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論文数と重要論文数が少ないのに不正は多い日本 臨床研究の捏造も日本はやりやすい


 ノバルティスのディオバンの臨床研究不正疑惑が問題になっていたものの、日本人の研究不正はそれだけじゃないという話。論文・臨床研究の捏造大国と言って良い状態になっていました。(2013/6/13)

2018/01/25追記:
●サイエンス選出6大研究不正論文のうち2つが日本人
2021/08/30追記:
●あの国が1位になった重要論文数ランキング…日本はさらに低下 【NEW】


●日本人の研究不正連発…それでもまだ氷山の一角である可能性

2013/6/13:サイト名はJBPRESSでいいのかな?ディオバン論文問題に関して、かなり長い気合の入った記事がありました。起こるべくして起きた高血圧治療薬バルサルタン事件 徒然薬(第3回)~地に堕ちた日本発臨床研究への信頼 2013.06.10(月)  谷本 哲也 JBPRESSという記事です。
 近年、日本の臨床研究に関する不祥事が相次いで明るみに出ている。2012年10月、東京大学の研究者によるiPS細胞の世界初の臨床応用詐称を、読売新聞が朝刊1面で大誤報した事件は記憶に新しいだろう。

 この事件は、英国のネイチャー(Nature)誌や米国のサイエンス(Science)誌といった海外の一流科学誌でも写真入りで度々大きく取り上げられ、ネイチャー誌の巻頭論説で「Bad Press」と題して、日本メディアの報道姿勢そのものまで、名指しで批判されるという不名誉な事態を引き起こした。

 この事件の直前の2012年6月には、もう1つ日本発の研究不正の金字塔が打ち立てられている。元東邦大学の麻酔科医が、吐き気止めに関する臨床研究の捏造を長年にわたり繰り返していたことが発覚し、少なく見積もっても172本という膨大な医学論文が撤回されたというもので、その数の多さにおいては世界的な新記録と考えられている。

 元東邦大学の麻酔科医というのは、東邦大藤井善隆元准教授の全論文193本に不正・捏造の疑い、世界新記録か?の件。これ以外にも以下のように日本人の不正が相次いでいることが指摘されていました。"これだけ連続して発覚していたとしても氷山の一角に過ぎない"と作者は見ています。
(2018/01/25追記:実際その後もSTAP細胞問題や東大分生研研究不正などが起きています)

・2009年には世界最高峰の医学誌の1つ、ランセット(the Lancet)掲載の昭和大学の研究者
・2010年にがん臨床研究分野での一流誌JCO(米国の臨床腫瘍学雑誌)掲載の埼玉医科大学の研究者
・2013年の産学連携での臨床研究データ捏造が疑われている高血圧治療薬バルサルタンの問題


●少数精鋭の正反対!論文数と重要論文数が少ないのに不正は多い日本

 日本が特にひどい…という批判は私も本当はしたくないんですけど、今までのシリーズでもちょこちょことそういう話が出ていました。そして、今回のJBPRESSの記事はこれを前面に出しています。どうやら日本の悪さは実際に数値でも出ているようなのです。

 記事によると、国別のランキングでは、捏造またはその疑いに関しては米国、ドイツに続き、日本は第3位。上述の昭和大学の論文は、最も引用された撤回論文ランキングの世界第4位(臨床医学分野では第1位)で、日本は臨床研究の捏造大国として立派に一角を占めていると海外から評されても不思議ではない状況となっている。

 これがより深刻なのは日本の論文数が少ないにも関わらず、世界3位という高順位にいるということ。つまり、捏造の確率が高いということです。以前、日本の論文数 数十カ国の調査で他国がすべて増える中、唯一減少の中でも日本の論文数の低下を紹介しましたが、単純な論文数で見ても、ダントツの米中の後、英独と続いて日本は5位なのです。
(中国の捏造が少ないというのは意外ですね。見つかっていないだけかもしれませんが)

 記事でも論文数の少なさは指摘されていました。こちらは5位ではなく4位ですね。2013年3月に発表された文部科学省科学技術政策研究所の集計によれば、日本の臨床医学論文シェアは低下の一途を辿っています。逆に躍進著しいのが中国と韓国だといいます。

 日本の臨床医学論文数国際ランキングでは、全論文数こそ米国(27.9%)、英国(6.8%)、ドイツ(6.0%)に次ぎ第4位(5.6%)。ところが、頭が痛いのが、<論文の質の高さを示すTop10%補正論文数では第8位、Top1%補正論文数では第10位に順位を下げている>ということ。日本の場合、数以上に質が悪いのです。

 少数精鋭だったら良かったのですが、逆の状態ですからね。他の国と違って論文は増えずに相対的にはシェアが減っている、しかもレベルが低い、さらに捏造の確率まで高いということですから、これを嘆かずにいったい何を嘆いたらいいのかわからないといった状態になっています。日本はひどすぎです。


●臨床研究の捏造も日本はやりやすい

 悲しい話が次々出てきますけど、ディオバンの臨床研究不正に関しては、国の問題もありそうでした。"実は承認当時の国内臨床試験(治験)もかなり杜撰なもの"だったそうです。
 海外に比べ新薬販売が大幅に遅れるドラッグラグ問題が薬事行政のくびきになっているため、治験の質に問題があったとしても規制当局から文句を言われる程度で許され、最終的には承認取得が認められてしまう場合が多々ある。

 このことは、製薬企業や臨床試験を実施する医療関係者にとって、「いいかげんなデータを出しても日本では見逃してもらえる」というメッセージになっている可能性がある。

 日本ダメだ論は本当嫌いなんですよ? でも、ダメだと認めなくちゃならなそうな話が次々出てきます。
 なお、医薬品の承認審査の過程において、米国FDA(食品医薬品局)では、製薬企業は治験の生データそのものを規制当局に提出し、FDA自らがその解析を行っているが、日本では性善説に基づいて製薬企業の統計担当者による解析済みの治験データを受け取って、規制当局がその評価を行う仕組みになっている。

 今回、製薬企業の統計担当者によるデータ不正疑惑が生じたことは、日本の医薬品の承認審査体制に禍根を残す可能性もある。

 アメリカでは日本と違って、臨床研究不正に多額の賠償金を課しています。ただ、それでも不正が絶えず、完璧に機能しているわけではありません。とはいえ、お咎めなしの日本ではさらに不正を犯すことによる利益は大きくなると言えるため、日本の方が良いということはあり得ません。むしろ日本ではもっと不正が行われていると考えた方が良いです。

 以前書いた後も、また新しいノバルティス擁護(私への批判?)のメールが来ていますが、作者の谷本哲也さんは以下のように締めていました。
 翻ってバルサルタン事件では年間1000億円以上の売り上げに対し、ノバルティスの対応は関係役員の月額報酬2カ月10%の減額にとどまっている。果たしてこれで釣り合いが取れるものなのか、今後の展開からまだまだ目が離せない。

●サイエンス選出6大研究不正論文のうち2つが日本人

2018/01/25追記:2017年ネカト世界ランキング | 研究倫理(ネカト)(白楽ロックビルのバイオ政治学)で、「Scientist」誌の2017年の科学大スキャンダルが載っていました。捏造・改ざん・盗用に関しては6つ選ばれており、そのうちの2つを日本が占めるという不名誉なことになっています。

約500人の研究者が査読偽装でクロ(中国)
東京大学の渡邊嘉典(わたなべ よしのり)(日本)
見立(みたて)病院の佐藤能啓(さとう よしひろ)(日本)
パーシヴァル・ジャン、张以恒(Yiheng Percival Zhang)(米)
パウロ・マッキャリーニ(Paolo Macchiarini)(スウェーデン)
学術誌「Scientific Reports」の編集委員が19人も一度に辞任。

 渡邊嘉典教授らの話はいくつか書いていて、その一つの東大不正、渡邊嘉典教授のみ捏造認定は忖度か?医学系は全部シロ判定で書いたように、一番問題なのは不正なのに問題なしとされた研究がたくさんあるのでは?というところです。お偉いさんの研究不正疑惑は、全部シロとなってしまったのです。

 佐藤能啓さんの方も実はこの忖度の問題が心配されました。うちでは、論文撤回、佐藤敬弘前大学長・佐藤能啓元教授の不正・不適切行為を認定というタイトルにしていたように、学長という大物が絡む事件でした。こうした場合は、判断がおかしなことになりやすいです。

 あと、海外の話は読まれないのであまり書かないものの、パウロ・マッキャリーニさんについては、スウェーデンでもSTAP細胞と同じ幹細胞で捏造 パウロ・マキャリーニ・カロリンスカ医科大教授を書いています。手術を受けた方々が次々と亡くなるという、えぐい事件でした。研究不正を追求する人の方を叩く人もなぜか多いのですけど、こうした不正によって死人が出ることすらあるとわかる話。やっぱり不正って許しちゃいけないことなんですよ。


●あの国が1位になった重要論文数ランキング…日本はさらに低下

2021/08/30追記:日本の研究力、低落の一途 注目論文数10位に: 日本経済新聞(2021年8月29日 2:00 )という記事が出ていたので、不正ではなく重要論文関連での追記。文部科学省の研究所がまとめた報告書では、科学論文の影響力や評価を示す指標でインドに抜かれて世界10位に落ちたそうです。

<世界の科学論文の動向は文科省の「科学技術・学術政策研究所」が毎年まとめている。今回発表した最新のデータは、2018年(17~19年の3年間の平均)のものだ。1年では特殊な要因によるぶれが出かねないため、3カ年の平均値で指標を出している。
 10位になったのは、研究分野ごとに引用数がトップ10%に入る「注目論文」の数だ。研究者は研究成果を論文にまとめる際、関連する論文を参考として引用する。引用された数は社会やその研究分野へのインパクト、評価や注目度を示す指標になるわけだ。
 注目論文の国別の世界シェアをみると、中国が24.8%で米国を初めて逆転して世界一に立った。米国は22.9%で、米中で世界の50%近くを占めた。大きく離れて英国(5.4%)、ドイツ(4.5%)などが続き、日本は2.3%にとどまった>

 日本は1990年には3位で、その後4位に転落するもしばらくこの順位を維持していました。ところが、2000年代半ばからはほとんど毎年のように順位を下げて急落。一気に下がり出したんですね。政府が行った2004年の国立大学の法人化が有力な理由ではないかとの声が大きいと記事では紹介。国からの交付金は年々削減されており、下がるべくして下がった感じです。


【本文中でリンクした投稿】
  ■日本の論文数 数十カ国の調査で他国がすべて増える中、唯一減少
  ■東大不正、渡邊嘉典教授のみ捏造認定は忖度か?医学系は全部シロ判定
  ■東邦大藤井善隆元准教授の全論文193本に不正・捏造の疑い、世界新記録か?
  ■スウェーデンでもSTAP細胞と同じ幹細胞で捏造 パウロ・マキャリーニ・カロリンスカ医科大教授
  ■論文撤回、佐藤敬弘前大学長・佐藤能啓元教授の不正・不適切行為を認定

【関連投稿】
  ■ディオバン問題 ノバルティスも教授も大学も関係者は皆自己保身
  ■論文が不正だらけである理由 再現性をとる追試が行われないから
  ■有名な心理学研究の60%に再現性なし 医療分野では70~90%も
  ■日本では最優秀の人は博士にならない 就職難で大学院進学を避ける傾向
  ■科学論文ニュースに注意!チョコレートダイエットの嘘に世界が騙される
  ■学術誌掲載論文でも信頼してはいけない STAP細胞とソーカル事件
  ■研究不正疑惑についての投稿まとめ

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