生け簀や寝かせた魚の話をまとめ。<「初セリのマグロ入荷」の張り出し でも11日も経ってるんですけど…>、<生簀の魚はまずい?とれたての魚より寝かせた古い魚がおいしい説>、<完全に勘違い!一流は熟成した古い魚、生け簀・とれたては二流?>、<ただし好みによる…東日本は古い魚好き、西日本は新しい魚好き>などをまとめています。
2022/11/08追記:
●それでもやっぱり生け簀がいい!生け簀を売りにした宣伝が成立 【NEW】
●「初セリのマグロ入荷」の張り出し でも11日も経ってるんですけど…
2013/4/12;私は「魚は腐ってからがむしろおいしいんだ」という極端なことを聞いたことがありましたので、
魚はとれたてが本当にうまいのか(日経新聞 2013/3/29 6:30 商品部 吉野浩一郎)という記事がその話かな?と気になりました。
「腐ってからがむしろおいしい」だと、この前書いた
ろ過水・純水はおいしくない?7度ろ過した水の評判が最悪も、ちょっと思い出すなかなか意外な話だと思います。
なお、このことを記者が気にした理由は、1月のすし店での出来事。「初セリの大間産本マグロ、入荷しました」という貼り紙に期待したのですけど、冷静になってよく考えてみると、初セリのマグロの水揚げは昨年の12月29日。逆算すると11日も経っています。
冬場の津軽海峡産というマグロの最高峰とはいえ、これほど時間がたって品質が劣化していることはないのか、と不安になったそうな。ところが、実際に食べてみると、"不安はあっさり吹き飛んだ"といいます。「赤々とした身は独特の濃厚な酸味を口内に充満させ、トロは綿菓子のようにとろけていった」と、食欲をそそる飯テロみたいなうまい表現をしていました。
●生簀の魚はまずい?とれたての魚より寝かせた古い魚がおいしい説
しかし、一番おもしろいのはこの後です。「おいしいですねぇ」と幸福な余韻に浸る記者に板前さんはなんと「明日はさらにいい感じになるんじゃないですか」と言ったとのこと。すでに水揚げから11日も経っていたにも関わらず、板前さんはさらに古くなった方が良いと言っていたわけです。
古すぎるのでは?と疑っていた作者である記者さんですが、「新鮮な魚ほどおいしいというわけではない」というのは、魚の取材をしていると、ときどき聞く言葉だったとはしていました。実感したのはこのときが初めてだったようですけど、知識としてはあったようです。
いけすで泳いでいる魚を目の前で出してさばいてくれる生け作り。いかにも食欲をそそりますが、江戸前の高級すし店の大半にいけすはないといいます。むしろ、高級店は魚を寝かせてから出すのを基本としているということで、むしろ生け簀・とれたて…というものは二流な感じです。一流は古い魚を使うのかもしれません。
●完全に勘違い!一流は熟成した古い魚、生け簀・とれたては二流?
一流は古い魚、生け簀・とれたては二流という印象は、この後の話でさらに強くなります。例えば名店の代名詞的存在の「すきやばし次郎」。店主の小野二郎さんのネタへのこだわりや仕込みの手法を紹介した『すきやばし次郎 旬を握る』(文春文庫)では、以下のような記述がありました。
「買ってきたマグロが若ければ、何日か氷漬けにして熟成を待たなければなりません。(中略)味と香りがピークに達するのは、熟成が進んで、はつらつとした身の赤さが少しクスみ加減になる頃で、特に大トロや中トロはそうです。酸化する一歩手前が味わい深い」
「生き腐れ」の言葉があるほど劣化が早いサバでも一晩寝かしてから握るのが基本だというのです。また、魚の鮮度とうまさの関係はどのようなものかを、マルハニチロホールディングス中央研究所の協力を得て、科学的に追究した『江戸前鮨 仕入覚え書き』などの著書がある第三春美鮨の長山一夫さんも同じ結論。やはり「魚の鮮度の象徴であるプリプリ感とうまみは一定の期間、反比例する」というものでした。
●実際にやってみた…初日と3日目でワラサはほとんど別の魚状態
一般のお店で手に入るお魚の場合、何日経っているかわかりませんので、断定しづらいと思うんですけど、記者も実験。購入日から3日間、3種類の魚の刺し身を朝晩2回ずつ食べます。築地の仲卸にならい、保存するときはペーパータオルを巻きました。魚が空気に触れて乾いたり、ドリップが出たりするのを防ぐのが理由です。
最も変化が分かりやすかったのはワラサで、初日と3日目ではほとんど別物だとのこと。おもしろいですね。当初の歯応えがなくなっていくにつれ、味は濃くなったといいます。ちなみにこのワラサというのは、出世魚ブリの呼び名の一つ。サワラとは違います。
ブリ - Wikipediaによると、関東の場合、モジャコ(稚魚)→ワカシ(35cm以下)→イナダ(35-60cm)→ワラサ(60-80cm)→ブリ(80cm以上)となるそうです。
記者が実際にやってみた…という実験の話に戻ると、ワラサ(ブリ)ほど顕著ではなかったものの、マダイも時間の経過とともに身が凝縮し、味わいが増した印象だといいます。当初、薄味だったマグロも3日目にしてもっともうまみが出たそうです。だんだんと味わいが増す…と言われると、めちゃくちゃいい気がしますね。
●ただし好みによる…東日本は古い魚好き、西日本は新しい魚好き
ただし、これは個人の主観であり、東西で好みも異なるといいます。大手鮮魚チェーンの中島水産によると「東日本では熟成によるうまみが評価されるのに対し、西日本では歯応えが求められる」とのことでした。こうした地方による好みの違いがあることが、またおもしろいところですね。
なので、多めに買って食べ比べすると楽しいかもしれません…と当初は書いていました。記者がやっていたのと同じように、1日目と3日目を比較する…といった食べた方ですね。同時に楽しむとすると、3日前に買ったものと、当日同じお店で買ったものを同時に食べるといった方法でも良いでしょう。
ところが、その後読んだ記事によると、「寝かせる」はプロの技であり、素人がやるのはちょっと危険だとしている専門家もいたことを追記しておきます。「一般のお店で手に入るお魚の場合、何日経っているかわかりません」と最初のときにも書いたように、一般人には難しいかもしれませんね。(2018/07/06追記)
●それでもやっぱり生け簀がいい!生け簀を売りにした宣伝が成立
2022/11/08追記:検索していて、ホテルニューオータニ博多が、生け簀を売りのひとつにしたPR記事を出していたことを知りました。ここで書いていたように、「生け簀の魚はまずい」という説があるのですけど、それでも生け簀に良い印象を持っている人が多いため、売りになり、商売になるというのは確かなんでしょうね。
・【ホテルニューオータニ博多】九州各地の食材を使った料理の数々を堪能!博多グルメ満喫プラン PR TIMES / 2022年8月22日 18時15分
<ホテルニューオータニ博多(福岡市中央区渡辺通1-1-2 総支配人:山本 圭介)では、昭和36年創業の老舗料亭などの、博多グルメが堪能できる宿泊プランを2022年9月1日(木)より販売いたします>
<昭和36年に福岡の炭鉱王 中島徳松氏の持ち家を改装し、福岡市中央区大名に鳥料理店として創業しました。福岡店の縦12メートル、横3メートル、深さ1.2メートルの生簀では、九州各地で水揚げされたさまざまな活魚が常時30種類以上泳ぎ、目で、耳で、そして舌で、お越しいただくお客様の心を満足させます>
https://news.infoseek.co.jp/article/prtimes_000000038_000027824/
おいしいかどうかは別として、生け簀にワクワク感があるというのなら、個人的にはわかりますね。水族館的なものの時点でも楽しい上に、泳いでいた魚をその場で食べるというイベント体験がまた良いのでしょう。人間の味覚はあまり信頼できず、いろいろ騙されますし、生け簀のせいでおいしいと感じる部分もあるかもしれません。
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