投資・運用に対する幻想・誤解6ヶ条ということで、<専門家に聞けば良い…も間違い、株もFXも初心者はみんなカモ>、<投資のプロなら8割9割勝っているというのは大誤解で実は…>などといった話。また、<投資は儲かることが多い?私が投資を勧めないシンプルな理由>などといった話もやっています。
2021/11/30追記:
●投資家が不合理な行動を取るのはなぜ?ノーベル経済学賞の答え
2022/08/09追記:
●自信過剰が問題?若者より高齢者の方が「騙されない」と自信満々 【NEW】
●金融に自信あります!と言う人ほど完全に間違った理解が多い 【NEW】
【クイズ】ノーベル賞を受賞した行動経済学のリチャード・セイラー米シカゴ大学経営大学院教授は、投資家はなぜ不合理な行動を取ると考えているでしょうか?
(1)正しい投資知識を持たないため
(2)自信過剰になってしまうため
(3)経験不足により間違った判断を下すため
●専門家に聞けば良い…も間違い、株もFXも初心者はみんなカモ
2013/5/13:
大富豪ウォーレン・バフェットの投資アドバイス「専門家は疑え」も書いたんですけど、どうも皆さん投資を勘違いしていらっしゃいます。そういった勘違いについて書かれた
普通の会社員が投資でカモにならないための6カ条 20代から始める 誰でもできる資産運用入門(2)(2013/3/12 7:00 山崎俊輔)という記事がありました。
「投資に対する幻想」「運用に対する誤解」を打ち砕いてみようというのが記事のテーマ。「何となく株でもうけたい」と思っている人というのは、これはわかりやすくいいカモです。これはFXなど、他の投資でも同じでしょう。では、「自分は知識がないから、金融機関の人に教えてもらえばいい」と思っている人は賢いでしょうか?
答えは、いいえ。やはり"金融販売業者のカモにされるのがオチ"だとされていました。
証券マン・銀行マンに騙されるな!投資は素人で営業がプロなだけなどで書いているように彼らは売りつけるプロであって、投資で利益を出すプロではないのです。「金融のプロは儲けている」というのも、誤解であり、幻想なんですよね。
●なぜか多くの人が「投資で儲けられる」と根拠なく自信を持つ
じゃあ、どうするか?というと、記事のコンセプトは以下のような感じでした。
(1)もちろん、普通の会社員がプロと同じ知識や経験を持つことは不可能。
(2)しかし、だからこそ「できるだけシンプルで、できるだけプロにだまされない投資知識」が必要。
6つのキーワードを自分なりに考えられるようになったら、あなたはカモにされる可能性が下がるだろう…と記事ではしていました。うちでは、「投資・運用に対する幻想・誤解6ヶ条」という紹介の仕方をしています。
【キーワード1】 自分はスーパーマンではないと自覚する
"投資をスタートするとき、人はなぜか自分が投資の才能があるのではないかと錯覚してしまいます"、"根拠のない自信に満ちあふれて投資に挑み、あえなく失敗してしまいます"などと書いていました。こんなことなるのは特殊な人だけ……と思いきや、意外に多くの人が通る道です。不思議ですね。
根拠のない自信に満ちあふれてしまう…というのには理由がありますが、それは後ほど。とりあえず、ここでは、行動ファイナンスなどの研究でも自信過剰(オーバーコンフィデンス)の愚として知られているという情報を紹介しておきます。よくある勘違いなのだと考えられます。
●本当に投資で稼いでいる人は相場を予想できないことを知っている
ウォーレン・バフェットの投資アドバイス「専門家は疑え」でも出てきましたが、本物の人は予測に限界があることを理解しています。「予想できない」と割り切っている人や「予想しない」とする人すらいるんですよ。記事では、「相場を予想することはできても、
予言できる人は一人としていません」と書いていました。
【キーワード2】 「相場は読めない」ぐらいに考える
前述のような内容からすると、キーワードの"「相場は読めない」ぐらいに考える"は弱いですね。記事では"「相場は読めない」ぐらいに考える"としていますが、私は「プロでも相場は読めない」と言って差し支えないと考えています。
記事では、"私たちは予言した「ふり」をする人にだまされてはいけません"とも書かれていました。困ったことに人々は、こういう根拠なく断言する詐欺師の方を信頼しやすいことがわかっています。相場に限らず政治家や偽専門家などでも同じことが起きているのです。マジで困りますね…。逆に言うと、自信満々に予想する人は、信頼できない専門家だと考えても良いでしょう。詐欺師の目安になります。
●実は読めない?「相場は読める」という幻想が様々な誤解の原因に
なお、最初の自分をスーパーマンだと自覚する誤解は、「人は相場を予測できるものだ」という勘違いも大きいと思われます。下手に当たってしまったときにすごい!と思ってしまうんじゃないでしょうか? 本当のプロは、当たるときもあれば、外れるときもあるという淡々としたものなんですけどね…。
さらに、この「プロは確実にわかるものだ」という勘違いが、最初の「自分は知識がないから、金融機関の人に教えてもらえばいい」というトラップにはまる要因にもなっているでしょう。実際には、金融機関の人も大して儲けていないのです。というか、「金融機関の人も大して儲けていない」という言い方はまだ甘いくらいですね。
金融機関の人も全然儲けていないことが多いですし、特に営業の人なんかはだいたい素人であってプロですらないんですよ。彼らは投資のプロではなく、営業のプロです。とりあえず、簡単に相場がわかるものなのだという風潮自体が危ういですね。さらに言えば、「確実に上がる株」みたいなガセネタにつかまりやすくなるのも、同じ原因だと言えるでしょう。
●投資のプロなら8割9割勝っているというのは大誤解で実は…
次の話は、「投資のプロも実は6勝4敗くらい」というものでした。この「プロはいつも勝っている」という幻想と上記の「相場は読める」という幻想が、最も大きい「投資に対する幻想」「運用に対する誤解」であると私は思っています。記事では、以下のように書いていました。
【キーワード3】 「投資のプロも実は6勝4敗くらい」と考える
<投資の世界においては55勝45敗くらいで称賛の対象になります。逆にいえば45%負けることは当然の世界なのです。(中略)プロだから将来のことは分かっているだろう、と無批判に考えて頼る人は上手に投資できないタイプの人です>
ただ、そもそも勝率にこだわるのは素人。9勝1敗でも、大きな1敗で人生が終わってしまう人がいます。また、本当に投資がうまい人は、勝率5割未満でも利益を出してきますからね。一般的に投資は利益を大きく、損失を小さくすることを目指すため、本当にうまく行っているのでしたら、勝率が悪くてもプラスにすることは不可能ではないのです。もちろん簡単ではないけどね。
●「運用はまとまったお金でするもの」とささやく人たちの魂胆
キーワード4はちょっと方向性の違う話になっていました。以下のようなものです。
【キーワード4】 「なくしても構わないお金で運用せよ」はウソ!
<一見もっともらしいアドバイスですが、実はこれ、発言者の保身のためのせりふであり、あなたのためのアドバイスではありません。(中略)むしろなくしても困るからこそ、ちゃんとリスクを管理して運用しなければならない、と考える必要があります>
うーん、この部分はどうかなぁ?と思ったものでした。そもそも「なくしても構わないお金」って本当にあるんでしょうか? これは次の項目とセットで見た方がいいかもしれません。
【キーワード5】 「運用はまとまったお金でするもの」はウソ!
<投資をするには100万円くらいのまとまった金額が必要だと思っていませんか? (中略)金融機関の人は特に、売った金融商品の金額が成績につながるので、あなたにまとまった投資をさせようと手ぐすねを引いています>
大体、投資に手を出そうなんて考える人は慎重じゃない気がしますけど、最初は慎重に少しずつというのは物事の基本。ところが、なぜか皆さん、投資には無駄に大胆になります。「むしろ投資経験が浅いときほど投資金額は少額にすべき」と記事ではしていました。私も賛成です。
でも、「今じゃないと儲からない」みたいな甘言にそそのかされて、つい大きく投資しちゃう人も多いんでしょうね。そういう意味では、好景気ほど逆に失敗したときの規模が大きくなるのかもしれません。
あと、私からは、バーチャルトレードではなく実際の投資でするべき…という話も付け加えます。なぜかと言うと、バーチャルだとプレッシャーや金銭感覚が異なって、本番の投資と全然違うやり方になってしまうため。痛みを感じながら練習しなくては、身につかないのです。これは先程の<むしろなくしても困るからこそ、ちゃんとリスクを管理して運用しなければならない、と考える必要があります>という説明とも関連しますね。
●投資で稼ぐ人は才能がある人だから…も実は破滅のもとに
以下のタイトルを見て「才能、人間性」はいらんけど、「努力」は絶対いるだろう…と思いました。ただ、内容的には「過度の努力」ってことみたいですね。
【キーワード6】 「努力や才能、人間性が投資には必要」はウソ!
<過度の努力を強いたり、成功者が自身の才能をひけらかすような投資教育もウソです。人間性をことさら強調する人もウソつきです。体育会系のあしき風習や道徳主義を投資の勉強にまぜこぜにしてはいけません>
ここらへん言い方によっては、投資に興味を持ってカモにされてしまう人を増やしてしまうので言いたくないんですが、実は血のにじむような努力がいる…みたいな世界ではない、といわれています。…でも、簡単に楽してホイホイ儲かると思ってもらっても困ります。マジで。記事でも、「ただし、勉強をまったくしなくても投資できると考えると、あなたはカモにされてしまいます」と書いていました。
あと、「才能」というのはさっきの<自分はスーパーマンではないと自覚する>など…前半3つのキーワードに関係ありますね。「才能がいる」「(下手に儲かってしまうと)自分は才能がある」などと違いしてしまうことが、前半の誤った道へと進む原因となっていそうです。
●初心者だけじゃない…個人投資家全般にとって大切な戒め
作者の山崎俊輔さんは最後に"会社員が誰でも投資できるためのルールは、富裕層やセミプロ投資家のルールと異なってくる"と書いていましたけど、そうなんですかね?プロなんかにも結構当てはまる話だと思いますけどね。
実を言うと、一世を風靡した相場師も大失敗して消えていく人が多いと言われています。「自分はスーパーマンではないと自覚する」「相場は読めない」「6勝4敗くらい」などはプロだって絶対忘れちゃいけない金科玉条でしょう。
それを忘れて調子に乗っちゃったから、きっと大相場師の方々も破滅しちゃったんじゃないでしょうか?
●投資は儲かることが多い?私が投資を勧めないシンプルな理由
2018/12/21:最初に書いていたように、キーワード2,3あたりの「相場は読める」「投資は儲かることが多い」という幻想。この幻想が大きいがゆえに打ち破ることができない人が多く、私が決して投資を勧めない理由にもなります。
ただ、投資を勧めない最もシンプルな理由は、単純に勧めた人のほとんどが損をするため。「投資は儲かることが多い」という幻想は、「投資は簡単に儲かる」という幻想と言い換えても良いでしょう。しかし、実際に個人投資家を調査した結果を見ると、儲かっているのは1~3割程度。ほとんどの人が儲かっていません。
大体、「ほとんどの人が儲かる世界がある」というのは、そもそも非常識すぎる思い込みでしょう。投資は分野によってはゼロサムゲーム、より正確に言うとマイナスサムゲームの世界になっており、理論的にもあり得ないということすらあります。
なお、個人投資家が負けまくっているという調査結果は、初心者だけでなく、個人投資家自体がカモにされているということ。なので、最初の投稿のときも書いたように、前述のキーワードをよく考えることは、初心者じゃない個人投資家にとっても大事。くれぐれも身を滅ぼさないようにしてください。
●投資家が不合理な行動を取るのはなぜ?ノーベル経済学賞の答え
2021/11/30追記:
セイラー教授 投資家はなぜ不合理な行動を取るか 日経ビジネス 2021年1月5日 2:00という記事があり、クイズが出ていたので、多少選択肢を変えてうちでもそのまま出題しました。2017年にノーベル経済学賞を受賞した米シカゴ大学経営大学院のリチャード・セイラー教授の行動経済学について、孫弟子の行動経済学者・田中知美さんが解説する話です。
【クイズ】ノーベル賞を受賞した行動経済学のリチャード・セイラー米シカゴ大学経営大学院教授は、投資家はなぜ不合理な行動を取ると考えているでしょうか?
(1)正しい投資知識を持たないため
(2)自信過剰になってしまうため
(3)経験不足により間違った判断を下すため
【答え】(2)自信過剰になってしまうため
「自信」という話があったので、このページが一番近いかな…ということで追記。人間は「自分はちゃんと分かっている」と自信過剰になると大胆な投資行動をしてしまうとわかる、心理学の幾つか研究があるそうです。自分に自信を持って疑わないようなときほど、不合理な行動を取ってしまうといいます。
おもしろいことに、逆にちょっと鬱気味のときなどは自分に自信がないので、実は投資家としては合理的な行動を取るとのこと。歴史に名を残す投資家も調子に乗って最後に破滅…というパターンがかなりあるので納得できる話です。謙虚が大事ですね。投資に限らず「人間としてのパターン」だとされていました。
<セイラー教授はCEO(最高経営責任者)の研究をしていますが、CEOの方たちも自信過剰の人が多いですね。自信過剰が悪いことかというと、そうとも言い切れませんが、投資家の立場では良くない。勝手に「自分は正しい」と思い込んでしまい、高い値段のときに買って安い値段のときに売ってしまうわけです。
実は、私もそれで3月に株を売ってしまったんですけれども……。はい。確かに「自分は正しい」と自信過剰になっていました>
なお、元のクイズでは「未来は予測不能だから」という選択肢があり、田中知美さんはそれもありではないかとしていました。うちでもともと書いていた話でも、<実は読めない?「相場は読める」という幻想が様々な誤解の原因に>といった話をやっています。不合理な行動を取る理由は1つではなく、いろいろとありそうです。
●自信過剰が問題?若者より高齢者の方が「騙されない」と自信満々
2022/08/09追記:詐欺被害に合う人の特徴を探していて自信に関する話を発見。慶應義塾大学経済研究所ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センターの荒木宏子さんによる
高齢者はなぜ詐欺被害者になりやすいのか:「自信過剰」という心理的バイアス | 日経リサーチ(2019.05.28)というコラムです。
<オレオレ詐欺などの被害が高齢女性に集中しているのは、在宅時間が長く独居割合も高いため、自ら電話等の応対をする頻度が高いといった生活パターンもその要因の1つでしょう。(中略)ただし、高齢者の詐欺に対する脆弱性には、上記のような生活スタイル以外にも、加齢に関わる特徴的な心理や行動が関係していることが、行動経済学、心理学など様々な分野の研究から明らかになってきています。今回は、そのうちの1つである「自信過剰バイアス」に着目してみます>
驚いたのが、2016年に内閣府の行った「特殊詐欺に関する世論調査」によれば、「自分は(特殊詐欺の)被害にあわないと思う」と答えた人の割合は年齢を重ねるごとに高くなりました。実際の被害者は高齢者ほど多いので、被害の実態とは全く逆。自信と騙されやすさが相関しているようです。
また、自分は被害にあわないと思う理由を聞いたところ、回答者の約半数が「だまされない自信がある」と回答しており、まさに自信満々。この傾向は男性(51.7%)が女性(41.4%)より強く、30代:40.5%、60代:50.2%、70歳以上:50.6%といった感じで、高齢になるほど強まることも明らかになったそうです。
<同様に、警視庁が2012年に振り込め詐欺の高齢被害者に行った調査においても、回答した被害者の92%は「自分は大丈夫だと思った」「考えたこともなかった」と回答しています。 行動経済学では、この「自分はだまされない」といった、自分自身の能力や性格に対する過度な楽観を「自信過剰(バイアス)」と呼びます>
●金融に自信あります!と言う人ほど完全に間違った理解が多い
高齢者が自身の金融行動や判断に自信満々である…というのは、日経リサーチが60歳以上の高齢者を対象に金融意識や投資行動などについて聴取したシニア調査でもおもしろいデータがあります。自信がある人は正しい知識が多い一方で、完全に間違った思い込みも多い…という両面の傾向が見えているんだそうです。
<「GRAND100®」調査には、分散投資、インフレーション、複利計算といった金融リテラシーを測定する4つの質問があり、「はい」「いいえ」「わからない」の選択肢から回答を選ぶようになっています。投資判断に自信があると回答した人の4問の平均正答率は71.6%で、それ以外の人の41.0%を大きく上回っており、多くの人にとって金融知識は投資判断への自信の根拠となっている様子が伺えます。
その一方で、不正解であった人の選択肢の選び方に注目すると、興味深い事実が浮かび上がってきます。「わからない」ではなく誤った選択肢を選んで不正解になった人はすべて、自分の投資判断に自信があると回答したグループでした。
投資判断に自信がある人の内、およそ1/3が誤った選択を行っていることからも、自信過剰は、自己の能力に対するいわば健全な疑いの余地を排除してしまう危険性をはらんでいると言えます。また、誤った選択肢を選んで不正解になる人の割合は、年齢を重ねるほど高くなることも分かりました>
この自信がある人ほど間違いも多いというのは、高齢者だけではない傾向だった模様。以前から書いているように、そもそも「知識がある」と「投資で稼ぐことができる」はほとんど無関係。金融関係の教授が投資で大儲けしている人たちばかり…ってことはないですよね。投資会社の人でも損している人が多いとも言われています。
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