2019/03/27:
●熊本地震でまた不正、林愛明教授の論文の図4つで改ざんや盗用
●結論に影響ありなのに調査委「故意とは結論できず」
●中国出身で有力科学誌に論文、熊本地震に関する書籍も発売
2019/05/05:
●サイエンスの論文は撤回に 「林教授に責任がある」と指摘
2019/07/24:
●「故意ではない」と林愛明教授が主張した結果、京都大の処分は?
2020/04/26:
●不正を認定された林愛明教授、停職の1年の経過を待たずに辞職
2021/09/30追記:
●京大、4論文37箇所のねつ造・改ざんで懲戒解雇処分相当と発表 【NEW】
●熊本地震でまた不正、林愛明教授の論文の図4つで改ざんや盗用
2019/03/27:
秦吉弥大阪大准教授らの熊本地震データに捏造改ざんの疑い 後藤浩之京大准教授、吉見雅行主任研究員らの研究でやっているように、熊本地震では震度7のデータが捏造されていたという、大きな話題になる不正がありました。これがやっと一区切りついたところなのですけど、今度は別の不正の話が出てきています。
京都大学は、理学研究科の林愛明教授(地震地質学)が2016年10月に発表した熊本地震に関する論文に、改ざんや盗用があったとの調査結果を発表しました。論文は米科学誌サイエンスに掲載されたもので、熊本地震を引き起こした断層のずれが、阿蘇山の直下にあるマグマだまりによって妨げられた可能性があるとの内容。もしマグマだまりがなければ、被害がより広範囲になった恐れがあると分析していました。
しかし、6つの図のうち4つで改ざんや盗用があったということで、ほとんどの図が不正。林教授は、防災科学技術研究所や東京大学の研究者が作製した断層の動きを示した図などを、自らの主張を裏付けるデータとして使っていたのですけど、これらを改変していた模様です。
(
京大教授の熊本地震論文に改ざんや盗用 京大が調査結果:朝日新聞デジタル 2019年3月26日21時10分、
熊本地震論文で不正、撤回を勧告 京大 (写真=共同) :日本経済新聞より)
●結論に影響ありなのに調査委「故意とは結論できず」
林教授は調査委に対し、四つの図が間違っていることを認めました。この改変により、地震を引き起こした地下の震源の位置が大きくずれるなど、結論を導き出す前提に問題が見つかったとされています。
しかし、林教授は「論文の結論は間違っていない」と主張。調査委もなぜか、一連の不正行為について「故意に行われたものかどうかは判断できなかった」としています。故意かどうかにこだわると話がおかしくなるので私はここを重視すべきではないと考えているものの、今回の件を故意ではないと解釈するのはそもそも難しい気がします。
なお、他の論文の共著者については、不正行為への関与はなかったと認定されていました。
●中国出身で有力科学誌に論文、熊本地震に関する書籍も発売
林愛明教授は中国出身で、海外の有力科学誌に成果を発表しているとのこと。朝日新聞は日本語読みの「りんあいめい」とふりがなをふっていましたが、日経新聞など「りん・あいみん」という読み方で紹介しているところもあります。可愛らしい名前ですけど男性です。
有力科学誌に成果を発表しているとのことすから、結構大物っぽい感じ。ただ、しっかりした経歴は検索しても見つかりませんでした。過去の研究論文を見てみると、2010年あたりまでは静岡大学、さらに2000年代半ばあたりまでは神戸大学にいたのではないかと思われます。
著書を探してみると、そのものズバリな感じの
2016年 M7.3 熊本地震
という書籍が出ていました。
あと、今回の研究論文についてですが、6つの図のうち4つが改ざんや盗用と問題が多すぎるため、今後他の過去論文においても不正が見つかるかもしれません。
●サイエンスの論文は撤回に 「林教授に責任がある」と指摘
2019/05/05:
京大教授の不正論文撤回、米科学誌サイエンスが発表へ:朝日新聞デジタル(2019年5月3日03時00分)というニュースが出ていました。
米科学誌サイエンスが、京都大学が研究不正を認定した理学研究科の林愛明教授(地震地質学)が、同誌に掲載した論文1本を撤回したことを、2019年5月3日付の同誌で発表するという内容。すでに掲載されたのものと思われます。
サイエンスは不正が認定されるまでの経緯を紹介するとともに、「林教授に責任がある」と説明。林教授が京大の勧告に同意し、論文を撤回したと報告しました。なお、京大は今後、林教授を処分する方針とのことで、現時点ではまだ処分が決定していないようです。
●「故意ではない」と林愛明教授が主張した結果、京都大の処分は?
2019/07/24:前回追記で書いていた処分が決定しました。重要な図六つのうち四つで、計10カ所の改ざんや盗用があったとして、論文の責任著者だった理学研究科の林愛明教授(60)を24日から停職1年の懲戒処分とした、と発表しています。
(
熊本地震に関する論文で不正 京大教授に停職1年懲戒処分 : 京都新聞 2019年07月23日 18時50分より)
林教授は「不適切な図であったことは認めるが、不注意であり、故意ではない」と話していました。そのような主張にも関わらず停職1年だったと言うべきか、そのような主張のおかげで停職1年だったと言うべきかは人によって違うと思いますが、私はだいぶ甘いと感じました。
で、ブログ内検索をかけてみたところ、そもそも停職1年というパターンが見つからず。停職ですと1ヶ月などかなり短い処分となることが多く、その上がいきなり解雇となる感じでした。長かった停職としては3ヶ月が出てきたのですけど、
福岡教育大学・榊原浩晃教授を処分 5論文盗用で停職3ヵ月は妥当なのか?というタイトルでわかるようにクソ甘処分です。
こういうひどい対応が横行しているのを見ていると、京都大の処分が他の日本の大学と比べて特別甘いとは言えそうにありませんね。むしろ今回の方が「厳しすぎ!」といった勢いです。とはいえ、日本の大学全体としては処分が甘い傾向にあるとは言えます。もっと厳しくて良いと思うのですけど…。
●不正を認定された林愛明教授、停職の1年の経過を待たずに辞職
2020/04/26:停職1年懲戒処分が始まったのは、2019年7月24日だったので、まだ1年経っていないのですけど、その前に辞職されたみたいですね。研究不正疑惑では、不正と認定されなかった場合でもだいぶ経ってから辞職…と、疑惑が影響したと考えられそうなケースが見られます。不正認定がない場合は冤罪の可能性がありますので、望ましいとは言えませんけどね。
林愛明教授の辞職の話があったのは、
東京新聞:論文不正の京大教授辞職 熊本地震を研究:社会(TOKYO Web)(2020年4月23日 18時45分)という記事。懲戒処分を受けた京都大の林愛明教授が辞職したことが、京大への取材で分かったというもの。辞職は2020年2月3日付だそうです。
あと、処分はもっと厳しくても良い…とここで書いていたのですが、最近見直した
倫理教育では研究不正は防げない…実は研究ですでにわかっていた!で、不正判明後の更生を重視する話を紹介していたことも思い出しました。そこで紹介されていたケースは、軽い不正の場合でしたけどね。
●京大、4論文37箇所のねつ造・改ざんで懲戒解雇処分相当と発表
2021/09/30追記:今頃になって続報が入ってきました。どうも他の論文についても引き続き調べていたみたいですね。京都大学は、ほかにも4つの論文で30か所以上のねつ造や改ざんを行っていたとして、この元教授を懲戒解雇処分相当とするとともに論文の撤回を勧告したというニュースが今回出ていました。
<京都大学によりますと、林元教授の論文に不正があるという指摘が複数寄せられたことから調査した結果、平成29年から平成30年にかけての熊本地震に関する4つの論文で、あわせて37か所のねつ造や改ざんが見つかったということです。
中には、阿蘇カルデラに活断層はあるとする自説を後押しするために地図上に断層や亀裂の出現箇所のデータを水増したり、亀裂を実際よりも大きく示したりしていたいうことです。このため、京都大学は林元教授を懲戒解雇処分相当とするとともに論文の撤回を勧告しました。
林元教授は、5年前、アメリカの科学雑誌に発表した別の熊本地震に関する論文で掲載された図に改ざんや盗用が見つかったとして大学から処分を受け、その後、辞職していました>
(論文ねつ造などで処分の京大元教授 ほかにも4論文で不正か NHK 09月28日 20時05分より)
【本文中でリンクした投稿】
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秦吉弥大阪大准教授らの熊本地震データに捏造改ざんの疑い 後藤浩之京大准教授、吉見雅行主任研究員らの研究 ■
福岡教育大学・榊原浩晃教授を処分 5論文盗用で停職3ヵ月は妥当なのか? ■
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