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向かない都市も…コンパクトシティのデメリット・問題点とは?


 コンパクトシティの話をまとめ。<コンパクトシティのデメリット・問題点とは?>、<コンパクトシティの富山市、パリと並ぶ世界最先端の事例として注目!>、<日本では無理?アメリカのコンパクトシティ成功例が過激すぎる>、<人口減少・経済成長鈍化で「現在の人口分布維持」は不可能な話>、<コンパクトシティは田舎や郊外の切り捨て?氏原岳人准教授の回答>などをまとめています。

2023/01/02中程にまとめ:
●コンパクトシティの富山市、パリと並ぶ世界最先端の事例として注目!
●日本では無理?アメリカのコンパクトシティ成功例が過激すぎる


●コンパクトシティは郊外化の問題点・中心市街地の空洞化解決政策

2013/5/2:「コンパクトシティ」という政策に興味が湧きました。ただ、Wikipediaの説明は難しいですね。コンパクトシティとは、"都市的土地利用の郊外への拡大を抑制すると同時に中心市街地の活性化が図られた、生活に必要な諸機能が近接した効率的で持続可能な都市、もしくはそれを目指した都市政策"との説明。よくわかりません。

 もうちょっとイメージが湧く言い方ですと、郊外化の進展と中心市街地の空洞化という問題点の解決を目指す政策がコンパクトシティである…といった説明が良いですかね。郊外化の進展はむしろいいじゃない?と思うかもしれませんが、郊外化には以下のような問題点があるため、諸手を挙げて歓迎と言えるわけでもないようなのです。

<郊外化の問題点>
・自動車中心の社会は移動手段のない高齢者など「交通弱者」にとって不便である。
・無秩序な郊外開発は持続可能性、自然保護、環境保護の点からも問題である。
・際限のない郊外化、市街の希薄化は、道路、上下水道などの公共投資の効率を悪化させ、膨大な維持コストが発生するなど財政負担が大きい。


●街を小さくして自動車いらず さらに税収も増加が狙える理由

 人々は「自分の住んでいる地域も他と同じように」と要求しますが、薄く広がった世界すべてに充実したサービスを…というのはやはり無理があります。予算は有限であり、無尽蔵に出てくるわけじゃないのです。必ずどこかで限界が来てしまうでしょう。そのため、コンパクトシティのような思想が出てくるのはある意味必然だと思われます。

<コンパクトシティとは?>
・こうした課題に対して、都市郊外化・スプロール化を抑制し、市街地のスケールを小さく保ち、歩いてゆける範囲を生活圏と捉え、コミュニティの再生や住みやすいまちづくりを目指そうとするのがコンパクトシティの発想。
・再開発や再生などの事業を通し、ヒューマンスケールな職住近接型まちづくりを目指すもの。
・交通体系では自動車より公共交通のほか、従来都市交通政策において無視に近い状態であった自転車にスポットを当てているのが特徴。
・地方税増収の意図もある。例えば、地価の高い中心部に新築マンションなどが増えれば固定資産税の増収が見込まれ、また、都市計画区域内の人口が増えれば都市計画税の増収も見込まれる。


●反対が多いなど…コンパクトシティのデメリット・問題点とは?

 ただし、コンパクトシティが無敵の政策か?と言うと、やはりそうではありません。無論、課題はあります。

<コンパクトシティの問題点>
・既に拡大した郊外をどう捉えるのか。
・郊外の環境の良い、ゆとりのある住宅を好む住民も多く、必ずしも住民の支持を得られていないケースも多い。
・平成の大合併で広大な自治体が次々と誕生した中で、コンパクトシティ化は郊外や旧自治体の中心街を切り捨てることに繋がらないかと不安がある。
・郊外の発展を抑えれば中心市街地が再生するのか。
・市街地拡大の抑制そのものが目的と誤解され、街のにぎわいを取り戻し再生させるという本来の目的が忘れ去られる恐れがある。例えば、郊外化を抑制する目的で郊外へのショッピングセンター立地を抑制するという名目での、活性化策を自ら企画実施しようとしない既存商店街保護へのすり替えの恐れがある。
・都市計画をツールとして有効に活用できるか
・従来も、都市計画が真に有効に機能しておれば防げたことは多いのではないか。現状追認に終始してきたのではないか。都市計画が現状追認にならざるをえなかったのは、都市計画が国民、住民の希望・考えを無視した官僚・学者主導のものになっていたからではないか。
・自動車への依存は、駐車場スペースや道路幅が狭い傾向にある中心市街地には不利に働くが、既に鉄道やバスによる公共交通網が衰退し、郊外の発達した地域では、自動車による移動以外に適当な手段がない場合も多く、またたとえ公共交通網に投資をしたところで、自動車による移動に慣れた住民が十分に公共交通機関の利用に向かうのかという不安もある。


●コンパクトシティに向く都市の条件 逆に言うと向かない都市も…

 Wikipediaで出典不明となっていた部分なんで信頼性の高い記述部分ではないのすけど、コンパクトシティを実現しやすい都市の条件というものがあるとも、Wikipediaでは書かれていました。ここで書かれていた「コンパクトシティに向く都市の条件 」というのは、以下のような内容です。

・公共交通網がある程度充実していること
・中心市街地である程度文化活動が盛んであること
・コミュニティが存在していること
・観光地としても成立しうる資源を持ち人々が流入する要素があること

 また、比較的規模の大きい地方都市では近年、中心市街地の地価の下落や工場の移転等に伴う都心部へのマンション建設による人口の都心回帰という、コンパクトシティの方向への自然発生的な変化も見られるといいます。望む望まないを別にして、自然とコンパクトシティな感じになっているんですね。

 ただし、以上のようなコンパクトシティを実現しやすい都市の条件があるというのは、逆に言えば、コンパクトシティに向かない都市もあるということでしょう。上記の条件を満たさない都市ではうまく行かないと考えられます。人口減少が確実な日本では、コンパクトシティ構想は必然ではないかと思いますが、さすがに万能というわけではなさそうでした。


●すでに富山市など、多くの都市がコンパクトシティを取り入れる

 なお、既にそれっぽいことをやっている自治体は、以下のようにいくつもあるそうです。このうち、富山市に関しては、最初別のページに書いていて、その後同じページの次の小見出し部分にまとめた<コンパクトシティの富山市、パリと並ぶ世界最先端の事例として注目!>で書いています。

<日本の推進例>
・札幌市、稚内市、青森市、仙台市、富山市、豊橋市、神戸市、北九州市 などの各市は、コンパクトシティを政策として公式に取り入れている。
・市街地の拡大による除雪費用の増大が問題となっていた青森市では、郊外の開発の抑制と中心市街地の再開発を施策とし、公営住宅の郊外から中心部への移転などを行っている。
・富山市の場合、もともと発達していた富山地方鉄道の中心市街地路面電車網を拡張して環状線化し、駅も増やして、貸出自転車駅を併設するなど意欲的な姿勢をみせている。さらに新築中の富山駅を経由して駅北部の路面電車網と直接連結することを予定。また岐阜方面からの集客力を強化するために高山本線の増発や臨時駅設置の社会実験も行っている。


●コンパクトシティの富山市、パリと並ぶ世界最先端の事例として注目!

2014/10/19:元記事ではアメリカのポートランドの記述が多かったんですが、日本人にはパリって言った方がインパクトありそうなのでタイトルはパリを採用。人類の7割が都市部に住む未来:日経ビジネスオンライン(馬場 燃 2014年8月4日(月))によると、OECD(経済協力開発機構)は、富山市、ポートランド、パリ、メルボルン、バンクーバーの"5都市について、2年前に分厚い研究書を公表した"ことがあるそうです。

 「コンパクトシティ」とは簡単に言うと、"郊外の開発を極力控える一方で、街の中心部にヒト、モノ、カネの機能を集約する"というまちづくりの考え方。ただ、「定義が曖昧で論争の的になることも多い」とOECDが断っているように、明確になっているわけではありません。

 とりあえず、OECDの場合は「近年、都市戦略にとり入れられることが増えている概念。高密度で近接した開発形態、公共交通機関でつながった市街地、地域のサービスや職場までの移動の容易さが主な特徴。健全で理に適った都市開発モデル」と説明しています。

 世界最先端と言える先行事例の一つ、米北西部ポートランド。"現在は「米国で最も住みたい街の1つ」に選ばれ、若者を中心に400~500人の移住者を毎週迎え入れている"というほどの人気。ポートランドも実は1980年代は不況に喘いでいました。"林業を主力産業にしていたが不景気で住宅市場が低迷"していたのです。

 しかし、このとき(実際にはもう少し前の1979年が転機)に"一次産業から半導体を軸とするハイテク産業を集積すると同時に、市内中心部をコンパクトに再開発することで街に活気"を戻すことができたとのこと。ただ、これ、即効性はないってことですね。"約30年かけて街作りを地道に進めたことが功を奏した格好だ"と記事では書いています。


●日本では無理?アメリカのコンパクトシティ成功例が過激すぎる

 このポートランドのコンパクトシティのやり方は特に強烈だった事例。"人口予測を基に、開発できる領域を明確に線引き"して、「都市成長境界線」というものを決めます。"市民は基本的にその領域内で生活することが義務付けられる"というもので、おそらくこれは多くの批判を浴び、反発を招くような政策だったでしょう。

 実際、読み進めてみると記事でも、"市民の反発はないのか。何しろ線外であれば、そこに住みたくても、かなり住みにくい暮らしを強いられる"としていました。何しろ"水道という基本的な公共サービスが提供されず、井戸水をくみ上げて生活するしかない"という徹底ぶりなのです。

 ただ、記事ではそこらへんの話を深く書いていませんね。「私の同級生でも、10人に1人は自然が好きだという理由から線外で暮らしている。私自身も、自分の事業が5年ごとに変化する境界線の影響を受けないか常に気にかかる」という人の話を載せていたくらいです。

 "30年、衣食住が「20分圏内」で完結できるよう都市開発を進めた結果、都会と自然が共存する住みやすい街として全米から移住者が相次ぐようになった"という利点は、確かにこの境界線なしには成し得なかったものではあります。しかし、もうちょっと反対意見も聞いてみたかったです。普通なら反対が多くなるようなやり方をなぜできたのか?というのは気になるところでしょう。

 ポートランドのWikipediaくらい見ておくか?と見てみましたが、コンパクトシティの「コ」の字もなし。しかし、人口推移が載っていました。こちらによると、1990年の時点で既に人口が増えていますね。思ったより早いです。

年度 人口 %±
1950 373,628 22.3%
1960 372,676 −0.3%
1970 382,619 2.7%
1980 366,383 −4.2%
1990 437,319 19.4%
2000 529,121 21.0%

 以上はポートランドの例。富山市はもちろんこんなに極端なことはしていません。富山市は2040年には"高齢化率も4割を超える公算が大きい"ことから、従来の「郊外に家を建て、車で移動する」スタイルの暮らしが破綻することを予測。"公共交通機関を軸としたコンパクトな街作りを目指し始め"ました。

 やり方としては公共交通機関の充実の他に、マンション購入の助成、"街中に子供から高齢者までが交流できるイベント施設"を設けるなど。構想から約10年で、"居住推進地域では人口が転入超過に転じ"たということで、中心部の人は増えているようです。

 市内での人口移動だけでなく、他都市からの移入者が増えれば、市民サービスもさらに良くなるでしょう。そこまで行けば成功と言えます。注目していきたいところです。…なお、富山市全体としては、緩やかな増加傾向が元からあるようです。以下のような人口データでした。

1990年 408,942人
1995年 417,595人
2000年 420,804人
2005年 421,239人
2010年 421,890人


●人口減少・経済成長鈍化で「現在の人口分布維持」は不可能な話

2021/11/13追記:コンパクトシティには、住民の間には「田舎の切り捨てではないか」という不安の声が根強いなど、疑問の声があるとのこと。コンパクトシティーはなぜ必要? 岡山大准教授がHP作り解説 毎日新聞 2021/11/3 12:30は、そうした疑問に都市計画が専門の岡山大・氏原岳人准教授が答えるという記事でした。

 私としては、田舎の切り捨てもやむを得ないと思いますけどね。人口が減って、なおかつそれに伴って経済成長が見込めなくなっているのに、現在の人口分布を維持しろ!というのは無理がある妄想です。こうしたことは、なぜコンパクトシティが必要か?という説明部分からわかります。

Q.コンパクトシティーを実現しなければ、私たちの生活にどんな影響があるのですか。
A.無秩序に都市が広がっていくと、結果的に街全体が住みにくくなってしまいます。1人あたりの行政コストが高くなり、行政サービスの質が落ちる▽身近な場所からスーパーや病院、学校などがなくなる▽公共交通の利便性が低下し、車がないと不便な生活になる▽森林や農地などの自然がなくなる▽都市災害のリスクが増える--などたくさんの弊害が生まれるのです。

Q.郊外を自由に開発すれば人口が増えて、街がにぎわうのではないですか。
A.一時的にはにぎわうかもしれませんが、やがて都市全体の衰退につながる可能性が高いです。開発を自由にすると、郊外の乱開発が増えて中心部などの市街地は衰退します。これは市街地から地価の安い郊外へ開発の需要が流れるからです。多くの都市では中心部の税収が財政を支えているため、そこが衰退すれば都市全体の衰退につながります。


●コンパクトシティは田舎や郊外の切り捨て?氏原岳人准教授の回答

 ただ、氏原岳人准教授は「田舎の切り捨てが必要」といった回答はしていませんね。「中心部ばかり開発すると、田舎や郊外を切り捨てることになりませんか」に関しては、「まず、田舎と郊外は分けて考えなくてはいけません」と整理。以下のように回答していました。

A.田舎とは中山間地域のことで、そもそも都市計画の対象ではありません。中山間地域は今まで通り自然豊かな特性を残したまま小さな生活拠点を作り、公共交通などの移動手段の確保が求められます。一方、郊外は市街地周辺の地域のことで、ここでは場当たり的な開発は避けなければいけません。ただ、中心部ばかりを開発するわけではなく、郊外には交通渋滞緩和のための環状道路の整備など、そこで暮らす人や地域に合わせた開発が必要です。それぞれの地域の身の丈に合った計画的な開発によってコンパクトシティ-は実現するのです。


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