儲からないからやらないと言われたLCC貨物…ですが、ジップエア、ピーチ、ジェットスターなどが続々参入しているという話。20トン運べるジップエアと違い、ANA系ピーチ・アビエーションの場合は、わずか800kgしか運べないのに参入しており、不思議な感じでした。
2022/03/07追記:
●ANAとJALの貨物戦争 ヤマトが貨物専用機を携えてJAL陣営で参戦 【NEW】
●ヤマトJALの航空貨物参入で福岡県がわざわざ歓迎コメント…なぜ? 【NEW】
●儲からないからやらないと言われたLCC貨物 ジップエアなど続々参入
2020/11/21:かつてLCCが貨物を運ばないのは、単純に儲からないためだと言われていました。しかし、LCCがこの貨物分野に続々と参入しています。象徴的でインパクトがあったのは、新規参入のジップエアですね。なんと客を乗せた飛行より先に、荷物だけ載せた貨物専用便として飛行。貨物専用便としてスタートしてまいました。
これは、新型コロナウイルス問題で、人の行き来が制限されていて、なおかつ貨物も当時運びづらくて高額になっていた…という事情がもちろん大きいでしょう。とはいえ、インパクトありますよね。
JAL系LCCジップエア、貨物専用でまず就航 :日本経済新聞(2020/5/21 16:39)では、以下のように報じていました。
<日本航空(JAL)傘下の格安航空会社(LCC)、ジップエア・トーキョーは21日、6月3日に貨物専用便として初就航することを発表した。まずは成田―バンコク線で週4往復する。タイは現在、日本からの入国を制限しているが、貨物需要は高まっていることに対応する。
(中略)JALでは国際線の9割以上で減便が続き、航空貨物のスペースが逼迫していることから旅客機を貨物専用として運航する措置を3月から継続している。
(中略)旅客機の大規模な減便で航空貨物の輸送単価が上がっているため、旅客を乗せない貨物専用便としても採算が取れる>
●800kgしか運べないANA系ピーチ・アビエーションはなぜ参入?
また、新型コロナウイルス問題においては、JALのライバルANAホールディングス(HD)傘下の格安航空会社(LCC)、ピーチ・アビエーションもその後、貨物事業に参入しています。こちらは20トン運べるジップエアと違い、小型機の貨物スペースは小さく、1便で運ぶ荷物は800キログラム程度を想定しており、かなり少ないとのことでした。
ただ、それでも貨物事業をやりたい!ということなんですね。不思議に思うところです。そのため、ズバリ
ピーチ、1便たった0.8トンでも貨物を運びたい事情 :日本経済新聞(2020/11/9 2:00 日経ビジネス 高尾泰朗)という記事が出ていました。まず、荷物が少ない以外にもデメリットだらけといった話が出ています。
<ピーチが保有する機体には貨物コンテナを積み込めない。運航効率を高めるため、フルサービスキャリアに比べ、駐機時間を短く設定している中「人海戦術」(尾田氏)で荷物を積み込んでいく必要がある。
ANAカーゴは国内航空貨物の運賃を公表している。1口ごとの重量にもよるが、11月の一般貨物1キログラムあたりの運賃は福岡ー那覇間の場合、165~425円。中央値を取って計算してみると、800キログラムを運んだ場合の貨物収入は20数万円となる。あくまで目安ではあるが、航空ビジネスのスケールを考えると微々たる数字といえる>
では、なぜ?という話ですが、これは単純に「それでもピーチが貨物事業に取り組まざるを得ないほど、航空業界が苦しんでいるということだろう」とのこと。また、「ANAとピーチの間には特殊事情もある」とされていました。とはいえ、効果は微々たるものであり、苦し紛れな感じはしなくもないですけどね。
<ANAは現在、成田空港発着の国内線を全便運休している。一方で成田は国際貨物輸送の拠点だ。九州や北海道、沖縄まで運ばなければならない貨物は、トラックなどで羽田空港に移す必要が出ている。
そこで12月からは、成田空港を拠点としているピーチが国際貨物の国内輸送区間を一部担うことになる。大型貨物は積み込めないため、全てをピーチの貨物スペースでまかなえる訳ではないが、幾分かのコスト削減にはつながる>
●JAL系LCCではジェットスターも貨物輸送に参入していた!
なお、
JAL、ジェットスター国内線の貨物取扱開始という記事も出ています。こちらは、2020年7月22日の記事ですから、やはり新型コロナウイルス問題の関連なんでしょう。最初のジップエアと同じでJALが関わっている貨物輸送です。コンテナ使用なので、ピーチより運べそうな感じですね。
<本航空(JAL)は22日、ジェットスター・ジャパンの貨物販売総代理店(GSA)業務を8月1日から開始する、と発表した。ジェットスターは、ジェット旅客機のエアバスA320型機を25機保有。成田空港と関西空港をハブ空港として、新千歳、福岡、宮崎、那覇を結ぶ旅客便路線を提供しており、貨物輸送にはコンテナを使用している>
ジェットスター航空は、オーストラリアのメルボルンに本社をおく国内線・国際線格安航空会社。カンタス航空が親会社です。ジェットスター・ジャパン株式会社もカンタス航空が出資していますが、JALの方が出資が大きく50%を持っており、JAL系だと言って差し支えないでしょう。
●ANAとJALの貨物戦争 ヤマトが貨物専用機を携えてJAL陣営で参戦
2022/03/07追記:<「クロネコ貨物機」で打倒ANA? ヤマトと仕掛けるJAL貨物 2社の“秘策”は対照的?>(乗りものニュース / 2022年3月4日 9時42分)というおもしろそうなタイトルの記事を発見したのでこちらに追記。当初の話と違ってLCCではない…と思って読んだら、結局、LCC関連の話でもありました。
<「クロネコヤマトの宅急便」でおなじみのヤマト運輸が、ついに自社で航空機を持ちます。(中略)
運航は、JAL(日本航空)グループでA320を運航するLCC(格安航空会社)、ジェットスター・ジャパンが担います。JALは2010(平成22)年の経営破綻後、自社貨物機を手放しており、同社グループにとっては久々に貨物専用機を運航することになります>
https://news.infoseek.co.jp/article/trafficnews_115961/
記事によると、ヤマト運輸の狙いは残業対策。2024年4月から自動車運転業務の年間残業時間の上限が960時間となるため、長距離輸送トラック輸送をフォローしうる手段としての確保だそうです。近年目立つ水害や、地震などにより地上の交通機関が寸断された際の代替手段にもなり得るメリットもあるといいます。
一方、これを運航するJALグループの場合は、貨物事業の観点から見ると、破綻以降はANAに水をあけられていたため、その挽回策となり得る…といった説明。破綻後のJALは、おもに旅客機の客室スペース下の貨物室(ベリー)を用いて航空貨物を輸送していたものの、これで「貨物専用機」の復活となります。
・貨物専用機を使用することで、旅客便の定期路線以外にも就航できるほか、チャーター便も運航可能で、積み降ろしをする空港も柔軟に選べる。
・貨物専用機の保有は景気によるボラティリティ(変動率)が高いというのがネックだったが、ヤマト運輸がが保有することで、堅実なスタイルで貨物事業を行える。
●ヤマトJALの航空貨物参入で福岡県がわざわざ歓迎コメント…なぜ?
記事では、<もしかすると貨物事業における「JALとANA」の構図に変化をもたらすかもしれません>としていました。ただ、ANAの方がもともと最近は貨物重視であったため、この構図がただちに変化するというわけではなさげ。大きく水をあけられていたところで、やっと反撃し始めた…といった感じです。
<ANAは2013(平成25)年、グループ内で貨物専用航空会社「ANAカーゴ」を設立します。同社は国内貨物航空会社の老舗、NCA(日本貨物航空)と連携するなどしながら運航規模を年ごとに拡大させ、2019年7月には、100tを超えるペイロード(搭載容量)を持つ大型の貨物専用機「ボーイング777F」を国内で初導入。その後もコロナ禍以降とくに、貨物需要の追い風も受け、現在はANAグループの収益を支える立派な柱になりました。
2021年10~12期の連結決算で比べると、専用機を持たないJALの国際線での貨物収入は前年同期比88%増の525億円だったのに対し、貨物機を持つANAHDは同96%増の993億円。ともに大幅に貨物需要は増加していますが、JALの現状の売り上げはANAHDに大きく差をつけられている状況です>
なお、ヤマト運輸の航空貨物参入は空港側からも歓迎されており、福岡県なんかは、県の公式サイトでわざわざ歓迎コメントを発表。地方空港の有効利用化、活性化につながるという“一石二鳥”の効果もあるとされていました。そもそも「税金の無駄遣い」「いらない」と言われる空港を各地に作ったのが間違いな気がするんですけどね…。
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