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レディオヘッドのトム・ヨーク、スポティファイ批判で楽曲提供停止


★2012/2/3 スポティファイのビジネスモデルの収益性と違法コピー撲滅効果
★2013/7/21 レディオヘッドのトム・ヨーク、スポティファイ批判で楽曲提供停止
★2015/7/5 音楽の値段が無料だなんてあり得ない アップルなどの配信に批判
★2012/1/31 スポティファイとアップルiTunesのサービスの決定的な違い


★2012/2/3 スポティファイのビジネスモデルの収益性と違法コピー撲滅効果

 以前数記事読んだもので使っていなかったもの。今日はスポティファイのビジネスモデルの収益性と違法コピー撲滅効果に絞った内容です。

 まず、収益性。「さよならスポティファイ」で違法コピーが再び氾濫?音楽配信の無料サービス“半減”に不満続出(要登録 日経ビジネスオンライン大竹 剛 2011年4月27日)には、無料で聞ける時間が20時間から半分の10時間に減ったことを伝えた記事です。

 その中で、

 スポティファイは、この無料サービスを戦略上重視してきた。まずは無料でサービスを体験してもらえば、徐々に有料会員へと誘導できると期待していたからだ。しかし、多くのユーザーは無料サービスを使い続けている。

 というものがありました。

 しかし、多くの方が勘違いされていると思うものの、有料ユーザーは必ずしも多ければ良いというものではありません。

 と言うのも無料にしているのは客集めのためであり、興味が僅かな人にも興味を持ってもらい有料ユーザー獲得の機会をできる限り増やしたいからです。

 ですから、一見良いように見える有料ユーザーが100%に近いサービスというのは、実は「無料なら使いたい」というユーザーを集めることに失敗しているわけで、収益を最大化できていないと言えます。

 もちろん少なすぎてもダメなのは当然ですから、そのサービスごとに異なる最適な割合を目指すというのが正解です。


2/7追記:ちょっと論理が不十分かな?と思って、無料をやめる場合を追加します。

 無料サービスの負担が大きすぎる場合は、このモデルは向きません。サーバ代が高すぎる、スポティファイのケースだと著作権の支払いが大きすぎるといった場合です。

 これはそもそもコストが低くて済むサービスにしか使えない方法であり、リアルの世界ではなかなかお目にかかれないやり方です。

(試供品提供などは近い概念かな?回収方法が全然違いますが、無料提供して他で稼ぐやり方だと携帯電話などがあります。有料席の他に無料席がある見世物というのが、リアルの例では一番適切でしょうか?ただし、客席は無限でなく有限ですので、すべて有料にする方が儲かります。やはりスポティファイの概念とは少し異なるでしょう)

 あと、スポティファイスタイルをしていても、途中から無料をなくす場合があります。これは純粋に採算が合わなかった、最初は宣伝期間と位置づけていた、有料であることでプレミアム感を出すためなどを考えてみました。

 無料のものを何かうさんくさいと疑ってかかる人も多いですから、最後の理由は結構大事な気がします。


 さて、記事にあるスポティファイの場合ですが、

スポティファイ側としては、広告収入だけで著作権料の支払いを賄うことは難しく、依然として大きな赤字を垂れ流していると見られている。スポティファイは、楽曲データをユーザーがコピーできないクラウド型サービスである。

 とありますので、先に出てきた無料と有料のユーザーの割合が最適でないのか、もしくはそもそもビジネスモデルに無理があったかです。


 ただ、このサービス自体は間違いなく魅力的であり、ユーザーが強く求めているサービスであることは明らかだと言えそうです。

 これは以前のものを読んでいただければわかるのですが、前回も引用したものを少しだけ再度紹介します。

 プレミアム会員である記者自身の感覚に照らせば、確かに月間9.99ポンドは安くはない。それでも、パソコンだけではなく、iPhone(以前はノキアのスマートフォン)でもスポティファイを使いたいから、プレミアム会員を続けてきた。必ずしもヘビーユーザーではないため、クレジットカードの請求書を見て、「あぁ、今月はあまり使わなかったな」と少し悔しい思いをすることもある。

 ただ、確かに音楽を聞く時には非常に便利だ。「iTunesキラー」と呼ばれるだけあり、実際、パソコンやiPhoneでアップルのiTunesをほとんど使わなくなってしまった。その最大の理由は、スポティファイでは、iTunesのようにCDから音楽を取り込むという面倒な作業をしなくて済むことと、ダウンロードする場合も「1曲いくら」と気にすることなく、少しでも気になった曲を気楽に検索して聞けるようになったことだ。

 日々の使い方を振り返ると、通勤やランニングの時には、iPhoneにインストールしたスポティファイで音楽を聞いている。自宅では、そのiPhone をオーディオ機器に接続し、スポティファイで音楽を流している。「CDを買うほど興味はないが、もう1~2回聞いてみたい」、「テレビで最近よく見かけるあのアーチストは、ほかにどんな曲を歌っているのだろうか」と気になった時など、ふとしたきっかけであれこれ曲を検索して楽しんでいる。


 ところで、このスポティファイは「違法コピー撲滅効果」も強調されているようです。

スポティファイは、楽曲データをユーザーがコピーできないクラウド型サービスである。同社はこの点を強調し、広告収入に支えられた合法の無料サービスが普及すれば、不法コピーの撲滅にも効果があるとして、レコード会社を説得してきた経緯がある。

 ということで、スポティファイ自身もこの点を強調していました。

 また、ユーザーのコメントからも、以下のとおりそれを察することができます。

 「さようなら、スポティファイ。知り合えてよかった。また違法音楽コピーの世界に戻ることにするよ」
 「文句を言うのはやめろよ。タダで何でもゲットできるわけじゃないんだから」

 4月14日、欧州でクラウド型音楽配信サービスとして注目を集めてきた「スポティファイ」が、サービス内容の変更を発表した。それに対し、ユーザーの間で論争が巻き起こっている。ダニエル・エクCEO(最高経営責任者)が同社のブログに掲載した発表文には、6日間で約6000件(この記事の執筆時点)のコメントが寄せられた。その中身は賛否両論で、冒頭のコメントは発表直後に掲載されたものだ。

 だが、同社サイトに寄せられているコメントには、サービス内容変更に否定的な意見が多いように見える。その多くは、「無料だから使っていた」というものだ。現在も、インターネットには非合法に無料で音楽を楽しめる手段が氾濫している。こうした状況で、ユーザーに月額料金を払ってもらう音楽配信の事業モデルは、同社が当初想定した以上にハードルが高いのかもしれない。


 同様の指摘はポティファイとフェイスブックが提携してアップル社に対抗!?~クラウド型音楽サービスの近未来は?(2011年5月27日 ITmedia 山口哲一)にも見えます。

 この作者は「私は音楽プロデューサーとして、また日本音楽制作者連盟の理事としても、新しい時代の音楽ビジネスとなるクラウド型のストリーミングサービスを推進していきたいと思っています」と宣言していますが、違法コピーに関しては以下のように書いています。

●違法配信サイトやYouTubeでの音楽試聴に対抗できる

  音楽が、デジタルデータになってしまった時点で、違法配信を完全に無くすことは原理的に不可能です。音質は劣化せず、コピーも容易です。「わざわざ違法配信を使う必要が無い」サービスを提供するのが、一番の対抗策です。スポティファイは、違法配信サイト対策に効果を示しています。

  YouTubeでの利用も同様です。YouTubeそのものは、違法ではありませんが、音楽の権利者に対する報酬システムは不十分です。現実には検索すれば、多くの曲が聴けてしまいます。(後略)

 「わざわざ違法配信を使う必要が無い」とありましたが、違法コピーより極めて便利かつ簡単な合法サービスがあれば、ライトなユーザーはそちらを選びます。

 パソコンに詳しくてかつ無制限に無料で聞きたいという人の違法行為は防げないので、完全な撲滅とは行きませんけど、被害額を抑えるという効果があるというのは理にかなっています。


 上記の記事は作者が音楽プロデューサーであるゆえか、他にも優れた指摘があり、クラウド型の音楽ストリーミングサービスが広まることによる変化とメリットを以下のように挙げています。

 ●ユーザーに、変化に応じた音楽を楽しむ環境が提供できる

  スマートフォンやタブレットを持ち歩く人が増えて、ネットへの常時接続が当たり前になると、音楽の楽しみ方も変わります。音楽ファイルをダウンロードして「所有」する意味は無くなります。むしろ、ローカル(自分の所有のPCやスマートフォン)に、重いデータを持たされるのは、クラウド時代にはネガティブな行為です。

CD等のパッケージは、アーティストとのコミュニケーションの証し=「記念品」として、少なくとも日本では、かなりの期間で存続すると思います。

ダウンロードして音楽ファイルとしての所有は、二次創作に使う場合や特殊なデバイス向け(スマフォ以外の普通の携帯電話も含む)で再生するという特殊な用途に限定されていくでしょう。

普通に楽曲を聴いて楽しむという行為は、欲しい音楽がいつでも好きなだけ聴けるという「アクセスする権利を持つ」=クラウド型ストリーミングというサービスが主流になると思われます。


●新しい収益源とPR方法が期待できる

   スポティファイの月会費は欧州で1200 円です。(中略)日本でも、KDDIが同様のサービスを始めていますが、この月額会費でのクラウド型ストリーミングサービスが広がれば、レコード会社やアーティスト(事務所)等の権利者は、新たな収益源として期待できます。

(中略)

  また、スポティファイがFACEBOOKと緊密な関係を取り、本格的な提携も噂されるように、ソーシャルメディアと連携したサービスになれば、プレイリストの共有など、ユーザー相互のレコメンドの広がりなど、プロモーションについて、新たな手法が生まれることでしょう。アップルは既にPingでソーシャル的な動きを始めてます。


●楽曲権利者に再生回数に応じた透明な分配が可能

私は、今後の音楽業界は、原盤ビジネスをクラウド型ストリーミングサービスを中心に再構築すべきだと考えています。サービスでは楽曲の再生データが詳細に手に入りますの「聴かれた回数に応じて売上を分ける」ことが可能になります。この分野はJRC(ジャパンライツクリアランス)のノウハウが先行している印象ですが、JASRACやCPRA等、権利者団体もデジタル時代の徴収分配への準備は進んでいます。透明性の高い分配は、ユーザーからの支持を得るためにも必須です。

また、売れた枚数に応じての分配よりも、聴かれた回数の方が、ユーザーの支持が金銭に反映されていますせんか?(引用者注:ママ。「反映されていると思いませんか?」という問いかけか?)作品をつくった者としては、こちらの方が嬉しいですし、オリコンのシングルチャートよりもスポティファイの再生回数チャートの方が音楽の価値評価の指標としても、より正しい気がします。(後略)

 JASRACは非常に不公平感の強い配分だと言われますし、特に最後の指摘はおもしろいと思いました。


 こう考えると、本当スポティファイ型の音楽クラウドサービスは画期的ですね。

 まずユーザー側には、主に最初の方の記事で書いた「いつでも、どこでも」や、前回記事で書いた接する音楽の幅を広げる音楽ライフスタイルの大きな変化。

 そして、音楽の提供側であるレコード会社や楽曲権利者にとっても、新たな収益スタイルやユーザーとの接し方を提示されるわけです。


★2013/7/21 レディオヘッドのトム・ヨーク、スポティファイ批判で楽曲提供停止

 久々にスポティファイの話。
トム・ヨーク、「これでは新人アーティストが食っていけない」とスポティファイから音源を引き上げる (2013/07/16) | 洋楽 ニュース | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト

トム・ヨークは自身のソロ作品とアトムス・フォー・ピースとしての作品をすべてスポティファイのストリーミング・サーヴィスから引き上げ、その理由として「このビジネス・モデルでは新人アーティストはロクな報酬を貰えない」ことを挙げている。

トムとアトムス・フォー・ピースのバンド・メンバーでレディオヘッドのプロデューサーとしても有名なナイジェル・ゴドリッチはツイッターでスポティファイ批判を繰り返していて、ナイジェルは現時点ではスポティファイにとっても採算がきちんと取れる体制にはなっていないが、いずれ資産価値が出るモデルを今作り上げることだけがスポティファイには重要なことであって、「その間、弱小レーベルや新人アーティストは経営も活動もままならない状況を強いられるわけで、これはどう考えても間違っているよ」とツイッターで指摘している。さらにナイジェルは次のように続けている。

「ストリーミング・サーヴィスはカタログにはうまくいくんだよ。でも、新人アーティストを支えていく業態にはならないんだ。スポティファイはそのことを明らかにして、新譜リリースについてはビジネス・モデルを変更する必要があるし、そうしないっていうんだったら、新進の音楽プロデューサーは全員足踏みして異議表明するべきだよ。これには新しい音楽を育てる力はまるでないから」
http://ro69.jp/news/detail/85329

 確かにスポティファイだけで食っていこうというのは、現状かなり無理があります。
スポティファイでは無料サーヴィスの他にも契約有料サーヴィスも提供しているが、ストリーミングによる収入があまりにも少額なため、CDやダウンロードなどの音源の販売と較べてとても活動を継続していく糧にならないと不満をこぼすアーティストが多いと『ザ・ガーディアン』紙は伝えている。

 また、彼らはこれは自分たちのためではないと強調しています。
スポティファイの広報はトム・ヨークの作品を鑑賞したければ、自分たちとは違って著作権を無視した音源が平気でアップロードされているユーチューブを観ればいくらでも聴けるはずだとも指摘している。

その一方でナイジェルはこの問題の論点は、自分やレディオヘッドのように過去に充分稼いできたアーティストにとっての収入をどう確保するかということにあるのではないと反論している。
「音楽業界そのものが勝手口から乗っ取られたようなものなんだよ。今ここで新しい音楽プロデューサーや新しいアーティストが公平に稼げるように僕たちがなんとかしないと、このアートそのものが損なわれることになるんだ。勘違いしないでほしいんだけど、今こうやって音楽作品の届け方をがんじがらめにしようとしてるのは、これまでもずっと業界に巣食ってきたような奴らなんだからね」

するとトムが次のようなツイートで応じている。
「勘違いしないでほしいんだけど、スポティファイであなたが聴く新しいアーティストにはお金が入らないから。だけど、スポティファイの株主の連中はがっぽり儲けるから。それだけ簡単なことだよ」

さらにトムは「そういうあなたのちんけなどうでもいい反抗がファンを傷つけているのです……あなたのやっていることは大海の一滴くらいの意味しかありません」という反論に次のように応えている。「いいえ、違います。ぼくたちは自分たちの仲間であるミュージシャンのために立ち上がっているだけの話だよ」。

さらにナイジェルは次のように説明している。
「新しいレコードを作るということには資金が必要なんだよ。中にはラップトップで作れる音楽もあるけど、中にはミュージシャンや技術の優れたエンジニアが必要な音楽もあるんだ。ピンク・フロイドの音楽カタログはこれまでに数十億ドル単位のお金を稼ぎ出してきたからはずだから(必ずしもそれが全部バンドのものになっているわけじゃないんだけどね)、今この段になってストリーミング・サイトで公開するのは至極理屈の通ることなんだよ。でもね、音楽リスナーが1973年の時点からスポティファイを聴いてたとしたら、あの『狂気』を作ることができていたかどうかだってわかったもんじゃないよ。きっとお金がなかったら、あんなアルバムは作れなかったはずだよ」

 ただし、これらが本当に新しいアーティストのためになるかは不明です。

 スポティファイの反論にあるように、スポティファイはもともと違法ダウンロード対抗を意識しているところがあります。

 たとえ大物ミュージシャンやレコード会社の抵抗により、スポティファイのようなサービスを潰せたとしても、新しいアーティストの収入に繋がるように収益を増やせるかどうかは不透明です。

 そもそも世界の音楽売上のピークは1999年であり、スポティファイの普及するはるか前から減少傾向です。(違法ダウンロードサービスによる影響の可能性は十分ですが、新しいサービスであるスポティファイへの攻撃材料にはなりません。参考:世界の音楽売上金額の推移 ピークは1999年、違法ダウンロードの影響?)


 また、検索してみると、レディオヘッドはウェブ上での無料ダウンロードを何度も行なっています。

レディオヘッドによるカバー20曲がダウンロード無料
ロケットニュース24

レディオヘッド、ニューヨークでの1995年6月のライヴ音源を無料ダウンロードで公開 (2013/07/01) | 洋楽 ニュース | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト
http://ro69.jp/news/detail/84523

レディオヘッドのハイチ救済ライブが無料ダウンロードできます - 中村明美の「ニューヨーク通信」 (2010/12/27) | ブログ | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト
http://ro69.jp/blog/nakamura/45689


 ただ、これは単なるダウンロード全般への批判ではなく、スポティファイのような豊富な楽曲を用意した便利なサービスだからという意味かもしれません。

 また、最初の引用部では"新譜リリースについてはビジネス・モデルを変更する必要がある"としていますので、新譜でなければ構わないという主張のような気もします。

 しかし、そうなると新譜と旧譜・カバー・ライブ音源での違いによって、どのようにスポティファイとそれ以外のサービスにおける売上構造に変化が起きるかを明らかにしなくてはいけなくなります。

 たぶんこれを数字を用いて論理的に説明するというのは、かなりキツイんじゃないかなぁ……。(大学の研究対象にしてもらえると、ありがたいんですけどね)


 いずれにせよ、途中で述べたように音楽業界の売上は以前から減少傾向であり、新人アーティストにとっての受難の時代が続くのは明らかです。

 デジタル化がこういった流れをより加速している可能性というのもまた否定できないところなのですが、一方でデジタル化は今までなら日の目を見ることのなかったアマチュアに、以前よりも多くの人に音楽を聞いてもらう機会を与えました。(「以前よりも多くの人」であり、大スターになるという意味ではありません)

 ここらへんは何度か書いているように、音楽に限らず文章や漫画など様々な分野で見られる共通の傾向です。(私の文章なんかもネットがなけりゃ、これほど多くの人に読まれることはなかったでしょう)

 全体の傾向による部分とスポティファイの影響による部分をよく整理して見極めなくては結論を間違えかねませんけど、これはかなり至難の業だと思います。

 今後もスポティファイのようなビジネスモデルは、話題と批判の的となりそうで目が離せませんし、大学のようなところでも積極的に研究を進めていってほしいと思います。


★2015/7/5 ネット 音楽の値段が無料だなんてあり得ない アップルなどの配信に批判

 後で引用する日経新聞では、"音楽産業では、ハードとサービスを組み合わせて流通を握るアップルのモデルは古くなった"としていました。

 何年も前から言われていた気がしますが、6月30日からそのアップルもやっとスポティファイなどと同じ定額制の音楽配信サービス「Apple Music」を開始したようです。


●人気アーティストがアップルへの音楽提供拒否

 ところが、これ、初っ端からコケたのです。
音楽はタダじゃない:日経ビジネスオンライン 2015年7月1日(水)

 Apple Musicの概要をアップルが発表したのは、6月8日に開催した開発者向けイベント「WWDC」。6月30日のサービス開始後、3カ月間は無料でサービスを提供するとしたが、その間、レーベルに対して楽曲の使用料を支払わない方針を掲げていた。

 これに対し、人気アーティストのテイラー・スウィフトが異議を唱える。アップルの方針は、「ショックで残念、革新的な企業らしくない」とし、最新アルバム「1989」をApple Musicには提供しないと自身のブログで発表したのだ。

 若者から圧倒的な支持を得ているアーティストの「直訴」を受けて、アップルは3カ月の無料期間中もアーティストへの対価を支払うと、方針の変更を迫られた。

●アップル音楽帝国、崩壊か?

 この騒動については、日経新聞が今まで強引にわがままを通してきたアップルの凋落を示す出来事ではないかと書いていました。
T・スウィフト氏の反乱騒動、アップル音楽帝国に陰り 2015/7/1 6:30 日本経済新聞 電子版(シリコンバレー=兼松雄一郎)

 音楽のネット配信で圧倒的なシェアを誇り、イベントでも参加アーティストに対価を支払わないことで有名なアップルの姿勢に変化が見られる。アップルの隙をつきコンテンツ業界の逆襲が始まりつつある。

 日経新聞は、今回が"例外的なケースではなく、アップルの流通への支配力が薄れている象徴といえそうだ"としていました。

 理由は?と見ると、スポティファイなど先行するストリーミング配信業者より、音楽会社の取り分が多いことを挙げていました。スポティファイなどと比べて、交渉力が低いようです。アップルらしくありません。


●使い勝手の悪いアップルのサービス

 さらに日経新聞は、サービスとしてもスポティファイに劣ると書いていました。私はアップルのブランド力はまだまだ健在だと思うので、かなりシェアを取るのでは?と思いますけどね。
 スポティファイの広告付きの無料ストリーミング配信は個別曲まで選んで聴け、簡単に保存してお気に入りのリストにできる上、広告も30分ごとにはさまれるだけだ。過去に聞いた曲の評価やお気に入りに登録した曲をふまえて曲を薦めてくれる機能、友人と簡単に音楽を共有する機能など、アップルがどちらかといえば苦手とする部分の使い勝手の良さが人気を呼んでいる。

●欧米では音楽が値段を見直す動き?

 ここで最初の記事に戻りますが、アップルにノーを言ったテイラー・スウィフトさんは、昨年、スポティファイにも、アルバムを提供しないことを決めています。背景に「音楽は無料ではない」という主張があるようです。

 無料ユーザーがいるから音楽が無料というのは短絡的だと私は思いますが、"音楽配信で先行する欧米では、「音楽の価格」を見直す大きな動きが生まれている"と記事では書いていました。

 ただ、実例らしき話の紹介はなし。"利用者が購入した音楽のデータを勝手にアップロードする"グルーヴシャークというサービスが訴訟によって閉鎖された、という話があるだけ。これは以前からスポティファイなどの「無料」とは全然違う「無料」ですので、例になりません。


●スポティファイはむしろアーティストの利益に?

 一方、日経新聞では、むしろスポティファイが音楽業界に利益をもたらしていることを強調するような書き方でした。
 音楽会社側の苦しい懐事情も流通先の多様化を後押しした。収益性の高いCDなどの物理メディアの販売は落ち込み、2014年にはついにデジタル販売と拮抗するまでになった。IFPI(国際レコード・ビデオ制作者連盟)によれば直近5年間でレコード会社の収入は17%、アーティストの収入は6%減った。

 一回の再生ごとに0.5セント程度の印税しか入らず、もうけの少ない無料配信にも音楽業界が曲の提供を認めているのは、ダウンロード並みの収益が期待できる有料サービスへの長期的な移行に期待しているからだ。

 スポティファイは収益の約9割を定額の利用料収入から得ている。スポティファイは今年の1~3月だけで音楽業界に3億ドルの印税収入をもたらしたと公表している。有料会員は直近約1年で倍の2千万人以上になった。利用者全体に占める割合自体は4分の1強でここ数年はあまり変わっていないが、利用者全体の増加に応じて増え続けている。CD販売の絶頂期の2000年頃の米国の音楽市場の規模に比べれば15分の1程度にすぎないが、それでも現状のCD販売市場の2割弱に相当する。スポティファイは既に無視できない規模まで成長している。

●音楽市場の縮小は止められない、新たな収益源の開発は必須

 レコード会社の収入やアーティストの収入が減っているのはスポティファイのせいだと思うかもしれませんが、これらの低下傾向はスポティファイ登場以前からです。

 新聞社なんかも勘違いしているところがありますが、黙って指をくわえて見ているだけだと、ただ収益が減っていくだけです。市場の構造自体が変化しているのに、批判しているだけで売上が回復すると思ったら大間違いでしょう。

 新聞市場の縮小の場合、ネット上の無料情報の存在が関係していますが、音楽の世界でも違法アップロード以外での無料配信というケースが多くなっています。

 たとえば、日本では「CDはほとんど買わないけど動画で歌っている人や曲を作っている人なら好き」という若い人が多くなってきているようです。やはりレコード会社の収益を小さくする変化です。

 ネット上の違法ファイルが音楽市場の縮小を招いた可能性は高いものの、スポティファイはそれらと違い、直接的に収益を得ることができます。

 アーティスト側およびレコード会社側がより有利になるような価格交渉をするのは良いですし、むしろそうするべきなんですが、極端な対応はどうでしょう? 市場がこれからも縮小するのでしょうから、たとえ莫大な利益ではなかったとしても、新たな収益源を育てていく試みは非常に大事だと思いますけどね。




★2012/1/31 スポティファイとアップルiTunesのサービスの決定的な違い

 以前も書いたスポティファイに関してですが、まとめて数記事読んでみました。前は記事がすごく古かったり、新しかったりで時期がバラバラだったので、今回はまず経緯的なところを順番に見ていきます。

 最初は2011年4月27日の「さよならスポティファイ」で違法コピーが再び氾濫?音楽配信の無料サービス“半減”に不満続出(要登録 日経ビジネスオンライン大竹 剛)から。この時点では、スポティファイはまだアメリカ進出を果たしていません。

同社は1年以上も前から米国でのサービス立ち上げを準備してきた。だが、世界最大の音楽市場であり、アップルのお膝元でもある米国では、4大レコード会社すべての賛同を得られずサービス開始が遅れている。

 米ウォールストリート・ジャーナルによれば、スポティファイは米国でのサービス立ち上げに向けて、既にソニー・ミュージックやEMIグループとライセンス契約を交わしたほか、ユニバーサル・ミュージック・グループとの契約締結も近いという。だが、ワーナーミュージック・グループとの契約交渉はさらに時間がかかっているようだ。

 背景には、米音楽業界の無料サービスに対する根強い抵抗感があると見られる。英ガーディアン紙は、今回、スポティファイが欧州でサービス内容を変更したのは、無料配信を望まない米レコード会社から、米国でサービスを開始する許可を得るためだったと指摘した。


 加えて、記事ではAmazonのサービスについても触れており、注目のアップルやフェイスブックの動向に関する噂を載せています。

 米国ではアマゾンが今年3月、「アマゾン・クラウド・プレイヤー」というクラウド型の音楽サービスを開始した。スポティファイのような聞き放題のサービスではなく、アマゾンで購入したMP3の音楽をクラウドに蓄積し、パソコンやスマートフォンから聞けるようにするサービスだ。ユーザー自身が所有している音楽も、クラウドにアップロードできる。蓄積容量は5GBまで無料だ。アップルやグーグルも、クラウド型音楽配信サービスを計画していると言われている。

 スポティファイは米国でのサービス開始など事業拡大に備えて近々、フェイスブックなどにも投資しているロシアの投資会社デジタル・スカイ・テクノロジーズ(DST)などから1億ドル(約85億円)規模の資金調達をすると見られている。企業価値は10億ドルとされる。今後、スポティファイは米国で、アップルなどの大企業と共に、ビジネスモデルの優劣を巡って競い合うことになりそうだ。


 上の記事のちょうど1ヶ月後になる2011年5月27日のポティファイとフェイスブックが提携してアップル社に対抗!?~クラウド型音楽サービスの近未来は?(ITmedia 山口哲一)でも、同様にアップルとフェイスブックの情報を伝えていました。

 この数週間、アップル社が大手レコード会社との契約が同意されて、クラウド型のサービスを始めるとの記事が世間を賑わしています。まだサービスの詳細は不明ですが、ヨーロッパで先行しているスポティファイの現状を見ながら、クラウド型の"聴き放題"の音楽ストリーミングサービスについて、考えてみましょう。

(中略)

 アップル社がまもなく、スポティファイと似たようなサービスをアメリカで始めるのは、ほぼ間違いないでしょう。一時期、アップル社がスポティファイ社を買収という憶測記事もありましたが、独自サービスでいくようですね。以前買収した、Lalaがベースになるのでしょうか?

スポティファイがFACEBOOKと緊密な関係を取り、本格的な提携も噂されるように、ソーシャルメディアと連携したサービスになれば、プレイリストの共有など、ユーザー相互のレコメンドの広がりなど、プロモーションについて、新たな手法が生まれることでしょう。アップルは既にPingでソーシャル的な動きを始めてます。


 スポティファイはこの後夏にアメリカデビューを飾りますが、噂のあったフェイスブックとの提携も発表されます。

 2011/9/23のFacebook、公式にSpotifyの統合を発表(The Blog Herald Japan)では、下記のようにありました。

9月22日、フェイスブックの第四回F8 カンファレンスの壇上にスポティファイのCEO、ダニエル・エク氏が上がり、フェイスブックとの提携を発表(中略)

エク氏によると、ユーザーはフェイスブックに接続している間、音楽を楽しむ時間を増やし、幅広い楽曲の選択肢から曲を選んでいるようだ。(中略)

さらに、エク氏は、スポティファイでユーザーがより多くの曲を発見し、フェイスブックとの提携により、音楽を聴く習慣を拡大してほしいと述べていた


 アップルについては以前アップル、スポティファイ(spotify)の音楽クラウドサービス、日本では違法か合法か?で紹介したクラウド型サービス「iCloud」が始まっています。

 はっきりとした時期がわかりませんが、昨年の秋頃と思われます。

 日本では導入されていないサービスとして、下記が紹介れていました。

「iTunesイン・ザ・クラウド」……「iTunesストア」で購入した楽曲をクラウドを介してスマホやタブレット(多機能携帯端末)、パソコンなど異なる機器で共有できる。

「iTunesマッチ」……年間24.99ドルで、利用者が自分のCDから取り込んだ楽曲と「同じ曲」をiCloud上で利用できる。

 ただ、内容を見てわかる通り、スポティファイとはまだ異なっており、データかCDでの購入が必要です。


 この違いは極めて大きく、今年の記事である欧州発の音楽配信が米国上陸、月額固定の料金で人気急上昇(2012年1月17日 瀧口 範子:日経PC21 2012年1月号)にはこうありました。

 こうした月額固定制サービスの売り上げは、今後4年間で4倍にも拡大すると、調査会社のガートナーが予測するなど、注目の分野になっている。実際に使ってみると、やはり固定料金で何曲でも聴けるのは大きい。例えば、話題の新譜を片っ端から聴くといったことが、気兼ねなくできる。音楽の楽しみ方は確実に変わるだろう。

 先の「さよならスポティファイ」で違法コピーが再び氾濫?音楽配信の無料サービス“半減”に不満続出(要登録 日経ビジネスオンライン大竹 剛 2011年4月27日)の作者も、

 無料サービスでは、数曲ごとに30秒程度の広告が挿入される。広告は、パソコンにダウンロードした専用ソフトにも表示される。確かに、広告は煩わしい。

 それでも、多くのユーザーが無料サービスを使い続けるのはなぜか。それは、好きな曲を気軽に探して“プレーリスト”を作ったり、フェイスブックを介して友達とスポティファイ上で音楽を共有したりできるメリットの方が、広告の煩わしさを上回っているからだ。パソコンにダウンロードして使う専用ソフトの操作性は、米アップルの「アイチューンズ(iTunes)」と同等か、それを上回るほどシンプルで使い勝手が良く、それが“iTunes キラー”と呼ばれるゆえんでもあった。

 プレミアム会員である記者自身の感覚に照らせば、確かに月間9.99ポンドは安くはない。それでも、パソコンだけではなく、iPhone(以前はノキアのスマートフォン)でもスポティファイを使いたいから、プレミアム会員を続けてきた。必ずしもヘビーユーザーではないため、クレジットカードの請求書を見て、「あぁ、今月はあまり使わなかったな」と少し悔しい思いをすることもある。

 ただ、確かに音楽を聞く時には非常に便利だ。「iTunesキラー」と呼ばれるだけあり、実際、パソコンやiPhoneでアップルのiTunesをほとんど使わなくなってしまった。その最大の理由は、スポティファイでは、iTunesのようにCDから音楽を取り込むという面倒な作業をしなくて済むことと、ダウンロードする場合も「1曲いくら」と気にすることなく、少しでも気になった曲を気楽に検索して聞けるようになったことだ。

 日々の使い方を振り返ると、通勤やランニングの時には、iPhoneにインストールしたスポティファイで音楽を聞いている。自宅では、そのiPhone をオーディオ機器に接続し、スポティファイで音楽を流している。「CDを買うほど興味はないが、もう1~2回聞いてみたい」、「テレビで最近よく見かけるあのアーチストは、ほかにどんな曲を歌っているのだろうか」と気になった時など、ふとしたきっかけであれこれ曲を検索して楽しんでいる。

約1年間、実際に使い続けてみた感覚から言えば、スポティファイのようなクラウド型音楽配信サービスは、仮に広告に頼った無料サービスが失速したとしても、ユーザーにとってのメリットは先に挙げたように少なくない。普及のカギは、料金設定とサービス内容のバランスだ。

 とその魅力を語っています。

 既に紹介していたメリットとも重なりますが、あまり強調してこなかった「購入まで行かない音楽を気兼ねなく試すことができる」という点においても、スポティファイは音楽との新たな付き合い方を示したように思えます。


 関連
  ■世界の音楽売上金額の推移 ピークは1999年、違法ダウンロードの影響?
  ■利益が出ないスポティファイモデル YouTube(グーグル)が競合参入の報道
  ■スポティファイ・パンドラはアーティスト潰し?ストリーミングサービス普及による時代の転換
  ■スポティファイ(スポッティファイ)の使い勝手と日本進出の可能性
  ■ネット・コンピュータ・ハイテクについての投稿まとめ

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