2013/7/17:
●大都市を中心に海外のバー、レストランで日本酒が並ぶ
●マスコミが盛り上げる「海外での日本酒ブーム」は幻想
●「エキゾチックな酒」は悪いイメージじゃない気がするが…
●日本酒の伝統を破壊…「世界のお酒」への変身はこれから
●日本の日本酒にライバルができるのが本物の日本酒ブーム
●大都市を中心に海外のバー、レストランで日本酒が並ぶ
2013/7/17:日本の飲み物の海外進出としては、
健康ブームで緑茶の輸出量が急増 日本茶が世界を獲る?といった話をやっています。今回は「日本酒」の話です。
永田公彦・Nagata Global Partners代表パートナーによると、10年ほど前から、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、パリなどの大都市を中心に、一部とはいえ高級バー、レストラン(フレンチやフュージョン系)、酒屋、スーパーマーケット等で日本酒を見かけるようになったといいます。
パリでは、クリヨン、リッツ、マンダリン、シャングリラ、ロイヤルモンソーなど最高級ホテルのバーカウンターに日本酒が並んでいました。日本に行ったことも住んだこともない外国人が、日本酒を飲み始めているといいます。
(
日本酒は「日本の酒」から「世界の酒」になれるか?(2013年6月4日)より)
●マスコミが盛り上げる「海外での日本酒ブーム」は幻想
こう聞くと、日本酒ブームが来ているかのように感じます。マスコミは実際そう報道しているようです。ただ、まだ"世界の酒に向けて一歩を踏み出した初期段階"だと説明されていました。日本のマスコミは反日で日本の悪いことばかり報道すると言われていますが、逆のパターンのようです。
こうした報道の中には、たとえば「ニューヨークで試飲会を企画し大盛況!」「パリで日本酒に関するセミナーを開催し会場は満員御礼!」等、そもそも日本酒のプロモーションをせざるを得ない関係機関(国・自治体・業界団体等)が、自らの活動の正当化を目的に発信しているのでは?と疑いたくなるような情報も多く含まれます。パリやニューヨークに何万件ものレストランがある中、取材場所は日本酒が置かれているごく少数の店、インタビュー相手も「GINJO(吟醸)!」と言ってくれるような、ごく一部のレストラン関係者やお客さんがほとんどです。
こうした報道を見る限り、日本酒が海外でかなり浸透しているような錯覚に陥りそうですが、現実はそうではありません。はっきり言いますが、いまだに多くの国々の一般消費者にとって、日本酒は口にしたことのないエキゾチックな酒なのです。
●「エキゾチックな酒」は悪いイメージじゃない気がするが…
「エキゾチック」という印象それ自体は、そこまで悪いものではない気がします。ただ、記事では、それではいけないというスタンスですね。
在パリの日本酒仕掛人、宮川圭一郎さんは、「長年、フランスでの日本酒のイメージは、悪かった。また、その傾向は今でも残っている」と指摘していました。
宮川さんによると、食も含めた日本文化への関心が世界的に見ても高いフランスの人々ですら、その多くが「SAKE」というと、いまだに「CHAUD(お燗)か FROID(冷や)で、オチョコについで飲む、エキゾチック(異国情緒)かつエロチック(色情的)、しかもアルコール度が強い酒」というイメージ。以下のような2つの理由があるそうです。
(1)80年代に開店しだした日本食レストランの多くが、長年フランス人客に対し、「CHAUD(お燗)? FROID(冷や)?」と尋ね、とっくりとオチョコで日本酒をサービスしていた。このサービスの仕方が、現在パリ都市圏に約1500件ある日本食レストランの9割を占めるともいわれる旧中華レストランに浸透。
(2)フランス全国にくまなく林立する中華レストランの多くが、中国の酒であるアルコール分38度の「白酒」を「SAKE」と称し、底に女性のヌードが浮かび上がるオチョコについで食後酒として出している。
●日本酒の伝統を破壊…「世界のお酒」への変身はこれから
しかし、こういった日本っぽさ・東洋っぽさがある限り、日本のお酒からは抜け出せません。「それでいいよ」ってな方もいそうですが、「世界のお酒」になる、要するにもっと売り込むには別のやり方が必要だというのが、記事の趣旨でした。
宮川さんは、こうしたエキゾチックでエロチックな日本酒のイメージを払拭するために、日本酒業界が守ってきた固定観念に縛られることなく、フランス人の視点に立って日本酒の浸透を仕掛けています。日本酒の伝統をぶち壊しているわけです。
お客さんから「お燗が欲しい」と言われてもお燗は出しません。日本酒のボトルを手にとり、お客さんにラベルを見せ、銘柄や特徴を説明。ソムリエのアプローチを取っているのです。当然、とっくり、オチョコ、升も未使用。あくまで酒類を評価するための世界的スタンダードである、ワイングラスで飲んでもらうといいます。
●日本の日本酒にライバルができるのが本物の日本酒ブーム
これは、私がいつも言っている現地化・ローカライズという手法。ただ、これは日本文化を否定しているというわけではなく、前向きなもの。宮川さんなんかはむしろ「世界的に、今後5年間で日本酒の売り上げが急増するのは間違いない。フランスでは5倍にはなるだろう」と楽観的すぎるくらいのことをおっしゃっていました。
また、世界のお酒となると、ウイスキーの例のようなことが日本酒でも起こり得る、とされており、これがまた一部の日本人には気に食わないかもしれません。
ウィスキー発祥の地・英国では、地元の銘柄と日本のサントリーやニッカのウィスキーが激しく競合しているんだそうです。つまり、これと同じように、日本酒発祥の地である日本で、アメリカ、タイ、イタリアなどの現地醸造メーカーがつくる日本酒と、日本の醸造メーカーの製品が競合を繰り広げることになるだろうという話でした。
これは単なる「海外での日本酒ブーム」という話ではなく、不愉快に感じる人も多いでしょう。しかし、作者の永田公彦さんは、"このように、日本酒が、世界的に競合し切磋琢磨する市場環境が生まれて初めて、日本酒は「世界の酒」と認められるのでしょう"と、前向きに捉えていました。
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