2013/6/18:
●実は新聞の特ダネは記者ではなく、企業の広報が作るもの?
●新聞のスクープは基本的にはリークが基になっている
●企業が日経新聞へのリークを最優先にする理由は「独占状態」のため
●企業がリークする理由「日経の1面で取り上げられたい」
●独占状態だから仕方ないこと? リークで問題となるのは…
●日経新聞がリーク依存症である理由 スクープ・特ダネ至上主義
2019/11/04:
●読売新聞でも三重銀行・第三銀行合併報道で疑惑 その理由は?
●きっとリークじゃないよ!別の上場企業の広報担当者が擁護
●実は新聞の特ダネは記者ではなく、企業の広報が作るもの?
2013/6/18:
週刊 ダイヤモンド 2013年 5/25号 [雑誌]
の宣伝記事が、ダイヤモンド・オンラインでありました。
スクープの裏側 読者が絶対に知らないリーク依存症という重病(2013年5月20日 週刊ダイヤモンド編集部 山口圭介 ダイヤモンド・オンライン)というタイトルです。
ある大手総合商社の広報担当者は「特ダネは記者ではなく、企業の広報が作るもの」だとしていました。そんな広報担当者が中でも載せたいと考えるのが、日本最大の経済ニュース媒体である日本経済新聞だといいます。
「書いてもらいたい案件をこちらからリーク(情報を漏らすこと)すれば、特ダネとして紙面で大きく扱ってもらえるし、うちだけじゃなく、多くの上場企業でやっている。海外案件ばかりで一般紙ではベタ記事になることの多い商社業界は、特にその傾向が強いけどね」
担当者はそう言って、リークから紙面化までの具体的なスケジュールを説明し始めたそうです。なんでそんなスケジュールの説明までできるのか?と言うと、そもそもこうしたリークの仕組みは完全にマニュアル化されているためだといいます。それほどよくある話なんですね。
●新聞のスクープは基本的にはリークが基になっている
"特ダネといえば、記者たちが幹部宅への「夜討ち朝駆け」取材で積み重ねた情報を基に書かれると想像していた読者からすると、にわかには信じられないだろうが、一部であるとはいえ、会議室で生まれる特ダネがあるのだ"と記事では書いていました。
では、日経の記者が取材を怠っているかといえばそうではないそうです。むしろ正反対だとのこと。以下のような説明でした。
日銀クラブなど多忙な部署に配属されれば、「超絶激務で知られる外資系金融並みの睡眠時間が連日続く」(日経の経済部記者)。ライバルである毎日新聞の30代男性記者が「日経さんはうちの数倍は働いている」と語るほどで、そこから生まれる特ダネも数多くある。
特ダネとは基本的にリークが基になっており、リーク自体を否定するわけではない。また、程度の差こそあれ、リークは他のメディアも受けている。
日経新聞はかなり誤報をやらかしています。そういった中には、直接自社のリークではなく競合企業のリークに基づいた特ダネで、ガセネタ掴まされたんだろうなってのもありますが、そういうのはどうなっているんでしょうね?
私は日経新聞の飛ばし記事のことが頭にありましたので、上記のようにあまり否定的じゃない書き方になっていたのは意外でした。
●企業が日経新聞へのリークを最優先にする理由は「独占状態」のため
先の広報担当者は、日経新聞最優先の広報スタイルを「日経ファースト」と呼んでいました。このような「日経ファースト」というしくみが生まれた「最大の要因」は、日経新聞の問題と言うより"本誌を含む他の経済メディアの体たらくだ"と記事は書いています。
ここでいう「本誌」とはおそらく週刊ダイヤモンドのこと。これを書いている週刊ダイヤモンドを含めて情けない状態なので、「日経ファースト」になってしまうってことですね。特集では自社の反省もやったそうです。
国内の経済メディアは一強皆弱ともいえるいびつな構図になっている。圧倒的なマンパワーで国内の経済ニュースを寡占している日経とその他大勢──。
他の全国紙が30~40人体制で経済ニュースをカバーしているのに対し、日経は電機、自動車などの業界を担当する産業部だけで120人を擁し、その存在感は圧倒的だ。他のメディアでは太刀打ちできないほどの情報を日々、読者に届けているのだ。
それ故、大手外資系企業の広報担当者が「日本の全産業、経営者をくまなく網羅する取材スタッフの知見、人脈はさすが」と評価するように、企業広報からの信頼も厚い。
企業としては、最も影響力の大きい日経への掲載が最優先されるのは自然な流れだろう。
●企業がリークする理由「日経の1面で取り上げられたい」
日経新聞に掲載してもらうのは必ずしもリークである必要はないのでは?と思うのですけど、リークじゃなきゃダメなようです。
企業の広報担当者の人事評価は、日経の紙面への掲載回数で決まる場合すらあります。そして、問題なのは「できることなら日経の1面で取り上げられたい」(大手エネルギー広報)ということ。少しでも大きく掲載してもらいたい…そのためには事前にリークした方が、特ダネ扱いで大きくなるだろうという考えです。
大手銀行の広報担当者は「事前レクチャーには“箔付け”で役員に同席してもらい、いかに重要な案件であるかを強調する」と内情を明かしていました。
●独占状態だから仕方ないこと? リークで問題となるのは…
何でもそうですけど、独占が進むと弊害が生まれます。その代表例が「癒着」です。
"取材相手の懐深くまで食い込んで、書くべき情報があれば、批判であろうと遠慮せずに報じる"というのが理想的な姿なのですけど、記者側もリークに頼りだすと、批判すべき情報をつかんでも筆が鈍ってしまいがちだといいます。
元日経編集委員で、産経新聞特別記者の田村秀男氏は経済メディアの現状について「権力、企業のチェックをするのが経済記者の原点だが、事件記者や政治記者と比べても一番できていない。権力、企業側の言うことを書く記者に成り下がっている」と警鐘を鳴らしていました。
「権力べったりの産経新聞記者が言うな」という話なのですけど、一般論で言うと、権力批判はマスコミに求めらているもの。正論には正論。権力批判をするマスコミはむしろ正しいのです。
商社の広報担当者は「日経さんと組んで、1面を華々しく飾った案件のうち、結局は失敗したり、立ち消えになった案件が山ほどある」としており、"記事で問題点を指摘していれば、結果が違っていた可能性もあるはずだ"などと言われていました。
●日経新聞がリーク依存症である理由 スクープ・特ダネ至上主義
また、リーク主義は日経新聞の病のようで、ちょっとおかしなところまで進んでいます。このあたりは私の感じていた悪いイメージと近いことが書かれていました。
さらに体育会系の日経の企業風土がリーク主義に拍車をかける。
「他社の数倍の人数で取材する日経に負けは許されない。他紙と同着でも負けだ」(産業部記者)
例えば、日経は三菱UFJフィナンシャル・グループ社長を三菱東京UFJ銀行の頭取が兼務するというニュースを、発表前日の2月27日付朝刊で報じたが、朝日新聞も同じ日の朝刊で書いている。この場合「いくら発表前に書いたとはいえ、評価はされない」(日経経済部記者)というのだ。
特ダネへの過度の重圧は、弊害を生む。他社に抜かれた記事はわざと小さく扱って、暗にリークを迫る記者も中にはいるという。
日経が特ダネと一斉発表で記事の扱いが大きく違うのは業界では知られた話。大手金融の広報も「日経はリークに価値を見いだしており、特ダネなら本来のニュース価値の2倍、一方で、後追いだとニュース価値の半分か、場合によっては黙殺される」と不満を漏らす。
リーク依存症は問題ですけど、独占状態の方は自由競争の中で生まれたものであり、別に不正しているわけじゃありませんからね。なかなか解決するようなものではないと思われます。
●読売新聞でも三重銀行・第三銀行合併報道で疑惑 その理由は?
2019/11/04:読売新聞がやらかしたわけではないのですけど、リークでスクープを出したことがバレてしまうようなことが起きていたようです。
2017年年1月5日、読売新聞が三重県の地銀である三重銀行と第三銀行が経営統合を検討しているという特ダネを掲載。その後、両行ともコメントを発表。さらに三重銀行は「本日の報道について」というプレスリリースを発表し、「本日、讀賣新聞より当行と第三銀行との経営統合に係る報道がされましたが、これは当行として発表したものではございません。(中略)今後開示すべき事実が発生した場合は、速やかに公表いたします」とコメントしました。
こうしたスクープは大抵否定されます。ただ、本当に根も葉もない話ということはないのに、「とりあえず否定してみせる」といったことも多いです。その上、このケースの場合は、そもそも三重銀行側から読売新聞にネタ提供して、わざとバラしてもらうようにしたのでは?と疑われることが起きました。
なんとこのネットの発表文書PDFのプロパティを見ると、そのタイトルには、「リークプレス_201701xx_B(週明け報道)_v2」と書かれていたのです。これでリーク確定とは言えないものの、「リークを疑うな」というのが無理なほどあからさまでした。
三重銀行もまずいと思ったのかすぐに差し替え。「PDFファイルに不具合がございましたので、修正して差し替えいたしますのでお知らせいたします。尚、『本日の報道について』の内容につきましては変更ございません」とのことで文面は変わりませんでした。怪しすぎます。
(
三重銀行、読売報道に対するプレスリリース名に「リークプレス」で波紋…即刻差し替え 文=鷲尾香一/ジャーナリスト 2017.02.02より)
●きっとリークじゃないよ!別の上場企業の広報担当者が擁護
なお、ある上場企業の広報担当者は、読売の報道が三重銀行のリークに基づくものであるとは、限らないと指摘。「今回の読売の報道は、三重銀行関係者のリークによるものとも考えられるため、三重銀行の広報担当者が“リーク報道に対するプレスリリース”という意味で、あまり深く考えずに『リークプレス』というファイル名をつけただけかもしれません」とのこと。
ただ、正直かなり無理のある説明だと思います。三重銀行が出すプレスリリースの内容で重要だったのは、読売新聞の報道であったことや経営統合に関するものであり、リークかどうかではありません。普通はそんな名前の付け方しないでしょう。たぶんこの広報担当者も普段リークしているもんだから、どうにかして否定したかったんじゃないかと…。
あと、広報担当者の説明でも、読売新聞にリーク説でも変だと思ったのが、報道された1月5日がPDFで書かれていた「週明け」でなかったこと。気になったので検索してみると、そこまで推理している方がいました。例によって日経新聞にリークして週明けに発表してもらうつもりが、その前にどこかから漏れて読売新聞が出しちゃったので、用意していたプレスリリースをそのまま出したのでは?との予想です。
日経新聞の方が読売新聞より格が高く、企業としても日経新聞へのリークを優先するとされていましたし、なるほどこの説明なら筋が通りますね。
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