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知識と経験どっちが大事?大学に行かずに映画を作った諏訪敦彦映画監督のスピーチ


 ちょっと興味あって読んでみました。
2013年4月18日16時6分 朝日新聞
学長式辞「いいね!」2.5万件 東京造形大、挫折語る

【大西史晃】。東京造形大(東京都八王子市)の入学式で、そんなエピソードを披露した諏訪敦彦(のぶひろ)学長(52)の式辞が、名スピーチだと話題になっている。伝えようとしたのは、大学で学ぶ意義。変哲のない、ど真ん中のテーマだった。

 「本日は学長というより一人の卒業生として、私が学生時代に体験したことを少しお話ししてみたい」

 約500人の新入生が出席した4日の入学式。カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受けた「M/OTHER」(1999年)などを制作し、映画監督としても知られる諏訪学長は、そんな前置きに続いて自身の経験談を語り始めた。
http://www.asahi.com/national/update/0418/TKY201304180108.html

 話題になったせいか、大学で公開しています。

 どれどれどんなものでしょう?
2013年度入学式 諏訪学長による式辞

 私は高校生のときに一台のカメラを手に入れました。現在のようなデジタルビデオではなく、8ミリフィルムを使用する映画カメラです。そのカメラで、自分の身の周りのものを撮影するようになると、自然に自分の表現として映画を作りたいと思うようになりました。映画館で上映されているような大掛かりな映画ではなくて、絵画のように自由に表現するささやかな映画を作りたいと思い、私は東京造形大学に進学しました。入学式に臨んでいた私は、高揚し、希望に溢れていたと思います。


 しかし、大学での生活が始まると、大学で学ぶことに対する希望は、他のものに取って替わりました。(中略)出会った彼らは無名の作家たちで、資金もありませんでしたが、本気で映画を作っていました。彼らは、大学という場所を飛び出し、誰にも守られることなく、路上で、自分たちの映画を真剣に追求していました。私はその熱気にすっかり巻き込まれ、彼らとともに映画づくりに携わることに大きな充実感と刺激を感じました。それは大学では得られない体験で、私は次第に大学に対する期待を失っていきました。大学の授業で制作される映画は、大学という小さな世界の中の出来事でしかなく、厳しい現実社会の批評に曝されることもない、何か生温い遊戯のように思えたのです。

 気がつくと私は大学を休学し、数十本の映画の助監督を経験していました。最初は右も左も判らなかったのですが、現場での経験を重ね、やがて、半ばプロフェッショナルとして仕事ができるようになっている自分を発見し、そのことに満足でした。そして、大学をやめようと思いました。もはや大学で学ぶことなどないように思えたのです。
http://www.zokei.ac.jp/news/2013/001-1.html

 あれ、大学いらないんじゃ?って流れです。

 そんなとき、私はふと大学に戻り、初めて自分の映画を作ってみました。自信はありました。同級生たちに比べ、私には多くの経験がありましたから。
しかし、その経験に基づいて作られた私の作品は惨憺たる出来でした。大学の友人からもまったく評価されませんでした。一方で、同級生たちの作品は、経験も,技術もなく、破れ目のたくさんある映画でしたが、現場という現実の社会の常識にとらわれることのない、自由な発想に溢れていました。授業に出ると、現場では必要とはされなかった、理論や哲学が、単に知識を増やすためにあるのではなく、自分が自分で考えること、つまり人間の自由を追求する営みであることも、おぼろげに理解できました。驚きでした。大学では、私が現場では出会わなかった何かが蠢(引用者注:うごめ)いていました。

 朝日新聞は「ど真ん中のテーマ」としていましたけど、学長のスピーチという意味ではそうであっても、今回のエピソード自体は実はなかなか新鮮なんじゃないかと思います。

 それこそ映画のような創作の世界でありふれているのは、座学では得られないもの、教科書や本では教えてくれないものが実際の経験にはある……というテーマのものです。

 しかし、このスピーチでは経験と知識の立ち位置が全く逆になっています。
 私は、自分が「経験」という牢屋に閉じ込められていたことを理解しました。

「経験という牢屋」とは何でしょう? 私が仕事の現場の経験によって身につけた能力は、仕事の作法のようなものでしかありません。その作法が有効に機能しているシステムにおいては、能力を発揮しますが、誰も経験したことがない事態に出会った時には、それは何の役にも立たないものです。しかし、クリエイションというのは、まだ誰も経験したことのない跳躍を必要とします。それはある種「賭け」のようなものです。失敗するかもしれない実験です。それは「探究」といってもよいでしょう。その探究が、一体何の役に立つのか分からなくても、大学においてはまだだれも知らない価値を探究する自由が与えられています。そのような飛躍は、経験では得られないのです。それは「知」インテリジェンスによって可能となることが、今は分かります。

 私は、現場で働くことを止めて、大学に戻りました。

卒業後、私が最初に制作した劇場映画は決められた台本なしにすべて俳優の即興演技によって撮影しました。先輩の監督からは「二度とそんなことはするな」と言われました。何故してはいけないのでしょう? それは「普通はそんなことはしない」からです。当時の私があのまま大学に戻らずに、現場での経験によって生きていたなら、きっとこんな非常識な映画は作らなかったでしょう。しかし「普通はそんなことはしない」ことを疑うとき、私たちは「自由」への探究を始めるのです。それが大学の自由であり、大学においてこの自由が探究されていることによって、社会は大学を必要としているといえるのではないでしょうか。

 おもしろいですね。

 ただ、これで経験がいらないか?と言うと、そうではないでしょう。経験はもちろん大事です。先程書いた「座学では得られないもの、教科書や本では教えてくれないものが実際の経験にはある」というのもまた事実でしょう。

 私は大体こういう結論になり、中道的で嫌だと思われるかもしれませんけど、経験も知識も両方大切なんだと思います。


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