子供の勉強に関する話をまとめ。<言わない方がいい「勉強しなさい」 逆効果でやる気下がる>、<褒められなかった子が現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは>、<「勉強頑張りなさい」も「子供のためを思って説教」もダメな理由>、<簡単にやる気を引き出せるのに…親も上司も逆にやる気を削ぐだけ>などをまとめています。
2022/10/06追記:
●両親がケンカばかりしている家庭の子…まずこの時点で問題がある 【NEW】
●褒められなかった子が現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは? 【NEW】
●「勉強頑張りなさい」も「子供のためを思って説教」もダメな理由 【NEW】
●簡単にやる気を引き出せるのに…親も上司も逆にやる気を削ぐだけ 【NEW】
『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』(犯罪心理学者・出口保行)


●言わない方がいい「勉強しなさい」 逆効果でやる気下がる
2013/7/17:<あなたの家は大丈夫? 「教育虐待」に陥らないために>(教育ジャーナリスト おおたとしまさ 2013/6/27 6:30 日経新聞 構成 日経キッズプラス)では、以下のような話がありました。私も「勉強しなさい」って言われて嫌だったなぁ…と、読んでいて思い出してきました。
<なかなか勉強しない子どもを見て、つい「テレビばかり見ていないで少しは勉強しなさい!」と怒鳴ってしまったことのある親は多いだろう。
それくらいならまだましだ。もっとエスカレートすると、「なんでそんな成績しか取れないの!」「お兄ちゃんのほうが良くできた!」「あなたにどれだけお金を掛けていると思っているの!」などと非難してしまう場合もあるかもしれない。「ここまでくるともはや言葉の暴力」と専門家は指摘する。昨今これを「教育虐待」と呼ぶことがある>
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2402A_U3A620C1000000/ じゃあ、「勉強しなさい」と言われなかったら勉強したか?と言うと、私の場合はやらなかった気がしますね。記事では、<一方で、先日面白い調査結果があった。東大生の多くは、子どものころ、「勉強しなさい」と言われた経験が少ないというのだ。「言われる前にやる子だったから」という理由も大きいとは思う>と書いていました。
「言われる前にやる子だったから」はそうですね、私もそう思います。あと、デキる子はそれほど嫌がらない、苦手だからこそやりたくないというのもあるでしょう。しかし、上記の部分に続いて、"それだけでは片付けられないものを感じるのだ"と作者のおおたとしまささんは書いていました。
<意外かもしれないが、東大合格者数ランキングでトップ10に名を連ねるような名門進学校に、頭ごなしに「勉強しなさい」と命じたり、おしりを叩いてまで勉強させたりするような学校は皆無である。そのような学校の教師たちは、意地でも「勉強しなさい」とは言わないようにしているのではないかとすら感じられる。
ある進学校の校長は「いつまでも教師が生徒を懐に抱えているようではだめ。ある時点で教師が生徒を手放し、生徒が自らの足で歩めるようにしてやらなければ、東大に合格させることはできない」と断言する。(中略)
人間の動機には大きく分けて2種類ある。「やらないと怒られるから勉強する」というような外的動機付けと、「自分の目標に近づきたいから勉強する」というような内的動機付けである。つまり、外的動機付けだけでは東大合格は果たせないと、多くの名門進学校の教師たちが口をそろえるのである。名門進学校ほど自由を標榜することが多いわけだ>
うちの高校は見事に「勉強しなさい」って言っていたので、上記を読んでいて笑っちゃいました。確かに東大に入る人は非常に少なかったんですけど、関係あるのか、ないのか…。とりあえず、この内的動機付けというのはたいへん難しいと思われます。どうするのかな?と思ったらこんな話がありました。
<先日、某有名進学校のOB講演会を見学した。世界を股にかけて活躍する先輩の話に生徒たちは聞き入る。そして質疑応答の時間になると挙手がやまない。どうやったら自分も先輩のようになれるのか、知りたくてしょうがないという気合いが伝わってくる。その真剣さに、見学しているこちらまで感動して鳥肌が立った。
そのような機会を通して、子どもたちはおぼろげながら、将来なりたい自分の姿をイメージし始める>
なるほど、成功例を見せて自発的に……という形ですね。ただし、押し付けがましいものはダメでしょう。最初の例にあったような「あの子はあんなにできるんだよ」というやり方じゃ逆効果だと予想されます。
<なかなか勉強しない子どもを見てイライラする気持ちは、私も親としてよくわかる。自分のことは棚に上げ、いや、自戒の念を込めて言うのであれば、そういうときに親がすべきことは、やみくもに「勉強しなさい!」と怒鳴ることではなくて、「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」を語り合うことではないだろうか。そして子どもと語り合ううちに気付くだろう。「勉強しなさい!」と言っていた親自身が、「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」という問いに、ちゃんと答えられないということに。
まずはそこに気付くことから始めたい。そうすればむやみに「勉強しなさい!」と怒鳴ったり、「教育虐待」まがいの暴言をぶつけてしまったりすることは減らせるかもしれない。それだけではない。巷にいわれる「教育危機」や「学力低下」の問題も、もとをただせば、「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」という問いに大人自身が答えを見出せなくなっている結果と言えるかもしれない>
私もこれは小さい頃から感じていて、よく「なぜ勉強しなくちゃいけないのか?」を考えていました。一応私なりの「なぜ勉強しなくちゃいけないのか?」に対する回答は用意していたのですけど、それは勉強の動機付けになるほど強固なものではなかったので、結局一生懸命勉強することはなかったんですよね。
記事は上記で終わりでした。なので、親への自制がメインのような感じで、わかりやすい解決策は提示されていません。子どもに勉強をしてもらうってのは、結局、やっぱり難しいってことなんでしょう。
●両親がケンカばかりしている家庭の子…まずこの時点で問題がある
2022/10/06追記:個別事例をベースにした話は科学的根拠とはならないので注意が必要なのですが、<母親に「頑張りなさい」と言われ続けて育った男性が、現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは>(22/10/6(木) 6:12配信 文春オンライン)で出てきた話は、過去に紹介してきた様々な指摘と一致する内容でしたのであちこちに追記しています。
これは1万人の犯罪者を心理分析してきた犯罪心理学者・出口保行さんの著書
『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』から抜粋した宣伝記事だったようです。この「1万人の犯罪者を心理分析してきた犯罪心理学者」などといった宣伝文句も ニセ科学的なものでも使われるものなので、一般的には注意が必要ですけどね。
で、記事で出ていた事例の話。これは、ケンカばかりしていた両親が離婚した「ナオト」の事例です。父は営業成績が上がらず給与が低かったので、母親がしょっちゅうなじっていたそうです。「お父さんみたいになっちゃダメだからね」と繰り返し言われたともいいます。まず、この時点で問題ですね。両親が喧嘩する様子を子供に見せるというのはよくないと言われています。
<(引用者注:両親の離婚)以来、ナオトは落ち込むことが多くなった。もともと勉強も遊びも集中することがあまりない。(中略)「そんなんじゃお父さんみたいになるよ。あんなふうになったらおしまいよ」そう言って母親は「勉強頑張りなさい」と繰り返すのだった>
https://news.yahoo.co.jp/articles/2bd5b3114a744b7e44c64e9b1459de1ab814f813
●褒められなかった子が現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは?
しかし、小学6年生の担任はいい先生で、「ちょっとずつでいいんだよ」と努力を認めてくれます。努力が結果に結びつくとは限らないというのが現実の残酷さですが、このときは結果も出ました。どうしても2しかとれなかった国語が3になったのです。ところが、母親は、「3で喜んじゃいけない」「小学生のうちに国語ができるようになっておかないと中学で苦しむよ」とこの結果を褒めなかったのです。
<内心はほっとしているのだが、もっと頑張ってほしいという気持ちで厳しくあたるのだった。ナオトは心底がっかりした。頑張っても評価してもらえないんだと思い、それ以来コツコツ努力することをやめてしまった。
その後、高校はなんとか卒業したものの、何に対しても前向きな気持ちが起きない。先生に言われるままに機械メーカーに就職したが、3か月で離職。家にひきこもってゲームをする毎日だ。
母親は「だから勉強しろと言ってきたのに」「どうしようもないクズになった」などと叱責ばかりする>
記事は、<母親に「頑張りなさい」と言われ続けて育った男性が、現実逃避の末に手を染めてしまったモノとは>というタイトルでした。この手を染めてしまったモノとは「大麻」。ナオトは似たような状況の中学時代のゲーム仲間と再会して、「外国じゃ普通だし、副作用もないし。他はともかく、大麻は大丈夫」とハマってしまったそうです。
話がそれますが、これは当然大麻にハマるのは良くないこと…という理解のもとで使われています。「そりゃそうだろ」と思うかもしれませんが、たぶん大麻推進派の方はこれを読んでお怒りでしょう。彼らはまさに「外国じゃ普通だし、副作用もないし。他はともかく、大麻は大丈夫」という主張。むしろ大麻を解禁し、本当に危険な薬物に手を出させないようにすることで、日本は良くなるといいます。
●「勉強頑張りなさい」も「子供のためを思って説教」もダメな理由
大麻の話はいいとして、犯罪心理学者・出口保行さんの解説です。「頑張って」は、一般的に応援の意味で使われる言葉ではあるものの、実際には「応援してもらっている」とは感じないどころか、否定的な言葉としてとらえられたことを指摘。父親に対する悪口とセットであったことも災いしたといいます。
<そもそもなぜ被害感や疎外感が強くなったかといえば、親子間における日ごろのコミュニケーションに問題があるわけです。ナオトの場合、父親のことはさておいても、「あなたのことを大事に思っている」ということが伝われば、また違った受け止め方をしたでしょう>
非行少年の親でも、別に暴言を吐いたこともないし、いい言葉をたくさん言っていると思っている人はいるとのこと。実際、自分はいい親だと思っている人も多いのでしょう。ただし、大事なのは親の思いではなく、子がどう受け止めているかが大事だとの指摘。「子供のためだから」という親の言い分を認めてはいけないんでしょうね。
<たとえば親が子どもに対して説教をしているとき。話していることは非の打ちどころのない正論かもしれません。丁寧な言葉を使っているかもしれません。しかし、親からすれば「いいことを言った」と思っていても、子どもからすると「何もわかってない」と思うことはよくあるわけです。
少年鑑別所での面会の様子などを見ていると、それが如実(にょじつ)にわかります。「親はいいことを言っているが、子どもはまったく信用していないな」と思います。
そういう親は「頑張れって応援してきたのに、うちの子は全然こたえようとしなかった」と言います。子どもは応援だと受け止められなかったのです。同じ言葉でも、受け止め方は同じではありません。180度違うことだってあるのです。そこに気づかなければなりません>
●簡単にやる気を引き出せるのに…親も上司も逆にやる気を削ぐだけ
上記はビジネスの上司先輩でもあるあるだな~と思いました。すると、その次にさらに「ビジネスと同じ」という話が出てきてびっくり。<意欲=やる気は自分の内側から出てくるもので、他者が植えつけることはできません。ただ、意欲を促すことはできます。心理学ではこれを「動機づけ」といいます>という指摘でした。
<小学校の担任の先生は、ナオトの努力を褒めて勉強への意欲を促進することができていました。ところが、母親は褒めるどころか逆のことをしました。内心はほっとしているのに、「これくらいで満足するな」「もっと頑張れ」とたきつけるのです。これではせっかく芽生えたやる気もそがれてしまうというもの>
もともとやる気がないわけではなく、行動しても結果が出ないことを何度も経験するうちに、やる気を失い行動しない状態を「学習性無力感」と言うとのこと。心理学者マーティン・セリグマンが1967年に提唱した概念で、これは実験的な裏付けがあるものです。こういう研究の話があるのは良い書籍ですね。以下のような実験の話が載っていました。
<犬を2つのグループに分け、どちらも電気ショックが流れる部屋に入れました。Aグループは、スイッチを押せば電気ショックを止めることができます。Bグループは何をしても止めることができません。
これを経験したあとに、両グループを低い壁で囲まれた部屋に入れました。この部屋にはやはり電気ショックが流れるのですが、壁を飛び越えればそれを避けることができます。Aグループの犬は壁を飛び越えて電気ショックから逃れることができました。しかし、Bグループの犬は、壁を飛び越えれば逃げられるにもかかわらず、そのまま電気ショックの部屋にい続けました。
つまり、自分が何をしても電気ショックを止められないと学習した犬は、逃げられる環境になっても行動しなかったわけです。「何をしてもムダだ」とあきらめてしまったのです>
学習性無力感は自由な環境でこそ起こるといいます。結果が出ないことを繰り返したせいであきらめてしまうのです。学習性無力感に陥らないためには、いわゆるプロセスを褒めること。結果がどうであれ「やってみよう」と思ったこと、そして少しでも行動に移したことを褒めるのです。これはよく言われています。
<本人は頑張っているつもりだけれど、やる気がないように見えることもあります。(中略)そういう子に対して「やる気出せ」「頑張れ」と言っても逆効果です。「うるせぇ!」と、反抗し努力をやめてしまうでしょう。(中略)
「別に何もやる気ない。努力なんかしたってムダだし」と冷めた態度の非行少年に対しても、ちょっとした行動を見つけてプロセスを褒めるうちにバーッと喋(しゃべ)るようになるということがよくあります。
(中略)少年鑑別所にいる、ひねくれ度MAXのような非行少年でさえ素直に戻るのですから。やる気がなさそうだったり反抗的だったりするからといって、親やまわりの大人がすぐにあきらめるようではいけません>
『 犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 』(犯罪心理学者・出口保行)


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