子供の教育に関する書籍のレビューがおもしろかったです。夫婦げんかは子どもに見せると悪いかどうかという話や教育番組でいじめを覚えてしまうといった話がありました。夫婦げんかは基本的には「悪い」といえるようですが、悪影響を軽減する方法についても紹介されていました。
2022/10/06まとめ:
●両親がケンカばかりしている家庭の子…まずこの時点で問題がある 【NEW】
●褒められなかった子が現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは? 【NEW】
●「勉強頑張りなさい」も「子供のためを思って説教」もダメな理由 【NEW】
●簡単にやる気を引き出せるのに…親も上司も逆にやる気を削ぐだけ 【NEW】
●『間違いだらけの子育て―子育ての常識を変える10の最新ルール』
2013/5/17:
幼児教育で赤ちゃん用DVDは逆効果、幼児IQには2年で既に相関性無しの続きで、
間違いだらけの子育て―子育ての常識を変える10の最新ルール
のレビューから。
最初に全体的な感想を書いているものを。最初のタイトルは「育児のハウツー本というよりは、科学の本」というタイトルのものですが、実は「科学の本」である方が良いでしょうね。単なるハウツー本だと、科学的根拠が心配になります。
・育児のハウツー本というよりは、科学の本, 2011/7/30 By Nakane
<子育てについての現代の通説(または、暗黙のうちに親が常識と思い込んでいること)について科学的な分析、知見を紹介しています。努力を重視すべきか結果を重視すべきか?、夜更かしは悪いか?、人種差別的発想はどのように生まれるか?、子供は嘘をつかない純真な心を何歳くらいまで持っているか?、有効な子供の叱り方は?、優秀な幼稚園児は小学生でも優秀か?、親の仲が悪いことは子供にどう影響するか?、などの質問に対する答が、読前と読後ではまったく違ってきます。
また、他の方のレビューに書いてある通り、結論の押し付けではなく、反対の見解も紹介しているため、児童心理学が子供をどの程度理解しているか、すなわちどれくらい子育ての方法論が科学的に確立しているかを知ることができます。
子供が産まれた時にとりあえず読んでおけば、その後に洪水のように流れ込んでくる子育て論の交通整理にきっと役立つでしょう>
・驚かされることばかりです, 2011/6/9 By hiro
<まず本書でドキっとさせられたのは、「大人の視点で子どもを見てはいけない」というところ。子どもの能力を伸ばすといったテーマの本はたくさん出ていて、購入もしていますが、自分はほんとうに子どものことを考えていたのかしら??と気づかされました。
子どもの脳や心、友達づきあいなどは、大人とはまるで違う特別なもの・・・そのことを本書は、いろいろ興味深い研究をとおして教えてくれます。それも一つの見方を押しつけるのではなく、反対意見なども交えながら、ていねいに紹介されている。(中略)
本書は子どもについてこれまでのどの本よりも多くのことを教えてくれた、私にとっては宝物のような一冊になりました>
●教育番組こそがいじめを助長、夫婦げんかは子どもに見せると悪い?
さて、細部についてです。知識収集家(2012/9/5)という方のレビューによると、ノートルダム大学のE・マーク・カミングス博士は、平均的な夫婦は1日に約8回も口論をしているということを、研究によって明らかにしました。この回数は愛情表現を行う回数の2~3倍にもなるようです。
これはこれで驚きなのですが、問題はこうした夫婦喧嘩が子供にどのような影響を与えるかというところでしょうね。まず、子供はこのような親同士の口論や喧嘩を45%の割合で見ていることがこの研究で判明。では、この夫婦げんかは絶対に見せてはいけないのか?となると、別のレビューを読むとそうではなさそうでした。
すごく画期的です, 2012/1/21(かずママ )
<とくに印象に残ったのが、子供が弱い者いじめや悪い言葉を覚えるのが教育番組のケンカのシーンからであるということ、そして夫婦ケンカを子供の前でするのはNGではないが必ず子供の前で仲直りの姿を見せるのが大事ということでした。他にもたくさん目からウロコなことがありました。妊娠中で育児本を読んでる方などに是非おすすめですね>
夫婦げんかは、どうもうまく仲直りをできればそれで良いようです。それよりこのレビューでいっしょに出てきた「教育番組が悪影響」というのが驚きかもしれません。
●夫婦喧嘩によって子供の脳が縮小、語彙や理解力が低下
2017/11/06追記:"風呂上がりに裸でウロついてない? 子どもの脳を変形させる「虐待」かも"(J-CAST ニュース - 11月05日 08時00分)は、2017年10月28日放送【世界一受けたい授業】(日本テレビ系)についての記事。特集されていた「マルトリートメント」というのは、「マル(mal)」=「悪い」、「トリートメント(treatment)」=「扱い」で「不適切な養育」)といった意味です。
http://ecnavi.jp/mainichi_news/article/aa9cc7ee6cf6801fe56adbb668dea4fa/
記事のタイトルは"風呂上がりに裸でウロついてない? 子どもの脳を変形させる「虐待」かも"であり、風呂上がりの裸をピックアップ。「風呂上がりに裸でウロウロする」ことを子どもが本気で嫌がっている場合は、立派な「性的マルトリートメント」だと指摘。「視覚野」が変形し、記憶力、認識能力が低下するとしていました。
メインタイトルになっていのはこれでしたが、うちの投稿で書いていた夫婦喧嘩に関する話もあります。激しい喧嘩を頻繁に見ると、その景色を見たくないと、視覚野の一部「舌状回(ぜつじょうかい)」(大脳葉のひとつ後頭葉にある部位)が縮小し、語彙(ごい)や理解力が低下するというのです。
この夫婦喧嘩は「感情に任せた暴言」としてまとめられたもので、他にそのまんまである「言葉の暴力」が挙げられていました。こちらは夫婦喧嘩ではなく、子供への暴言です。暴言を受けると「聴覚野」が肥大し、耳が健康でも音が聞こえなくなる「心因性難聴」を患うケースもあるといいます。
驚いたことに体への暴力より、言葉の暴力の方が脳へのダメージが大きいのだそうです。だからと言って、体罰が良いって意味ではありませんけどね。体罰系に関しては、
虐待未満の体罰でも家庭のしつけとしては逆効果 子供の問題行動が増加してしまうという話をやっていますので、そちらもどうぞ。
『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』(犯罪心理学者・出口保行)


●両親がケンカばかりしている家庭の子…まずこの時点で問題がある
2022/10/06追記:個別事例をベースにした話は科学的根拠とはならないので注意が必要なのですが、<母親に「頑張りなさい」と言われ続けて育った男性が、現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは>(22/10/6(木) 6:12配信 文春オンライン)で出てきた話は、過去に紹介してきた様々な指摘と一致する内容でしたのであちこちに追記しています。
これは1万人の犯罪者を心理分析してきた犯罪心理学者・出口保行さんの著書
『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』から抜粋した宣伝記事だったようです。この「1万人の犯罪者を心理分析してきた犯罪心理学者」などといった宣伝文句も ニセ科学的なものでも使われるものなので、一般的には注意が必要ですけどね。
で、記事で出ていた事例の話。これは、ケンカばかりしていた両親が離婚した「ナオト」の事例です。父は営業成績が上がらず給与が低かったので、母親がしょっちゅうなじっていたそうです。「お父さんみたいになっちゃダメだからね」と繰り返し言われたともいいます。まず、この時点で問題ですね。両親が喧嘩する様子を子供に見せるというのはよくないと言われています。
<(引用者注:両親の離婚)以来、ナオトは落ち込むことが多くなった。もともと勉強も遊びも集中することがあまりない。(中略)「そんなんじゃお父さんみたいになるよ。あんなふうになったらおしまいよ」そう言って母親は「勉強頑張りなさい」と繰り返すのだった>
https://news.yahoo.co.jp/articles/2bd5b3114a744b7e44c64e9b1459de1ab814f813
●褒められなかった子が現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは?
しかし、小学6年生の担任はいい先生で、「ちょっとずつでいいんだよ」と努力を認めてくれます。努力が結果に結びつくとは限らないというのが現実の残酷さですが、このときは結果も出ました。どうしても2しかとれなかった国語が3になったのです。ところが、母親は、「3で喜んじゃいけない」「小学生のうちに国語ができるようになっておかないと中学で苦しむよ」とこの結果を褒めなかったのです。
<内心はほっとしているのだが、もっと頑張ってほしいという気持ちで厳しくあたるのだった。ナオトは心底がっかりした。頑張っても評価してもらえないんだと思い、それ以来コツコツ努力することをやめてしまった。
その後、高校はなんとか卒業したものの、何に対しても前向きな気持ちが起きない。先生に言われるままに機械メーカーに就職したが、3か月で離職。家にひきこもってゲームをする毎日だ。
母親は「だから勉強しろと言ってきたのに」「どうしようもないクズになった」などと叱責ばかりする>
記事は、<母親に「頑張りなさい」と言われ続けて育った男性が、現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは>というタイトルでした。この手を染めてしまったモノとは「大麻」。ナオトは似たような状況の中学時代のゲーム仲間と再会して、「外国じゃ普通だし、副作用もないし。他はともかく、大麻は大丈夫」とハマってしまったそうです。
話がそれますが、これは当然大麻にハマるのは良くないこと…という理解のもとで使われています。「そりゃそうだろ」と思うかもしれませんが、たぶん大麻推進派の方はこれを読んでお怒りでしょう。彼らはまさに「外国じゃ普通だし、副作用もないし。他はともかく、大麻は大丈夫」という主張。むしろ大麻を解禁し、本当に危険な薬物に手を出させないようにすることで、日本は良くなるといいます。
●「勉強頑張りなさい」も「子供のためを思って説教」もダメな理由
大麻の話はいいとして、犯罪心理学者・出口保行さんの解説です。「頑張って」は、一般的に応援の意味で使われる言葉ではあるものの、実際には「応援してもらっている」とは感じないどころか、否定的な言葉としてとらえられたことを指摘。父親に対する悪口とセットであったことも災いしたといいます。
<そもそもなぜ被害感や疎外感が強くなったかといえば、親子間における日ごろのコミュニケーションに問題があるわけです。ナオトの場合、父親のことはさておいても、「あなたのことを大事に思っている」ということが伝われば、また違った受け止め方をしたでしょう>
非行少年の親でも、別に暴言を吐いたこともないし、いい言葉をたくさん言っていると思っている人はいるとのこと。実際、自分はいい親だと思っている人も多いのでしょう。ただし、大事なのは親の思いではなく、子がどう受け止めているかが大事だとの指摘。「子供のためだから」という親の言い分を認めてはいけないんでしょうね。
<たとえば親が子どもに対して説教をしているとき。話していることは非の打ちどころのない正論かもしれません。丁寧な言葉を使っているかもしれません。しかし、親からすれば「いいことを言った」と思っていても、子どもからすると「何もわかってない」と思うことはよくあるわけです。
少年鑑別所での面会の様子などを見ていると、それが如実(にょじつ)にわかります。「親はいいことを言っているが、子どもはまったく信用していないな」と思います。
そういう親は「頑張れって応援してきたのに、うちの子は全然こたえようとしなかった」と言います。子どもは応援だと受け止められなかったのです。同じ言葉でも、受け止め方は同じではありません。180度違うことだってあるのです。そこに気づかなければなりません>
●簡単にやる気を引き出せるのに…親も上司も逆にやる気を削ぐだけ
上記はビジネスの上司先輩でもあるあるだな~と思いました。すると、その次にさらに「ビジネスと同じ」という話が出てきてびっくり。<意欲=やる気は自分の内側から出てくるもので、他者が植えつけることはできません。ただ、意欲を促すことはできます。心理学ではこれを「動機づけ」といいます>という指摘でした。
<小学校の担任の先生は、ナオトの努力を褒めて勉強への意欲を促進することができていました。ところが、母親は褒めるどころか逆のことをしました。内心はほっとしているのに、「これくらいで満足するな」「もっと頑張れ」とたきつけるのです。これではせっかく芽生えたやる気もそがれてしまうというもの>
もともとやる気がないわけではなく、行動しても結果が出ないことを何度も経験するうちに、やる気を失い行動しない状態を「学習性無力感」と言うとのこと。心理学者マーティン・セリグマンが1967年に提唱した概念で、これは実験的な裏付けがあるものです。こういう研究の話があるのは良い書籍ですね。以下のような実験の話が載っていました。
<犬を2つのグループに分け、どちらも電気ショックが流れる部屋に入れました。Aグループは、スイッチを押せば電気ショックを止めることができます。Bグループは何をしても止めることができません。
これを経験したあとに、両グループを低い壁で囲まれた部屋に入れました。この部屋にはやはり電気ショックが流れるのですが、壁を飛び越えればそれを避けることができます。Aグループの犬は壁を飛び越えて電気ショックから逃れることができました。しかし、Bグループの犬は、壁を飛び越えれば逃げられるにもかかわらず、そのまま電気ショックの部屋にい続けました。
つまり、自分が何をしても電気ショックを止められないと学習した犬は、逃げられる環境になっても行動しなかったわけです。「何をしてもムダだ」とあきらめてしまったのです>
学習性無力感は自由な環境でこそ起こるといいます。結果が出ないことを繰り返したせいであきらめてしまうのです。学習性無力感に陥らないためには、いわゆるプロセスを褒めること。結果がどうであれ「やってみよう」と思ったこと、そして少しでも行動に移したことを褒めるのです。これはよく言われています。
<本人は頑張っているつもりだけれど、やる気がないように見えることもあります。(中略)そういう子に対して「やる気出せ」「頑張れ」と言っても逆効果です。「うるせぇ!」と、反抗し努力をやめてしまうでしょう。(中略)
「別に何もやる気ない。努力なんかしたってムダだし」と冷めた態度の非行少年に対しても、ちょっとした行動を見つけてプロセスを褒めるうちにバーッと喋(しゃべ)るようになるということがよくあります。
(中略)少年鑑別所にいる、ひねくれ度MAXのような非行少年でさえ素直に戻るのですから。やる気がなさそうだったり反抗的だったりするからといって、親やまわりの大人がすぐにあきらめるようではいけません>
『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』(犯罪心理学者・出口保行)


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