TPPはご破算となりそうなのですが、TPPの交渉の過程で、自民党は日本を売るようなことをしていました。既に実施して取り返すことができないものもあります。郵政・アフラック提携なんかは、そういう残念な話でした。
ここではもう一つ、別の交渉下手の話を合わせています。
2013/7/29 郵政・アフラック提携、政府がTPPでアメリカ配慮 日本生命裏切られる
2013/4/18 アメリカとのTPP事前交渉 「自動車関税を早く撤廃」→韓国より遅く?
●2013/7/29 郵政・アフラック提携、政府がTPPでアメリカ配慮 日本生命裏切られる
国による民業圧迫という理由はわかるんですが、よりにもよってアフラックです。日本人を騙して稼いでいた
日本でボロ儲けのアフラックに金融庁が長期検査のアフラックです。
「TPPと絡ませるな。関係ない」という反論も出ていますが、あの自民党ベタベタの産経新聞ですらこう書かざるを得なかったようです。
日本郵政、米アフラックと提携拡大 TPP参加で米政府に配慮 - MSN産経ニュース 2013.7.25 01:38
日本郵政が、米保険大手アメリカンファミリー生命保険(アフラック)との提携を強化することが24日、分かった。現在、同社のがん保険は約1千の郵便局の窓口で販売しているが、直営の全郵便局約2万カ所で販売できるようにする。
日本が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に正式参加したタイミングでの提携強化は、かんぽ生命保険の事業拡大に反対してきた米政府に配慮した格好だ。 アフラックは平成26年秋をめどに、日本郵政グループ専用のがん保険を供給する方針。週内にも基本合意し、両社トップが記者会見して発表する。
日本の保険市場をめぐっては、「日本には非関税障壁がある」とする米政府の圧力で、がんや医療、介護などの「第3分野」に関し、12年末まで、外資系と中小保険会社にだけ参入が許された経緯がある。このため、アフラックのがん保険のシェアは現在でも7割超に上っている。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130725/fnc13072501420000-n1.htm ただ、産経新聞らしく最後はフォロー。
これに対し、国が株式を保有する日本郵政傘下のかんぽ生命が第3分野への参入など事業拡大を目指したことから、米政府が反発。日本のTPP参加をめぐる日米の2国間協議の焦点の一つになり、すでに日本は、かんぽ生命の新規事業参入の認可を事実上凍結していた。日本にとっては、日本郵政がアフラックとの提携で先手を打つことで、米政府の批判を封じることになる。
「日本郵政がアフラックとの提携で先手を打つことで、米政府の批判を封じることになる」ですって。
しかし、これは都合よく捉えているだけという可能性があります。
米保険大手と提携しても郵政問題は残る :日本経済新聞 2013/7/28付
日本郵政と米保険大手のアメリカンファミリー生命保険(アフラック)が、がん保険事業で提携を深めることで合意した。潜在的な敵対関係にあった両社が手を結んだことで、米国が問題提起した国営企業のあり方をめぐる懸案が解消されるとの見方があるが、問題の本質は別のところにある。
米政府は日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に際して、日本市場への懸念として保険分野を挙げていた。国営企業である日本郵政が新たな保険事業に参入すれば、公平な競争条件が確保できないという主張である。(中略)
競争力がある他社の商品を窓口で販売することで、郵便ネットワークの価値を高める判断は、株式上場を目指す日本郵政の経営戦略として合理的である。将来的に確実に減る郵便事業に頼らず、販売代行の手数料を稼げるからだ。
国営か民営かにかかわらず、郵便が生き残る事業モデルは他に見当たらない。経営の観点からの提携判断は評価できる。だが今回の措置で米国を満足させたり、TPP交渉を後押ししたりする効果を期待するのは見当違いだ。
TPPで各国が取り組んでいる課題は、市場競争と国営企業のあり方である。中国やブラジルなど新興国では、国の信用や資金力を背景に巨大な国営企業が幅をきかせ、競争条件のひずみが目立っている。こうした「国家資本主義」に対抗するルールづくりが、TPPの重要な目標のひとつだ。
日本の保険分野での米国の懸念は、国営企業を規制する枠組みづくりから派生した局所的な問題にすぎない。アフラックはこの流れに乗って、日本郵政を批判してきたともいえる。提携を深めて個別企業としての不満は解消するかもしれないが、TPPで共有する問題意識と日本郵政の民営化問題の本質は変わらない。
目指すべきは公正な競争条件の確保である。郵便窓口でアフラック商品を優遇し、他の保険会社を排除するようなら、新たな問題となる。日本郵政が自前で保険の新規事業に進出したいなら、かんぽ生命を最終的に完全民営化する道筋を示すことが前提である。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57837260Y3A720C1PE8000/ とりあえず、産経新聞ですらそうであったように、日本はアメリカに屈したのだという見方が大勢を占めていました。
アメリカンファミリー生命保険(アフラック) / ワードBOX / 西日本新聞
郵政 米の壁崩せず 米保険大手と提携拡大 正式発表 上場控え現実的判断 TPPへ地ならし期待も
日本郵政と米保険大手アメリカンファミリー生命保険(アフラック)との提携拡大が26日、正式発表された。郵政傘下のかんぽ生命保険は独自のがん保険の開発・販売による経営のてこ入れを目指してきたが、同社の事業拡大に反対する米国の厚い壁は崩せなかった。環太平洋連携協定(TPP)交渉も絡み情勢は厳しく、日本郵政グループは株式上場に向け次善の策に望みを託した。
http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/word/7261/9779 当時の政権は民主党でしたが、TPP反対論の中には日本は交渉は下手なのでというものがありました。そういうところですね。
その前の自動車などの事前交渉もそうでしたが、本当に情けないです。ただ、これは国民が声を挙げないから悪いというのはあります。
それにしても、最初に書いたように、何でアフラックなのでしょう? ここはシェアは高いものの、不払いが異常に多く、たいへん顧客軽視の企業です。
これまで「かんぽ生命の業務拡大阻止」で共同歩調を取ってきた国内生命保険各社にとっては、今回の提携はアフラックに出し抜かれた形となる。がん保険でアフラックは日本市場の約7割の圧倒的シェアを握るが、全国2万の郵便局が販売窓口となり、さらに強大な存在となって立ちはだかる恐れがある。(中略)
対照的に、国内生保関係者の顔色はさえない。特に、日本生命保険は08年からかんぽ生命と提携関係にあり、共同で開発してきたがん保険もほぼ完成していたが、結局、お蔵入りになった。今回の提携拡大に、同社幹部は「いろんな思いはある」と複雑な表情をのぞかせた。
日本生命についは別のメディアも強調していました。
「適正な競争」はどこへ? かんぽ日生を裏切りアフラックと提携 税金と保険の情報サイト
2013年7月28日 02:00
両社の提携に対して、これまでがん保険などでかんぽ生命と提携してきた日本生命は、遺憾の意を表明した。
かんぽ生命については、今年4月、民間との適正な競争関係にないことを理由に、新規事業の凍結を麻生太郎財務・金融相から宣言されている。がん保険についても、数年間は新たな商品を認可しない、と言い渡された。
背景には保険分野をTPPの重要課題と考える米国への配慮がある。今回の提携で、アフラックが日本郵政の持つ巨大な販売網を利用できることになるが、日本生命など日本の民間保険会社との適正な競争関係は無視されている。
http://www.tax-hoken.com/news_aMjPY49P0I.html やりたい放題ですね。
●2013/4/18 アメリカとのTPP事前交渉 「自動車関税を早く撤廃」→韓国より遅く?
別のところでも使う予定ですので重なっちゃいますが、ここは主にTPPについてです。
2013年3月13日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授] ダイヤモンド・オンライン
日米首脳会談で得たTPPの「聖域」は本当に日本の「国益」にかなうものだったか
日米首脳会談において、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加は「聖域なき関税撤廃が前提ではない」と確認された。安倍首相は、日本から来たメディアを前に、日本語で会見を開き、その成果を誇った。「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活した」と力強く宣言したのだ。そして、日本のメディアは安倍外交を高く評価した。
だが、一方でなんとなく冷ややかな空気も流れた。例えば、安倍首相・オバマ大統領の共同記者会見がなかった。安倍首相の派手な単独会見は、日本国内向けに格好をつけて「外交失敗」を隠す、第一次政権時からの安倍首相の取り巻きの悪い癖が出たと思えなくもない。
コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授は、安倍首相が今回の訪米で、日米関係を再構築したとの認識は「全く真実ではない」という。安倍首相率いる自民党が2012年12月に民主党から政権を奪う前から、ずっと日米関係は十分に良好だったのであり、米政府関係者は野田前首相を評価しているというのだ。
これは、この連載で、米国が野田内閣を信頼して、普天間問題、TPP、エネルギー問題など、さまざまな外交交渉を実務的に進めていたと指摘したことと一致する(第35回を参照のこと)。安倍外交は、民主党政権がこれまで地ならししてきた成果を、派手なパフォーマンスで横取りしただけではないか。いや、むしろパフォーマンスによって、これまでの成果は減らしてしまってはいないだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/33209 野田首相は良い関係であって鳩山首相といっしょにしてはいけないとか、野田首相こそが良い関係だったという話は、海外からちょこちょこ指摘されています。
ただ、これは今回導入程度のあまり関係ない話で、問題は次の部分からです。
今回の日米首脳会談で、日本は安倍首相のタフな交渉によって、TPP交渉には「聖域」があるという言質を、バラク・オバマ米大統領から勝ち取った。だが、首相が誇るほど「大きな成果」だったわけではない。元々首脳会談前から、TPPに関して日本は優位な立場にあったからだ。
これは"米国側が「どうしても日本のTPP参加を必要としている」という状況なのだから"という前提の話のようです。
私はアメリカにしてみると「ルールを固めた上で日本を誘った方が交渉しなくていいから楽」という可能性も考えていたんですけど、日本抜きのTPPじゃ貿易額が小さいため全くおいしそうに見えないので、アメリカ国内を説得できないといった事情があるみたいです。
とりあえず、それが本当ならアメリカに弱みがあり、日本が有利な状況でした。
ところが、このような有利な状況を作ることができたにもかかわらず、日本はわざわざ「聖域」を交渉のテーブルに乗せてしまった。それは、米国にとって「飛んで火にいる夏の虫」だったのではないか。
日本のTPP参加に難色を示す自動車業界を抱える米国は、待っていましたとばかりに、自動車を「聖域」扱いにした。日米両政府は、米国が日本車にかけている輸入乗用車2.5%、トラック25%の関税を当面維持し、逆に簡単な手続きで米国車を日本が輸入できる仕組みを拡大することで大筋合意した。米国が「非関税障壁」だとして見直しを要求してきている日本の軽自動車への優遇税制も、今後の協議に委ねられることになったのだ。
これは、米国が自動車業界を守るのと引き換えに、日本はコメなどの農作物を「聖域」として守ろうという「戦略」だというかもしれない。だが、もし戦略だというなら、あまりに陳腐なものである。日本が最も強い国際競争力を持つ分野の1つである自動車について、米国市場での公平な競争条件の確保を放棄し、小規模で斜陽産業の農業を「国益」として守るのが、本当に戦略といえるのだろうか。安倍首相は「聖域」を得たと誇るが、実質的に得たものはなにもない。むしろ利益を得たのは米国だ。TPP参加を巡る日米交渉は、米国の完勝だったのではないだろうか。
自動車は2.5%だと大したことないのでは?と
TPP反対論 自動車関税・かんぽ生命、アメリカに事前交渉で屈服で書きましたけど、トラックの25%はでかいですね。これはもったいないかも。
あと、まあ、安倍晋三首相とはもともと合わない(世間では違う評価ですけど)のであれですが、石破茂さんもこういう発言。
経団連の米倉弘昌会長も自民党幹部と会談し、「景気回復を確実なものにするため、成長戦略を早期に実行し、エネルギー政策の見直しなど重要課題に取り組んでほしい」と訴えた。石破幹事長は、TPPに参加した場合の対応に関し「もっと自動車が輸出できるように関税をできるだけ早く撤廃させなければ、工業製品(の輸出)は伸びない」と応じた。
自動車の関税撤廃が非常に重要という立場です。
上久保誠人さんは上記を単なる八方美人といった見方で批判していたようです。
ただ、自動車の関税撤廃を強く欲していたのであれば、日本はそもそも事前交渉で完敗したということになります。
米側へ譲歩の自動車関税維持に業界失望
[2013年4月12日21時4分] 日刊スポーツ
環太平洋連携協定(TPP)交渉に絡み、日米両政府は米国が日本からの輸入車にかける関税を当面維持することで合意した。日本の貿易黒字の「稼ぎ頭」である自動車業界は関税の即時撤廃を求めてきただけに、失望の声が上がった。(中略)
業界の焦りの裏には、ライバルの韓国メーカーの存在がある。米韓自由貿易協定(FTA)により、両国間の乗用車関税は2016年に撤廃され、日本勢にとって競争条件が不利になる。
オーストラリアが日本との経済連携協定(EPA)交渉で自動車関税の当面維持を要求し始めるなど、米国に譲歩した影響は他国との交渉にも広がりつつある。
日本市場で販売を増やしたい米側の意向を反映し、日本は簡易な安全・環境審査で輸入車を受け入れる枠も拡大する。だが国内メーカー関係者は「米国車はそもそも日本で売れ筋の低燃費車の品ぞろえが少なく、影響は限定的だろう」とみる。(共同)
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp2-20130412-1111545.html ああ、韓国よりも悪くなる可能性があるんですね。どうも別記事によれば「最大限後ろ倒し」と約束したようですが、はっきりとした時期が書いてあるものは見つかりませんでした。
ただ、過去にやっているように、"10年程度の時間をかけて関税を下げていくことも可能"としていましたから自動車でも同程度でしょうか? とりあえず、2016年の韓国には敵いそうにありません。
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