数日前に
ゼロ戦設計者・「風立ちぬ」の堀越二郎 性格のわかるエピソードを書きましたが、これは特に宮崎駿監督を批判するつもりはありませんでした。
この投稿は主にファンの方に向けたものではなく、神聖化した堀越二郎さんではなく、等身大の堀越二郎さんを愛してあげるべきでは?という趣旨でした。
ところが、次の話は正直わからないです。
上の堀越二郎さんの件を書いたせいで、最初だけでも流し読みしようかな?と思ったインタビュー記事の冒頭が、いきなり以下の発言でした。
宮崎駿「時代が僕に追いついた」 「風立ちぬ」公開 :日本経済新聞
2013/7/27 3:30 聞き手は文化部・関原のり子
――新作では初めて実在の人物を主人公に据えた。奇想天外なファンタジーでも活劇でもなく、あくまでもリアルな世界だ。
「(前作の)『崖の上のポニョ』をやっている時には僕の方が先に行っているつもりだったのに、時代の方が追いついてきた。(今回の映画で描いた)関東大震災のシーンの絵コンテを書き上げた翌日に震災(東日本大震災)が起き、追いつかれたと実感した」
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO57782960W3A720C1000000/ これ、どういう意図の発言ですかね? 理解できません。
セットになっていたので、次の部分も関係するのかな?
「大量消費文明が終焉(しゅうえん)する第一歩なのかどうか、僕にはよく分からないが、今の世の中は緊張感に満ちていると思う。(かつて)堀越二郎と堀辰雄もこの先どうなるのか分からないということについて、どうもこれはまずいと意識しながら生きたに違いない。(堀越と堀が生きた時代と現代に)同時代性を感じた」
わからなんなぁと検索かけたら、ネット上ではやはり問題視されていました。
「震災起きて、時代に追いつかれた」 宮崎駿監督の発言でまた物議 : J-CASTニュース
2013/7/27 18:01
「従軍慰安婦」に関する発言などで度々話題になる宮崎駿監督(72)が、またしてもネットを騒がせている。
インタビューの中で、東日本大震災についての発言に目を付けられ、「これは酷い」「さすがにドン引き」などと批判されている。
(中略)発言がネットユーザーの目に留まり、「えええ 震災を自分が導き起こしたと言うのか?」「震災を持ち出して、時代が追い付いたは酷い物言いではないかなぁ」「さすがにこの発言にはドン引きっすわ…」「ジブリ作品は見る価値がなくなった」など、「不謹慎」ととらえた人から批判の声が上がった。
http://www.j-cast.com/2013/07/27180307.html?p=all 私の知りたかった擁護もありました。
一方、ネット上では、「これからの辛い時代を予期して描いていたら、とうとう震災も起こってしまった」「崩壊目前の近大(引用者注:近代の誤字?)社会に警鐘を鳴らそうと作品作ってたら社会の方がそれより早くえらいことになったから間に合わなかったと感じた」という意味で発言したのでは、という指摘も上がっている。
うーん、これはそれなりの説明になっているかな?
ただ、やっぱり元の発言の違和感は拭いきれませんね。
同様の発言はNHKでもあったそうです。
宮崎監督はNHKが13年7月15日に放送したインタビューでも、自身の作品と「時代」との関連についてこう語っている。
「時代を読むというか、今何がいるんだろうということを考えて映画を作ってきたが、だんだん追いつかれて、(大津波のシーンがある)ポニョを作った後すぐ3月11日が来て、風立ちぬを作ってたら時代に先を越されたような感じになって…」
こちらは関東大震災じゃなくて、ポニョの大津波の話ですね。
うーん、何かこちらを見ると「社会に警鐘」うんぬんの話はなくって、余計わけわからないですね。
むしろただの「災害を予想したぞ」自慢になっているような?
これだけだとあれなので、日経新聞のインタビューの続き。
――「アニメーションは子どものもの」という信念を持ち、当初はこの作品の映画化に難色を示していたそうだが。
「模型雑誌に連載していた漫画を映画にしろと(鈴木敏夫)プロデューサーに言われた時は、どうかしている。できるわけがないと思った。なぜなら、この漫画はあくまでも自分の道楽で描いていたものだったからだ。だが、分からないことに出会うのも子どもには必要という(スタッフの)言葉が映画化の後押しになった」
「自分自身もそういう経験をした。子どものころ、僕は毎週のように映画館に行っていた。今とは違って映画を選んでいくのではなく、そこで上映している映画を見に行くという感覚だった。『煙突の見える場所』(五所平之助監督)や『めし』(成瀬巳喜男監督)、小津安二郎監督の『お茶漬けの味』……。旅芸人が雨に降られて客が来ないとか、よく分からないけれど、生きるのも大変だなと思いながらトボトボと映画館から帰ってきた。(子供向けの)チャンバラよりも、こうした日本のモノクロ映画の方がはるかに深く今も心に残っている」
この内容は他でも読みました。ただ、現実は子どもが騒ぎ出すほど大不評で、「子連れお断り」とまでしている映画館も出てきたようです。
私は大人が教育論理を前面に出した押し付けがましい絵本などを無理やり読ませるというのはエゴだと思っており、昔から大嫌いです。子どもに好んで読まれる中で、自然と教える工夫を大人はすべきです。
『煙突の見える場所』や『めし』など宮崎駿監督がそうであったように、せめて子供が「分からない」と思いつつも最後まで見れるような作品であった方がいいでしょうね。
堀越二郎さんを調べたときに、検索候補に出てくる堀辰雄さんって誰?と思っていたら、その話も。
――もう一人のモデル、堀辰雄については。
「若いころに読んだが、実はピンとこなかった。古書店で見つけ、たまたま読み直した。繰り返し読むうちに『美しい村』『晩夏』はすばらしいと気づいた。堀辰雄は戦時中、(長野県軽井沢の)追分で過ごしていた。あの寒い追分の冬を過ごすとは、(病を得た)体のためという以上になんらかの覚悟があったのではないか。しかも戦争のせの字も一切書かず、干上がるのを覚悟して『大和路・信濃路』を書いた。そういうことがだんだん分かってきて、この人は線が細そうに見えて、ものすごく骨太で強い人だなと思った。この時代の人で1番自分に身近に感じられたのが堀越二郎と堀辰雄だった。堀越二郎の内面はおのずと堀辰雄になっていった」
このせいで堀越二郎さんの神聖化が起きちゃったんでしょうか?
――反戦主義でありながら、世界の戦記を読み、武器にも造詣が深い。鈴木プロデューサーは「矛盾の人」と監督を評している。
「武器や鎧(よろい)などそういうものに他人の3倍ぐらい興味がある。ただ飛行機マニアも戦車マニアも好きではない。例えば戦車に弾が当たるとどんな音がするのか、戦車に乗っている人と戦車を外から目の当たりにしている人とどちらが恐怖を感じるのか。僕はそういうことばかり気になっていた。確かに僕は矛盾に満ちているかもしれない。でも仕方がない。矛盾のない人間はたぶんつまらない人だ」
そうそう、宮崎駿さんはむしろ戦車みたいなの大好きだと思っていました。
私はファンタジーや古典ならいいのですが、戦車や軍の飛行機なんかは現代の戦争を思い起こさせるのでそれ自体好きじゃなく、この気持ちも理解できませんでした。
追加
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