何度も書いていますけど、自民党内の路線対立について。
アベノミクス成長戦略に深刻な路線対立 安倍首相が目指す資本主義の形とは
磯山 友幸 2013年6月21日(金) 日経ビジネスオンライン
「日本の経済政策がこれほど注目されたことはなかった」。英・北アイルランドで開かれたG8サミット(主要国首脳会議)を終えた安倍晋三首相は誇らしげに語った。共同宣言で「日本の成長は大胆な金融政策や民間投資を喚起する戦略などによって支えられる」と明記され、安倍首相が進める経済政策、いわゆるアベノミクスに各国の“お墨付き”を得たからだ。日本がデフレから脱却し、成長することが世界経済にもプラスになるということが主要国間で改めて確認されたわけだ。安倍首相は「日本が再び世界の中心に戻ってきたことを示せた」とまで述べていた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130619/249892/?mlt ただ、「日本の経済政策がこれほど注目されたことはなかった」はかなりの誇張があります。
以前も安倍政権では日米首脳会談でも似たような話がありました。日本ではアメリカで好評価されたという雰囲気でしたが、実際のアメリカでの扱いはさんざんだった……という。
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アメリカの反応 安倍晋三首相の日米首脳会談と「ジャパン・イズ・バック」 安倍政権にマスコミは気を使いすぎですね。
今回のG8サミットの嘘というのは、これです。
【G8サミット】日本紙の論点は、アベノミクスとシリア内戦 | NewSphere(ニュースフィア)
イギリス・北アイルランドで17~18日、G8サミットが開かれた。主な議題は世界経済、貿易協定、多国籍企業の租税回避問題、シリアや北朝鮮への対応などだった。最後に発表された「首脳宣言」では、これらについての協調・行動の必要性が説かれている。特に日本に対しては、安倍内閣の経済政策に一定の評価を下したものの、財政再建への取り組みを促してもいる。
日本各紙(読売・毎日・産経)は、それぞれの視点からG8サミットを振り返っている。なお、海外紙の論点は、シリア内戦と「税逃れ」問題だった。
http://newsphere.jp/contrast-editorials/20130619_edit/ 日本のことだから日本で話しているというだけで、各国の関心は別の話でした。
最初の記事に戻って、今回のメインの話。
実はG8で安倍首相がアベノミクスの説明をするに当たって、水面下で深刻な路線対立があった。それは、アベノミクスが「どんな資本主義を目指すのか」という基本的な方向性についてである。
アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」の取りまとめが行われていた5月下旬。取りまとめの責任者である甘利明・経済再生相はこんな指示を出していた。
「政府では市場原理主義ではなく『瑞穂の国の資本主義』を総理がサミットでスピーチする予定です。株主万能でない多様なステークホルダーの利益に資する資本主義です。マネーゲームの短期の投資でなくイノベーションを喚起する中長期の投資を呼び込む為に、株主資本主義からステークホルダー資本主義にする提案です」
つまり、日本は市場機能に委ねる自由主義型資本主義ではなく、多用な利害関係者の利益を守る日本型の資本主義を目指す、としていたのだ。結論は、多用な関係者の利害調整を国が担うということになる。いわば国家資本主義的な発想である。
国家社会主義と国家資本主義の違い 国家主義や全体主義との関係もを参考にどうぞ。
私は自由主義的なものが好きみたいなので、この手のやり方は大嫌いです。
アベノミクスの矛盾 竹中平蔵・菅義偉VS麻生太郎・甘利明・飯島勲 小さな政府派と積極財政派では、小さな政府派と積極財政派と書きましたけど、別のところでは学者系VS官僚派とも書いています。
この記事でも、上記の甘利明経済再生相の"考え方を支えていたのは経済産業省の官僚たち"と書いています。
彼らは当然のことながら、市場機能を敵視する。自由な競争を許せば、日本人の貴重な財産が外国人に乗っ取られる、というのがお決まりの批判パターン。「瑞穂の国の資本主義」を成長戦略の主軸に据えようという動きが強まった5月中旬に、米投資ファンドと西武鉄道の経営陣が経営権を巡って激しく対立していたことと無縁ではないだろう。
日本や中国の十八番である国家資本主義的な発想です。
一方の反対勢力は学者+民間といった感じです。
成長戦略を決めた産業競争力会議(議長・安倍首相)には、こうした国家資本主義とは相容れない一派がいた。竹中平蔵氏を最右翼とする「構造改革派」である。民間議員の三木谷浩史・楽天会長兼社長や新浪剛史・ローソン社長などは構造改革路線を強く支持していた。日本は今でも国による規制にがんじがらめの社会主義的な経済体制だという見方に立ち、これを規制改革などによって自由化することで成長は実現できる、という基本姿勢を持つ。経産官僚たちが志向する国家資本主義的な経済体制を打破し、自由主義型の資本主義に変えていくことこそ大事だという主張だ。前者の国家資本主義派からは常に「市場原理主義」「新自由主義」とレッテルを貼られてきた。
では、安倍晋三首相はどちらを支持するのでしょう?
実は、「瑞穂の国の資本主義」という言葉は、安倍首相が言い出したものだ。今年1月20日に出版された安倍首相の著書『
新しい国へ
』(文春新書)に登場する。第1次安倍内閣当時の1996年に安倍氏が出した『美しい国へ』に「増補」として「新しい国へ」という章が加えられている。そこに「瑞穂の国の資本主義」という言葉が登場する。
「私は瑞穂の国には、瑞穂の国にふさわしい資本主義があるのだろうと思っています。自由な競争と開かれた経済を重視しつつ、しかし、ウォール街から世間を席巻した、強欲を原動力とするような資本主義ではなく、道義を重んじ、真の豊かさを知る、瑞穂の国には瑞穂の国にふさわしい市場主義の形があります」
そして、美しい棚田を例に引き、「労働生産性も低く、経済合理性からすればナンセンスかもしれません。しかし、その田園風景があってこそ、麗しい日本
ではないかと思います」と述べているのだ。
しかし、一方でこうも書いているそうです。
では、安倍首相は、本当に国家資本主義的な経済体制を志向しているのだろうか。実は著書の瑞穂の国の資本主義の項は、こんな一文で締めくくられている。
「市場主義の中で、伝統、文化、地域が重んじられる、瑞穂の国にふさわしい経済のあり方を考えていきたいと思います」
つまり、市場主義を前提とする、と言っているのである。これは経産官僚たちの志向とは明らかに違う。
ただ、
アベノミクスの成長戦略不発は、官僚による規制改革骨抜きのせいで書いたように、安倍晋三首相は官僚に近いのではないかと思います。
竹中平蔵さんが「(国家資本主義を志向する)官僚たちの動きは確かにあったが、だいぶ押し戻すことができた」と語っていたり、三木谷浩史さんが官僚に猛反発したりと、学者・民間側も奮起しています。
しかし、そもそもそういった奮起せざるを得ない苦戦する状況=官僚に有利となる特殊な人選をしたのは安倍政権なのですから、これで市場主義重視、あるいはバランスを取ったとはとても言えないでしょう。
やはり安倍晋三首相の本意は、国家資本主義の方にあるんだと思われます。
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