●関西大学教授が学生の論文を「盗用」…が微妙な問題である理由
2021/12/01:
学生の修士論文と表現7割同じ 「盗用」の教授に3年間の研修義務:朝日新聞デジタル(2021年11月30日 16時23分)によると、関西大学は、60代の男性教授の論文1本で盗用を認定した、と発表しました。教授だけの名前で投稿した論文の文章の70%が、教授が主査を務めた学生の修士論文の表現と同じだったそうです。
学生の論文を「盗用」というケースは、ちょくちょくあります。当然こうした行為は、いけいないことです。ただ、意外なことに「盗用した」とされる側である先生の方に同情を集める…といったこともあります。ヤフーニュースのコメント欄でも1番人気は「けっこう微妙な問題」として、以下のような話を書いていました。
<指導教員と院生の関係によっては、研究テーマから資料まで教員が手取り足取り指導することもある。相手が留学生だったりするとぐちゃぐちゃな日本語を直していたらほとんど指導教員の文章になってしまうこともある。まあ、そうなるとそもそもの修士論文がその学生のものとして評価されたことの方が問題になるわけだが…。いずれにせよ本人の同意があったのなら単著ではなく最初から共著扱いにして分担を明確にするのがルールだよね>
https://news.yahoo.co.jp/articles/59dbef61492853ec55248ef4e7a141fbf1bc0ab8/comments
●修士論文の場合、実質、論文を書いているのは学生ではなく教授?
学生が主体なら学生が筆頭著者の論文とすべきですが、逆に教授がメインなら教授が筆頭著者の論文にしなくてはならず、どちらのケースでも問題となります。学生が関わらない論文でも、こうした著者の記載に関する問題は多いですね。ヤフーニュースのコメント欄では2番人気も、最初のコメントと似た流れの内容になっていました。
<大学や研究室のレベルにもよるけど、修士了の時点で世に出せる論文を書ける学生はまれ(縁のない世間では「大学院生」というだけで「すごい」「賢い」と思う人が多いけど、修士課程でやっと研究の初歩が身に付く程度の場合が多い)。研究内容を十分に理解せず教員の指示のままに手を動かして結果を出し、その解釈もままならない子が多い。
「修士論文と表現7割同じ」って、そもそもほぼその教授が書いたものっていうことでは? そう釈明したらしたで「学生が自身で論文を書けるように指導できていないのか?」って責められそうだよね。まあとりあえず共著(その学生を第一著者にしなくてもよし)にしておけばケチが付かなかったのにね。60代にもなって、まだ単著や第一著者が欲しいかね?>
●一方で「修了生に口頭で許可を得たから問題ない」にも賛同できず
コメント欄上位はこの後も大体同じ傾向だったのですけど、加えて共著システムに問題があるという声も。例えば、<共著にすればよいのだが、最近は学術誌では共著承諾書の提出が義務付けられているので、共著がやる気のない学生で「別にいいわ」とか言われて承諾書にサインしてくれないと、研究成果は世に出なくなる><共著承諾遺書の厳格運用の弊害かもしれない>とするものがありました。
ただ、これには同意できませんね。<研究に貢献し、共著になるべき方が、病気で急死したため承諾書のサインを得られず、苦渋の判断で共著のリストから外した例も知っている>ともあり、これなら改善が必要というのはわかります。しかし、共著者を隠すというのは、不正の手法となり、これを認めるとまでなると、ちょっと無理があるでしょう。行き過ぎです。
別の人も「教授は修了生に口頭で許可を得たとしている」から、<先生の発言に基づけば,単著そのものは問題はない。学生の意向を無視した「共著にしないのが悪い」って批判の方がおかしく思える>と、やはりかなり過激な意見。前述の通り、共著者隠しを正当化してしまうので、さすがにこうした極論には賛同はできません。
一方、さらに別の人は、<共著にしとくべきなんやけど、投稿先によったらもう研究続ける気がないもんにも、査読料やら学会入会が必要になってまうんよね>と指摘。こちらの場合は、今後の課題だと理解できる指摘でした。研究者として活動していない共著者に負担がない形で、きちんと共著者が見える形にしていくことが望ましいかもしれません。
●本来発表しない修士論文…「良い論文だらから」とわざわざ発表
なお、最初の朝日新聞記事によると、聞き取りに対し、教授は「非常に良い論文だったが、論文の著者が自分の名前で発表する意向がないということだったので、自分の単著として公表して形に残したかった」などと説明。この供述を信じるのならば、他の修士が書いた論文とは違って特別だった…という感じです。他に以下のような記述がありました。
<原稿の段階では修了生との共同研究と注記していたが、最終段階で消したとしている。教授は修了生に口頭で許可を得たとしている。ただ、調査委は、論文は修了生との共著とするべきで、それが無理でも修了生の論文を元にしていることを適切に表示するべきだったと判断。注記を消した上で、教授単独の論文として投稿したことは、故意に適切な表示をせず「盗用」にあたると認定した>
記事では、「通常、修士論文は公表されない」とも指摘。普通修士論文はハイレベルではないんで、そうなんですよね。今回のケースは本当に他の修士論文と比べてレベルが高く、特殊事例だった可能性があります。一方で、今回載ったのも、大学のウェブ上の論文集程度であり、全然ハイレベルなところではありません。共著者の金銭的な負担うんぬんなど、コメント欄の擁護と方向性が異なる可能性も感じました。
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