ハリー・ポッターで売れに売れたJ・K・ローリングさんが、別のペンネームであるロバート・ガルブレイス名義で書いていた探偵小説は、全く売れていなかったという話。ところが、スクープで正体がバレた途端に、いきなりトップに躍り出たそうです。(2013/7/18)
2017/12/09追記:女性名だと男の子に読まれないはず…で決まったペンネーム
2018/05/27追記:ハリー・ポッターも出版までは苦労…断られまくっていた
●ハリポタJ・K・ローリング、変名ロバート・ガルブレイスだと売れていなかった
2013/7/18:ハリーポッターが終わった後に、今度は推理小説をやりたいって話はしていた気がするJ・K・ローリングさん。実は既にロバート・ガルブレイスという変名で、小説を書いていたようです。
…ところが、これが1500部止まりと、全然売れていませんでした。新聞などの書評ではベタ褒めだったらしいんですけどね。
作者が「ハリポタ」著者と分かった瞬間に 売れない小説がアマゾン1位に急浮上 2013/7/17 18:22 J-CAST
新人作家ロバート・ガルブレイス氏による探偵小説「The Cuckoo's calling」は、戦争で片足を失い精神的にもすさんだ元軍人の私設探偵コーモラン・ストライクが、ロンドンを舞台にスーパーモデル自殺の謎を追う筋書きだ。2013年4月に刊行され、デビュー作ながら英語圏の各紙で「すばらしい作品で、次回作が待ちきれない。コーモラン・ストライクがあまりにも魅力的で、これがデビュー小説とは信じがたいほどだ」「最初に犯罪小説にハマッた時の気持ちを思い出した」などと好意的な書評が掲載された。
「著者略歴」によると、ガルブレイス氏は数年間ロイヤル・ミリタリー・ポリス(RMP)に従軍した後、RMPのいわゆる背広組・特別捜査部(SIB)に転属、捜査官としてキャリアを積んだ。2003年に軍を辞してからは、民間のセキュリティー産業に身をおいていた。主人公のキャラクターは自分自身や軍の友人が民間に戻った後の体験を元にしている、という。
http://www.j-cast.com/2013/07/17179581.html?p=all
●ロバート・ガルブレイスの略歴は完全なでっち上げ?
上記のロバート・ガルブレイスの略歴というのは嘘なんでしょうね。J・K・ローリングさん自身の経歴は、Wikipediaではこんな感じでした。
本人は文学方面に進みたかったが、両親の希望でエクセター大学でフランス語を学び、パリ留学も経験した。(中略)卒業後は、ロンドンのアムネスティ・インターナショナルで秘書として働いたが、仕事にはあまり興味を見出せなかった。
(中略)1991年に、ポルトガルの英語教師としての職を得、ポルト在住中の1992年に結婚。翌年一女ジェシカが生まれたが、夫との不和のため離婚し、1993年末にジェシカを連れて一文無しで帰国し、妹が住むエディンバラに落ち着いた。高校のフランス語教師になる道もあったが、二度とない機会かもしれないと考え、小説を書くことに集中した。小説が売れる前のエディンバラでの生活は、離婚後の生活苦と貧困でうつ病になり、「自殺も考えた」ことがあると英北部エディンバラ大学の学生誌に明かした。この時の経験が、ハリー・ポッターシリーズに登場するディメンターのもととなった。
娘の存在に支えられながら数ヶ月をかけてうつ病を完治させ、貧しいシングルマザーとして生活保護を受けながら『ハリー・ポッターシリーズ』第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』を執筆した。
Wikipedia
●イギリスの新聞がスクープで正体露見
「1500部しか売れていなかった」ということで、売れない作家だったロバート・ガルブレイスさんですが、事件が起きます。イギリスの保守系高級紙タイムズの日曜版であるサンデー・タイムズ紙が、ガルブレイス氏の正体は「ハリー・ポッター」シリーズの作者JK・ローリング氏であると特定して、報じたのです。
これは、"オックスフォード大学教授の解析によりわかった"とされていました。解析でわかったってどういうことですかね? 文章スタイルから判別みたいな話でしょうか?
これはよくわからなかったのですが、とりあえず、ローリングさん本人も取材に対して変名の使用を認め「もう少し秘密のままにしておきたかった」「ロバートであることはとても自由な体験でした」などと話したそうです。
●ネームバリューで売るのが結局一番楽だった
これにより、ロバート・ガルブレイスさんをめぐる状況が一変します。突然、Amazonの売り上げランキングで順位を5000位以上あげ首位に躍り出たのです。電子版でも同様で、「iTunes Book chart」のトップに。あまりにも売れすぎたため米アマゾンでは品切れ、入荷まで1週間から3週間かかる状態となりました。
英BBCによると、14日のある1時間で、アマゾンでの「The cuckoo's calling」の売り上げは、50万7000%も伸びていたとのことで、わけのわからない数字になっています。
イギリスではどうだか知りませんが、新人でもいきなり話題になる方はいます。そこらへんは売り方の問題もあるのかもしれません。ただ、そういった努力よりは、「やっぱりネームバリューで売るってのが一番効くんだ」ということを示す象徴的な話でした。
●女性名だと男の子に読まれないはず…で決まったペンネーム
2017/12/09追記:今
Wikipediaを読むと、サンデー・タイムズが調査を始めた理由は、"初めて書いたにしては出来が良すぎるのではないかと疑問を抱いた"ためだとされていました。
あと、全体に修正したときに削除したのですが、当初"「ロバート・ガルブレイス」は男性って設定なのかな?"と書いていたのもWikipediaで確認が取れました。男性のペンネームであることは間違いないようです。
このときにも書いていたのですが、実は「J・K・ローリング」と名前をイニシャルにしたのも、「著者が女性であることを男性の読者に隠すため」だったといいます。
ハリー・ポッターの出版社が、「この本を男の子にも女の子にもアピールしたい」としてそれに賛同すると、「じゃあ、(作家名を)イニシャルにしていい?」と聞かれて了承。ファーストネームのジョアン、ミドルネームは持っていなかったため祖母のキャスリーン名前をとり、「J.K.ローリング」というペンネームが誕生したという経緯です。
ただし、ハリー・ポッターがヒットすると、すぐに作者が女性であることはバレてしまいました。そして、それでもヒットし続けたのですから、結果的には作者が女性であることはあまり問題ではなかったかもしれません。
(
J.K.ローリング、名前をイニシャルにした経緯を明かす | cinemacafe.net 2017.7.11 Tue 19:45より)
ローリングさんは、「正直に言うと、名前を“ルパート”にしろと言われていても、きっとそうしていたでしょうね」とこだわりはない様子でした。ただ、
女性は男性より低評価な上に不正時は厳罰の傾向 男性の不正が倍以上なのに…などで書いた女性への偏見のことを思い出させる、ちょっと悲しいエピソードかもしれません。
●ハリー・ポッターも出版までは苦労…断られまくっていた
2018/05/27追記:そういえば、ハリー・ポッターも最初から順調だったわけではありませんでした。1995年、完成した原稿を代理事務所に送ったところ、そっけない断りの手紙とともに送り返されています。そこで、2軒目のクリストファー・リトル著作権代理事務所で契約したのですけど、この後も苦難が待っていました。
原稿は12の出版社に提出されたものの、あまりに長編であっために、出版する会社は現れず。最終的に新人による子供向け書籍の出版に取り組んでいたブルームズベリー出版社が出版することとなったのは、他と違う点があったからかもしれません。
ここでは、受け取った原稿を、編集者が自分で読む前に8歳の子供アリス・ニュートンに手渡して反応を見たのです。すると、1時間後に部屋から出てきたアリスは、「パパ、これは他のどんなものよりもずっと素敵だ」と話したため、契約することができました。
この反応でわかるように、出版されてからはやっと順調に。派手な宣伝を行う予算はなく、米国の出版権に入札できないほどだったそうですけど、発売されてから3日後、米国の出版権をめぐるオークションではどんどん値がつり上がっていき10万ドルで落札。『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の出版から6日後、児童書として初となる英国のベストセラーリストの1位を飾るなど、世界的ベストセラーとなりました。
(
J・K・ローリング - Wikipediaより)
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