中国の反日デモの話をまとめ。<中国で反日デモ最大級 それでも日本製品が人気、不買運動・ボイコットは影響なしって本当?>や<中国人、反日デモ・日本製品不買運動で自滅 経済失速・雇用の減少>をまとめています。
2023/01/30まとめ:
●中国の反日デモの本質 現状への不満・鬱憤と政府・共産党への批判
2023/03/23まとめ:
●デモの中心は不憫な若者たち 中国共産党は彼らを恐れている? 【NEW】
●中国で反日デモ最大級 それでも日本製品が人気、不買運動・ボイコットは影響なしって本当?
2012/9/17:言うまでもなく中国は大きな市場であり、素直に人口やGDPを見ればビジネスには魅力的に見えます。しかし、今回揉めているように反日的な行動が起きるなど、日本企業にとっては不安定だとも考えられます。ただ、これで日本企業が諦めたとしても日本特有の問題。欧米企業などは関係ありません。
そうなると巨大市場をまたみすみす外国勢に取られるために、私はそれでも日本企業は中国を目指すべきだと考えていました。ところが、本当にそうだろうか?とここ1年くらいは割と悩むことに…。
理由のひとつは、日本企業以外の海外の企業も苦戦しており、中国で稼ぐことがかなり難しいのでは?ということです。うまく行っている企業もあるんでしょうけど、マイクロソフトは諦めたのでは?なんて書いている記事も紹介しました。
中国は官営企業が強い他、制約が多い、機密情報を要求するなど無茶なことを言う、模倣品が圧倒的に出回っている中で高い本物を売らなくてはならないなどなどやりづらいことが多いのです。
ここらへんは将来的に改善する可能性があり、それを見込む長い目で見た戦略で早めの中国の浸透をはかるというのはやはりアリ。この場合でも日本企業の場合は前述の反日活動は見極めねばなりません。中国人の反日感情は一朝一夕に変わるものではなく、日本企業にはやはりリスクがあるとも考えられます。
そうなると、日本が巨大市場で一人負けという事態になるわけですが、進出してもあまり儲からないのであれば仕方ありません。
反日的な行為は当然日本では報道する価値の高いニュースです。ですから、日本では実際より大袈裟に伝わっている可能性があり、そういった指摘は過去にもありました。今回も
アングル:尖閣で過熱する中国の反日感情、「日本製」人気は動かず(2012年 09月 14日 15:35 ロイター)という記事が出ています。
<尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権をめぐって中国各地で反日デモが起きているが、中国主要都市の小売店やデパートでは、日本製の電化製品や衣料品の売り上げに影響は出ていないようだ。
「南京大虐殺」で反日感情が強いとされる南京でも変化は見られず、日本食レストランの前には普段通り列ができている。同市の繁華街「新街口」近くにある日系の小売店や外食店の店長らは、日本政府による尖閣諸島国有化で反発は強まっているものの、客足の鈍りはないと口をそろえる。
「日本は嫌いだが、西側諸国の人たちが言うように『政治は政治。経済は経済』だ」。南京中心部にある家電量販店ヤマダ電機(9831.T: 株価, ニュース, レポート)から出てきた男性(27)は、買い物袋を手に「私は自分が買う商品の質の方が気になる」と話した。
(中略)上海や北京では、日本製品に対する需要に目立った変化はなく、これまでのところ尖閣問題をめぐる高官らの発言が消費者の行動に影響を与えている兆候は見られない>
ただし、一応この記事においても「日本企業が、尖閣問題の影響を受けるリスクは高まっている」として悪化する懸念は示していました。南京大学のYu Jingping教授は、日中間の緊張は近年で最も高くなっていると指摘し、「そのインパクトは極めて大きくなる可能性がある」と分析。他にも以下のような話がありました。
<尖閣問題の日本企業への影響はすでに一部で表面化している。大規模販促イベントや記者発表会などの中止や延期を当局から求められる日本企業が増えているという。今週には上海市が、東レ(3402.T: 株価, ニュース, レポート)がスポンサーのマラソン大会の大会名から東レを削除する措置を取った。
中国に進出する日本企業のコンサルティングを手掛けるマイツグループの池田博義最高経営責任者(CEO)は、「多くの日本企業が中国の景気減速を懸念し、消費者需要を拡大したいと考えている。そのため、大規模な販売促進ができないのは打撃となるはずだ」と述べた。(中略)
ただ、中国経済全体が減速する中、領土問題が企業に与える影響を数値化することは難しい。南京市内にある日産ディーラーの販売マネジャー、Wang Zhaoshen氏は、政治的緊張はこれまでのところ営業成績には影響しておらず、市場全体の減速の方が大きな懸念だと説明。「志賀氏はそれ(尖閣問題)を口実にしているのではないか」と述べ、自動車メーカーにとっての本当の問題は、労働コストの上昇や原油高にあると指摘した>
前述の通り、私としては判断しづらく悩むところ。よく話題になる暴動の被害を受けた料理店なども、実際には日本のものじゃないなんてこともありますし、ごく一部に過ぎません。たとえごく一部であってもすごい嫌なリスクなのですが、全体で見ると大きな問題にはならないとも言えそうです。
ロイターが上記のように<尖閣で過熱する中国の反日感情、「日本製」人気は動かず>という記事を書いていた一方、日経新聞は今回の影響のすごさを強調する記事を連発。全然違います。日付が1日違いますので、その1日で一変したという可能性もありますが、読んでみて違いの大きさを感じてください。
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日系スーパーで略奪も 中国で反日デモ広がる
(2012/9/15 13:32)
<中国では15日午前、日本政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化したことに反発するデモが北京、上海、重慶など各地で相次いだ。反日デモが一斉に起こるのは8月26日以来。北京の日本大使館前には数千人規模のデモ隊が押しかけ、投石するなど暴徒化している。過去の反日デモを上回る規模になったとみられ、日中関係がさらに緊迫し、日本企業の中国ビジネスなどに影響するのは避けられそうにない。
15日のデモは、中国政府がデモを一部容認する姿勢を示したことや、中国メディアが尖閣を巡る日本批判を連日繰り返していることから、参加者が大胆になっている。中国では靖国神社や尖閣の問題を巡り、2005年と10年に大規模な反日デモが起きた経緯がある。
山東省青島市の日本総領事館によると、青島では日系スーパーのジャスコを取り囲んだデモ隊の一部が店舗に乱入。設備を破壊し、略奪が続いている。日本時間午後1時現在では、在留邦人にけが人などが出たとの情報はない>
<内陸部の重慶市では、見物人を含めて3000人規模のデモが発生。四川省成都では、日系コンビニエンスストアの複数の店舗で15日朝までに、レジを壊されたりするなどの被害が出ている>
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日系企業を放火・破壊 トヨタ・パナソニック 標的に 中国反日デモ、過去最大級に(2012/9/15 19:12 (2012/9/16 0:01更新))
<日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化に抗議する中国の反日デモは15日、北京、重慶など少なくとも十数カ所の主要な都市で発生し、1972年の日中国交正常化以来、最大級の規模となった。一部は暴徒化し、パナソニックなど日系企業の工場で出火。トヨタ自動車の販売店が放火されたほか、各地の日系百貨店やスーパーなども破壊や略奪に遭った。16日以降も各地で反日デモの呼びかけがあり、日本企業の中国事業に悪影響が広がるのは必至だ。
日本大使館によると15日夜時点で、中国国内の邦人に負傷者などの被害は出ていない。(中略)
トヨタ自動車の中国法人によると青島にあるトヨタの販売店が放火され、ほぼ全焼した。「中国全土で多くの販売店が車両を壊されるなどの被害を受けている」という。
青島の日本総領事館によると開発区にある複数の日系企業が放火などの被害に遭った。日系企業の工場への反日デモ被害は過去にあまり例がない。
青島の日系スーパーの「ジャスコ黄島店」は約3千人のデモ隊が包囲。約150人が窓ガラスを壊し、臨時休業中の店舗に乱入し商品も略奪した。長沙では日系百貨店の「平和堂」に押し入り、破壊行為に及んだ。同店関係者は「当面は営業ができない」と話す。
四川省成都の日系コンビニエンスストアでは複数の店舗でレジなどを壊された。上海や内陸部の重慶は公安当局が厳しくデモを統制し、大きな混乱はなかったもよう。
成都にある「イトーヨーカドー」5店舗と「伊勢丹」は15日の閉店時間を繰り上げ、16日は休業する。「セブンイレブン」は成都中心部の約40店舗が17日朝まで営業を取りやめる。
反日デモが広範な都市で一斉に起こったのは、日本政府が尖閣諸島を国有化してから初めて。中国政府はデモを一部容認する姿勢を示し、中国メディアも日本批判を連日報道。日本製品の不買運動呼びかけとともに、参加者の行動はエスカレートしやすくなっている>
"反日デモが広範な都市で一斉に起こったのは、日本政府が尖閣諸島を国有化してから初めて"とありますから、どちらかというと、一変したと考えた方が良いかもしれません。この内容でほとんど影響なしとはとても言えませんし、おそらくロイターは大規模な反発の前の情報を元にした記事ということでしょう。
こうなると、やはり中国進出はすべきではないと思うかもしれません。ところが、ここまでなったとしても利益の方がずっと大きければ、やはり中国に進出する価値があると言えるのがビジネスの世界です。スズキは7月にインドで死者すら出た暴動がありながらも、インド市場での方針は変えないと言っていました。確か社長はインタビューでアジア市場に出る以上、こういったトラブルは当然といった言い方もしていたと思います。
石原都知事が日本人が死ぬ可能性や日本企業が被害を受ける可能性があるということまで考えていたかは不明(たぶん考えてなかったと思いますけど)ですが、今回は反発の予想される中で日本側がアクションをしたため、当然の反日行動であり、半ば必然的な日本企業の被害です。
これはもちろん中国の抗議が正しいという意味じゃないですよ。正しかろうが正しくなかろうが中国人は反発するのは予想されるだろう…という話。正直ここまでの過激化は予想外でしたが、今までの経験からして予測できますので、思いもかけなかったというのはお人好しすぎます。
しかし、こういったリスクは日本側がことを起こさなくても将来的にあり続けるでしょうから、中国進出企業はそこまで織り込んで方針を決定しなくてはなりません。前述の通り、リスクを考えた上で利益の方が大きければ中国重視…もアリなのですが、少なくともリスクについては考えておく必要があるでしょう。
●中国人「ボイコットで日本企業が倒産…日本経済は破壊する!」
2013/5/2:<反日デモから半年、日本製品ボイコットは回り回って中国自身に>(2013年3月29日 姫田小夏 [ジャーナリスト] ダイヤモンド・オンライン)によると、2012年9月に発生した反日デモの影響はまだ残っているみたいですね。同じ時期には、日本製品のボイコットを旗印にした日本経済への制裁も行われていました。
http://diamond.jp/articles/-/33951 2013年1~2月、日本の対中投資は前年同期比で6.7%減少。日本の中小企業もどんどんアジアシフトを加速させる動きが顕著になっています。さらに、現地で経済活動を続ける日系企業にとっては、いまだその後遺症を引きずる結果となっているとのこと。中国に進出している日本系の企業の傷はかなり深かったようです。
日系企業を痛めつけたこと自体は中国人には痛快なことだったのでしょう。騒動の当時、中国では 「もし中国人が、日本ブランドを1ヵ月間買わなければ、日本企業は数千社が倒産する。半年間買わなければ、日本は人口の半分が失業する。1年間買わなかったら、日本経済は徹底的に瓦解する――」というセリフが流行っていたそうです。
<中国市場に依存しているのは、むしろ日本経済だ」と、日本の脆弱な足元を見、経済制裁という形で一種の商戦を仕掛けたのである。日本ブランドを駆逐し、国産ブランドを台頭させる――それが世界第2位の経済大国になった中国の挑戦でもあり、過去100年の歴史のなかで連綿と続いた「天敵日本」への恨みを一気に晴らす好機でもあった>
●中国人、反日デモ・日本製品不買運動で自滅 経済失速・雇用の減少
ただ、こうした見立ては大局観を欠きます。製品ボイコットや制裁というのは、巡り巡って跳ね返ってくるものだというのが経済学的には常識。既に出てきた部分でも、日系企業は対中投資を減らしているという話がありました。たとえば、ある日本の医療器具メーカーは、「販売拠点の増床」などを見直し。その影響が以下だそうです。
<影響を受けるのは地元の不動産仲介会社だ。多くの日系企業の仲介実績が自慢の某不動産もまた中国資本の企業だが、「これまで売上の大半を占めてきた日系企業の業容拡大に伴う社屋移転は、もはや期待できなくなりました」という>
<上海では事業を縮小する日系企業が少なくないが、それに反比例するかのように、法律事務所の職員は多忙な日々が続いている。(中略)この半年間、案件の大半は“日系企業の整理縮小”だという。もっと具体的に言えば、解雇に反発して過激な行動に出る社員を“なだめること”だというのだ>
事業が縮小されてば、当然解雇者が出ます。当たり前での話であり、現地の中国人にも影響が出るわけです。また、ある企業では"恒例の“春節前ボーナス”は無配となり、春節を前後に発表するはずの昇給も昇級人事も一切できなかった"という有様。"中国の狙い通り「日本企業への攻撃」は成功"。しかし、めでたしめでたし……と言えるのでしょうか。
<しかし、損失を被るのは日本経済にとどまらない。(中略)例えば、解雇を嫌がり大暴れする中国人が存在するということは、この景気の悪い中国で「簡単には次の就職先が見つからない」ことの裏返しでもある。
しかも、日本企業では「そこそこ真面目にやっていれば」生活は安定する。競争の激しい欧米企業、いつ倒産するかわからない中国企業とはまるで異なる居心地の良さがある。暴れるのも無理はないのだ。
俗に、中国に進出する日系企業は2万社とも言われる。200万人に及ぶ中国人の雇用を創出し、間接的に日系企業の経済活動の恩恵に預かっている人口は900万人だとも言われている。日本企業が事業に縮小をかける今、彼らもまた危機にさらされていることを意味する>
●日本をボイコットしても中国製品は売れない!代わりに売れたのは…
また、中国国内企業も育っていないといいます。2012年9月の日系自動車の販売台数は、前年同月比で3割近く減ったものの、その分消費者が国産ブランドの「吉利」や「奇瑞」になびいたわけではないとのこと。売り上げを伸ばしたのは欧米系や韓国の自動車メーカー。日本ブランドを拒否したところで、消費者は国産車を買わないといいます。他の分野でも同様です。
<同じことがデジタルカメラにも言える。日本製品ボイコットというスローガンを受けて、はたしてどれだけの人が国産ブランドの「明基」や「愛国者」に飛びついただろうか。
日本製品ボイコットをいくら叫んだところで、それに取って替わる国産ブランドが育っていないことには、「商戦」にすらなり得ないというわけだ>
日本の脱中国を後押ししてしまって自分が困るというのは、方向性の違う話であるものの、以前の
保護貿易主義と中国のレアアース輸出制限の失敗 フィリピンバナナの輸入禁止、オイルショック、アメリカの大豆禁輸の結果は?を思い出しました。これは中国だけに言える話ではなく、日本のよる中国叩きや韓国叩きでも論理としてはいっしょ。経済学では、海外製品を叩くのは逆効果だとわかっています。他山の石としましょう。
●中国の反日デモの本質 現状への不満・鬱憤と政府・共産党への批判
2012/9/21:
王子製紙の排水管敷設への抗議活動は、反日デモではない 中国で高まる民主化リスク(要登録 日経ビジネスオンライン 2012年8月1日 福島香織)という記事をブックマークしていました。タイトルには「反日デモではない」とあるんですけど、むしろ中国の反日デモの本質を示しているのでは?と思ったので紹介しようと思っていたんですよね。
この記事、タイトルだけ見て中身は全然見ていませんでした。読みながら適当にピックアップしていきます。記事で出ていたのは、2012年7月28日、江蘇省の南通市啓東市で激しいデモ。青年が何十人もの警官に取り囲まれ、袋だたきにされ、倒れて動かなくなった様子がツイッターで流れ、死者が出たと噂されるほど激しい取り締まりが起きました。
ただ、日本人的はあれ?と思う話でしょう。これでは、中国政府が「反日デモを許さない」と思っている証拠になってしまい、反日デモは中国政府の陰謀!という一部日本人による主張が崩れます。実際、現地でも「デモは日本の企業をターゲットにしているのに…」という戸惑いがあった模様。しかし、作者はそもそも反日デモではないのでは?と見ていました。
<違う、と思う。これを尖閣諸島問題で反日感情が盛り上がってきたところのガス抜きで行われた、いわゆる「反日デモ」と見るのは、当局の情報操作に乗せられることになるだろう。少なくとも2005年に起きた「反日デモ」を現場で取材した身としては、違うと感じている。(中略)
では何かというと、これは「プチ民主化デモ」といっていいと思う。あるいは「もはや、プチ革命?」くらいの見出しをつけたい。そして、中国進出、あるいは進出予定の日系企業には、こう言いたい。これからの中国の最大のカントリーリスクは、反日感情ではなく、“民意”あるいは“民主化”であろう、と>
「反日デモ」ではなく、実際には「プチ民主化デモ」だという話。これは私がタイトルで想像したのとはまた違う話かもしれません。こういう方向性とは思いもよりませんでした。この後、当初のデモの目的は、王子製紙の排水管敷設計画阻止だったものの、暴徒化した…といった話が書かれています。
<だが、約3時間後にはデモの一部が暴徒化、約1000人が警官隊の警戒線を突破して、市庁舎になだれ込み、執務室をしっちゃかめっちゃかにかき回し、コンドームやら、高級ブランド白酒・茅台酒やら、五つ星ホテルの個人名義の1万3000元の領収書やらを見つけ出しては、汚職・腐敗の証拠として微博に写真を流した。
さらに現場に駆け付けた孫建華・啓東市委書記(南通市副市長)にデモのために制作した「反汚染」Tシャツを着るように命じたのを拒否されたため、衣服を剥ぎ取り、その書記の裸の写真までネット上に出回った。これを見て、友人がツイッター上で「ある意味で革命」とつぶやいていたが、公衆の面前で書記の服を一般市民がよってたかって引きはがして辱めるなど、ひょっとして文化大革命以来の出来事ではないか? >
市政府(日本で言う市庁)は午前10時にはパイプライン建設の永遠中止を発表。しかし、騒乱は収まらず、警官隊も暴徒化し、のデモ取材中の朝日新聞の奥寺淳上海支局長も警官隊に暴行を受けたとのこと。中国警察の横暴さを証明したことがウケたのか、「中国ネットでは彼は今、ちょっとした英雄扱いになっている」といいます。
<今回の場合、目的は環境汚染反対という人々の生活に直結した民生、生存権にかかわる問題で、相手企業がたまたま日系企業であったということである。また、公安当局が認可したデモではなく、高校生も含む90后の若者が微博で呼びかけた集団抗議、つまりジャスミン革命スタイルの抗議活動だった>
ここまでは私が予想していた話と少し違う気がしたのですけど、結局、この後、私がタイトルの時点で想像した話になってきました。うちのタイトルにしたように、「反日デモ」というのは飽くまで体裁であり、デモ参加者の本当の狙いは現在の中国への不満なのではないか?という話です。
<微博やネット上の賛同者のコメントや文面を見ると、矛先は最初から王子製紙ではなく、南通市の
汚職・腐敗問題、あるいはGDPや政治成績ばかりを重視し民生や環境を軽視する
市政府、官僚の姿勢に向いている。そして、デモ隊がいったん暴徒化すると、警官隊は容赦なくデモ隊に暴力をふるった。
2005年の反日デモの場合、反日感情が日貨排斥運動となり、そのガス抜きとして、当局は一部愛国主義の大学生が申請する秩序だったデモを認可した。それは、そのデモはコントロールできるという前提での認可だ。ところが沿道の失業者や社会不満を抱えている人たちまで、そのデモ行進に便乗、途中コントロールが利かなくなり、道すがら、中国人が経営している日本食レストランなども襲撃、最終的に日本大使館への石や卵などを投げつける蛮行が起こったが、警官隊はそういう暴徒を止めはしなかった。
反日デモの背景に社会不満や当局への不満があり、その
不満の矛先を当局に向けられないので、比較的向けやすい日本や日本企業に向けたという事情があった。ただ、
反日デモは放置しておくと、ほぼ必ず反政府デモに転換してくるという予測が当局側にあり、コントロールの自信がなくなった後、全力で抑え込みにかかっている>
これが中国の反日デモに対する民衆の意識と、政府・共産党側の認識だと思います。とはいえ、反日デモの本質は実は反日感情ではない…とまで言うと行き過ぎかもしれません。中国人の多くは反日感情を植え付けられていますし、実際に日本の動向が反日活動の盛り上がりへ影響を及ぼし、連動性を示しています。
ただし、反日デモという言葉に引っ張られすぎるとその正体を見失うのでは?という話。中国で許されるデモというのが反日デモくらいのものであり、自由にできないという事情があるんですよ。日本人と違って、そもそも民衆は不満を示す権利を与えられていません。…と書いていたら、福島香織さんもこの後こう書いていました。
<やはり「反日」というのは、中国において免罪符的な要素がある。デモを許す側の当局側にとっても、デモに参加する民衆側も同じである。
デモに参加する側が、矛先を中央に向けることはいまだ不可能で、だからこそ地方政府に向けているわけだが、もし中央政府が全面的に地方政府を擁護する姿勢を見せれば、民衆のデモ行為は政権転覆行為と見なされかねない。そういうとき、矛先を日本としておくと政権転覆扇動罪にはならない。
一方、デモで責められる地方政府にとっても、自分たちが悪いのではなく、日本や日系企業の責任と言い訳ができる。なので、今回の事件も、ネット上で反日感情が原因であると解釈できるような誘導が確かにある。デモの本質が「維権」「民主」であっても、「反日」の皮をかぶるリスクは十分あり得る>
最初の方にあった「本質は民主化デモ」説は、正直眉唾だと思って読んでいました。ただ、「一党独裁の政府への不満」ということの意味をよくよく考えてみると、その先は民主化に繋がるかもしれません。確かにある意味民主化デモ的な性質を持ちますね。ただ、これはここ最近に限った傾向ではないと思います。
また、「民主化」という言葉を被せてしまうと見えづらくなります(おそらく福島香織さんは中国政府批判の思いが強かったんだと)が、本質は要するに現状への「不満」なのでしょう。簡単に暴徒化してしまうというのは、その現れじゃないかと…。そういう言い方しちゃうと、中東で起きた民主化デモもまた「不満」のためと言えてしまいますが…。
●デモの中心は不憫な若者たち 中国共産党は彼らを恐れている?
”「反日デモ」というのは飽くまで体裁であり、デモ参加者の本当の狙いは現在の中国への不満なのではないか?”ということについては、前回の記事の説明だけで十分わかるんじゃないかと思います。ただ、当初ピックアップした記事が他にもあったので、他もそのまま読んでみます。
次にストックしていたのはお盆後の記事で、反日デモがかなり広がっていた頃のもの。
反日デモ、抗議活動の急先鋒「90后」世代は “時代のヒーロー”か“紅衛兵の再来”か (要登録 ダイヤモンド・オンライン 2012/8/24 姫田小夏 [ジャーナリスト])という記事でした。
<8月19日、日本の尖閣諸島の領有をめぐり、中国各地で反日デモが広がった。テレビのニュースには、デモ隊が公安の車をひっくり返し大暴れするシーンが映し出された。しかし、反日デモはあくまできっかけに過ぎない。「愛国無罪」という大義名分を借りた抗議の、その
矛先が向けられたのは、高圧的に安定維持を続ける中国共産党にある。>
王子製紙で抗議運動についても、<中国における近年の抗議活動、それを動かすのは未払い給与の不満であり、環境破壊への怒りであり、役人の不正への憤りである>としています。また、この記事の場合、別の抗議デモを含めて、主役は90后(90後、90年代世代、あるいはその下まで含む)であることを強調していました。
<90后にとって、当局の逆鱗に触れることなど、どこ吹く風だ。ネット上に思いを書き込み、画像まで貼り付ける(中略)「彼らが中心になれば、民主化が進むのではないか」と期待する中国人もいる。彼らは今、あたかも「時代のヒーロー」であるかのようだ。
しかし、実は「不運な世代」でもある。彼らは、この中国で未来を描けない不幸な若者たちであるとも言えるのだ。
(中略)今年、22歳を迎えた1990年生まれの「初代90后」たちが大学を卒業したが、社会人となった彼らを待ち構えていたのが、景気の鈍化と就職難だった>
中国はかつて、若い世代が未熟さ故に持つ凶暴性に脅かされたことがあると指摘。1960年代から70年代まで続いた、あの文化大革命のことです。紅衛兵と呼ばれた学生らは、毛沢東の名を振りかざしながら、大規模な武力闘争となりました。中国共産党も若い彼らを警戒している…といった話になっています。
<標的に臆することなく突進する90后は、まさに中国共産党に真っ向からぶつかる敵ともなり得る。深セン市のデモでは「打倒日本帝国主義」など、毛沢東時代を彷彿とさせるスローガンもあった。「(引用者注:有力政治家だったが粛清された)薄煕来の支持層は少なくない。デモには左傾化を臭わせる要素さえあった」の声もある>
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