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市場規模700億円 同人誌業界はなぜ拡大してきたのか?


 あまりビジネス記事では見かけない名前を見て読んでみたら結構おもしろかった話。コミックとらのあなの株式会社虎の穴吉田博高代表取締役のインタビュー記事について紹介していました。ただ、その話の前に新しく、"市場規模700億円 同人誌業界はなぜ拡大してきたのか?"を追加しています。

冒頭に追記
2017/06/07追記:
●同人誌業界市場規模700億円 同人誌業界はなぜ拡大してきたのか?
2022/07/06追記:
●とらのあな大量閉店!リアル店舗が消えてネット販売だけになる? 【NEW】



●同人誌業界市場規模700億円 同人誌業界はなぜ拡大してきたのか?

2017/06/07追記:同人誌市場については、年間約700億円という試算もされているそうです。これについて、同人誌即売会「コミティア」代表の中村公彦さんは、「本についてだけでなくコミュニケーションすべてを含んだ数字だと思います」として、同人誌だけではないのではないかという見方です。

 そして、いま、同人誌の世界は本だけではなく、同人誌という趣味趣向を包括した文化という感覚になっているとの指摘。コスプレやニコニコ動画、イラスト投稿SNSのpixiv(ピクシブ)などでのコミュニケーションもすべて含めて、一つの世界になっている感じです。

 <インターネットと通信販売の普及は人を現実世界の娯楽に向かわせなくなったと言われている>と、記事では書いていました。上記のうち、ニコニコ動画やピクシブなどはネット上の話です。ただし、これらはコミュニケーションというのがポイントのサービスで。そして、リアルでのコミュニケーションというのも求められているというのがわかるのが、当時、コミックマーケットの来場者数は、毎回、過去最高を更新し3日間でのべ50万人を超えていたという話でした。

 「コミティア」の中村公彦代表も、即売会への参加者は増え続けていること、同人誌即売会は全国で毎週末開催されており、年間通算で2000イベントに及ぶことを指摘。さらに、「インターネットが手軽になりツールがどれだけ発達しても、人は生身のコミュニケーションを求めずにはいられないのでしょう」としていました。
(同人誌の市場規模は700億円 ネットと通販の活用で成長持続 NEWSポストセブン / 2014年2月2日 7時0分より)

 以上の話を読んで、ITが発達することで、対面で情報交換することによって得られるような知識・ノウハウの重要性が、逆に増すことを指摘した記事を紹介した過去投稿地域活性化を促進するとされるITの発展、実は地方の過疎化の原因だったの話を思い出します。ネットが発達するからリアルが衰退する…というわけではなさそうな感じです。


●とらのあな大量閉店!リアル店舗が消えてネット販売だけになる?

2022/07/06追記:同人誌業界拡大…という話だったのに、とらのあな大量閉店…という話を見かけました。気になったので記事を検索してみると、とらのあな大量閉店 創業の地・秋葉原から撤退:オンラインにシフト - ITmedia ビジネスオンライン(2022年07月05日)という記事がヒット。「リアルだけ衰退」という感じなんでしょうか…。

<虎の穴(千代田区)は、同人ショップ「とらのあな」5店舗を8月31日に閉店する。同社は直営店舗の集約を進めていて、今回の閉店もその一環とみられる。創業の地であり、中心的な役割を果たしてきた秋葉原では、イラスト展が開催可能なギャラリー型店舗の出展を準備していくとともに、再出店の協議を続けるとしている。
 閉店の対象店舗は、秋葉原店A、新宿店、千葉店、なんば店、梅田店の5店舗。同様に、昨年から再出店を検討していた名古屋店の出店も断念する。池袋店Bは女性向同人誌を中心に継続するとしている>

 依然として同人誌市場は発展しているようで、2022年度(21年7月~22年6月)の(おそらく虎の穴社の)流通総額は、過去最高の300億円を突破する見通し。ただし、主力の女性向け同人誌は97%を通販が占めている…という偏った状態。オンライン需要の方が非常に大きいみたいですね。

 こうしたECサイトの普及などオンライン需要の高まりを受け、虎の穴は事業構造転換を宣言し、直営店舗事業の縮小と、通販・Webサービスへの転換を進めている最中だといいます。ただ、直営店としての販売は縮小するものの、2019年から進めてきたin shop事業は継続するといいます。

 記事では、in shop事業の説明がありませんでしたが、おそらく別の小売店の内部に出店するショップインショップのことでしょう。どうもこの形で2022年7月、8月、9月には富山県、愛知県、静岡県には新規出店を予定しているようで、単純にリアル店舗が消えてオンラインに移行する…ということでもないようでした。 


●ニッチ市場でのナンバーワン企業「虎の穴」

2013/7/13:私が読んだとらのあなの記事というのは、ダイヤモンド・オンラインの秋葉原で初めてコミック・同人誌の専門店を開店し、爆発的な支持を得る(2013年4月25日 坂上仁志)というもの。

 この記事は、「ニッチトップ=小さくてもNo.1」の会社を紹介する連載の一つ。株式会社虎の穴については、"クリエイターが個人で製作する漫画、ゲームなど同人誌と呼ばれる商品の販売、流通で圧倒的な規模を持つ"と紹介しています。そして、"年間7万5000タイトルもの同人誌を販売し、北海道から福岡まで全国各地に21店舗を展開する同社の吉田博高社長に、No.1の秘訣を聞いた"とあります。

 とらのあなの主力事業は漫画、ゲーム、アニメなどと同人誌。この当時、違法ダウンロード刑罰化とアニメアイコン・二次創作など自公ら児童ポルノ禁止法改定案提出 漫画アニメ規制に繋がる内容を書いており、結構危うい業界だと感じました。また、TPP関連での著作権の扱いについても、将来、影響を受ける可能性があります。


●コミックとらのあな 男性マニア層だけでなく、女性、ライト層が拡大

 とりあえず、このときは急拡大中でした。吉田博高社長は、「過去3年の売り上げは、182億円、188億円、203億円です。売上のうち約30%、50億~60億円ほどがウェブの通信販売です。現在、対前年比で毎年約110%の成長」としていました。

 おもしろかったのが、客層の話。男性マニア層だけでなく、女性、ライト層と幅が広がっていました。一部の店舗では、女性比率がたいへん多く、男性中心とは言えないほどだそうです。

「最も主要な層は、アニメ、ゲーム、漫画などが全て好きないわゆるマニアックな方々です。年配の方が多いですが、小学生のような若い方もいます。ところが、最近では秋葉原に観光に来た方が記念に購入する、初音ミクというキャラクターだけが好きでグッズを購入する、というような20代のそこまでマニアックでないライト層が非常に増えています。
 また女性の方も多く、40%~45%が女性ですね。JR秋葉原駅から徒歩5分のところにある、とらのあな秋葉原店Bは、女性用に作られた店舗です」

 ライト層が増加のきっかけは、"2000年前後に「新世紀エヴァンゲリオン」というアニメが大ヒットしたころから、漫画やアニメが認められていきました"と説明されていました。

「それまでは、一般の方々に良いイメージがありませんでしたね。『漫画なんて読んでいると頭が悪くなるぞ』と、私もよく言われていましたから。
 そして、2004年頃『電車男』という書籍がブームになり、一般層に広がっていきました。同時期に、音楽においてインディーズバンドがメジャーデビューするように、同人からスタートした多くのクリエイターの方が成功し、活躍したことも大きいと思います」

 ずっと後に書いたのに先に投稿したアマゾンの電子書籍、小説・漫画のセルフ出版(KDP)のインパクトだと、今後アマゾンの電子書籍が漫画にも門戸を開くと、さらなる市場拡大の起爆剤になるのでは?という話もありました。

 まあ、そうなると、とらのあなを通さない流通が増えるって話ですが…。

2017/06/07追記:セルフ出版の電子書籍は全然影響なかった感じです。全く話題を聞きません。


●過去になかったお店を作ったらバカ売れ

 この後、創業の頃の話がありました。当時と比べると今は隔世の感があります。

「もう17年以上前になるんですが、同人誌を制作しているクリエイターの自宅におじゃました時、山のように積みあがった段ボールを見たんですね。四畳半の部屋の3分の1が埋め尽くされているほど。その段ボールの中見はすべて、彼が制作した同人誌でした。
 彼は同人誌をつくることが目的で、販売に関することをあまり考えていなかった。また、当時は我々のように同人誌を取り扱う店舗は無かったので、基本的にはコミックマーケットなどのイベントでしか、販売することができなかった。夏に制作して売れ残った作品は、冬まで部屋に置いておくことになる。それでも売れ残ってしまったら、部屋に残されていく。そうした結果が、山のような段ボールでした。
 そこで彼らの作品を集め、販売しようと考えたのが、とらのあなの始まりです。彼から同人誌を預かり、同じような状況にあるクリエイターを紹介してもらい、作品を集めました。そして、秋葉原にある販売面積が10畳くらいの小さな店舗を借り、スタートしました」

 当時の秋葉原は「ただの電気街」。そうすると需要もなさそうなものですが、"漫画やアニメ好きの人たちの間で話題になり、開店して30分もたたないうちに、店内が人で埋ま"ったと言います。売れ残り作品を集めたにも関わらず、"作品も次々に売れ、用意していた作品の半分が開店から3日間で売れてしま"ったというから、すごい売れ行きでした!

 そうやって順調に拡大を続けてきたわけですけど、途中で書いたように政治の動きがきな臭く、日本のマンガ文化に大きな影響を与える可能性があります。

 たぶん今回の件が収まってもまたほとぼりが覚めるとまた蒸し返して…と繰り返すと思われますので、とらのあなも危ない橋を渡り続けるのではないかと思います。


【本文中でリンクした投稿】
  ■違法ダウンロード刑罰化とアニメアイコン・二次創作など
  ■自公ら児童ポルノ禁止法改定案提出 漫画アニメ規制に繋がる内容
  ■地域活性化を促進するとされるITの発展、実は地方の過疎化の原因だった
  ■アマゾンの電子書籍、小説・漫画のセルフ出版(KDP)のインパクト

【その他関連投稿】
  ■ある漫画家が出版社から離れ電子書籍を選んだ理由 ごとう隼平(銀塩少年)
  ■鳥山明13年ぶり新連載「銀河パトロール ジャコ」の期待はどう?
  ■その他の文化・芸術・宗教・海外との比較などについて書いた記事

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