気がしないでもありません。成功例もイタリアだけではないようです。
<アメリカのジャガイモも同じです。
アメリカは世界最大のジャガイモ輸入国であると同時に、世界最大のフレンチフライ輸出国なのです。結果、国内のジャガイモ農業は右肩上がりなのです。
対する日本はコメも小麦もジャガイモも輸入規制しているのに、国内生産は右肩下がりです。市場を国内に限定して、発展して産業はないのです。
本来、日本のような食品加工が発達した先進国では、市場をオープンにすれば、輸入が増えれば増えるほど、輸出が増えるのが「世界の常識」です。日本人が好む「自給自足」という利己的な世界観をそろそろ脱し、農業でも「他給自足」「自給他足」のフェアな精神で世界に貢献すべきときでしょう>
TPPの一番のボトルネックが農産物の関税の撤廃です。ただ、浅川芳裕さんは、むしろ農産物の関税の撤廃をした方が日本は良くなるという考え。この反対論の次には、山河が、故郷がなくなるとか、そういう情緒的な反応が来るそうですが、関税撤廃しているEU諸国内でもそれぞれの国で独自の農業が健全に発展していると反論しています。
そもそも「山河が、故郷がなくなる」というのは、もっと極端でめちゃくちゃな主張ですけどね。なお、下げ方は10年から20年かけて、年率5%から10%ずつゆるやかに実行することが重要としており、これは意外に現実的。他の経済政策でも言えるのですが、急激に変化させるのは副作用が大きいので、少しずつ転換していくというのが大事なのです。
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