<ほとんどの日本人は「干支」(えと)を誤解している>、<十二支の動物の仲間外れは辰(龍)!その理由とは?>、<昔は龍が空想上の存在ではなかった>などの話をやっています。
2022/02/15追記:
●東洋の龍だけじゃない…西洋のドラゴンも実在の生物だった? 【NEW】
●ほとんどの日本人は「干支」(えと)を誤解している
2018/10/31:「干支」(えと)って知っている?と聞くと、多くの人が知っていると答えると思われますけど、実はこれ、かなりややこしいものです。
干支 - Wikipediaでは、以下のように書いています。
"十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類からなり、十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種類からなっており、これらを合わせて干支と呼ぶ"
"日本では「干支」を「えと」と呼んで、ね、うし、とら、う、たつ…の十二支のみを指すことが多いが、「干支」は十干と十二支の組み合わせを指す語であり、「えと」は十干において「きのえ(甲)」「きのと(乙)」「ひのえ(丙)」「ひのと(丁)」と陽陰に応じて「え」「と」の音が入ることに由来するので、厳密には二重に誤りである"
さらに言うと、十二支を動物に当てはめたのは後の時代のことであり、当初は全くそのような意味はなかったという説が有力のようです。(
十二支 - Wikipediaより)
"各十二支は十二の動物でもある。元々十二支は順序を表す記号であって動物とは本来は関係なく、後から割り振られたものという立場からはこの動物を十二生肖と呼ぶ。が、日本では十二支という言葉自体で十二の動物を指すことが多い。"
なお、私は十二支は、生命消長の循環過程・草木の成長における各相を象徴したものと理解していましたが、これもまた後づけだとのこと。干支を幹枝と解釈したため生じた植物の連想と、同音漢字を利用した一般的な語源俗解手法による後漢時代の解釈だといいます。
こういった予備知識はほとんど必要ないのですけど、もともと書いていたのは、十二支の中で辰(龍)だけ変なセレクトであるのはなぜ?という話でした。
●十二支の動物の仲間外れは辰(龍)!その理由とは?
2009/11/23:
竜-Wikipediaを読んでいると、<十二支に各々動物が当てはめられた際、唯一採用された伝説上の生物である>という記述がありました。言われるまで気づきませんでしたが、確かに不思議な話。龍は中国で馴染み深い生物ではあるでしょうけど、十二支の面々では浮いた存在です。
、確かめられる最も古い記述としてわかっているのは、後漢の王充『論衡』言毒篇に「辰為龍、巳為蛇。辰、巳之位在東南」というものだとのこと。ただ、これは謎を解くカギには全くなっておらず、「なぜ辰だけが想像上の動物になったのかはいまだに議論の的であり、定説がない」とされていました。
Wikipediaには、古代に長江や漢水に実在したワニの一種(マチカネワニ)が、寒冷化により絶滅した後、伝説化したものが龍であるというワニ学者の青木良輔の説を紹介してあります。これは現在残っている竜の図像の歴史的変化からも窺えるらしいです。この説に従えば、龍も実在した動物だったということで、その選択には違和感もなかったのかもしれません。
●別な理由でも、昔は龍が空想上の存在ではなかった
上記のマチカネワニ説に関しては、関連して、
龍の正体はマチカネワニ?龍と関連する様々な動物たち 蛇、恐竜、鯉などという投稿も書いています。一方、こちらのページでは、他にどんな説があるかも、探してみました。
十二支に龍のような仮想の生物がいるのは何故? おしえてねドットコムには、いろいろな回答があり、そこから抜粋。質問サイトは一般的に信頼性が低いものの、きちんと参考文献(干支の漢字学、水上静夫)を上げて回答しているものがありますので、これを中心に引用しましょう。
もともと十二支は、動物とは無関係のものでした。今のような動物名が見えるのは、一世紀になってからだそうです。これは十二支を庶民に広めるのに、そのままでは「抽象的でわかりにくいので、動物を当てはめたのだという説があります。
そう考えると、生活に親しんだものを選んだと考えるのが妥当。そういった基準で龍も選ばれたと書かれています。神話・民話にも多く登場し、「当時の中国人にとって、竜は想像上の生き物ではなかった」ということで、当時の人にとっては、違和感はなかったのかもしれません。
これについては、別の方が「実在する虎ですら当時実際に見たことのある人は少なかったはずですから、竜(龍)を見たことがないからといって存在を疑うこともなかったと思います」とも書いています。そう言われてみると、確かにそうだよなぁと思います。
●西洋の十二星座の影響?共通する動物はいくつ?
また、別の説として、西洋の十二宮(いわゆる十二星座)が影響しているという説も上げられています。でも、十二宮を見ると、共通するのは、羊、牛、獅子(虎)だけですから。これは無理がありますね。なお、先のWikipediaでも以下のような記述がありましたので、2018/10/31に追記しています。
<なぜ動物と組み合わせられたかについては、人々が暦を覚えやすくするために、身近な動物を割り当てたという説(後漢の王充『論衡』)や、バビロニア天文学の十二宮が後から伝播してきて十二支と結びついたという説がある。もともと動物を表していたという説では、バビロニアの十二宮が十二支そのものの起源だという説の他、諸説がある>
もう1つ十二獣帯(エジプト版十二宮)というのだと、犬、蛇、ロバ(≒うま)、ライオン(≒とら)、ヤギ(≒ひつじ)、牛、鷹・トキ(≒とり)、猿、ワニ(≒たつ)といった感じで、西洋の十二宮より共通点は多いようです。ただ、これは回答者自身が「少し文化が離れすぎている」と感想を書いています。
西洋天文学はちょうど一世紀ごろに中国に輸入されたということで、先程書いた動物に当てはめた時期とピタリ重なるのですが、その点以外はかなり苦しいかもしれません。影響したとすれば「動物を当てはめる」というアイデアだけでしょうね。
●東洋の龍だけじゃない…西洋のドラゴンも実在の生物だった?
2022/02/15追記:東洋の龍は当時の人々にとって空想上の生き物ではなく実在の生き物だった…に関しての追記。西洋の龍的な存在であるドラゴンの
Wikipediaを見ていたら、同じく<その姿はトカゲあるいはヘビに似、かつては実在の生き物とされていた>という話がありました。これは龍やドラゴンに限らず、当時の人の感覚なんでしょうね。現代人が伝説の生き物とわかっているだけで、当時は十分な情報はなかったのです。
なお、ここで「西洋の龍的な存在であるドラゴン」と書いたものの、Wikipediaでは、以下のように厳密には異なると指摘されている部分がありました。一方で、日本語では、<元来は東アジア文化圏のものを指していた「龍/竜(りゅう)」という名称をドラゴンに対しても用いることが少なくない>というのが現状です。
<漢語・日本語の竜と英語の dragon は翻訳上の対応関係にあり、竜/ドラゴンのモチーフは世界各地の文化に共通しているという考え方もあるが、西欧世界のそれは、竜という語が本来的に指し示す東アジアの竜/ドラゴンとは明確に異なった特徴を有する>
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