うちでは、管理職のいないフラットな組織について、何度か書いています。また、良いマネージャーの条件という話は、もっと書いてきました。今回の話はこの両方が合わさったようなもの。フラットな組織のメリットとデメリット、そして、管理職を置いてうまくいく場合の条件は?といった感じです。
あのグーグルもマネージャのいないフラットな組織に変える実験を行って失敗し、やはり“マネージャーは必要である”という結果を得たといいます。管理職制度に弊害があるのは事実であり、改善が必要ではあるのですけど、フラットな組織というのも結局、非常にたいへんなのです。
●学者が「全員解雇せよ」…中間管理職・マネージャーいらない論
2017/5/27:ある一定数の労働者の集団には、必ずそれを管理するマネジャーが必要だ、と多くの人は盲目的に信じています。しかし、アメリカの食品会社であるモーニング・スターは、労働者はグループになって自主管理しており、管理職なしでやっていけていると言います。
このモーニング・スターや防水透湿性素材のレインウエアやウインドブレーカーで有名なGoreTex社では、グループ単位でMOUs (memorandum of understanding)を作成したり変更したりしているそうです。このMOUsというのは、業務内容に関する合意といったようなもの。グループ単位、そしてそれを構成する個別労働者が自ら定めた目標を達成するために作られているそうです。
こうした話があった
中間管理職は本当に必要か?:日経ビジネスオンライン(クリスティーナ・サイモン 2015年7月13日)によると、経営学の世界で有名なゲイリー・ハメルさんは、“まずすべてのマネージャーを解雇せよ”という記事を書いたことがあるそうです。
●トップダウン型の上下関係の強い組織を弱め民主化するしくみ
ゲイリー・ハメルさんは、組織には管理のためのヒエラルキーが惰性的に存在し続けているとしていました。この「ヒエラルキー」というのは、
デジタル大辞泉によると、「上下関係によって、階層的に秩序づけられたピラミッド型の組織の体系」との説明。要するに、「ピラミッド形の上下関係の強い組織」といった感じの意味のようです(ここだけ2023/02/14補足)。
一方、管理職のいない組織では、当然ながら、ヒエラルキー、すなわちピラミッド形の上下関係の強い組織とは全く違う方向性になります。例えば、前述のMOUsのしくみによって、企業において決定権を持つ人の数が増え、従業員の自由裁量が増大する…ということに。上司に縛られないわけなんですね。
同様に、「ホラクラシー」と呼ばれる組織を取り入れたザッポス社も、ヒエラルキー(ピラミッド形の上下関係の強い組織)を弱めています。この「ホラクラシー」のモデルでは、従来のトップダウンのヒエラルキーに代わって、組織のために必要な仕事内容によってサークルを数多く作ります。
「ホラクラシー」によって作られたサークルでは、“役職”ではなく従業員がそれぞれの“役割”を自主性を持って担っていくことになるとのこと。企業としての決断を下さななければならない局面においても、各サークルが徹底的に討議し合って、コンセンサスを築いてゆくといます。
●自由で理想的…と思いきや、従業員には辛い管理職がいない組織
「従業員の自由裁量が増大する」「従来のトップダウンをやめて従業員が自主的に決める」と聞くと、伸び伸びとした理想的な会社に思えるかもしれません。ただし、実を言うと、このような民主的なシステムの実行でやってくる世界は、牧歌的なものではなく、かなり辛いものなんですよ。
上記までの説明についても注意深く読めばわかるんじゃないかと思うのですけど、このシステムは今まで管理職なお、上の人がやってきたことを、一般従業員ひとりひとりが全部自分でやらなくちゃいけないって話ですからね。
フラットな組織は辛い 管理職の9割は無能だが責任転嫁の対象として役立っているもそういう話でした。
今回の記事においても、"ホラクラシー組織はすべてに有効というわけではない"と記述。"この組織において従業員が大きな責任を背負うことでストレスが高まったり、多くの場合では労働時間や仕事量が増えたりする"ためです。さらに、"一方でそれぞれのセクションでコンセンサスを得るまでに時間がかかりすぎる、あるいは内部対立が起こる、などの問題が生じることもある"そうです。
●管理職について、グーグルは必要・不要どちらと結論づけたのか?
このようにフラットな組織には、従業員がたいへんすぎてストレスが溜まるなどの明らかなデメリットが指摘されています。ただ、これは今までのシステムの方が良いという意味でもありませんよ。一長一短という話です。記事でも、"結局のところ、完璧なシステムといったものは存在しない"とまとめていました。
そして、
Google:マネージャはやはり重要な存在である( 作者: Abel Avram , 翻訳者 編集部T 投稿日 2017年2月20日)によると、グーグルもまたフラットな組織で失敗しています。2002年にGoogleは、マネージャのいないフラットな組織に変える“コントロールされていない”実験を行っていました。しかし“それはうまくいかなかった”と言います。
この場合の失敗は、従業員がマネージャーを求めていたからだとの説明。その従業員が求めていたものというのは、“基本的な質問やニーズへの回答や、キャリアアドバイスなどの重要な部分の指導”だそうです。
その後の2008年にもグーグルは、マネージャーの必要性を疑ったチャレンジをして、“マネージャーは必要である”という結果を得ました。データに基づいて、Googleは“優れたマネージャを持つチームの方が幸せで生産性が高い”ことを発見したのです。具体的なことは書かれていなかったものの、これは前述の「管理職がいない組織は従業員にとって辛い」という話と一致しています。
●良きマネージャーの条件とは?弊害を軽減しようとするグーグル
なお、記事では、グーグルが導き出した優れたマネージャーの条件についても紹介。逆に言えば、世の中の多くの管理職を置いている組織がうまくいっていないように見えるのは、このようなマネージャーがいないためだとも考えられそう。前述の通り、グーグルデータで良かったのは飽くまで「優れたマネージャーがいる場合」でした。
1. よき指導者である
2. チームに権限を委譲し、細かいところまで管理しない
3. チームメンバの成功と個々人の幸せに関心を示す
4. 生産的であり、結果重視である
5. コミュニケーションをとる能力が高い
6. チームメンバのキャリア開発を手助けする
7. チームに対して明確なビジョンを持っている
8. チームに助言を与える重要な技術スキルを持つ
上記のうち、「4. 生産的であり、結果重視である」なんかは、かなり難しいと思われます。そもそも「結果」を正しく評価するのが難しいため、結果重視というのが意外に難しく、正しい部下の評価を行えない場合が多いです。また、ここでは、直属の上司の影響力が強すぎるという問題もあります。
グーグルの採用条件は「自分より優秀」 上司の評価を軽視する人事評価制度理由などで書いているように、グーグルはこれらの問題の解決に努力しています。直属の上司の影響力をできるだけ排除しようとしている他、評価の思い込みを是正するために様々なツールを用いて、正当な評価を与えられるように工夫していました。
また、
社長や上司が偉い日本からはグーグルのような企業は生まれないなどでやっているように、グーグルはデータや根拠を重視して、上司の力を弱めることもしています。前述の評価方法については、他社から来た管理職にたいへん嫌がられると言われていました。なぜか?と言うと、彼ら上司は部下を自分の力でコントロールしたいと考えるためです。
ですので、これらの試みは、前半で出てきたような管理職のある組織における弊害を減らす…という工夫だとも言えそうです。
【本文中でリンクした投稿】
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フラットな組織は辛い 管理職の9割は無能だが責任転嫁の対象として役立っている ■
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