富裕税に関する話をまとめ。<富裕税は絶対失敗する!主張してた経済の専門家らが手のひら返し>、<富裕税の考え方、実は以前からある「地価税」と同じだった…>、<そもそも「富裕層に課税すると経済成長が鈍る」が迷信で実は逆?>などをまとめています。
2022/10/18追記:
●そもそも「富裕層に課税すると経済成長が鈍る」が迷信で実は逆? 【NEW】
●ピケティ教授提案の富裕税に誰も賛成しなかった…は本当か?
2019/11/22:イギリスの週刊新聞ザ・エコノミストが、
「富裕税」を認め始めた経済学:日経ビジネス電子版(2019年10月10日)という記事を出していました。富裕税に好意的だと聞くと、左派の新聞だと思うかもしれませんが、ザ・エコノミストは右派だと言われているところです。
ただ、より正確に言うと、経済的には右派といった感じでしょうね。経済以外の面では、人権などリベラルな思想にザ・エコノミストは賛同していますし、経済面でもゴリゴリの右派ではなく穏健で、比較的バランスが取れています。とりあえず、今回は経済の話ですので、右派と考えて問題ありません。
と書いてきたものの、「比較的バランスが取れています」はちょっと言い過ぎたかもしれません。記事であった「5年前、ピケティ氏が唱えた富裕層への課税強化は当時の経済学において異端の存在で、誰も賛成しなかった」というのが、怪しい見方なのです。エコノミストが右派であるゆえに事実が見えていない可能性を感じました。
ピケティさんはむしろ異端ではなく当時から王道だという指摘すらありましたが、そこはまだ見解が分かれるところかもしれません。ただ、
アベノミクス支持のクルーグマンはピケティも支持し保守派を批判で書いたように、ノーベル賞をもらった大御所経済学者のクルーグマン教授が賛同するなど、ピケティさんには好意的。富裕税そのものにも賛成であったようです。
●富裕税は絶対失敗する!主張してた経済の専門家らが手のひら返し
ということで、事実認識に一部問題があるようですが、エコノミストは「それから5年がたった今、状況は一変している」としていました。その理由は、「2020年米大統領選の民主党候補者数人が、富裕層への課税強化を約束しているから」だといいます。
もともと過激な主張をする人であり、富裕税くらいならどうってことないのですけど、バーニー・サンダース上院議員最近、純資産3200万ドル(約34億2000万円)超の富裕層に年間1%の税率を課す計画を発表。税率は段階的に引き上げられ、純資産100億ドル(約1兆700億円)超では8%とするとしています。
ピケティさんはもっと過激になってきていて、近著『Capital and Ideology』(資本とイデオロギー)にて、超富裕層の資産に対し、最高90%の課税を行うべきと提起しており、さすがにここまでのことを支持している人はいません。ただ、富裕税が経済成長を鈍化させるとは限らないとの見方は、エコノミスト(この場合は新聞の名前ではなく経済の専門家の意味)の間で増えているといいます。
理由について新聞のエコノミストは、「富裕層への課税は有権者へのアピールになる」という俗な理由を持ってきました。逆にお金持ちに味方する政党の支持もかなり厚いためそう単純ではないでしょうが、ある程度支持を得られる政策ではあるでしょう。例えば最近のある調査結果では、米国人はこうした課税を好ましいものと考えていることがわかったとのことでした。
●富裕税の考え方、実は以前からある「地価税」と同じだった…
エコノミストは「経済学では富裕税を否定している」と書いていました。ただ、これは「古い経済学では」というのが、正しい表現かもしれません。この理論では、富裕税を課すと、所得を創出するための仕事や投資活動が妨げられると考えられています。とりわけ投資は未来の成長を支えるものだから、資本に対する課税は避けるべきだとされていたそうです。
ただし、全米経済研究所(NBER)が最近発行した論文では、これに懐疑的。というのも、上記の理論は投資によってパフォーマンスが異なるという「現実」を無視しているため。むしろ課税対象を資本所得から富にした方が、経済成長に繋がるであろう投資によって高いリターンを達成できる投資家は恩恵を受けるだろうとしていました。
富裕税に対する「使うか、さもなければ失うか」という著者の考え方は、地価税を巡る論議に若干似ているとエコノミストは指摘。富裕税と似た感じで地価税では、土地を活用する人ほど報われ、社会にも還元できるとされているそうです。そして、エコノミストも実は地価税なら以前から賛成していました。
記事では「勢いづいた左翼が権力を握れば、極端な政策が導入される恐れはある。だが富裕税は必ずしも経済に悪影響を及ぼすとは限らない。少なくとも議論する価値はある」といったまとめにしています。またしても左派を批判していますが、過激すぎる政策であれば私も問題を感じますので、ここは一応賛同しておきましょう。
●そもそも「富裕層に課税すると経済成長が鈍る」が迷信で実は逆?
2022/10/18追記:もともと書いていた話での「富裕税が経済成長を鈍化させるとは限らない」というのは、地価税の考え方と近いものでした。大雑把に言って、資産や土地を持っていても活用する人とそうではない人がいるため、課税することで積極的に活用させるように促して経済が発展する…という考え方のようです。
ただ、そもそも富裕税や土地に関する税金に限らず、「高所得層への課税を増やすと経済成長しない」という考え方自体が迷信で正しくない可能性があります。これは、
格差是正が経済成長を阻害するという誤解 富の再分配はむしろ成長促進(「経済成長を犠牲にしても富の再分配が必要…は間違いだった!」にタイトル変更)でやっている話の関係です。
私も信じられなかったのですが、格差是正を行っている国では経済成長が鈍化するどころかむしろ経済成長を促進している…ということがデータからわかるということ。逆に格差が拡大しているところの方が経済成長していないたみたいですね。高所得層への課税強化で富の再分配を進めることでむしろ経済は成長する可能性があります。
【本文中でリンクした投稿】
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アベノミクス支持のクルーグマンはピケティも支持し保守派を批判 ■
経済成長を犠牲にしても富の再分配が必要…は間違いだった!(格差是正が経済成長を阻害するという誤解 富の再分配はむしろ成長促進)
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