非実在児童ポルノ規制派・渡辺真由子が盗用で絶版 慶応大も博士論文調査を書いていて思い出したので、過去に自民党と公明党と日本維新の会が提出した児童ポルノ法改正案の何が問題だったか?を、修正しながらまとめて再投稿します。(2018/12/12)
2012/12/21;
●自民党と公明党と日本維新の会が「児童ポルノ禁止法」の改正案
●「児童を守ろう」という本来の目的から逸脱
●漫画アニメ規制に繋がる?弾力的な運用がむしろ一番怖い
●実写の場合は被害者がいる…では漫画やアニメの被害者とは?
●韓国もやってた表現規制 漫画アニメ規制の結果は?
2013/6/11:
●児童ポルノ禁止法改正案、3つの問題点
●日本は誤認逮捕が多く、でっち上げ逮捕も最近まであった
●十分な議論なしに強行しようとしているのも問題
2018/12/12:
●疑わしいものは全部廃棄で当然…政治家の考えが危なすぎる
●自民党と公明党と日本維新の会が「児童ポルノ禁止法」の改正案
2012/12/21;おお、やっぱり来たぞ!と思ったのが、児童ポルノ禁止法改定案。石原慎太郎知事(当時)の東京都の「非実在青少年」のときは大騒ぎになったものの、ほとぼり冷めたらまたやるだろうなと思っていたら案の定です。
とりあえず、法案提出について書かれた"児童ポルノ所持も禁止 改正案衆院に提出 5月29日 16時20分 NHK"から。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130529/k10014925841000.html
自民・公明両党と日本維新の会は、いわゆる「児童ポルノ」の規制を強化するため、子どものわいせつな写真や画像などの所持を新たに禁止する「児童ポルノ禁止法」の改正案を衆議院に提出しました。まとめたのは、自民党と公明党で、日本維新の会がこれに賛成という形。今回の改正案のポイントとなるのは、以下のようなところです。
・今は禁じられていない、子どものわいせつな写真や画像などの所持を新たに禁止した上で、みずからの性的好奇心を満たす目的で所持した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すとする。
・法律の施行から3年後をめどにインターネットでの児童ポルノの閲覧の制限について検討し、必要な措置を講じる。
提出者の1人である、自民党政務調査会の西川京子副会長は「罰則は無いものの、単純に所持すること自体を禁止したのは啓もうの意味がある」としていました。
●「児童を守ろう」という本来の目的から逸脱
記事は検索してこの他に5,6個開いたんですが、読むのが面倒くさくなったので良さげな一つを選びました。
「嫌だから規制する」なのか──児童ポルノ禁止法改定案、その背後にあるもの [堀田純司,ITmedia] 2013年05月29日 17時19分 更新という記事です。
同案の問題点・懸念点について論じた作家・マンガ研究家の幸森軍也さんに、漫画原作も手がける作家の堀田純司さんがインタビューし、改定案やこれをめぐる背景などについて語ってもらった…という内容でした。
インタビューアーである堀田純司さんは、「被害者の存在する実写の児童ポルノを禁止する」として、「このことには非常に大きな意義がある」としていました。「この改定案は本来、『児童を守ろう』という善意で提案されたものだとは思います」ともしています。
ただ、この「児童を守ろう」という本来の目的から離れているように感じられる法案でした。この理由については、後で出てきますが、まず以下のようなやり取りがありました。
――「児童ポルノの単純所持の禁止」と、その適用範囲の「漫画やアニメ、CGへの拡大」。この2つの規制強化が組み合わさることの本質的な意味と、弊害の大きさに改訂推進側は気がついているのでしょうか。本当のところは、“よく分かっている”のかもしれませんが。
幸森 少なくとも「不快なものをこの世から抹殺したい」という信念の強さは感じますね。その意味では信念の人たちとは思いますが、正直に言って、その創作物全体に対して及ぼす影響への想像力は、感じられないんです。
●漫画アニメ規制に繋がる?弾力的な運用がむしろ一番怖い
堀田純司さんは、「児童ポルノ所持等の禁止」という改訂案が実施されると、規制を反対する側の人から「じゃあドラえもん」に登場する入浴シーンはダメか、といった声が出ることを指摘。その上で、"恐らく政府としては、苦笑しながら「それは極論であって、そこまで過激な運用はしないよ」と思っていることでしょう"としていました。
じゃあ、問題ないのか?と言うと、むしろこれこそが問題だとのこと。堀田純司さんは、"実はそうした「恣意的な判断」こそが、最大の問題"とし、幸森さんも以下のように賛同していました。
幸森 そうなんです。その通りだと思います。(中略)そもそも児童ポルノとはいったいなにか。その定義が恐らく、世界的に明確じゃないわけです。それを「これは名作、これはポルノ」と恣意的に判断して運用できるっていうこと自体が怖いじゃないですか。
「弾力的な運用がむしろ一番怖い」については、後の方の話でも出てきます。
●実写の場合は被害者がいる…では漫画やアニメの被害者とは?
いつも思うのですけど「児童を守ろう」と漫画などは関係ないですよね? 反対できない大義名分を掲げて、関係のない自分の主張を通そうというものです。
こういうのは本当腹が立ちます。原発事故を利用した政治活動とか、東日本大震災を利用した国民の権利制限だとか…。死者や被害者への冒涜でしょう。幸森さんも「実写の場合は被害者がいる。これは犯罪であり、当然、禁止すべきこと」と指摘していました。漫画やアニメを規制しても、被害者救済に繋がらないのです。
あと、こうした批判が効果的かどうかはわからないのですけど、政治家さんたちの発想が前時代だといった話などにもなっていました。
幸森 想像力まで規制するのは果たして健全なことなのか。漫画やアニメは想像の産物です。その想像力を形にすることが禁止される。そんなのは前時代的な話であって、ひどく後進的な思想だと思うんですよ
堀田 以前、プロのイラストレーターが絵がうまくなるコツとして「好きな異性のキャラを描き続けろ」とアドバイスしているのを見たことがあります。もっともです。(そして人間性の常として、そこに性的な表現も当然出てくるでしょう。しかしそうして自分で描いた性的な絵を持っていたらアウトということになる。「いつの時代の話だ」と感じます。
幸森 もともと著作権的にグレーだった同人誌の分野は、これでバッサリとアウトになってしまうんですよね。同人分野という下支えがあった中で、そこで才能が出てきて、商業としても成功していったという流れが現実にある。その根っこを切ってしまってはいかんだろ、と思いますよ。その影響は大きすぎる。今回、別に対象は少女に限ってないですから……。
ここらへんに関連するものとしては、著作権の非親告罪化もありますね。そういやこのときに「今は自公政権だから特に表現規制は危ないぞ」と書いた気がします。
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著作権の非親告罪化 TPPで漫画・アニメの二次創作の摘発活発化? ■
違法ダウンロード刑罰化とアニメアイコン・二次創作など●韓国もやってた表現規制 漫画アニメ規制の結果は?
実際の被害者は救えないという話はまだ続きます。
幸森 これは東京都の条例の時からさんざん言ってきたことですが、アダルト漫画やゲームが人に悪影響を及ぼしているという見方になにか科学的根拠はあるのかと。それはいまだにまったくないんですよ。また、なにかというと「日本は児童ポルノ製造大国」なんてことをいう人もいますけど、これもまったく根拠がないんです。結局のところ「嫌だから規制します」ということにつきる。全否定なんです。
ゲームの話もうちではちょこちょこやっています。例えば、
ゲームは暴力に繋がると警告入れる法案、アメリカでバカ議員が提出はアメリカでの話。海外でもひどいですね。
アメリカの話を出しましたが、どうも表現規制法案は韓国で先にやっているようです。日本人って真似しなくて良いところで、韓国の真似しますよね…。
――90年代に表現を厳しく規制された韓国の漫画産業の場合、彼の地の編集者に聞くとその後ものの見事に萎縮してしまったそうです。
今回の日本の規制も、産業としても萎縮効果が起こり、文化的にはもっと深刻なことに、アマチュアの土壌を直撃してしまう展望が含まれている。花だって、土の中に根っこがあるからきれいな花も咲かすわけで、そうした考察もなしにばっさり行く発想は、すごく後進的に感じます。
●児童ポルノ禁止法改正案、3つの問題点
2013/6/11:何か今回全然話題になっていない児童ポルノ禁止法改正案。何度か様子見を繰り返して法案成立を狙うってことを政治ではやることがありますので、この反発の少なさだと今度の参院選後ではかなり好き放題やられるかもしれません。
ということで、もう少しこの話を。
「漫画・アニメ」も視野に入れた「児童ポルノ禁止法改正案」の問題点とは?|弁護士ドットコムトピックス 2013年05月29日 16時05分という記事が良さそうでした。
京都大学の曽我部真裕教授(憲法)は、今回の改正法案について問題点を3つ挙げていました。
(1)単純所持の処罰は『濫用』の危険性が大きい
(2)被害児童が実在しない創作物の規制は、問題が全く異なる
(3)立法過程が不透明
●日本は誤認逮捕が多く、でっち上げ逮捕も最近まであった
まず、「(1)単純所持の処罰は『濫用』の危険性が大きい」についての説明。
「この法案のいう『児童ポルノ』はそもそも、
定義が曖昧で、対象が広すぎるという問題点が指摘されています。つまり、
誰もが持っているような写真集やグラビアについても、摘発される可能性が、完全には否定できない状態です。そのような状態を放置したまま『単純所持』を禁止し、罰則を加えてしまえば、捜査当局に過度の裁量権を与えることになると言えるでしょう。罰則を科す際には、児童ポルノ流通の実態をしっかりと把握したうえで、効果的かつ最小限の規制を工夫すべきです」
最初のときにも書いたように、弾力的な運用というのはむしろ危ないんですよ。運用者次第で好きに変更できてしまうためです。
日本でも誤認逮捕的なものはコンスタントにやっているという実績があり、児童ポルノ所持があれば別件逮捕がさらに容易になり、問題が大きくなるかもしれません。単なる誤認逮捕ではなく、もっとあからさまに都合の悪い人をはめるために利用されるおそれすらあります。
そんな創作みたいなことが現代日本で…と思うかもしれませんけど、たった10年前にも
警察による違法な取り調べ・冤罪の例 2003年にでっち上げで次々と自白の強要や長期勾留(志布志事件事件)という事件がありました。日本でも十分あり得るんです。
●十分な議論なしに強行しようとしているのも問題
さらに「(2)被害児童が実在しない創作物の規制は、問題が全く異なる」についての説明。
「附則の2条にある『児童ポルノに類する漫画等』を、調査研究対象とするという点は、大きな問題をはらんでいます。まず前提として、児童ポルノを規制するのは、実在する児童の保護が目的です。しかし、具体的な被害児童が登場しない『児童ポルノに類する漫画等』はあくまで創作物で、『擬似児童ポルノ』とも言えない全く異質のものです。法律に、その目的と関係のない規制を紛れ込ませるのは不適切です。それだけでなく、不必要な規制は表現の萎縮効果を生み出しかねません」
児童を守るってのは建前であり利用されているだけで、実際には政治家の嗜好の押し付けなんですね。これは前回と同じ指摘ですので、すぐ次の「(3)立法過程が不透明」に行ってみましょう。
「本来これは、表現の自由にも関わる刑罰法規ですから、世論の形成に加えて、国会でも非常に慎重な議論が必要なはずです。そういった重要な法規を、国会議員に対する水面下の根回しという手法で、十分な議論を経ないまま成立させようとしているのだとすれば、その実質的な正統性には疑問を抱かざるを得ません」
これはねぇ…、前述の通り今回はネットの反応薄いですからね。あれだけ反対の声が大きかった違法ダウンロード罰則化の件ですら、ろくに議論もしないままに強行されました。ましてや盛り上がっていない今回の法案なら…という気はしています。
●疑わしいものは全部廃棄で当然…政治家の考えが危なすぎる
2018/12/12:最終的には、幸い漫画アニメ規制は見送られて、単純所持のみ刑事罰となる法改正となりました。ただ、漫画アニメを嫌う政治家は多く、油断できないでしょう。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律 - Wikipediaでは、以下のような分析が紹介されています。
"概して自民党の様な保守政党や公明党の様な宗教政党では規制強化の声が強く、一方で民主党(現:国民民主党など)の他、社民党や日本共産党といった中道ないし革新政党では規制に反対する傾向にある。2013年の改正案では自民党と公明党が規制強化に賛成し、社会民主党、生活の党(現:自由党)、みんなの党、民主党(現:国民民主党など)、共産党が反対した"
また、単純所持の刑事罰についても、問題が指摘されていたものだそうです。
・法律施行前に合法で日本国内に出回った児童ポルノ本や、同時に児童ポルノの範囲が広範(年齢について18歳未満であること、及びヨーロッパの一部の国では合法とされているような芸術的なソフトなヌード、家族や恋人の写真が対象となること、本人が同意しているセルフヌードが対象になること)との兼ね合いで処罰範囲が広がりすぎること、捜査権が拡大し政治利用される可能性が高いことなどが懸念されていた。
・日本雑誌協会と日本書籍出版協会は法案改正に対して、「児童ポルノ」の定義が曖昧なままの単純所持禁止は児童保護という本来の目的から逸脱するもので、本来失われるべきではない表現や出版物までもが失われてしまう恐れがあるとし、「自由な表現は、表現されたものを所持する自由があってこそはじめて成立する」と抗議した。
一応ここらへんの問題点は、当初案を修正してマシになった模様。ただ、審議の中では、自民党の葉梨康弘議員が「児童ポルノかもわからないなというような意識のあるものについてはやはり廃棄をしていただくということが当たり前」と発言。議員さんの意識に危うさを感じますので、やはり今後も注意が必要だと思われます。
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