"成城石井 ~安売りせずに売る~"(2010/5/29)と、"成城石井の教育"(2011/7/12)をまとめました。だいぶ削った部分がある他、途中のPOPなどの話は追加です。(2017/05/16)
2017/12/17追記:成城石井に行ってみた やっぱり高いし個性的!
●安売りせずに売る成城石井
2010/5/29:成城石井は小売関係の記事を読んでいるとたびたび出てくるスーパー。安売りではなく、品質を武器にして成功したスーパーだとされており、私の読んだ記事も
ディスカウントしか打つ手はないのか?(日経ビジネスオンライン、大久保 恒夫、2009/11/16)というタイトルでした。
成城石井の大久保恒夫社長によると、「ディスカウントは需要の先食いや、他商品からの買い換えのスイッチ買い」であり、「泥沼のディスカウント合戦になるだけで、結果として売り上げは縮小していく」と述べています。
「では、どうしたら良いのか?」というわけですが、その回答として「実際に経営者として取り組んできたこと」を、いくつか説明していました。
●固定客(ファン)を増やす
一つ目の取り組みは、「固定客を増やす」というもの。普通な気がするものの、その普通が難しいのでしょう。
「売り上げは気にしなくてもいいから、挨拶をしっかりするように」というのが経営方針であり、基本で目新しさもありませんが、徹底してやっているようです。
顧客はいつも行く店舗を決めていることが多いようです。しかし、そのいつも行く店舗を変更する大きな理由が「店員の感じが悪かった」であり、「価格が高い」「品質が悪い」と比較しても、無視できないほど大きいとのこと。
安い商品を売りにしたチラシや、カード会員獲得の推進では、固定客には繋がらない印象であるとも述べています。
●売れる商品を、もっと売る
私が一番おもしろいと思ったのは、2つ目の「売れる商品を、もっと売る」というやり方。商品のABC分析です。
商品のABC分析では、上位3分の1をA商品(売れ筋商品)と呼び、大体75%の売り上げを占めるそうです。同様にB商品(見せ筋商品)の売上構成比は約20%、C商品(死に筋商品)が約5%。
こうした場合、A商品をさらに売り込むことにより、売り上げは伸びます。一方、C商品は、いくら売り込んでも、やっぱり売れないそうです。そして、A商品の中には、ディスカウントしていないのに売れている商品もある…というのがポイントになります。
そこで、A商品をさらに3つに分類。一番売れている1~10位までの商品をS商品(超売れ筋商品)とし、売り込むと、大きな成果を収めました。売り上げ上位の10%の商品で40~50%の売り上げがあり、さらに言えば、上位の1%の商品で15~20%の売り上げに達しているそうです。
また、新商品も売れる傾向にあり、新規性、話題性のある新商品の良さをアピールすると想像以上に売れたりするともありました。
●価値ある商品の値段を下げずに売る
ただ、売れ筋の1つである価値ある商品については、商品単価は高くても、他店より同じ商品なら安い価格、商品の内容の割に安い価格を心がけているとのこと。ここでは結局安くする戦略が取られていました。
価格に対する不信感が生まれないためにも、価格を変動させたくない場合は、よほど良さをアピールして売り込まないと売れないそうです。
そうした工夫としては、多くの例が出ていました。
(1)優位置で売る。顧客が多く通る場所や視線がよく行く場所に置き、目に触れやすくする。
(2)フェース数(陳列の前面の数)を拡大する。非計画購買(店舗に来るまでは買う計画はなかったが、店内を歩いているうちに目について買うこと)が80%を占めるため。
(3)在庫を多くし、積み上げる。豊富感があると買いたくなり、その逆では売上げが落ちるため。
(4)POP(店頭販促)をつけること。商品の良さをPOPでアピールするため。
(5)接客で、商品のアピールポイントを分かりやすく表現する。
絞り込んでディスカウントせずに売り込めば、仕入れ原価を引き下げたり、売価を上げなくても、粗利率はアップするし、顧客単価も上がるという結果になります。
さらに、店舗の作業は、売上金額ではなく、売上数量に比例するので、人件費を削減することができるという効果もあるそうです。これは、予想外の視点です。
顧客は魅力ある商品を新たに知ることができ、原価を引き下げていないから、メーカー、卸も利益が上がるということで、何だかバラ色でしたね。「全員が得する仕事をしましょう」というのは、私の理想どおりです。
●POPと接客に成城石井らしさ
2017/05/16:上記の(4)と(5)のPOPと接客でのアピールに関してだけ、今回新規追加。
社員アンケート|新卒採用サイト|成城石井というページは、若手社員に成城石井のDNAを感じたエピソードを聞いたもの。この中にPOPと接客でのアピールに関するものがあったのです。
"成城石井にはすごいPOP名人がいる。しかもPOPだけじゃなく、売り込み名人、絶対に売れる売場づくり名人でもある"
POPを出す、接客でアピールするというのは、普通すぎるものなのですが、その良さが成城石井にはあるんですかね?
この他、売り込みのすごさを感じる話もいくつかありました。先ほどの"(5)接客で、商品のアピールポイントを分かりやすく表現する"と関係しそうなものです。
"入社した年に体験した土用丑の日。お店の前に並べた400本もの鰻が飛ぶように売れていく。売り込む時にがっつり売り込む、しかも会話で売り込む。成城石井らしいと思います"
"あるパンが新発売の時、店長が「明日は100個売ろう」と通常の5倍を発注。声出しをがんばり見事完売。強気の発注と売り込みが本当にかっこよかった!"
●「多く失敗した人の方が優秀」という考え方
2011/7/12:ここから"成城石井の教育"でやった話。
「教育する」って、何をどう教育するのか? 日経ビジネスオンライン、大久保 恒夫、2010年1月25日という記事についてです。
記事では最初によくある拡大路線について、ちくりと言っていました。
小売業を経営して、一番強く思うのは、人の成長なくして企業は成長しないということである。店舗を新規に出店すれば見かけ上の売り上げは増加していく。しかし、人が成長しなければ、売り場は乱れていく。人が成長しないのに出店数を増やし、店舗の管理レベルが落ちてお客様に喜ばれない売り場になり、業績が悪化していく小売業をたくさん見てきた。
「人の成長」のためには、当然教育というのは大切になってきます。これがこの記事のメインの話ですね。具体的には、優先順位の高くない損益計算書や貸借対照表の読み方より先に、場の実際の業務に生かせ、高い成果が上がる教育をするべきといったことみたいです。
この記事で印象に残ったのは、失敗の勧めと言うべきものもありました。三鷹光器の中村義一会長も失敗を勧めており、成功者にはある程度、共通の体験があるのかもしれないなと思って、おもしろかったです。(関連:
三鷹光器 中村義一会長1 ~ユニークな入社試験~)
現実には失敗は必ずいくらかの損害を生みますし、上司への責任になりますので、失敗を許容してもらえる環境というのは、なかなか作り出せないものだと思います。しかし、難しいからこそ、他企業と差をつけられるのかもしれません。
私は多く失敗した人の方が優秀だと思う。何もしなければ失敗はしない。いろいろやれば失敗も出てくるが、それで成長すればいいのである。
成城石井では「失敗してもいいから、いろいろ考えどんどん実行しろ」と指示を出している。現場で実行し経験を積み重ねることが教育であると考えている。挑戦しないで失敗しなければ成長もない。挑戦すれば、失敗もあるが、成長できる。
いろいろ挑戦している人は経験が豊富になる。問題に対して対応策を考える時の引き出しの数が多くなる。今までの経験を基に、正しい答えが見つけやすくなる。既存の問題への対応もうまくできるようになってくるし、新しいことに挑戦しても成功する確率が高くなってくるのである。仕事をしていく中で失敗を許容し、どんどん実行することを推進していくことが、成長につながり、教育しているということになる。
さっきの
社員アンケート|新卒採用サイト|成城石井で、失敗っぽい話がありました。そして、これもやはり怒られたって内容ではありません。
"つまずいてワインを2ケース(24本)、ケースごと床へぶちまけてしまった時・・・。社員もアルバイトも総出でワインの池になった床を大掃除。すごい連帯感でした(笑)"
失敗の許容というのは多くの場合、チャレンジしての失敗を指しているのですが、そもそも叱ることが良くないということは多くの研究で確かめられていますので、こういった失敗の許容も良いことでしょう。
●成城石井に行ってみた やっぱり高いし個性的!
2017/12/17追記:事前に復習していなかったのでこの投稿の内容は忘れていたのですが、東京都内(小伝馬町駅)で成城石井のお店に初めて入ってみました。他もそうなのかわからないものの、かなり狭いお店でした。
その後、斜向かいにあったまいばすけっとも見ています。まいばすけっとはコンビニに近いサイズ。1回目のお店もそれくらいで、私はスーパーをコンビニサイズに凝縮したイメージと覚えていました。これも非常にユニークな形態です。一方、今回見た成城石井はもうちょっと広い感じ。ただ、もっと大きいイメージだったので意外です。
東京都はもともと価格が高く、わかりづらいんですが、やはり全体に高いと思いました。先にまいばすけっとを見て価格を把握すれば良かったとも思ったものの、結構置いているジャンルそのものが違うところが多い気がします。
例えば、鍋セットや惣菜的なのはあったものの、お弁当はなかった感じ。狭い店舗なのに、ワインや日本酒など、お酒はめちゃくちゃ多かったのもびっくり。スパイスみたいな調味料も豊富でした。あんまちゃんと覚えてないものの、他にもきっと特徴がいっぱいあったはずです。
1ジャンルの商品の種類も多めにしているかもしれません。こだわったものは手厚くしている感じで偏りがあり、通常のスーパーとかなり違いそう。普通のスーパーをイメージして行くと困りそうなお店でした。
ただ、成城石井で一番わかりやすいのが、定番商品、大手メーカーの商品がほとんどないということ。いわゆるナショナルブランドの商品ですね。
その関係もあるのかな?と思うのですが、今思い返してみると、原色系の派手な色使いのパッケージが全然なかった印象。気のせいかもしれませんが、とにかくまいばすけっとや普通のスーパー・コンビニとかなり印象が違います。びっしり置いているのに、野暮ったさがありません。価格だけでなく、置いている商品も安っぽくないんですよ。照明もかなり明るくしている感じなのも特徴を感じました。
私は全く好きでない、一生買い物する機会がなさそうなお店でしたが、個性的でおもしろかったです。また、見かけたら入ってみようと思います。
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