2013/6/8:
●すごい!と言われてたAmazonの小説・漫画セルフ出版(KDP)の電子書籍
●KDPには、iPhoneのApp Storeに匹敵する革新的なインパクトがある!
●今までも同人誌を自己出版はできていた…ただ問題点が2つあった
●Amazonの自費出版KDPはあまりにも簡単すぎて拍子抜けするほど
●リアルとKDPで売れた同人誌の冊数とコストを比較…勝ったのはどっち?
●アップストアで起きた現象とアメリカですでに現れている成功例
●すごい!と言われてたAmazonの小説・漫画セルフ出版(KDP)の電子書籍
2020/02/16:<アマゾンの電子書籍、小説・漫画のセルフ出版(KDP)のインパクト>というタイトルで当初書いていた話。その後、すごい!という話は正直全然聞かないと思うのですけど、インパクトあるよと紹介されていた話を見直して再投稿します。
2013/6/8:いよいよ日本でもアマゾンのキンドル上陸するかも!といったときには、盛んに報じられていた電子書籍。ただ、いざキンドルが発売すると、すっかり電子書籍の報道自体がなくなってしまった感じです。
そんな中で久しぶりに目についた電子書籍の記事がありました。
アマゾン電子書籍、ヒットの「原石」発掘 広がるセルフ出版(ジャーナリスト 新 清士 2013/4/27 7:00 日経新聞)という記事です。
<米アマゾンの電子書籍リーダー端末「キンドル」が日本で発売され、国内の電子書籍市場がようやく本格的に立ち上がりつつある。端末発売に合わせ、将来的に出版業界に大きな変化をもたらしそうなサービス「キンドル・ダイレクト・パブリッシング(KDP)」も始まった。これはインターネットを通じて自分の電子書籍をユーザーに直接販売する「セルフパブリッシング(セルフ出版)」ができる仕組みだ>
●KDPには、iPhoneのApp Storeに匹敵する革新的なインパクトがある!
作者の新清士さんはこのサービスにかなりのインパクトを感じているようです。試しに趣味で書いていた小説を1冊、実験的にKDPを使って登録販売。その体験を通じ、電子書籍の潜在的な可能性に驚かされたといいます。
今の状況は、2008年に米アップルがスマートフォン(スマホ)「iPhone」向けコンテンツ配信サービス「App Store(アップストア)」を開始したときの状況に似ていると感じたとも書かれていました。
また、よくいる読書家の電子書籍嫌いとは正反対の意見も。ただ、ここらへんは人それぞれ。電子書籍だと保有の概念が薄弱で長期保持には実は向かないといった弱点がある他、本棚に飾っておけないという点も意外に嫌だと思う人は多いんじゃないないかと思います。
<筆者はかなりの読書家だと思うが、キンドルに一度慣れてしまうと、もう紙の書籍に戻りたいと思わない。大量の書籍の置き場所確保に長年苦労してきたが、電子書籍ではそうした問題から完全に解放される。しかもキンドルは軽い。今後、同じ書籍でキンドル版が発売された場合、紙を選ぶことはないだろう>
●今までも同人誌を自己出版はできていた…ただ問題点が2つあった
さて、インパクトがあるとおっしゃっているKDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)についての詳細ですが、まず背景の話から。
<電子書籍はまだニッチな市場だが、KDPは近い将来、出版業界に劇的な変化を引き起こす可能性があると予想できる。これまで書籍を出版できる可能性のなかった作家が、KDPを使って数多く参入してくるとみられるからだ。自分が書いた小説やマンガを多くの人に読んでほしいというニーズは作家側に確実に存在する。しかし、これまではそれを実現する方法がなかった。セルフ出版なら可能だ>
このセルフ出版はキンドルが普及するうえで大きな魅力の一つともなると予想されていました。というのも、一般の作家が書籍を出版する場合、従来は出版社を通す以外に方法がありませんでした。そのため各種の出版社が主催する新人賞などを受賞したり、企画を持ち込んだりして認められる必要があるという狭き門となっています。
出版の機会を得られない作家はどうしていたでしょう。これまでは、紙の同人誌を自費出版で印刷し、同人誌即売会のような場で販売したり、ネット上で無料公開したりするしかなく、書店などで広く販売することは難しくなっていました。
実際、作者も、もともと東京で年4回開かれるマンガや小説、ゲームなどの同人誌即売会「コミティア」で販売していたといいます。これがコスト的にきついんですね。また、読者獲得も難しいという2つの問題があったといいます。
<出展料は5900円で、書籍等の印刷代は1冊当たり500~1000円。大半の出展者が黒字化は困難だ。もちろん、趣味と考えれば、損失する金額としては小さいといえるかもしれない。
筆者は小説の短編を何冊かこの場で販売している。1回の参加で平均して20~40冊は売れた。しかし、どんなに頑張ってもコミティアでこれ以上の読者を獲得するのは難しいことを、3年余りの経験で痛感していた>
●Amazonの自費出版KDPはあまりにも簡単すぎて拍子抜けするほど
さて、ここからいよいよKDPの魅力の説明に移ります。KDPは印刷する必要がないため在庫が発生せず、決済もアマゾン側が担当してくれます。出版の準備段階で驚いたのは、KDPで実際に販売開始するまでの過程が拍子抜けするほど簡単だったことだとのこと。コスト面だけでなく、楽みたいですね。
「電子端末用のデータに変換する機能」がまず必要ということで、これはちょっと手こずるかもしれないといった書き方。しかし、そこから先は本当に簡単なのだとしていました。
<アマゾンのサイトでKDP用のアカウントを取得し、価格設定や概要説明などを入力後、アップロード用のファイル指定をする作業は全体で1時間もかからない。データに問題があるかどうかの審査が通常は48時間以内に行われ、完了後すぐに販売が始まる。
筆者は自分の小説「宇治見陽介の眼」の価格を99円に設定してみた。2月2日の発売から2カ月半の4月20日時点で販売冊数は101冊。アマゾンから筆者が受け取る利益は約2500円だ。収益として考えると話にならないが、販売冊数という意味では、過去に紙で販売した冊数をすでに大きく上回っている。趣味と考えるなら、現状でも十分に満足できる状態だ>
●リアルとKDPで売れた同人誌の冊数とコストを比較…勝ったのはどっち?
実際の結果が出ています。わかりやすいですね。販売すとしては、圧倒的にKDPなのです。
コミティア:20~40冊
KDP:101冊
では、利益はどうか?と考えるとこれはさらに差があるでしょう。記事でははっきり書いていませんでしたが、"書籍等の印刷代は1冊当たり500~1000円"の時点で、短編の価格設定を考えると赤字だと思われます。これに出展料が5900円かかるのですから、大赤字です。えらい差になっています。
コミティア:大赤字
KDP:約2500円の黒字
…と下書き時点では新清士さんと同じ短編の価格がどれくらいが一般的なのかを調べていませんでしたが、無責任かと思い検索。実例をいくつか。
28ページ(短編小説集) 価格:200円
20ページ(長編小説第1話) 価格:150円
ページ数不明(短編小説) 価格:100円
ページ数不明(短編集) 価格:250円
ページ数不明(小説) 価格:250円
私が想定していたよりさらに安いです。これは本当大赤字。100ページくらいあっても1000円でした。新清士さんのケースを一番有利になる計算でやると、価格250円で印刷代500円です。この時点で売れば売るほど赤字なのはわかっていますが、250×20冊で出展料が5900円で、10900円の赤字です。アマゾンKDPの大勝利ですね。
●アップストアで起きた現象とアメリカですでに現れている成功例
さらに注目なのはコミックのセルフ出版だといいます。もともと日本ではマンガの同人誌文化が強いため、ツールの無料公開はセルフ出版の動きを加速することになるだろうとしていました。趣味で同人誌を描いている人たちが、やがて大量に流れ込んでくると予想されていました。
<アップストアでは「無料でもいいから自分のアプリをダウンロードしてほしい」という利益を度外視した開発者が多数登場し、無料から100円程度のアプリがあふれかえることになった。結果的に、5000円以上の価格でゲームを販売することが一般的だった既存の家庭用ゲーム機会社のビジネスモデルを根幹から揺るがす事態を引き起こした。同じようなことがセルフ出版の浸透によって起きる可能性は高いと考えられる。
米国ではキンドルのセルフ出版で大きな成功例も出ている。映画会社の20世紀フォックスは11年9月、KDPでベストセラー化して話題になっていたヒュー・ハグウェイ氏のSF小説「ウール(Wool)」シリーズの映画化権を取得した(映画化権は映画にする可能性の権利を取得しただけで映画化が確定したものではない)。シリーズは現在9冊まで発売されている。いずれも短編で価格は1冊わずか1.02ドル。米国の大手出版社は、同シリーズを逆に紙の書籍として販売する権利を50万ドルで取得した>
新清士さんはApp Storeになぞらえていましたが、安価になることで素人が大量参入という形はウェブの発展そのものです。それはますますプロが食えなくなっていくということになりかねない気がして、良いことばかりなのかは微妙なところ。ただ、本当に成功した場合、裾野は大きく広がりそうです。
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