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日本人は企業買収が得意?M&Aは買う方が負けで売る方が勝ちだった


 企業買収・M&Aでは、なんとなく買う企業の方が勝ちであり、買われてしまう企業の方が負けのように見えます。ただ、実際には逆ではないか?と指摘する記事がありました。この根拠は簡単に言うと、買う側のリスクがかなりでかいため。買収して失敗する可能性が結構あるのです。

2013/5/21:
●日本人は企業買収が得意?それとも不得意?
●M&Aは買う方が負けで売る方が勝ちだった
●企業の価値より高いお金を支払って買うから当然ハイリスク
●「買いは大好きだが売りは大嫌い」だと負けるに決まっている
●M&Aで失敗しないために必要な基本条件5つ
2020/06/26:
●東芝は原発企業買収失敗で不適切会計、武田薬品も高すぎ買収


●日本人は企業買収が得意?それとも不得意?

2013/5/21:買収の話については新興国企業による企業買収 日本は敗北、イギリスは勝利と評価というのを書いています。企業を売るとなると負けているような気がするのですけど、実は良いことだと見る人がいるんですね。

 今回私が読もうとした記事というのも「企業売却のススメ」みたいなものでした。ただ、その書き出しに「買収は負けから始める投資」とあり、何となく理由を想像できなくもないものなのですけど、この記事は連載3つ目でしたので、「買収は負け」が書かれている最初の連載から読んでみることに。

 その記事は、"「買いは大好きだが売りは大嫌い」が失敗の原因 M&A 成功の5条件"(服部 暢達 2013年2月20日(水)日経ビジネスオンライン、リンク切れ)というタイトルでした。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130213/243707/

 服部暢達さんによると、企業の成長戦略の選択肢として欧米では古くからM&Aが定着。日本の場合は遅れていて、1980年代のバブル期や2000年ごろのネットバブル期に続いて、2008年ごろから第三次海外買収ブーム。ただ、経験が少ないためか、欧米でそれなりに成功例も多いのに比べると、日本でのこれまでの大型海外買収を見ると、以下のように失敗例が多いとのこと。

・日本鉱業(現JXホールディングス)が1988年に米電解銅箔事業大手グールドを約14億ドルで買収したが、わずか6年後に同社を清算して約900億円の特損を計上。
・NTTコミュニケーションズは2000年に米国インターネット・サービス・プロバイダーのベリオを63億ドルで買収したが、2年以内に5000億円以上の特損を計上。


●M&Aは買う方が負けで売る方が勝ちだった

 ただ、日本企業に限らずM&Aの成功率というのがそもそも高くないとされていました。この測定自体は、買ってしまえば買わなかった会社はもう存在しないので、厳密に比較することはできないために困難。とはいえ、世界的にはM&Aの成功確率はおおむね50%ぐらいという理解が一般的だとのこと。

 この根拠は株価の評価みたいですね。多くの研究ではM&Aにおいて売り手はおおむね30%程度の株価上昇が観測され、買い手はおおむね±ゼロ。つまり株式市場は売り手の成功確率が100%で、買い手は50%程度と判断している、と説明されていました。

 私が想定していた「買収は負け」「売りが勝ち」の回答もこの考え方です。事業が行き詰まって「買われてしまう」という場合、屈辱的ではありますけど、負の遺産を引き取ってもらってあわよくば立て直して貰うので実は売る方が勝ちで、買う方は失敗するリスクを背負ってまでお金を出すことになります。

 事業に成功して「買ってもらう」場合も、売る方が勝ちなのはやはり間違いありません。この場合であっても、買い手が買収後その有力事業を必ず大きくできるかと言うと、実際にはダメになっちゃうことも多々あるわけで、やはり買う方にリスクが大きいのです。

 企業買収というのは、一からその事業をやることを考えると時間を買えますし、コスト的にはやはり有利な気がしますけど、成功する確率は大きくない…というのが実情なんでしょうね。


●企業の価値より高いお金を支払って買うから当然ハイリスク

 また、そもそも企業の価値とイコールの値段では、基本的に買収することができないというのもあるようです。お店の商品がそうであるように、元の価値にプラスした分の高いお金を払って買わなくちゃいけないために、得することが難しくなっています。数社で争って買う場合、当然、そのプラスで支払うお金は大きくなり、さらに難しくなるでしょう。

 これは私なりに平易な書き方をしているのですけど、記事での書き方自体は以下のように難しくなっていました。
 これはある意味当たり前の結果である。なぜならM&Aでは企業を買収プレミアム(例えば30%程度)を支払って買収するので、売り手はその事業に対する投資を終了してプレミアムを受領して撤退する。たとえ損切りでもIRR(内部収益率)が確定するのでリスク(結果の変動)はゼロである。

 しかし同じ案件が買い手から見ると、100億円の会社を例えば130億円で買うので、これは30億円の負けから始める投資だ。一生懸命努力して30億円価値を高めても、人・物・金を投入して収益ゼロでは骨折り損になってしまう。M&Aは、売り手はノーリスク、買い手は高リスクというのが当たり前なのだ。従ってM&Aは買い一辺倒ではバランスを欠く。売りと買い双方をバランスよく実行して初めてビジネスポートフォリオの最適化が可能となる。

●「買いは大好きだが売りは大嫌い」だと負けるに決まっている

 ところが、日本は買い好きの売り下手、負けるに決まっているようです。日本企業は主に買い案件ばかりで、売りもバランスよく実行してきた企業は日本にはほとんどないとのこと。日本人は、買いは大好きだが、売りは大嫌いなんですね。これが、日本企業がM&Aで失敗続きの1つの原因だと、服部暢達さんはしていました。

 当然、勝率は半分どころじゃありません。もっと大幅に低いだろうとしていました。前述の例以外にも、以下のような失敗例があるとのこと。

・1989年のソニーによるコロンビア・ピクチャーズ買収(48億ドル)は95年に2652億円ののれんを一括償却
・1991年の松下電器産業(現パナソニック)による米映画・娯楽大手MCA社買収(74億ドル)は95年に1,642億円の特損を計上して売却・撤退。
・2000年のNTTドコモによるAT&Tワイヤレス社への16%出資は、04年に約4400億円の損失が確定
・2008年の第一三共によるインド制約大手のランバクシー・ラボラトリーズ買収では、買収直後に同社が米FDA(米食品医薬品局)に提出した試験データをねつ造していたことなどが発覚し09年に3595億円の株式評価損を計上


●M&Aで失敗しないために必要な基本条件5つ

 また、これらの失敗は「買い案件において、失敗しないために必要な基本条件」を満たしていないからだと、作者の服部 暢達さんはおっしゃっていました。

(1)M&Aは負けから始める投資であるということを理解する。

(2)従って支払ったプレミアムを回収してこれを大きく上回る価値増大を実現するためには、買い手が自らの人・物・金を、いつ何をどのように投入して、どうやっていつまでにいくら価値を上げることができるのか、について綿密な計画を持っていることが必要だ。

(3)綿密な計画があっても、それを実行する権限がないと計画は画餅となってしまう。そのためには100%議決権の買収が必要だ。少なくとも50%超買収して経営権を掌握するこが基本である。
 しかし過去10年間程度の日米のM&Aを比較すると、米国では全ての案件の80%以上が100%買収であるが、日本では逆に80%以上が100%未満の買収であり、50%未満の少数株主権の取得案件も多い。
(中略)プレミアムを支払って買収しながら経営権を取得しないというのは自ら価値増大を実現する方策を放棄する行為であり、M&Aの基本から逸脱している。

(4)経営権を取得したとしても、自分で経営する能力は自分自身にないといけない。(中略)
 もし現地に任せてしまうと、価値増大が実現しないばかりか、現地の経営者になめられてしまう。なめられるとそのうち「もっと大きな買収をしたいからたくさん資金を送金してくれ」とか、「給料を3倍にしてくれ」とかわがままし放題されて、最後は首にすると法外な違約金を取られた、という話も決して少なくない。

(5)最後に、海外、特に欧米の経営者(ただし現地に任せていいのはCOOまで)を使いこなすには、アメとムチの両方が必要だ。アメとは欧米の場合おおむね単純に「お金」だ。現地で当該規模の会社の経営者が通常もらっているレベルの報酬は、たとえそれが日本の社長の報酬の2倍であっても、正当なレベルの報酬を支払わないと一流の経営者は雇えない。
 しかし、金さえ払えばそれでOKというわけではない。ムチとは「リプレイサビリティー」だろう。現地の経営者になめられないためには、重要な経営方針はCEOが策定するという流れを保つことが必要だ。そうしていれば自分は言われたことを実行するぐらいには優秀だから使ってもらっているが、言われたことを実行できる人はほかにもいるだろうな、と思わせることができる。これならなめられることはない。

 (3)の「経営権を取得しない」は日本人がリスクや責任から逃れるためじゃないか?と書かれていました。さもありなんです。どうも日本人は徹底して買収に向かない民族なのに、買収が勝ちで売却が負けだと思ってしまう厄介な性格のようです。


●東芝は原発企業買収失敗で不適切会計、武田薬品も高すぎ買収

2020/06/26:失敗例を追加。近年大きな問題になったのは、日本を代表する大企業の東芝ですね。買った原発企業の業績が振るわず、巨額の「減損」に追い込まれてしまいました。国策企業東芝の倒産危機は国に責任 原発推進でWH買収に圧力かけて高値買いなどで書いたように、東芝は国の圧力があって買収したという事情もあるのですけど、ともかく失敗しています。

 また、この東芝が大きな問題になったのは、この買収失敗がきっかけとなって、「不適切」な会計に手を染めてしまったということ。買収に失敗した企業がみな不正をするというわけではなく、別問題と言えば別問題なのですけど、企業買収の怖さがわかる話ではあります。

 高すぎる買収でピンチとなっている企業というのは他にもまだあり、負ののれん代の問題?武田薬品がアリナミン・ベンザブロック売却で書いた武田薬品もそういう企業。武田薬品の場合はシャイアーを高すぎる価格で買ったことが重荷になっている感じでした。


【本文中でリンクした投稿】
  ■新興国企業による企業買収 日本は敗北、イギリスは勝利と評価
  ■国策企業東芝の倒産危機は国に責任 原発推進でWH買収に圧力かけて高値買い
  ■負ののれん代の問題?武田薬品がアリナミン・ベンザブロック売却

【関連投稿】
  ■のれん代とのれん代の償却のわかりやすい説明
  ■会社の事業継承問題 後継者は実力よりも世襲がいい
  ■経費に見えるけど、経費にならないもの 資産、借入金の返済など
  ■選択肢の多さ 消費者の満足度向上も「選択しない」が選ばれる危険性も
  ■ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ

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