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私物化、お家騒動、息子の世襲でも同族経営企業はメリット?


 <私物化、お家騒動、息子の世襲でも同族経営企業はメリット?>、<過半数以上で同族経営が多い日本企業は、他の国よりすごい?>、<しかし一番良い後継者は息子ではない…婿養子が最強だった!>などの話をやっています。


●私物化、お家騒動、息子の世襲でも同族経営企業はメリット?

2019/09/21:日経ビジネスで2019年6月に同族経営企業の特集がありました。連載タイトルをちらちらっと見ると、同族経営のデメリットではなく、「悪いと思われているけど実はこんなにいい!」という雰囲気で、主にメリットを強調している感じでした。

 この中からまず、上場企業の5割超 日本は「同族」大国:日経ビジネス電子版(中沢 康彦他 3名 日経ビジネス副編集長 2019年6月7日)という記事を。このタイトルは、とりあえず、日本では同族経営が多いというだけ。ただ、これもサブタイトルが「ファミリービジネスは古くない」というもの。本質は古いとか新しいとか流行りの問題じゃねーだろ!と思うのですけど、同族経営にポジティブそうなものでした。

 記事では最初に創業一族が会社を私物化し、従業員たちがそれをとがめらずに破綻した例を紹介しています。一族での富の独占、お家騒動、能力不足の息子の世襲という負のイメージがあることも記載していました。そして、これは専門知識がない一般人のイメージだけということでもありません。

 古くからの米国の学説でも、企業は成長する過程で所有と経営の分離が進み、トップも専門経営者に代わるなど非同族に進化するという考えが示されていました。この考えは近年まで根付き、所有と経営が分離しないままのファミリービジネスは古い統治形態とされていたそうです。


●同族経営はむしろ良かった?近年の研究では評価が逆転するものも

 あれ?同族経営は悪いって話なの?という感じですが、もちろんここで終わりではなく、ここから逆転していきます。「ファミリービジネスは古い統治形態とされていた」というところで含みがあったわけですけど、新しさ・古さの問題だけでなく、近年の研究では違う評価も出ているとされていました。

 米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院のジャスティン・クレイグ客員教授によると、S&P500のような米国を代表する企業で「ファミリービジネスは非ファミリーの業績を上回る」とのこと。多くの研究者も、収益性の高さを示すROE(自己資本利益率)や、企業の価値の評価の指標となるトービンのq、利益の伸び率といった項目で数ポイント優位に。米国だけでなく、欧州でも同様の結果が出ているそうです。

 メリットと見られているのは、四半期決算に踊らされずに長期の視点で経営できること。強いリーダーシップを発揮し、迅速に物事を判断しやすい環境にもあります。米ハーバードやスイスのIMDといった欧米の有力ビジネススクールも近年、ファミリービジネスの強さを学ぶ講座やコースを整えているそうです。


●過半数以上で同族経営が多い日本企業は、他の国よりすごい?

 日本経済大学大学院の後藤俊夫特任教授によると、日本の上場企業では特定ファミリーが上位株主か、もしくは取締役に名を連ねていることなどを基準とした場合、その割合は52.9%と過半数超え。日本では今でも多いんですね。ファミリー企業が全体に占める比率は中長期的に大きな変動がないといいます。

 ただ、ここらへんは本当なら他の国との比較が見たかったところ。仮に日本で同族経営企業が多かったとした場合、効果的だとされている日本企業がむしろ近年海外より苦戦しているのはなぜ?といった疑問が出てきます。成功している他の国の方が、同族経営企業が多いのでしょうか。

 なお、日本で最も成功している企業であり、ファミリー企業としても代表格に見えるトヨタは、どうもそれほど同族経営的ではないという意外の結果に。大株主のトップ10に豊田家の名前はなく、豊田章男社長の持ち株比率は0.14%ほど。とはいえ、前述の定義では、「取締役に名を連ねている」もあったので、こちらで一応ファミリー企業の定義に入りそうです。


●同族経営企業はメリットだらけ?利益率高くイノベーションに強い!

 ここまで読んだ時点で、因果関係を間違えているのではないか?という疑問が浮上。経営が悪化して同族経営社長が退陣…ということがよく起きますよね。そうなると、非同族経営だから業績が悪いのではなく、業績が悪い企業が非同族経営になりやすい…という順番が逆である可能性が出てきます。

 ところが、連載記事の一つ通説覆す効率経営 人にも「優しい」?:日経ビジネス電子版は、もっとストレートに同族経営は素晴らしいという感じのタイトルでした。効率的というのは資金的な面みたいですね。「ファミリービジネスはムダな資産を保有しない傾向にあるようだ」とされています。

 静岡県立大学の落合康裕准教授らが資産を有効活用して利益に結びつけているかを示すROA(総資産利益率)に着目して上場企業を調査したところ、2017年3月までの7期すべてでファミリービジネスが非ファミリーを上回りました。

 例えば、17年3月までの1年間に決算を迎えた企業では、ファミリービジネスは6.6%で、非ファミリーの5.4%を1.2ポイント上回っています。落合准教授らの調査によると、収益性の高さを示すROE(自己資本利益率)もファミリー優位だとのこと。私は前述の通り、因果関係を間違えている可能性について、説明がほしいと思うのですけど…。

 なお、慶応義塾大学の奥村昭博名誉教授はこれらについて、創業家が強いリーダーシップを持つため社内がまとまりやすく、社内の反発を招きやすくなかなか成果が出ない新たなチャレンジを成果を続けてイノベーションを起こしやすいからではないかと見ていました。


●同族経営企業は長期政権でリストラしない…これは良い判断?

 記事では個別事例の話も多数ありました。というか、そっちの方がメインで長々とページが割かれています。ただ、個別事例は信頼性で劣るために割愛。より興味あるのは、全体的な傾向です。先程の収益性の高さを示すROE(自己資本利益率)みたいなアプローチじゃないと証拠になり得ません。

 京都産業大学の沈政郁教授が1998年のアジア経済危機に当たり、日本の上場企業をファミリービジネスと非ファミリーに分けて財務指標の変化を調べたところ、ファミリービジネスは人件費を下げない代わりに設備投資を減らしています。これに比べ、非ファミリービジネスは設備を増やす一方、人件費を抑えていることがデータから裏付けられました。人に優しい経営って感じですね。

 同様の傾向は、2008年のリーマン・ショック後の財務指標の変化でも表れているといいます。沈教授は「設備への投資と比べると、人材への投資は成果が出るまでに時間がかかる。その分、ファミリービジネスは長期的な視点で経営をみているといえるだろう」と分析していました。

 ただ、倒産!会社を潰す社長5つの特徴 人情に弱くリストラ躊躇、高齢社長の企業もあまり儲からないといった話も過去にやっています。ここらへんの判断の優劣は、実際のところどうなっているんでしょうね。リストラが良いことかどうかというところが、そもそも定まっていないように見えます。

 あと、トップ交代は非ファミリーで4~6年が多いのに対し、ファミリービジネスは20~30年ぶりというケースもあるという話がありました。高齢で長期政権は社長が良い証拠?若手社長と比較してみた結果…でやったように、創業者であっても長期政権企業は業績で劣るという研究結果が出ており、ここらへんも矛盾しそうな感じです。


●しかし一番良い後継者は息子ではない…婿養子が最強だった!

 ファミリービジネスでは親子間の事業承継があると、世代交代が一気に進み、経営が若返ることがあり、こちらはメリットかもしれません。一方で、互いをよく知る血縁関係の親子はうまくいくと思いがちなのに、実際には婿養子を社長にした企業の業績が良好なことが、京都産業大学の沈政郁教授の研究で明らかになっているといいます。

 これはおもしろいですね。能力主義と血縁主義の間みたいなところです。婿養子なら、外部から適した人物を迎え入れることができます。無能な息子ではなく選ばれた能力を持って、なおかつ親族という威光を発揮して、強力なリーダーシップも取れるケースがあるとされていました。いいとこ取りな感じです。

 江戸時代の旗本は男子がいなければ他家の次男、三男を婿養子に招いて家を存続させたことを記事では挙げていました。これとはちょっと違いますが、幕末には武士以外から養子になった人の息子が活躍するといったケースも…。企業経営でも婿養子に継承させるケースは古くから知られ、沈教授は「伝統的な仕組みが、上場するファミリービジネスにも生きていることは興味深い」と話していました。

 婿養子のメリットとしては、婿養子は父と義理の息子という関係から一定の距離を保ちやすく、対立が深刻になりにくいとも言われているそうな。親子は関係が近い分、業務を巡る考えの違いが感情的なもつれを生み、解きほぐせなくなることがあるともされていました。壮絶な親子喧嘩ってよくありますものね。


【本文中でリンクした投稿】
  ■倒産!会社を潰す社長5つの特徴 人情に弱くリストラ躊躇、高齢社長の企業もあまり儲からない
  ■高齢で長期政権は社長が良い証拠?若手社長と比較してみた結果…

【関連投稿】
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