2021/10/22追記:
●7割を無駄にして環境破壊?ガソリン車とEVのエネルギー変換効率 【NEW】
●EV化すると日本の自動車関連産業が終わり、日本経済が壊滅的に 【NEW】
●出遅れ日本はEVでもう海外に勝てない でも水素エンジン車なら… 【NEW】
2022/05/28追記:
●値下がりが期待できない燃料電池車より水素エンジン車! 【NEW】
●本当に普及すると電力が大幅に足りなくなるからEVには無理がある
2021/09/28:最初に昔、別のところでも使ったEVのテスラ批判の記事の話から。
テスラのトレーラー、充電に4000戸分の電力必要(Peter Campbell and Nathalie Thomas in London FINANCIAL TIMES 2017年12月8日)は、作者がEVについての理解が足りないと指摘された一方で、コメント欄では記事の主張に賛同する声も多かったです。
賛同を得たのは、記事で出ていた「これほどの電力需要を電力システムに組み入れていくには、賢いやり方と非常にそうでないやり方とがある。いずれにしても、今後、道路を走る自動車がすべてEVになっていくことを考えれば、極めて大規模な新しい電力インフラが必要になっていくということだ」というコメント。EVが一段と普及すると今の供給量では不足するだろうということですね。この懸念はわかるような気がします。
英国の電力系統を管理する送電会社ナショナル・グリッドは、最も極端なシナリオとして、EVは2050年までに英国のピーク電力需要をさらに最大18ギガワット(ギガは10億)押し上げる可能性があると推定しています。これは、英南西部に現在、建設中のヒンクリーポイント原子力発電所の発電能力のおよそ6倍に相当するとのこと。今の6倍になるというわけではなく、建設中の原発の6倍なわけですですけど、最悪の場合はそれだけ足りなくなるよという話。これを受けて、コメント欄では勝利宣言している方も見られました。
<これで、日本のトヨタやホンダの「燃料電池車」と、マツダ新エンジン「SKYACTIV-X」の出番が出てくるというわけですね。遠い将来は電気自動車が有利としても、今世紀中は「燃料電池車」とマツダ新エンジンの活躍する場が大幅に残されていそうです>
<はっきり言って
一部の人間がEVを使用する状況と、大多数の人間がEVを使用する状況は
根本的にモデルが違う訳です
箱庭で通用するから実際の都市でも通用するなんて事は有るはずが無い>
●国沢光宏氏「数年内に燃料電池車はコストダウンして普及進む」
一方でその後水素燃料電池車(FCV)の方の話を全く聞かなくなったので、普及論も消えたのだと思っていました。ただ、検索すると、全然そんなことはない模様。これも別のところで紹介しているのですが、
水素はディーゼルの代替? EVでは実現不可? FCVが普及確実なワケ - 自動車情報誌「ベストカー」という記事が、2020年11月9日に出ていました。
記事冒頭の編集による本文紹介部分でも「なかなか普及の気配がないようにも見える」と書いていて、私と同じ印象ではあるようですが、燃料電池自動車が終わった…ということでは、全然ないとのこと。「実はEVでは実現できないFCVならではの長所がある」とするこの記事の国沢光宏さんは、「電気をそのまま使う」EVの方が良いのは確かだけど、ディーゼルエンジンの代替パワーユニット、バスやトラックという商用向けという観点でFCVが注目されているとしていました。
<大型トラックを1時間、距離にして90kmくらい走らせると、大雑把に言って150kWh程度使う。10時間移動するとなったら、日本車で最も多い電池を搭載している日産 リーフe+の30倍近い容量が必要です。
当然ながら途中で急速充電することになる。けれどリーフe+の10倍の電池ですらけっこうな時間が必要。今の3倍程度の性能を持つ急速充電器だって1時間以上掛かってしまう。
加えて、大型トラックやバスの平均使用走行距離は乗用車より圧倒的に長い。50万kmなど普通。劣化の進む急速充電を繰り返しての50万kmは厳しいと思う。
といった使い方を得意とするのが燃料電池です。水素の充填に掛かる時間は軽油の給油時間より短い。連続して運用することも容易。連続して1000kmの移動なんか普通に出来てしまう。
長距離バスや観光バスなども充電しようとすれば運航時間内に1時間以上の時間を必要とするが、水素充填であればトイレ休憩の時間に終了する>
また、ディーゼルエンジンより圧倒的に軽くてコンパクトなのも魅力とのこと。漁船など小型船舶用や建設機械、鉄道用車両など、電池だと大量に搭載しなければないようなパワーユニットの代替を燃料電池ならできるとしていました。軽くて済むと燃費もかなり良くなるためでしょう。そのためか、大型乗用車でもEVより安いとしていました。
それから、「ガソリンエンジンを電気に。ディーゼルは燃料電池に」と国沢光宏さんは考えているものの、新型MIRAIのような燃料電池の乗用車を生産することでコストダウンが進み、ディーゼルエンジンの代替として採用が進むという意味があるとのこと。数年内に燃料電池はディーゼルエンジンと同等の価格までコストダウンすると予言していました。
●もう少し勉強してくださいと批判…水素燃料電池車(FCV)とは違う
ここまでは以前も書いていた話。今回は新しく「日本はEVより水素エンジン車」という記事を読んだため、これを紹介しようと書き始めました。ただ、今日は「水素エンジン車は水素燃料電池車(FCV)とは違う」という話だけ先にやります。先にこれを理解していないとわけがわからなくなるためです。
この「日本はEVより水素エンジン車」という記事に「もしかして水素を爆発させてると思ってる?!もう少し勉強してから記事を書いて下さいね」という、いかにも勉強していない人が書きそうなコメントがついていました。これについて作者は「水素エンジン車は水素燃料電池車(FCV)とは違う」と説明しています。
水素を使う形式には燃料電池車と水素エンジン車があって、水素を燃焼させないのは燃料電池車、燃焼させるのは水素エンジン車なんだそうな。
燃料電池車と水素エンジン車はどこがどう違うのか? - webCG(林愛子 2021.05.19)という記事が、参考としてリンクされていました。以下のような内容です。
<水素といえば燃料電池車(FCV)が想起されるが、いま話題になっているのは水素を燃料として使う水素エンジン車だ>
<FCVの心臓部は言うまでもなく燃料電池で、水素と酸素を反応させて電気をつくる。言い換えると、水素と酸素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換するということ。あるいは水を水素と酸素に分ける電気分解の逆の反応だともいえる。この反応には炭素(C)や窒素(N)が関与しないため、発電時には水素と酸素の反応による水(H2O)が出るが、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)といったものは生じない。これがFCVは環境にいいと言われるゆえんだ。
一方の水素エンジン車はエンジンで水素を燃焼させる。燃焼とは酸化のこと。燃料の化合物や元素に酸素が結びつく際に熱と光が生じるので、その熱エネルギーを動力として使用するのがエンジンの基本原理だ。化石燃料はそもそも炭素を含むので、燃焼時にCO2が発生するのを避けられないが、燃料が水素ならば、ごく微量のエンジンオイル燃焼分を除き、CO2は発生しない>
●7割を無駄にして環境破壊?ガソリン車とEVのエネルギー変換効率
2021/10/22追記:前回たどり着けなかった一番肝心な「日本はEVより水素エンジン車」という話を今回やっと。この主張があったのは、碇邦生・大分大学経済学部講師の
世界のEV化は日本経済の死刑宣告に近しく、水素エンジンが蜘蛛の糸である|碇 邦生(大分大学)という投稿でした。ここではまずEVが理想的な自動車という話が出ています。
<蓄電池の問題があるものの、各完成車メーカーは電気自動車の開発を続けてきた。その理由は、エネルギー変換効率の問題だ。
内燃機関で発生するエネルギーを機械エネルギーに変換すると、ディーゼルで40%、ガソリンで30%程度しか変換できないと言われている。つまり、半分以上のエネルギーをロスしている。
それに対して、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換は最も効率が良い。80~90%の変換効率であり、ロスがほとんどない。また、運動エネルギーは電気エネルギーに変換することが可能であるために走行中に蓄電することでエネルギー効率はさらに高まる>
●EV化すると日本の自動車関連産業が終わり、日本経済が壊滅的に
このようにEVは本来望ましい車だと碇邦生・講師は言っているものの、一方で日本の「雇用確保」という面から見ると地獄だとも指摘。タイトルになっていた「世界のEV化は日本経済の死刑宣告に近しく」は、このことですね。EV化が進むと、日本の代表産業である自動車関連産業が壊滅的になってしまう…という話です。
<既存の自動車関連会社が立ち行かなくなる。例えば、EVにはブレーキパッドが必ずしも必要ではなく、ブレーキパッドが必要だとしても10年間に1回交換するかどうかである。内燃機関の自動車だと3年に1回は交換する。そうすると、単純計算でブレーキメーカーの売り上げは3分の1になり、事業が成り立たなくなる。エンジンオイルがなくなるので、オイルメーカーも大打撃を受ける。
現在、自動車部品関連メーカーは約4千4百社あり、売上高合計は約33兆円だ。このまま無策でEV化すると、産業規模を維持することは困難になる。これらのメーカーの下請け、孫請け企業も存在するため、影響は更なる甚大なものになる。(中略)
メーカーだけではない。EV化によって事業が立ち行かなくなるのは日本全国にある自動車整備工場も同じだ。(中略)自動車整備の認証工場は、日本全国に約9万以上あり、約54万人の従業員が働いている。コンビニの数が日本全国で約5万軒であるため、今のコンビニの数の2倍の倒産と失業者がでる恐れがあると想像してもらうとEV化の恐ろしさがわかるだろう>
●出遅れ日本はEVでもう海外に勝てない でも水素エンジン車なら…
じゃあ海外はどうなっているの?と言うと、対策をしているそうな。政府主導で充電器を増やし、税制改革でEVを買うように促して内燃機関は高額所得者の嗜好品とし、市場を緩やかに醸成することで自動車関連企業がEV化に移行する準備期間とトライアンドエラーができるようにしたとのこと。海外は急速な移行ではなく、むしろ緩やかに移行してるとの見方です。
こうした欧米や中国のEV推進を日本人はむしろ批判してきました。「既存の自動車づくりが苦手なのでEVで先行しようとしているだけ。日本は得意な車を作っていればよく、その流れに乗ることはない」といった意見もよく目にします。現在の自動車づくりがうまくいっているだけに、変化の流れに乗り遅れた形です。
「トヨタならすぐ追いつける」とも言われていたのですが、碇邦生・講師は、<正直、あまりに出遅れているために、今からEVで日本企業が競争力を保とうとするのも現実的ではない>と日本のEVに辛辣な評価。<政府の成長戦略の軸とされている、車載用電池も数年前から日本メーカーは中韓のメーカーに追いやられている>と書いていました。
そこで出てくるのが「水素エンジン車」なわけです。おそらく一番の魅力は、「既存の産業構造を大きく変えることなく、脱炭素を達成できる」ということ。これで雇用を守れます。水素は燃料として非常に扱いが難しいために敬遠されてきたのはデメリットですが、逆に言うと、他のメーカーがやっていないために勝ち目があり、EVと差別化できるというメリットになります。
いろいろなところで日本の地盤沈下が進んでいるので本当かいな?と思いますが、難しいということは、日本の技術を活かせるし、新興国メーカーにはできないともされていました。また、EVは安定した電力が必要なので、新興国や途上国では使えないために、こちらは日本の水素エンジン車でシェアを独占できる…といった感じ。ちょっとバラ色すぎる気はしますけどね。
●値下がりが期待できない燃料電池車より水素エンジン車!
2022/05/28追記:以前少し紹介した
燃料電池車と水素エンジン車はどこがどう違うのか? - webCG(林愛子 2021.05.19)は、タイトルの通り、水素燃料電池車(FCV)と水素エンジン車は違うよ…という話でした。ただ、この記事ではそれ以外にもいろいろな話が出ていたんですよ。
この記事は、ROOKIE Racingが2021年の「富士24時間レース」に、「カローラ スポーツ」をベースとした水素エンジン搭載車両で参戦すると発表したタイミングで出ていた記事でした。いまのところトヨタは水素エンジン車を市販する予定はないとしているそうですが、どうもこれがトヨタの車だったみたいですね。
水素には燃焼速度が速いという特徴があり、トヨタによれば、水素はガソリンの約8倍と応答が速く、低速のトルクの立ち上がりも早く、トルクフルでレスポンスがいいとのこと。ただ、これは技術開発のハードルでもあるともいいます。反応が良すぎて、バックファイアという意図しない燃焼が起こりやすいそうです。
ただ、トヨタの水素エンジンはガソリンエンジンから燃料供給系と噴射系を変更したものを使用。つまり、長年蓄積してきた技術やノウハウを生かせる…と見ているようです。例えば、水素エンジン車でも燃焼時に空気を取り込むため窒素酸化物(NOx)が発生するものの、後処理には既存技術を取り入れればいいとされていました。
<こうした有形無形の資産が生かせれば、価格優位性や市場競争性が期待できる。FCVの「トヨタ・ミライ」は最安値のモデルでも710万円。いずれ量産効果で値段が下がる可能性は否定しないが、燃料電池が劇的に値下がりしない限り、同格のエンジン車並みの価格になるとは考えにくい。それに対して、水素エンジン車はFCVよりも安価に設定できそうだ>
「2050年カーボンニュートラル」では、需要の電化を目指し、水素が重要な役割を担うとのこと。需要の電化とは、いまはガスやガソリン、灯油などを使用場面に応じて選択しているのを、電気に置き換えることだそうです。そして、電気エネルギーを届ける方法として、水素がその役割を果たすという構想のようでした。
ただ、水素は物性上、非常に軽くてエネルギー密度が低いため、貯蔵・管理・運搬にはコストがかかります。液化水素やアンモニアなど、扱いやすい形態が検討されているそうですが、いずれも決定打不足だとのこと。エネルギー密度の低さは変えようがない水素本来の性質なので致命的なデメリットに見えますね。
現状の社会システムでは水素の製造にも多大なコストが必要という指摘も。要するに、水素に合わせた社会を作るのにも莫大なコストがかかるという意味ですかね…。このように見ていくと、水素社会を前提とした水素エンジン車(や燃料電池車)というのもあまり現実的ではないように見えてしまいました。
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