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研究者・大学教授の研究スキル売買はなぜ問題?悪いことではないんじゃ…


冒頭に追記
2022/05/02追記:
●金で積み上げた「高校生論文」が判明 入試制度を元に戻すべき? 【NEW】


●金で積み上げた「高校生論文」が判明 入試制度を元に戻すべき?

2022/05/02追記:普通の研究不正のところで使用した話なのですが、研究スキル問題や宿題代行サービスの是非…というところにも関係するかな?と思ったのでこちらでも紹介します。教授の子など、韓国の高校生論文で大量96件の研究不正行為が判明した…という話についてです。

 韓国にあるアジア最高クラスの大学・KAIST(カイスト)経営工学科修士のカン・テヨンさん(27)と米シカゴ大学社会学博士課程に在学中のカン・ドンヒョンさん(33)は、2001年からの20年間分の、韓国国内の213校に在学中だった高校生が参加した558件の海外論文を全数調査した研究結果をSNSに公開しました。

 これを伝えた記事は、<金で積み上げた「高校生論文」…入試制度が変わるほど富裕層に有利=韓国>(2022/4/27(水) 10:39配信 ハンギョレ新聞)というもので、不正が疑われる論文が多いという結論。疑う理由として妥当なのかはよくわからないのですが、以下のようなものを「疑わしい」としています。

<全数調査の結果、980人の高校生著者のうち、少なくとも67%ほどがたった1回のみ論文を書いている▽2014年に学校生活記録簿への論文記載が禁止されたことで、論文数が急激に減少▽一部の特別目的高校の論文は、中等教育と関連性の低いコンピューター工学や医学の比率が高い▽共著者ネットワークにおいて「教師1人に対し高校生が数人」「大学の研究者数人に対し高校生が1人」などの疑わしい構造が確認された>
https://news.yahoo.co.jp/articles/c1833416848437c166dcc4d693ee1543690f00dd

 この研究が出た後、韓国教育部は、未成年(教授本人の子や同僚教授の子など)を国内の論文の共著者として掲載した96件の研究不正行為を摘発したと発表しました。ただし、教育部は未成年による論文不正行為の結果を発表しつつも、「個人情報と名誉毀損」を理由に実名などの具体的な情報を明らかにしていないそうです。

 また、今回の研究を理由に韓国では「定時募集(入試の成績に基づく大学入学制度)に戻るべきだ」という反応が多かったようです。一方、著者はそれは解決策とは言えず、それよりも高校生の論文についての透明な情報公開が必要だ…といった考え方のようでした。以下のような話もしています。

「高校生による論文量産の背景には経済的不平等がある。入試政策が頻繁に変わるほど、富裕層ばかりが有利になる」
「問題のポイントは、金で学閥すら買うために不正な方法を取る保護者や学校と、これに同調する外部の人間がいるということだ。入試政策の変動性が大きくなるほど、適応するためには金がいる。どんな政策を取っても富裕層は手段と方法を選ばずに生き残るだろう。不平等が高校生の論文の背後に存在している」

 研究スキル問題や宿題代行サービスの是非でも参考になるんじゃないか?というのは、ここらへんの後半の話ですね。現在の制度を安易に禁止するよりも、透明化を図ろう…というのは、私の研究スキルなどに関する意見と同じです。ただ、入試制度に関してだけ言えば、私は元に戻す選択もアリだとは思いますけどね…。


●研究者・大学教授の研究スキル売買はなぜ問題?何が悪いのか?

2021/09/14:大学教授ら「研究スキル売買」 サイトに118人、能力偽装の恐れ | 毎日新聞【鳥井真平】はタイトルを見た時点では、ちょっとなぜ問題なのかよくわからなかった記事。とりあえず、「研究スキル売買」と呼ばれていたものは、以下のようなものだそうです。

<研究者が研究技術を販売するビジネス「研究スキル売買」が広がっている。インターネット上のスキルマーケットなどで依頼を募り、学術論文の執筆支援などの見返りに料金を得る仕組みで、国内最大級のサイトでは現役の大学教授などを名乗る約120人がスキルを販売していたことが確認できた>
<ネットを通じて個人の遊休資産を活用するサービスは「シェアリングエコノミー」と呼ばれ、2010年代から急速に普及した。スキルマーケットはこの一種で、イラストやホームページの作成、趣味のアドバイスなど多種多様なスキルが販売されている。
 学術研究では、英語で書いた論文の校正などの有料サービスは以前からあった。だが、スキルマーケットでは不特定多数の個人が身元を明かさず仲介業者を通じて取引するため、匿名の研究者が他人の研究に介入する恐れがある点が異なる。仲介業者は手数料で利益を得る仕組みで、業者を介さない個人サイトも存在する>

 有料記事で以降は読めず。ただ、ヤフーニュースだともう少し先まで読めて、「研究能力の偽装につながる」の意味がわかりました。本来著者であるべき人が隠されてしまう「ゴースト・オーサーシップ」の問題を心配ていた模様。これは研究者の実績水増しなどに使われる不適切な行為。能力が低い研究者だけでなく、大物の業績水増しにも使われます。

 ヤフーニュースのコメント欄では、「意識が夏休みの宿題やってもらう小学生と変わらないという 笑」というコメントがあり、これが最も問題がわかりやすい言い方でしょうか。「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表理事は「他人の力で論文を書くことで研究能力を偽装できる。適正に研究者を評価できなくなり、大学や研究現場に混乱や不利益が生じる危険性がある」と指摘していました。 
https://news.yahoo.co.jp/articles/8019a485805ec23bb5109f7b245c61d836fef305
 

●研究費不足の日本、お金を稼げるのは悪いことではないんじゃ…

 取材に応じた私立大の男性教授は「堂々とはできない。大学には兼業を申告していない」と告白。悪いとは思っているようです。一方、ある国立大教員は「研究費を稼ぐためにやっている」と説明。お金を稼げるという点は良いように思うかもしれません。ただ、これは日本政府が海外から見ると異常な研究費削りをしているという事情があり、研究費不足が問題だと思われます。

<こういう小遣い稼ぎが発生する主な原因は、研究者の待遇の悪さでしょう それが研究業界全体の質の低下を招いている>
<日本の大学はとにかく金がない まともなパトロンがいない研究室だと試薬1本満足に買えない所もあるからな>

 一方で、分業制は悪くないのでは?というコメントも見られました。私も最初こういう方向性のことも考えたんですよね。

<米国だと研究のアシストをしてくれる人が多くいる。説明するための図表やCGなど自分で書いていても付加価値が低い。なんでも1人で「研究」してやりきらないといけない、という発想がもう古くて、70歳で博士号をもらう時代のなごりのように思うけど。一生懸命勉強したポスドクが自分のスキルで金かせいで何がわるいんだろうか>


●世界の研究はチーム性が常識…分業批判は時代遅れの発想?

 分業制というのはわかるのですが、分業ならその旨を明記すれば良いだけ。問題は隠蔽されているということです。研究の中で重要部分を任せているかそうでないのかも、ブラックボックスなために不明。どこまで明記すべきかという指針もありません。俗に言う「性善説」で考えるのはお花畑的な発想で、不正は確実に起きているでしょう。日本はもともと世界最高峰の不正大国という事実もあります。

 ということで、「全部ダメ」とか「全部OK」という極論ではなく、区分けをきちんとして、なおかつ明瞭にしよう…という考え方が良さそうな感じ。毎日新聞でも「日本学術会議や大学、学会は何らかの指針を出すべきだ」というコメントを載せていたんですよね。そういう意味では、ヤフーニュースのコメントの中では、以下が建設的なものだと感じました。

<露骨なゴーストライティングは問題だと思いますが、良い形の協力なら有益だと思います。知識の細分化・専門化の一方で、大局的な視点も求められる時代、理論は理論の専門家、統計は統計の専門家、見せる工夫はその道のプロ、文章は文筆家、標本採取はネットワークをもっている会社、海外への投稿は翻訳者が入って・・・っていう風に大きなチームでやった方が有益かと思います。任せっきりじゃだめですけどね。きちんとしたチーム体制でやるならいいと思います。 
 むしろ変な業者に侵入される前に、文部科学省あたりが積極的にそういうシステム作りをすればいいんじゃないかと思います>


●「夏休みの宿題やってもらう小学生」すら肯定する人も

2021/10/28追記:最初のときに「夏休みの宿題やってもらう小学生」というコメントがあったことを紹介しました。子供の宿題代行はネットサービスも多くなって、今問題になっているんですよね。<「研究スキル売買」の問題点、他人の能力を買って作った学術論文は偽装?本人の成果?>(10/27(水) 7:10配信)でもそうした話がありました。

 ただ、予想外だったのが、こうした「宿題代行サービス」を含めてかなり好意的な記事であったこと。「行き過ぎれば問題」などとしつつも、基本的にはポジティブだったんですよね。私としては、宿題を出す意図と異なってきてしまうために問題だと思いますけどね。サービスを利用する子供とそうでない子供で学習内容も大きく異なってきてしまいます。

<学術分野と一緒にするのは不適切かもしれないが、広い意味で勉強というカテゴリーで考えた場合、研究スキル売買という行為は、夏休みの宿題代行と本質的に大きな違いはない。
 夏休みの宿題を代行するサービスはかなり普及しており、多数の個人がフリマアプリなどでサービスを提供していた。これが社会問題化したことから文部科学省は2018年、ネット各社と宿題代行の出品禁止について合意したが、宿題代行は依然として存在しているし、ビジネスとして手かげている事業者も少なくない>
<もちろんこうした行為が望ましことでないのはたしかだが、同じ読書感想文を作成代行してもらうにしても、本も読まず、感想文の完成品をそのまま他人に作ってもらったケースと、部分的に支援してもらうケースとでは、その意味は大きく変わってくる。
工作もそうだが、完成品をただ買ってきて提出すれば、単に宿題をお金で買っただけに過ぎない。だが、部分的なオブジェをネットで購入し、それをうまく応用して作品を完成させた場合、同じ基準で評価はできないだろう>
https://news.yahoo.co.jp/articles/bc7cd95d2188c34180d95380fab5465ffa20b61a

 研究論文の代行問題はこうした子供の読書感想文や工作を先生などが評価するケースと似ています。教師側には、子どもたちがどの程度代行サービスを利用したかがわからないため、同じ条件で評価してしまい不公平に。なので、私が論文問題の方で「どの程度代行サービスを使ったか明記しよう」と言っているのは、こういう理由でした。


●中国で横行している宿題代行サービスは「塾」みたいなもの?

 記事では中国で宿題代行サービスが横行している…といった話もあったのですけど、はっきりと好意的で擁護に終始している感じでした。塾や参考書みたいなもの…という論理です。ただ、前述の通り、本当にその範囲にとどまっているか…というところが問題に。教師側にそれを知るすべがないことがネックになります。

<中国ではさらに進んでいて、宿題アプリと呼ばれるAI(人工知能)教育サービスを使うことはごく当たり前のことになっている。宿題アプリとして中国国内で最も使われている「作業幇」のアクティブユーザー数は1億7000万人を突破しており、ほぼすべての小中学生が利用していると推察される。各種教育サービスの利用があまりにも過熱しているため、中国共産党指導部は教育サービスへの監督を強化する方針を打ち出したくらいだ。
 作業幇は、設問をスマホで撮影すると自動的に内容を解析し、類似の問題をデータベースから探し出し、解答と解説を送ってくれる(しかも、一連のサービスは基本的に無料で使える)。このアプリは宿題をズルするためのツールを考えると望ましくないサービスかもしれないが、一方で、貧困家庭の小中学生にとっては、塾に行かなくても同等の効果を得られる唯一の手段でもある。
 結局のところ、塾や参考書というのは、問題の解き方を丁寧に解説してくれるものであり、解答と解説をなぞることは勉強の基本でもある。ネットを活用することで、今まで実現が難しかった手法が使えるという違いがあるだけで、本質は変わっていないと言い換えることもできるだろう>


●忙しいから他の人に書いてもらうことは悪いことじゃない?

 論文に関しては、「自身が開発・発明した技法や手法を持っているものの、あまりにも仕事が忙しく、とても論文を書いている暇がない」「複数の論文執筆を行って業績を積み上げたいと思っている研究者が、中核的ではない部分の執筆を外部に依頼するケース」を挙げて肯定。「必ずしもモラルに反するとは限らない」としています。

 ただ、ここらへんもいろいろと問題があります。前述の通り、そもそも本当に「中核的ではない部分」だけ外部委託なのかどうかがわからないのが問題。また、仮に「中核的ではない部分」を委託していたとしてもそれを明記しないのは問題。昔から研究の世界では「不適切行為」「モラル違反」と考えられているものなんですよ。(2022/05/02一部加筆)

 こうした行為はまとめて「不適切なオーサーシップ」と呼ばれるものです。例えば、石川県立看護大学の研究活動上の不正行為及び好ましくない研究行為では、以下のように説明しています。そもそも記事で出ていた「実績を作りたい」が完全に不純な動機で、ここらへんに絡んだ問題が多数起きているんですよ…。

不適切なオーサーシップ
<研究成果の発表物(論文)の「著者」となることができる要件を満たさない者を著者として記載すること(ギフト・オーサーシップ)、著者としての要件を満たす者を著者として記載しないこと(ゴースト・オーサーシップ)、又は当人の承諾なしに著者に加えること
◆研究成果の発表物(論文)の「著者」となることができる要件◆
下記の①~③の要件を全て満たす者
①研究の企画・構想、若しくは調査・実験の遂行に本質的な貢献、又は実験・観測データの取得や解析、又は理論的解釈やモデル構築など、当該研究に対する実質的な寄与をなしていること
②論文の草稿を執筆したり、論文の重要な箇所に関する意見を表明して論文の完成に寄与していること
③論文の最終版を承認し、論文の内容について説明できること

 偉い人の実績作りという例は実際あり、ノーベル賞候補だと言われていた東北大の学長は、中国人留学生を使って論文を量産していた疑惑がありました。他の不適切な手法も疑われているのですが、なんと3000本近い論文を発表。多忙なはずの学長時代にむしろ週に1本というハイペースで論文を量産していました。

 このように、研究スキル売買以外でも、研究論文ではどの作業をどの著者が行ったかがわからない…というのが問題。なので、いずれにせよ実際にどの作業を行ったのか、どのようなソフトやサービスを使ったのかなどといったものを可視化していく…という方向性しかないと思われます。そうじゃないと公平に評価できません。


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