ソニーや平井一夫・元社長の話をまとめ。<ソニーOBが批判した平井一夫社長がソニー復活という皮肉>、<エレキにこだわるソニーOB、創業者のソニーの理念から逸脱してた…>、<社員に評判が悪かったソニーとマクドナルド、逆に大成功する!>などをまとめています。
2023/05/05まとめ:
●社員の口コミに基づくカリスマ社長ランキング、悪評社長ばかり?
●社員に評判が悪かったソニーとマクドナルド、逆に大成功する!
●引き際で晩節を汚すことが多い名社長 ソニー平井一夫氏は?
2022/05/16追記:えらい遅くなっちゃいましたが、2019年3月28日に
ソニー平井会長が退任 社長交代から1年「卒業する」 日本経済新聞(2019年3月28日)という記事が出ていました。成果を出した社長でも引き際で失敗することはよくある話。平井一夫さんは引き際も見事でした。
<ソニーは28日、平井一夫会長(58)が6月で退任すると発表した。現社長の吉田憲一郎氏と交代してから1年が経過し、新しい経営体制への移行が進んだと判断。「ソニーグループから卒業する」とコメントした。今後はシニアアドバイザーとして経営陣に助言する>
<平井氏は社長交代時にも「会長に就くのは、吉田氏と取締役会の要請を受けたため」と説明し、長く会長職を続ける意向はなかったもよう。退任も本人の申し出だ。
社長退任後は会社に姿を見せるのは週に1~2回程度だった。ダボス会議などへの出席はあるが経営の執行には関わらず、吉田氏ら新体制に配慮する姿勢を示してきた>
後継へのバトンタッチで失敗するのは創業者のケースが多いです。ただ、<かつてソニーではOBが経営陣に注文をつける時期もあった。平井氏は社長退任後1年で会長職から降り、現経営陣が一段と仕事をしやすい環境をつくる>ということで、ソニーでも問題があったパターン。あのシャープなんかもこれで低迷しました。
また、うちでタイトルにしていた「エレキを知らない!OBが批判」の話は今回も登場。<社長就任後も「エレクトロニクスがわからない」などとの批判も受けたが、子会社から現社長の吉田氏らを呼び戻して構造改革を推し進めた>という話です。構造改革は外部出身者向きなので、非主流出身が向いたのかもしれませんね。
●ソニーOBが批判した平井一夫社長がソニー復活という皮肉
2018/07/06: 2018年4月にソニーの平井一夫社長兼CEO(最高経営責任者)を退任。後任は、吉田憲一郎さん。平井一夫さんは、その後は会長となるのですけど、代表権はありません。(2021/04/02追記:社長交代から1年で平井一夫さんは、会長も退任。引き際に失敗する名経営者とされる人が多い中、こちらも見事です)
社長退任の理由は、ネガティブなものとなることもしばしばあります。しかし、平井一夫社長の場合は、不振の責任を取って…などということではありません。ソニーの20年ぶりの最高益更新を確実にした上での交代、つまり、不振どころか絶頂期で代表権すら返上する退任というわけです。
音楽、ゲーム事業を長く歩んだ経歴を持つ平井さんに対して、就任当初はOBから「ソニーの伝統であるエレクトロニクス事業のことを分かっていない」と批判する声もあったそうです。しかし、人員削減や事業売却など痛みを伴う構造改革によって不安定な収益体質を改善してみせました。ソニーをわかっていなかったのは、OBだったようです。
(
台頭する「ソニー復活論」:日経ビジネスオンライン 杉原 淳一 2018年2月26日より)
●今のソニーはエレクトロニクスではない事業も大きな柱に
このことは過去に、
エレキのソニーは間違い 家電もスマホもリストラし撤退・売却すべきを書いていたので興味がありました。また、「伝統」批判投稿も繰り返し上げているように、「伝統を守れ」という思想は多くの場合間違っています。その意味でも興味がありました。
なので、具体的にどこで成功したのか?と言うとところがわかる記事はないかと探してみることに。すると、一部にエレキの分野も入るなど、全般に成功したと言って良いみたいですね。何でもかんでも成功という、ちょっとできすぎなほどよくできていました。
その中もでも一応、最も大きいといえる成功分野というのはあります。大きな柱は「ゲーム」「半導体」「金融」です。3つのうち「金融」だけはもとから成功していた唯一の分野であり、エレキとは全然違うところでもあります。ただ、金融も平井一夫社長で以前よりもさらに伸びたというのはあるようでした。
(
2017年度決算から見る「ソニー復活」の理由、ゲームと半導体事業の“強さ”と“弱点” | BUSINESS INSIDER JAPAN 西田宗千佳 [ITジャーナリスト]May. 01, 2018, 05:00 AM より)
●批判された「ゲーム」で大成功、「半導体」も大きな柱に成長
一方、「ゲーム」「半導体」は、エレクトロニクス6分野(モバイルコミュニケーション、ゲーム&ネットワークサービス、イメージング・プロダクツ&ソリューション、ホームエンターテインメント&サウンド、半導体、コンポーネント)の1つです。
ただし、音楽・ゲーム畑だったことが平井さんが批判された理由であり、ゲームはおそらくエレキらしいエレキとみなされないのでしょう。半導体についてもひょっとしたらOBはご不満かもしれません。
この2分野について、「売上・利益が大きくなるビジネスを強化した」とされていました。ゲームについてはハードウエアの販売台数はそれほど増えていないものの、ネットワークサービスで儲けるようになって変身。
もうひとつの柱である半導体事業は、主に高級スマートフォン向けのイメージセンサーの需要が理由。ただ、外的要因による変動を特に受けやすい分野とされており、ここは注意が必要そうでした。
●エレキらしいエレキでもテレビやカメラなどが成功していた…
平井さんが嫌われたのは、ソニーの「伝統」である事業において、赤字事業の売却や事業体制変更を行ったことでしょう。ただし、テレビやオーディオ、カメラといったいわゆる「家電」事業は、収益の低い低価格製品を止め、高品質・高付加価値のモデルに絞ることで高収益化を実現。これらは好調で、エレキらしいエレキでも稼げる体制を作ることに成功しました。エレキを知らないと言われたのに、こっちでも成功しちゃったようです。
一方で、収益の低い低価格製品を止め、高品質・高付加価値のモデルに絞る…という、同じやり方をしたスマートフォンだけは未だに赤字。それでも、この事業は「ノウハウのために残す」という方針だとのこと。大きなビジネスを当面目指さないことで、赤字にはなっているけど、それ以上の大きな赤字にはしないという考え方でやっているようです。
うまくいったところは拡大し、うまくいっていないところは売却・撤退などするか、集中しないようにするというのは、「よくわかっている」というやり方。過去のソニーの伝統的な事業にこだわるOBの方にはご不満かもしれませんが、平井一夫さんの方針が正しかったと思われます。
●ストリンガー社長も「エレキに詳しくない」と批判されていた
2019/08/30:そういえば、以前のトップであるハワード・ストリンガーさんにも、同様のエレキに関して「エレキに詳しくない」といった批判が出ていたんですよ。これも平井一夫さんへの批判と同様、やはり本質的ではない批判だったと言えるでしょうね。
例えば、
徹底検証! ソニー・ストリンガー体制 “天王山”は2月1日の取締役会 (ダイヤモンド・オンライン 2012年1月30日)では、<売上高の過半を占めながらも利益が出ないエレキについて議論せざるをえないが、エレキに詳しくないストリンガー氏では議論にならない>と書いていました。
ただし、ストリンガー体制のソニーでボロクソだったのは事実で問題はありました。一方で、就任前から問題があったため、「ストリンガーさんがソニー悪くした」などといった批判は、無理のある責任の押し付け。「ストリンガーさんはソニーを改善できなかった」といった理解の方が良いだろうと思います。
また、
ソニー凋落の原因はハワード・ストリンガー社長ではなく出井伸之社長で書いたように、ストリンガーさんは社内で嫌われており、ストリンガーさんの方針はことごとく無視された…というより積極的な擁護論も出ていました。この説を採用すると、悪いのは守旧派のソニー内部の人たち…ということになりそうです。
なお、ストリンガー批判をしていたダイヤモンド・オンラインでは、「ちなみに平井氏といえば、次期社長と目されるストリンガー氏の大のお気に入りだ」と平井一夫社長のことも叩いていました。このように、エレキ中心主義は社員だけでなくマスコミにもあったのですけど、結果的には彼らが間違っていたようです。
●「SONY」のという社名の由来 ブランド名に込められた様々な理念
2021/04/02:
ソニー、4月に社名変更へ 「RE:SONY」まとめ読み: 日本経済新聞(2021年3月28日)は、ややこしいタイトルの記事。実際には、「ソニー株式会社」は「ソニーグループ株式会社」への社名変更。「RE:SONY」というのは、「第2の創業」に再挑戦するということを受けての、日経新聞の特集名のようでした。誤解しちゃいますわ。
ただ、この記事で紹介されていた現在の「SONY」いう社名やブランドに関するエピソードはおもしろかったですね。「SONY」のブランドが制定された1955年でした。共同創業者の盛田昭夫さんはネーミングに込めた思いを後に「世界のすべての人が読んでも同じ音で読める」ためと説明していたそうです。
<全世界で商品を売るブランドを確立するため、共同創業者の井深大氏と簡単で覚えやすく、どこの国でも同じように発音できる名称のアイデアを出し合い、練り上げました。
SONYの由来はラテン語の「sonus(日本語で音の意)」と当時流行していた「sonny boy」の「sonny(坊や)」という2つの言葉から生まれました。ただ、日本人は「ソンニー」と読む可能性があり、「損」を連想することを懸念した盛田氏が「n」を1つ取って「sony」にしました。ネアカを自負していた盛田氏らしく、「小さくても、はつらつとしたやんちゃ坊主」という意味を込めたと言われています>
●エレキにこだわるソニーOB、創業者のソニーの理念から逸脱してた…
現在の成功を知っていると信じられない話でしょうが、社名の方もブランドと同じソニーに変えようとしたとき、周囲は反対したんだそうです。1946年に東京通信工業を設立し、10年以上かけてようやく認知度が高まっていた…というのが、反対の理由だったとのこと。また、カタカナやローマ字の社名は当時では珍しく、メインバンクだった三井銀行も社名変更に反対したといいます。
さらに、社名に関しては、「ソニー電子工業」や「ソニー電気」という案も出ましたが、「我々が世界で伸びるため、断固、ソニー株式会社でいくべきだ」と徹底抗戦したのが共同創業者の盛田昭夫さんでした。そして、これに関する以下の説明を見ると、エレキにこだわっていたソニーOBが創業者の理念を受け継いでいなかったことがわかって、おもしろかったです。
<世の中にないものをつくりあげいくのがソニーであり、「電子」や「電気」にとらわれるものではない、というのが盛田氏の考えでした。それから63年。ソニーは盛田氏が予見したように、祖業のエレクトロニクスをはじめ、音楽、映画、金融、ゲーム、そして足元ではアニメ分野の世界展開にも事業領域を広げています>
●社員の口コミに基づくカリスマ社長ランキング、悪評社長ばかり?
2023/05/05まとめ:全く読まれていなかった<カリスマ社長、ソニー平井一夫とマクドナルドのサラ・カサノバがワンツー>という投稿を平井一夫社長関連ということでこちらにまとめておきます。
2016/2/21:カリスマ社長ランキングというものがありました。転職クチコミサイト「転職会議」を運営するリブセンスが発表した、転職会議に寄せられたクチコミ数にもとづいて数値化したものです。ただ、カリスマ社長ランキングというのは、ちょっと誤解を招くかもしれません。どうもネガティブなコメントもランキングに加えている感じなのです。
<ランキング作成にあたっては、転職会議に投稿された158万件以上の従業員クチコミの中から、社長に関するクチコミを抽出し、その件数を企業ごとに集計した。社長に関するクチコミは他の項目と比べ1件あたりの平均文字数が多く、感情論よりも客観的なコメントが大半を占め、社内にいる人だからこそ気づく社長の長所あるいは欠点が垣間見られるという>
(
従業員クチコミによるカリスマ社長ランキング、1位は?:日経ウーマンオンライン【トレンド(キャリア)】 2015年12月25日より)
●社員に評判が悪かったソニーとマクドナルド、逆に大成功する!
最も疑わしいのは、2位だったマクドナルド。全く結果を出せておらず、業績悪化から復調の兆しが見えません。「オンとオフの切り替えがはっきりしている。一人ひとりをよく見てくれていた印象がある」「良くも悪くも豪腕な経営。現場軽視と思われる施策も多かったように感じる」などのコメントがあったそうで、やはりネガティブさが寄与した2位かもしれません。
良くも悪くも影響力が強い社長、ワンマンタイプの社長のランキングと捉えた方が良いのかも。カリスマ社長と言われる人には、多かれ少なかれ問題も付随しています。また、元記事では社長名を出しておらず、サラ・カサノバ社長だけでなく、ひょっとしたら前任の原田泳幸社長の口コミも入っているかもしれません。原田社長も問題の多いワンマンタイプの社長でした。
1位だったのは、ソニー社長。2015年現在は平井一夫さんですね。ソニーの方はマクドナルドほど悪くはなく、最悪期は脱出した感じがあります。とはいえ、平井一夫社長の評判が良いというのは聞かず、むしろ悪いという声の方が目にしやすくなっています。
したがって、こちらもやはりネガティブコメントが稼いだ可能性がありそう。「性格は穏やかで優しく、仕事も丁寧に理論的にこなすタイプ。分かりやすい説明や高い英語力など、リーダーとしての能力も高いと思う」「会社を大きく方向付けることはできていないかもしれない」などのコメントが出ていました。平井一夫社長の場合は、一方でワンマンタイプでもないように見えますので、タイプが異なりそうですが…。
(2023/05/05追記:以上のように書いていたのですけど、ソニー、マクドナルドともに大復活。しかも、両者とも悪口ばかり言われていた平井一夫社長、サラ・カサノバ社長のもとで見事に復活を遂げています。ブラック企業など、口コミが信頼できることもありますが、経営については一般社員の声はそれほどあてにならないのかもしれません)
ベスト3で唯一現在結果を出しているのは、楽天の三木谷浩史社長でした。こちらは創業者でもあり影響力が強く、業績という結果と影響力の両方ありますからカリスマ社長と言っても大丈夫な感じ。ただ、前述の通りワンマンタイプの宿命で、我が強すぎるためにぶつかり合う社員もいます。コメントでもそれが見えていました。
具体的には「何があってもあきらめない姿勢を貫いている点が、社員に安心感を与え、士気を高揚させる」「先見の明があり、非常に優秀な社長だと思う」「かなりのトップダウン経営」などといったコメント。
英語社内公用語化の方向性で、楽天創業メンバーの役員「会社辞めます」で書いた英語公用語化なんかは、社長のリーダーシップ全開のわかりやすいエピソードでしたね。
カリスマ社長には功罪があり、ネガティブコメントがあること自体は普通なのですが、業績の悪さを見るとちょっと「カリスマ社長ランキング」というネーミングとは外れる感じのするランキングでした。良くも悪くも社内で存在感のある社長ランキング…みたいなものの方が、良かったと思います。
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